38話 豪雪の中の勝利

 

我が南武高校は、激戦の末、京王高校に敗れ、惜しくもクリスマスボウル進出はならなかった。だが、キャプテンの上村拓也は、気持を切り替え、サトルを新キャプテンに指名し、翌年へのリベンジを誓った。

一方・・・。敗戦の直接的な原因を作ってしまった、と思うサトミは・・・。

そう、追いつくチャンス、独走だったにも関わらず、サトミは・・・。突然、そう突然襲い掛かってきた、予定より1日早い「女」の覚醒によるショックで落球・・。そのまま遂に追いつくことが出来ず、負けてしまったのだ。

もちろん、それだけで負けたのではない。総合的戦力、立花監督の指揮など数々の要因があっての敗北だったのだが・・サトミの落ち込み方は尋常ではなかった。

「嗚呼、女・・。アタシは女・・・。何でなのよ?畜生・・・。」

 

一方、クリスマスボウル進出を決めた京王高校も、立花監督が重体となり、ついに海軍病院に転院となった。千代と頼伸は、必死に看病する。

「こら、貴様たち、ワシにかまうな・・・神学館を倒せ、神学館を倒すまで貴様たちの顔など見たくもない。早く行け!」

苦しい息の中、立花監督は、特訓をするよう2人に促す。

「お父様・・・」「お義父さん・・・」

「千代、行こう。勝利こそが一番のお見舞いだ」

「ヨリ・・・。そうね、行きましょう。」

 

その間、3位決定戦が行なわれ、吉本工業が元山新監督率いる新生・京葉花園を破り、有終の美を飾った。だが、横山監督と麗菜のいない寂しさに、主将の島田はなんともいえない寂しさを感じたのであった(その後、卒業式直前、麗菜は突然帰国)

 

そしてあっという間に1月がたった。いよいよ明後日は、クリスマスボウル。

千代と頼伸は、その夜も病室で見舞っていた。来るな、とは言われても、毎晩、猛烈な特訓の後、必ず病室に来ていた。立花監督に代わり、京葉を退任して来期から現役復帰を決めた南条英機が(本来なら、南武高校の指導をする約束だったが同校が敗退したため)指導にあたった。南武メンバーや、京王OBの福沢たちも協力を惜しまなかった。その足で、病室に駆けつける二人。

「ヨリ・・・お父様意識が戻らないわ・・。試合と同じ明後日、手術よ」

「ああ、あとはお義父さんの超人的精神力に賭けるしかないな。ところで千代・・

家に帰ろう」

「どうして?道具はここに全部あるわ。明日の集合にはここから行くってみんなにも・・・」

「いや、ここじゃまずいんだ。さあ、行こう。その前に、お義父さんに挨拶を・・・」

「お休みお父様・・」

「さようなら。」

頼伸は、半ば強引に千代の手を引き、タクシーに乗り込んだ。行き先は、京王高校宿舎・・そう、2人の住まいでもある。千代は、この京王の宿舎で生まれ育った。

監督は、大学卒業以来、ここに住み込みで学校職員として勤務の傍ら、京王大学・京王高校の指揮を執り続けてきた。

カチャ

ドアが開く。

「千代!」

突如、頼伸は千代を押し倒した。

「ヨリ・・・!」

頼伸を撥ね起こす千代。

「千代、オレは今からお前を抱く!明後日の試合、オレは必ず勝たなくてはならない。

勝ったら、正式にお前を貰おうと、そう思った。だが、お義父さんは・・・。

それに、相手は神学館だ・・。僕は・・正直お義父さん抜きで勝つ自信がない。

たから・・・お前の力が欲しいんだ。僕と、僕と一つになって欲しい・・。

僕の体の中にお前の力を・・・・。そのために・・」

「わかったわ。わたしもその言葉を待っていた。わたしは選手じゃないから、ヨリと一緒に戦えなくて悔しかった。でも、こうすれば・・・体はふたつでも心は一つになれるわ。

さあ、行くわよ」

「千代、行くよ」「ヨリ、愛してるわ・・・」


決戦を前に、頼伸は千代と一つになった。

2人は、激しく絡み合い、結合した。「ヨリ・・わたしの命も思いも、力もみんなあげる・・。

だから明日必ず・・・必ず勝って・・・」

「千代・・。僕は必ず勝つぞ。そしてお義父さんに報告だ。」

婚約していたとはいえ、2人が体を交えたのはこれが初めてだった。狭い社宅以下のこの家で厳格な立花監督が四六時中一緒でやりにくいということもあるが、どうせ高校を卒業したら入籍する予定ということで焦りはなかったのだ。だが、頼伸は今日は我慢できなかった。

いや、どうしても千代の肉体を必要としていた。そして千代も、自らの女を賭けてでも頼伸に命を、力を与えたかった。

そして夜が明けた。

 

東京駅では、京王メンバーたちが集合している。拓也、サトル、島田、福沢、大森、新島、義広、キムら、ライバルや先輩たちも見送るが、肝心の頼伸と千代が遅れている。

「あいつら・・・どうしたんだ?まさか監督のところに・・・」

「まずいぞ、もうすぐ入線だ・・・。」

「仕方ない、我々だけで先発しよう。福沢先輩たちは、キャプテンと千代さんが来たら次の便で追う様に頼んでください」副キャプテンの大久保が頼んだそのときである。

「待たせたな!」

「頼伸!」「キャプテン!」「千代さん!」

間一髪、2人は間に合った。

「ヨリ、僕たち明日応援に行くぞ」

「拓也!ありがとう」

ガッチリ握手する2人。

 

のぞみ号は一路新神戸を目指す。

「千代、僕はやるぞ」

宿舎についた京王メンバー。試合はいよいよ明日だ。

 

一方・・・。こちらは西本宅。

ピンポーン

夜更けだというのに突如鳴る呼び鈴。

「はい!どなたでしょう?」

カチャ。

「あっ!」

ドアを開けたみゆきは一瞬、動けなくなった。

「ママ!」

「ただいま・・っていいたいところだけど・・・。今日は仕事で帰ってきたのよ。パパはいる?」

「ママ・・・」

「うん、どなたかな?あっ、お前・・・!」

「あなた・・・いいえ、西本幸男海軍軍医中尉!召集よ」


西本(芦屋)海軍看護大佐。
帝国海軍病院総婦長で女性軍人の最高位である。
西本幸男の妻。

「おまえ・・」

「おまえじゃありません。私は海軍看護大佐・西本満智子。上官の命令よ」

「ハッ!」

「もう手を下ろして・・・あなた、わかってるわね?立花さんのこと。

彼を手術できる医師は世界中であなた1人だということを。」

「ああ、わかっているとも・・・。すぐ支度する」

「パパ、ママ・・・。もう2人とも・・・」

 

「ママ」こと西本の妻、満智子は、海軍病院の総婦長である。旧姓は芦屋。階級は大佐。非戦闘職とはいえ、現在の帝国海軍では女性として最高位の階級を持っていた。軍事機密や最先端の医療設備を誇る海軍病院の婦長ということもあり、帰宅するのは月に数回、時には2月帰らないこともある。ところで、軍とは一見関係のない西本も、実は若かりし頃は、海軍の軍医であった。東サトル・サトミの父、東七郎と親友だった彼は、実家の家業もあり、大学では東と袂を分かち、東大医学部に進んでいたが、海軍航空隊に入った東の勧めもあり、結局海軍に任官していた。そして、そこの衛生兵(看護婦)だった満智子と恋に落ち、結ばれたのだ。だが、ある事件に巻き込まれたことが原因で、軍に嫌気がさし退官して本来やりたかったスポーツ外科を開業し現在に至っていた。だが、軍でも一,2を争う腕前の看護婦である満智子を軍は手放さず、階級に差がついてしまった。もっとも、看護婦は将官にはなれないので、これ以上の昇進は打ち止めであるが・・・。

そんなこともあり、みゆきは幼い頃から母親役をしていたのでしっかりしていたのだった。

「あなた、事情はみゆきから聞いているとは思うけど、これから立花さんの緊急手術。頼んだわよ」

「ハッ!西本軍医中尉、直ちに復命いたします」

「ふふ、もういいわよ・・。堅苦しいのは。さあ、車を待たせてあるわ。」

病院に急ぐ二人。

「待って!私も行くわ!」

みゆきも同乗した。

病院に着くと、重苦しい雰囲気が漂っていた。

「西本軍医!わかっているとは思いますが・・・立花さんのお体は国家機密ですから」

「ああ、わかっている」

手術は始まった。ここで、驚くべき事実を打ち明けなくてはならない。

かつて、実業団アメフト・帝急の名選手だった立花豪雪監督は、落雷により選手生命を絶たれた。だが一命はとりとめたのだ。

しかし、それには深い、そして厳重な秘密があったのだ。

そう、落雷により、全身不随になった立花監督を、当時世界最高の外科医と言われていた水野昇軍医中将と、その唯一の弟子である若き軍医少尉・西本幸男が、奇跡の大手術を行なったのだ。立花監督の両膝から下と、左腕、そして心臓は人工のものに置き換えられていたのだ。

 つまり、一種の「サイボーグ」ともいうべき存在として、立花監督は甦ったのだった。

ところが、この手術に成功した水野中将は、体の一部ではなく、全身を改造した全身サイボーグを造り、不死身のサイボーグ部隊を創設することを考え、それを提唱したため軍を追われ、そのまま行方不明になってしまった。また秘密を知る西本に対する風当たりもきつくなり、ついに軍にいられなくなり、また嫌気も差して退官、開業したのであった。

だが、水野博士亡き後、立花監督の体を手術できるのは、西本ただ1人であった。

「あなた・・わかっているわね。」

「ああ。全力を尽くす」

 

 

 さて、明けた24日。ついに神学館VS京王のクリスマスボウルが開幕した。

神学館は巨漢ラインをそろえた大型チーム。対する京王は・・・。

 「いいか、オレたちはあの南武と吉本を破ってここまで来たんだ。監督は今日はいないけど、絶対勝つ。そして監督に勝利をプレゼントしよう!」

「オー!」

頼伸たちは気合十分である。

頼伸はふと、股間が気になった。拓也から教わったおまじない・・・。そう、彼女の「毛」をカップに忍ばせる・・・。そして、一昨日の晩(昨夜は宿舎のため無理だった)、彼はついに、千代と体を一つにしていた。

『千代・・。僕はこれでおまえと一つだ。僕たちは12人で戦うぞ』

『ヨリ・・わたしもあなたと一緒に走るわ・・・』千代は、初めての体験の後、下半身に違和感を感じていた。

そして今日、父に代わって指揮をとる彼女は、試合に出るわけではないが、選手たちと同様、完全武装していた。ショルダーをかぶり、フッパンを穿いて、竹刀を握り緊め・・・。

ただしメットは被らず、トレードマークの赤い鉢巻を長い髪にきりりと絞めて。

「私だって、気持は選手のみんなと同じだわ。ヨリと一緒・・・」


千代は選手ではないが、選手同様フル装備の防具を纏い、父の竹刀を手に指揮を執る

 

試合は白熱した。11年連続出場の神学館。京都代表・京極高校、大阪代表・阪急高校及び太閤学園、いずれも関東強豪以上の実力をもつといわれている。それを難なく撃破しての出場。恐らく2位の京極高校でも、京葉・吉本より強いだろう。


神学館は、方岩晴久主将と須田半蔵を中心にした大型チームだ。

ライン対決!今日の大久保は、関東大会で大河原に負けた悔しさをバネに奮起し、一回り大きい神学館のライン、須田を弾き飛ばした。


京王ラインメン、大久保忠元は自らを上回る須田を見事止めた!

キャプテンの頼伸も、それに応え、先制のタッチダウン!

そして頼伸の突進!先取点は京王だ!だがそのまま引き下がる関西の王者・神学館ではない。あっという間に追いついてくる神学館。しかし頼伸も負けない。一進一退の名勝負・・。

観戦する拓也、サトル、サトミも興奮する。サトミは今日は生理日なので厳重にガードしていた。


観戦する南武メンバーたち。ただしみゆきは両親とともに立花監督の手術の助手を・・・。

「あーあ、本当ならあたしがあそこでタッチダウンのはずだったのに・・・。でもこいつがなぁ・・」

股間を弄る。

「はしたないぞサトミ・・・。みんな見てるよ」

「えへ♪」

所変わって、ここは横須賀の海軍病院。

立花監督の手術が、西本の執刀のもと執り行われていた。


西本の執刀のもと、立花監督の難しい手術が行なわれた・・・。

「うう・・人工心臓が既に焼き切れている・・・何故生きているか不思議だ・・・

もう、私でも手の施しようがない・・・。」

「西本中尉・・・交換してみては」

「無理だ。水野先生でなければこの大きさの人工心臓は作れない。外付けならなんとか・・。

あ、だめだ・・・心拍数が・・・」

監督の体は、生身の部分、機械化された部分とも、実際には既に死んだのも同然だった。しかし、その超人的精神力で、生きていたのだ。

「手術は中止だ・・・。後は天運に任せるしかない」

「あなた、立花さんの身よりは・・・」

奥さんは先立ち、そうだな・・千代さんと頼伸君、そして彼のお父さんとおばあさんだけだ。だが頼伸君たちは今試合中、おばあさんも高齢のため入院中だ。ボケていて仮に呼んでもわからないだろう。お父さんも応援に行ってしまっている・・・。

手術は、懸命の努力にもかかわらず、失敗に終わった。機械化された部分が、再度の落雷により焼損したことと、生身の部分の老衰によるものであった。再度の人工心臓・人工関節の組み込みにはもはや耐えられなかった。

あとは、天寿が来るのを待つばかり・・・。その頃、試合は・・・。

同点のまま、ハーフタイムを迎えた。両軍チアによる、華やかなショーが繰り広げられる。


神学館女子部のチア

だが頼伸は、気合を集中させていた。そして迎えた後半・・・折から厚い雲が覆い、雪がちらついてきた。それはだんだんと激しくなって、両軍の攻防を妨げた。それでも試合は続行される。そして、最終クォーター・・・・。残りあとわずか。そのとき、攻撃権を奪取した京王高校の主将・高橋は、誰にもパスせず、突進した。

『千代・・・義父さん・・おれに力を・・・・』

頼伸は走った。巨漢・須田がすぐ後ろに迫る・・・。須田がタックルの体制に入った。

しかし、その寸前・・・

烈しい雪の中、決まった!タッチダウンである。続いてキックも自ら決めた。

「やったぞ!」


吹雪の中、頼伸は千代と監督、3人分の力を出して劇的に走り、ついに決勝点を挙げた!

神学館のカウンターも大久保が中心となって止めた。そして、試合終了!

 東京代表・京王高校は2年ぶりの出場にして、12年ぶりの優勝を果たした。

丁度そのとき、拓也の携帯が鳴った。みゆきからである。

「キャプテン・・・たった今、立花監督が息を引き取ったわ・・・」

「嗚呼、なんてことだ・・・。丁度ヨリの決勝点と・・・・。」

そんなことを知らない京王メンバーは歓喜に包まれていた。そして、引き揚げてくる。

拓也は、迷った。だが、言った。

「ヨリ・・・。たった今、君の義父さんが亡くなったよ・・・」

「そうか・・・。千代、聞いたな?」

「ええ、・・・・・。お父様・・・」気丈な千代も泣き出した。

「千代、今は涙を拭いて。この優勝旗をお義父さんに早く見せよう」

この事情により祝賀会は中止となり、2人は他のメンバーに先んじて神戸空港から羽田へと飛んだ。

 

「サトル君、いい試合だったな。来年は君が神学館を倒す番だ。僕は武体大でがんばるよ」

「先輩・・」

そのときである。引き揚げてくる神学館のメンバーたちとばったり出くわした。

「あれ?サトルやん!サトルやないの!」

突然、神学館のマネージャーと思われる女の子が馴れ馴れしく飛びついてきた。

ムットするサトミ。

「あっ!あんたもしかしてサトミ?うちのことおぼえとる?ほら、チェスで一緒やった・・・」

「ナッちゃん!」

「そうや〜。ほんまあの「オトコンナ」のあんたが、こんな髪なんか伸ばしてセーラー服なんかきおって・・」

「オトコンナで悪かったわね。そういうナッちゃんこそ」

「エヘ。ウチ今神学館のマネージャーしとんのや。今年は負けたけど、来年はまけへんで。だって、ウチには秘密兵器が入学するさかい」

この「ナッちゃん」とは、サトル・サトミ兄妹が小学生の時一時在籍していた神戸の少年フットボールクラブでサトミ同様プレーしていた女の子であった。当時からかなり気が強く、サトミに負けないくらい男勝りであったが、途中でフットボールを辞めチアに転向していたのだ。そして、彼女の兄は・・・関西最高のアメフト選手、「聖アンドリュー」こと安東竜であった。彼女の名前は「安東なつ」である。

そのナッちゃんの背後に、巨大な影が・・・。あまりもの巨大さに顔が見えない。


サトル&サトミは幼馴染、安東なつの挑戦を受ける・・・。彼女の従兄弟・零は人間離れした怪物であった。来年、神学館高等部に入学するという・・・・。

「サトルはん、レイ君おぼえとる?ウチの従兄弟の・・。来年、うちに入ることになったんや・・・。大きいで!」

サトルとサトミは恐る恐る見上げた。するとかすかに面影がある・・・。

「え、これがあのもじゃもじゃ君?」

なつの従兄弟、安東零は、母親が西班牙の女闘牛士のため、子供の頃から金髪の縮れ毛で「もじゃもじゃ君」と渾名されて苛められていたのだ。そのもじゃもじゃ君が、なんと身長263センチ・体重300キロの大巨人に成長して、再び彼らの前に姿を現したのだ。

「ウーーー!」

零は、極度の人見知りのため、通常は唸るだけである。従姉のなつが通訳しているのだ。

ちなみに、なつの父親が考古学者の安東登呂夫、母が美容師の麗亜、兄が竜、登呂夫の弟が宣教師の呂偉人、妻が西班牙の女闘牛士のロメダ、その子が零である。呂偉人は、本場ザビエル教会で修業しようと西班牙に赴き、そこでロメダと出会い結ばれたのだ。

子供の頃は単に縮れた毛の無口な少年だった零は、中三の今、人間のスケールを越えた大巨人に成長していた・・・。

「サトルはん!サトミ!あんたら、来年は絶対ここに勝ちあがってきてや!そしてウチの零くんと勝負よ!去年お兄ちゃんが負けたから、その仇を零君にとってもらうんや!」

いきなりの挑戦状だが

「よし、約束するよ、ナッちゃん、零君!」

握手するサトルだが、零の握力は人間離れしていた。

「痛い・・・」

しかし、新たな目標を得たサトルは、新キャプテンに指名されたこともあり、燃えるのだった。

「よし、僕の日本での最後の一年・・・燃え尽きてやるぞ!」

 

 

さて場面変わって霊安所。

「ただ今、義父さん・・。優勝しました。この紫紺の旗を、貴方に見て欲しかった・・・。そして千代のこの姿を・・・。」

なんと、2人は霊安室だというのに、婚礼衣装を着込んでいた。


頼伸と千代は、立花監督の霊前に、クリスマスボウルの勝利と、結婚を報告した。

「義父さん、僕は約束どおり、いや、少し早いけど、今この場で、千代を戴きます。」

「お父様・・・。もう一度目を開けて・・・。千代を見て・・・」

2人は元々、高校を卒業と同時に結婚することになっていた。だが、立花監督の死により、天涯孤独になる千代のことを思うと、頼伸は待てなかった。それに・・監督の肉体が焼かれ、この世から消滅する前に、千代の晴れ姿を見せたかったのだ。

そして異例の、葬儀と結婚式を同時に行なうことになったのだ。まだ高校生同士、かつ、父親の喪中という異例づくしの式ではあったが、2人は批判や非難をものともせず、粛々と済ませた。ここに、新たな夫妻が誕生した。姓は、高橋を名乗ることにした。立花家を断絶させ、後々の後始末をしなくとも良いようにとの遺言によるものだった。遺骨も、監督の遺志により墓は作られず、故郷の国東半島沖に散骨された。その日、大分は監督が生まれた日と同じ、75年ぶりの大雪であった。

 

今回のお話にはもう一つのエピソードがある。

 

クリスマスボウルは吹雪の中、京王の劇的な勝利で幕を下ろした。

また、西本の懸命の手術にもかかわらず、立花監督は逝った。そして、東兄妹は、大巨人(西本剛の、230センチ・150キロを身長で33センチ、体重で2倍上回りその記録をぬいてしまった)安東零と、その従姉で専属マネージャーの安東なつの挑戦を受けた。そして新キャプテンになったサトルは、その挑戦を受けるためにも必ず関東制覇しなくてはならないと誓いを新たにしていた。その一方、立花監督を救えなかった西本は、寝込んでしまった。みゆきもまた、父の面倒で疲れ果てていた。

そんな西本家で・・・。

「あんたち〜いつまで寝てるの?ご飯よ〜」


みゆきの母、満智子は海軍病院を退官し、普通の主婦に戻った。

「あ、母さん・・・じゃなくて総婦長閣下、いや大佐殿・・・任務は・・・」

「あなた何言ってるのよ、ここはおうちよ。婦長閣下や大佐殿はやめてよ。」

「でも・・」

「辞めて来たの。あんたと同じく退官してきたのよ。今日からはそうね・・この病院の婦長さんにでもしてもらおうかしら、院長先生♪」

「母さん・・」

「ママ、本当?」

「おふくろ・・・・!」

「これからは家族4人、いつも一緒よ。さあ召し上がれ・・・」


これからは家族4人、一緒だ。

こうして西本一家は、数年ぶりに親子水入らずの普通の家庭になることが出来たのである。

 

 東兄妹、西本親子、そして新しい高橋夫妻の新しい人生が始まった。

そして、いよいよ来年は・・・勝負の年。サトル

が世界に羽ばたくための最後の助走の年である。そして自らの中の「女」との宿命の戦いという爆弾を抱えたサトミ・・・・。

兄妹の活躍・運命や如何に?

 

 

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