34話 逆襲!吉本工業高校!

 

激闘の末、ヒデキ率いる京葉花園学園を破った南武高校・・・・。勝つことは勝った。だが、実力的には押され気味・・・。敵チームの内紛がなければ、あるいは?という薄氷の勝利だった。

 一方、神宮球場で対決していた吉本工業高校VS京王高校は?

島田の蛇のような執念、横山監督と麗菜の姦計にもかかわらず、それをことごとく退けて、都大会に続いて京王が勝利した。それは何故か?鬼神のような、立花豪雪監督の采配と眼力で、その邪計が悉く見破られ、かつ、主将として大きく成長した高橋頼伸の攻守にわたる大活躍もあって、島田の執念と横山監督の陰謀をシャットアウトしたのだ。


西山徳男の執念のタックルをかわし、決勝タッチダウンを奪った頼伸。

だが、その京王を悲劇が襲った。試合終了直後、突然の雷雨・・・立花監督が落雷のため、負傷してしまったのだ。監督は実は、現役時代にも落雷で負傷し、選手生命を絶たれながらも不死鳥のように甦り、以後指導者として活躍を続けていたため、「雷神」と言われていたのだが・・。昨年高齢のため倒れた監督の2度目の被雷・・・。しかし監督は、驚異の生命力と精神力で、またしても一命をとりとめた。だが次の京葉戦の指揮を執れるかは微妙だった・・・・。

 そして、文化の日の今日・・宿敵・南武高校と吉本工業高校の対決が始まった。

既に京王に敗れ、後のない吉本工業・・・いつになく悲壮感が漂う。

 同じ日、京王は、立花監督を欠きながらも、元山新監督率いる京葉を零封した。2勝目である。現時点で王手をかけたといってもいい。

南武高校は、緒戦の勝利に加え、戦力として認められた陽一の成長もあり、万全の体制で迎え撃つ。サトル、サトミ、信彦、鉄平、大河原、陽一、義信、猛、拓也・・・主力組の体調は万全。千佳以下、マネージャーたちも元気一杯だ。

 

 キックオフ・・・。サトミの鮮やかなキックをキャッチした吉本の三郎に信彦がタックル。倒れたところが攻撃開始地点となる。クォーターバックを務める島田。3年生、最後の大会である。なんとしても宿敵・南武高校を倒してクリスマスボウルに出たい・・・。

 鮮やかなパスが、三郎に通る。三郎と双子の弟の四郎は、サトル・サトミ同様、息の合ったコンビネーションで次々ダウンを重ねる。いつも2人で素早く審判の目を盗んでのファウルを重ねている極悪プレーヤーとのイメージの強い彼らだが、今日の2人は一味も2味も違う・・・。そして彼らを止めようとする信彦らディフェンス陣には、西山が猛烈なタックルをかまして止める。そして、先制は吉本工業だ!いつになく正攻法で、強い吉本工業にサトルたちは舌を巻く・・・。


島田、三郎、四郎、西山の見事な連携による吉本工業高校の先制!

 しかし、やられっぱなしの南武高校ではない。すぐに反撃開始だ!南武高校には、「剛」のQB、東サトルと、「柔」のQB、上村拓也の2人のQBがいる。レシーバーには「ジャンヌダルクの再来」と呼ばれる現在日本唯一の女子選手、東サトミ、「フィールドのアーティスト・妖精」と呼ばれる天才少年・岬陽一がいる。ラインには西郷隆盛に生き写しの大巨漢・大河原清が。攻守にわたって縦横無尽の活躍をする鉄人・武田信彦のスタミナ・体力は無限だ。ラインの一番外側から、攻撃にも素早く転じる器用で素早い副キャプテンの馬場鉄平は、今年になってから体質改善の成果から大幅にパワーアップしていた。他にも優秀な選手が揃っている。サトルと拓也は彼らをまるで2頭立ての馬車の御者のように巧みに操って、みるみる反撃していく。しかし、彼らの連携を助けているのは、ベンチからサインを出す天才少女・西本みゆきだ。彼女はプレーこそできないがおそらく日本一アメフトの知識が詰まっている才媛だ。眼鏡を直すしぐさや髪をかきあげるしぐさ・・実はこれは絶妙のサインなのだ。

 次々に得点していくサトミに、ついに吉本工業の選手たちは本性をむき出し、襲いかかってくる。島田が、西山が、渾身のタックルをかます。京葉高校の趙や、殉教学院の新島のように、相手が女の子だからという遠慮は一切ない。逆に、「女の癖に生意気だ!」との思いから、むしろ集中攻撃し、セクハラまがいのタックルも辞さない。フッパンがずり下がったり、顔面から地面にたたきつけられたり・・・。それでも執念のタッチダウンとキックを成功させていくサトミ。今日のサトミは、いつになく超絶好調であった。

陽一が嫉妬するほどの連続得点・・・。

「サトミ!今日のおまえ、凄くない?まるで信彦君みたいだ」

「へへっ♪やっぱりカレー効果かな?」

京葉を破った際の約束でヒデキから送られた「おうちカリフォルニアカレー」。レーズンとアーモンドペーストの入ったこのカレーを、料理が得意な千佳と四葉が調理した特製カレーで選手たちはスタミナ一杯だった。ただし、もう一つの約束、ヒデキによる臨時コーチは、ヒデキが京葉の監督を辞任したものの、京葉の試合がまだ残っていることから、「もしクリボーに出られたら」に延期されていた。

 

 だが、一味違うのは吉本の島田も同じ。南武高校のわずかなミスをついて、ボールを奪う島田は自らがタッチダウンして、反撃する。南武高校は、2年生が主体の若いチーム。今日は、1年生の真田と北村(京葉の北村前理事長とは同姓だが他人)も初めて出場した。すでにレギュラーになっている陽一や大河原に負けじと頑張る彼らだったが・・・陽一も含め、ミスをすることも多かった。

 ミスをとりもどそうと陽一もタッチダウン。

しかし、陽一が1年とわかった島田は生意気だと感じ、早速報復!どんなに勧められてもファールカップを入れない陽一は、一時退場・・・。


西山のキラータックルが陽一に炸裂!

 悪いことが重なった。陽一を庇おうとした義信が、足を痛めてしまったのだ。

「義信さん!」心配そうに駆け寄る唯理。「痛・・」みゆきと唯理の適切な手当てもあって、大事なかったが、一旦ベンチに下がることになった。


敵にタックルしたり、敵のタックルから味方を守る役目の義信だったが、陽一を庇おうと足を痛めてしまった・・・。

 陽一と義信を欠く南武は、代わりに丘とオサムを出したが・・。

彼らとて強豪・南武高校の選手。特に丘は1年の時からレギュラー(陽一の成長によりスタメンを奪われる)を務めていた選手だ。よそならエースだろう。

 だが・・・相手は南武同様、常に関東4強に入る吉本工業。そして南武の他の選手たちのレベルは、もはや丘やオサムとは桁が違ってしまっていた。

「紳の字!あの22番と9番が穴だぜ!」

「よっしゃ、サトミしゃん潰しにも飽きてきたところだ。徹底的にやれ!」

「アニキ、あっしらが22番を殺ります。徳男アニキは9番を!」

「よし、サブ、任せたぞ!」

 

「うう・・やはり丘君やオサム君では歯が立たないか・・・」

 相手の弱点を突く島田の作戦は成功し、あっという間に追いつかれてしまった。

「監督、マネ長・・!もう僕たちは大丈夫です」

義信は足を少し引きながらも立ち上がった。

「待って義信さん・・・」

唯理が引き止める。

「これを・・・。」

「このお守りは?」

「私の毛が入っているの・・・」

言われてみると、唯理の自慢の黒髪がやや短くなっている。

「唯理さん・・」


再び出陣する義信に、唯理は自分の「毛」を忍ばせた守り袋を託す。

実はこのお守りには、髪だけではなく、もっと大事なところの毛も含まれていた。このお守りの効果から、のちに高校アメフトマネの間で流行ることになるのだが・・・。

「私は女。みなさんと一緒にグランドで戦うことはできませんわ。でも、わたしもこれで、義信さんと一緒に、あの戦場を駆けられると思います。もう貴方は1人じゃありません。わたしも・・あなたの一部として一緒に貴方と」

他の選手やマネにはわからない、一瞬の囁くような会話であった。しかし2人は確実にお互いの愛を確かめ合った。

(唯理・・・。僕はやるぞ!怪我がなんだ!)

「陽一君!君ももう大丈夫だよね?」

「はい、もちろんですよ先輩♪」

 

選手交代!

南武高校は、オサムと北村、真田を下げ、代わって義信と陽一が復帰し、さらに3年生の山川が入った。

 

 目まぐるしく変わる戦況を真亜子は正確に記録する。卒業した玲子に代わって撮影を担当する沙羅。彼女らを統括する千佳と、持ち前の明るさとリーダーシップで千佳を支え、選手たちを励ます宏美。ウォーターの準備に小さな体を一生懸命動かす花子と黙々と励む四葉。マネージャーたちも本気だ。

 まなみたんとかなみたんは・・・あいかわらず飯田監督の腕に子猫のようにじゃれついているだけだが・・・彼女たち2人が居てくれるだけで、殺伐とした戦場の雰囲気が和むのだ。

 試合は膠着状態になった。一進一退のまま、どちらが優勢ともいえぬ白熱した展開。

 

「うん?よく考えてみると今日、オレたち目立ってないな?まずいぜアニキ!」

「そうだな信彦!よし、そろそろ俺たちの出番だ。アレをやるぞ!」

 

島田の絶妙なパスがサブに通った。弟の四郎とのコンビで南武ディフェンスを翻弄して進む二人。だが・・・

「うわーーーっ」

2人いっぺんに吹き飛ばされる。

「見たか!俺たちの双子破りを!」

「信彦君、馬場先輩・・・」

「へへ、あたしらも役に立ったみたいね」

サトル・サトミの双子と常に一緒にプレーしている馬場と武田は、2人の協力も得て、双子などの絶妙のコンビを打ち破る研究をしていたのだ。時には宏美も一肌脱いで、一緒に走ることも・・・。

「やった!お兄ちゃんと信彦♪」ベンチの宏美も興奮して立ち上がる。

 

 「まさかサブとシローの合体技が破られるなんて・・・!」

ベンチの麗菜も驚く。

 

「永森・・・あかんな・・・。どないしようか・・例のブツは役に立たなかったしなぁ・・」

「ええ、試合終わった後じゃ、効果も半減・・・。予報も快晴だし・・・。だいたい文化の日って雨になった時ないから・・・」

なにやら怪しげな会話である。

 

しかしグランドで戦う島田たちはそれをよそに、激しい闘志を燃やしていた。

「サブ、シロー、大丈夫か?くそーーーっ!徳男、あいつらなんとかならんのか?」

「紳の字、それが、去年は軽く当っただけで骨折や捻挫した21番、すっかりタフになっていて・・・倒すことはできるんだが、すぐ起きてきやがる・・・。5番にいたっては・・・マジで当ったら骨折するのはこっちだ。あいつとラインのデカ物はどうしようもないバケモノだぜ。やはり、ここはいつもどおり弱いところからせめて行こうや」

「弱いところ・・か・・・あいつら弱いところってないからなぁ・・。やっぱあの子か?」

「そうそう、あの子・・・」

「よだれでてるぞ徳男・・」「紳の字こそ」

「ハッハハハ・・・!」

 だが、そこで前半終了・・・。波乱の後半はいかに?

 

 

 

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