63話 驚異の猛攻・神学館高等部!
タイムの後、再開された第2クォーター・・・・。
神学館は、ついに、「怪獣人間」安東零・通称「アンドレ」15歳・・・身長263cm・体重300sを投入してきた!ズシン、ズシン・・・グランドに轟く足音。地震が起きたかのような衝撃・・・。
「零くん、GO!」
「ゥオーーーーーーーっ!」野獣のような雄叫びを上げてピッチに入る安東零。
対する南武高校センターは大河原清。こちらも身長2m、体重140sの巨体。鹿児島県出身、中学柔道日本一の17歳。その風貌、言葉遣い、佇まいは全て、郷土の英雄、西郷隆盛に生き写しであった。この試合でも、身長185cm・体重140キロの巨体・油屋渕弥と、その弟で165cm・110sの丹波の2人を同時に吹き飛ばしたパワーは大会ナンバーワンの呼び声も高い。
その両雄が、今激突。ハット、ハット・・・ガシャーーーン!
その一瞬が、清には果てしなく長い時間に感じられた。宙を舞う清・・・やがて地響きを立ててグランドに仰向けに倒れる・・・屈辱のアオテンだ・・・。
「ウォーーーーーーーっ!」勝利の雄叫びを上げるアンドレ。
「清どん!」マネージャーで同郷の恋人、花子が絶叫する・・・。
アオテンは3度目だ。一度目は先先代主将で大学全日本主将の西本剛。これは格が違う。2度目は京葉花園高校の浜田弟。だが、特訓での成果を思い出し、2度目以降は逆にこれを完封してきた。いずれも1年生の時の話。そして2年になった今年度、ここまで一度も負けていない。その清の巨体が、いとも簡単に座布団のように吹き飛んだのだ。
しかも、彼はまだ1年、しかも早生まれのため15歳であった。
しかし、清は立ち上がった。だが、とき既に遅く、攻撃権は神学館へ。
「なにくそ!」神学館の猛攻に立ち向かう、信彦率いるディフェンス陣であったが・・・。
「ウギャーー!」
「グヘっ!」
ボールを持つ虎丸にタックルしようとした選手が、肘撃ちされる。だが審判の笛は鳴らない。
さらに、重ねてタックルに入った鈴木の股間を馬田鹿之助(通称・馬鹿之助)が蹴り上げる・・・。
それだけではない。日野と澄男のコンビによる空中殺法により遂にタッチダウン、方岩のキックも決る。
「メンバーチェンジじゃ!」
これを見た飯田監督は、2人の空中技を封じるため、サトル、サトミと陽一を守備につけた。守備スタートのため、彼等はこのときベンチにいたのだ。
だが、この3人を潰すことこそが敵の真の狙いであることは明らかであった。
しかし、方岩の作戦はその裏を斯いていた。
「ウワーーー」
「ゲ!」
方岩、須田、虎丸、馬鹿之助の猛攻に次々倒れていく選手たち。既に4名の選手が治療のため下がっている。特に股間をやられた鈴木はこの試合はもうダメだった。目潰しまで巧みに仕掛けてくる。
そしてライン対決も、清はアンドレにどうしても勝てない・・・。こんなことは初めてだった。
清が弱いのではない。アンドレが強すぎるのだ。そして大きすぎるのだ。彼の体格はもはや人間ではない。限りなく牛に近いのだ。
さらに、神学館は兇悪なだけのチームではない。上手いのだ。反則も上手いが、それ以上に基本的スキルが高いのだ。
また、これまでの兇悪チームの多くがそうであったように、紅一点のサトミ、美少年の陽一という、「両刃の剣的エース」を狙い撃ちするのではなく、選手の一人一人を確実に潰して、じわりじわりと南武高校の戦力を奪っていく。もちろん、サトミと陽一も狙われてはいるが、信彦や佐藤兄弟の護衛に阻まれてクリーンヒットはまだなかった。だが、方岩はあえて2人を後回しにし、鈴木たちを先に潰したのだ。
空中技あり、独走タッチダウンあり、神学館は、京王高校の上手さ、吉本工業の兇悪さ、旺盛二高のパワーと体格、おさらぎのカウンター能力、殉教の華麗さを全て兼備えているのだ。
その中でも、キャプテンの方岩晴久の攻守にわたる活躍はピカ一。長髪を靡かせ独走、守っては強力な丸太のような腕で相手を引き倒す。攻撃力・破壊力では彼をも上回る相棒・須田には、上手さ・緻密さ・知性は感じられない。だが、方岩はまさに悪の天才だった。
安東零にのみ注目が集まるが、あきらかにこのチームの主役は方岩だった。
「イッチバーーーーン!」得点するたび、指を突き挙げてガッツポーズの方岩・・・。
だが・・・やられ放しの南武高校ではない。
「キャー!サトミちゃん!」
サトミだ!サトミがインターセプトだ!独走するサトミ。そして、迫り来る敵を交わし、陽一にスイッチ。
陽一はエンドラインに滑り込む!タツチダウンだ!
だが・・・。「キャーーー!」
なんと、タッチダウンを決めた陽一に、虎丸がエルボードロップを敢行したのだ。
だが、ケツだけは鍛えていた陽一は、何とか退場せずに立ち上がることができた。しかしダメージは小さくない。これがじわじわとこの試合中に利いていく・・・。
しかし、これで流れは再び南武高校に戻った。 ラインで負けても、技でボールを奪い、得点を重ねる南武。
主将で投手のサトルの判断と指令も冴え渡る。
どんどん追い上げるが、得点差は縮まない。
方岩もまた天才なのである。しかも、安東もいる。
第2クォーター後半は両チーム壮烈な点の取り合い、潰しあいになった。
だが、パワーで劣る南武は相手を倒すことは出来ても、消すことは出来なかった。一方、パワーと邪心に勝る神学館の攻撃で傷ついた選手は次々リタイア・・・。
ピーーー!前半終了・・・。このとき、南武高校で五体満足な選手は半数にまで減少していた。陽一もダメージを受けてしまった。
そして清のスランプ・・・。
さらに、残った無傷の選手の大半は、試合経験の少ない1年や補欠である。主力で無傷なのは、サトルと信彦、佐藤兄弟ぐらいであった。そして彼等も疲労が・・・。
さらに、方岩と須田のツープラトンはまだ出されていない。二人はまだ本気ではないのだ。
安東もまだ慣らし運転中・・・。まだ半分の力しか発揮されていないのだ。
どうする南武高校・・・・後半の逆転はあるのか?折りしも王子スタジアムには雪がちらつきはじめた。