第28話 鬼姫の挑戦!タッチフット大作戦(後編)
京王監督・立花の娘・千代の挑戦から話が大きくなり、ついに女子のタッチフットの試合をすることに・・・。
その前に、千代に関するデーターが手に入った。玲子からもたらされたのだ。西本宅での分析が始まった。
メンバーは、飯田監督、西本親子3名、東兄妹、拓也、千佳、馬場兄妹の10名である。
「見たまえ!さすがは立花監督だ・・・。コマ送りにするとさらによくわかる。完璧なフォームだ。無駄が無くかつ華麗だ。大学でもここまでのレシーバーはいないだろう」
「足も速い」
「うむ、若い頃の立花さんのランニングフォームとよく似ておる」
「高橋君との息もぴったりだわ」
「まるでサトルくんとサトミちゃんみたい・・」
「おっ!今度はタックルだ・・・」
「あれっ!びびってるじゃん!」
「あーあ、やられちゃった・・・」
「うーん・・・。パスキャッチ、ランは完璧だ・・・。だがこの及び腰の、明らかに自分を庇いすぎのタックルと、タックルされたときの弱さは致命的だ・・。やはり「女」だ・・」
「しかし、もし男だったら・・・」
「そうだな。サトルや高橋と同等以上の実力を発揮するだろう」
「でも、もしタックルが禁止だとすると・・・」
「そうなんだ。タッチフットの選手としては完璧すぎる。いや。タッチフットというスポーツが彼女のために存在すると言っても良いだろう。それにこのボールへの執着心もすさまじい。勝利に対する貪欲さがにじみ出ている。」
「サトミ、宏美・・・。明日は苦戦しそうだぞ。」
「それに、吉本のマネージャーも何か企んでいるかもしれませんし、先輩たちのチームも侮れません。雷神大先輩はそもそもタッチの元祖的存在。静香先輩は元サッカーのストライカー。リコさんと玲子先輩はスポーツ万能。江川キャプテンと小林さんも、フットボールの経験こそありませんが、ボクたちより大きな体です」
「そうだな・・・。」
「でもさ、相手が誰であろうと、勝つのは絶対あたしたちだよね、みゆ♪」
「そうね」
「そうよ先輩!あたしも頑張っちゃう。お兄ちゃん、これから特訓よ。さあ帰りましょう!」
「宏美、待てよ・・いまみゆきちゃんが焼いたクッキーが・・・」
そして土曜日・・・。ついに女の戦いが始まった。
「サトミさん!この前の借りは返させていただくわ。あなたみたいな大味な選手が通用する競技じゃないことを思い知らさせてあげるわ」
「言ったな!そっくりその言葉を返してやるよ!」
早くも、火花が飛び散る・・・
第一試合は、京王VSOGチーム、南武VS吉本だった。
京王は、4チーム中唯一、普段から専門のチームとして活動しているため、OGチームを圧倒した。だが、最終クォーターに入り、基礎体力、体格に勝るOGチームも、得点して一矢報いた。
「さすがは元祖タッチの女王ね・・・。まさか私たちが得点されるとは思わなかったわ。」
「ふふ。あたくしたちだってあと1月も練習すればあんたたちなんて目じゃなかったんだけどね」
とリコは負け惜しみ・・・。
一方、麗菜率いる、吉本チームと南武の試合は・・・。
「キャー!何処触ってるのよ、あんた女でしょ!」
「ぴピーーーーーっ!」
吉本の選手たちは反則の連発でとても試合にならない。麗菜は、ドサクサにまぎれてサトミの足を思い切り踏んだ。
「クッ!」しかし我慢。だがこれが後に・・・・。
ブー子は太りすぎで転ぶわ、ガン子は審判にとんでもない抗議をするわ・・・。
助っ人の不良少女たちも運動不足から役に立たず、最終Qを待たず、選手がみんな反則退場、もしくは怪我のため退場してしまい、試合にならなかった。
「畜生!でもいいわ。目的は果たした。あとはこれがボディブローとしてじわじわと・・。フフフ。楽しみだわ」ほくそえむ麗菜。
そして、今日のメイン試合、南武高校VS京王女子高校の試合が始まった。どちらも、男子のアメフトのユニフォームと同じ配色のユニフォーム・・。南武は赤に黄帯、京王は紫に黄帯であった。だが南武のユニフォームのボトムは、学校の方針で、ブルマとなっていた。南武高校のほぼ全ての女子競技のユニフォームは、ブルマである。バレー、ハンドボール、陸上ならともかく、バスケ、サッカー、卓球、そしてタッチフットまでブルマを採用するとは・・。ちなみにテニス・バドミントンもスカートの下は白いアンダースコートではなくブルマを採用している。
先攻は南武高校。クォーターバックは、キャプテンの千佳が務めた。
「いくわよ〜♪」千佳の甘く可愛らしい声が響く。
そのパスは、サトミに!
だが!完全に読まれていた。千代に思いっきりタッチされてしまった。しかも千代は,どさくさにまぎれて、胸を・・・。
「小さいのね・・。こりこりしてたわ」
「クソッ!この鬼め!」
続く攻撃も、一糸乱れぬ京王の守備に阻まれ、あっという間に攻守交替・・・。
千代のランは、豪快にして柔軟。
「何故?どうして追いつけないの?」悔しがる宏美・・・。あっという間に4タッチダウン奪われてしまった・・・。
そしてついにサトミは・・・
「ピーーーーっ!」
しまった・・・。思わずタックルしてしまったのだ・・・。
「オーホホホ・・・。やっぱりあんたにはそういう野蛮な止め方しか出来ないのよね。あんたにタッチは10年早いわ・・・」
「畜生・・!」
なんとか反撃のチャンスはないのか・・・。
「サトミちゃん!逆に千代さんを挑発するのよ!」
「よしっ!やってみる!」
「ヘイっ!かかってきな鬼婆!」
「何ですって!」
ものすごい形相で迫る千代。
「それっ!ヒロミ!」
サトミのパスはヒロミに。そしてまたサトミに!
そこへ、千代が激突・・というか正面衝突・・・
倒れる二人・・・。
もちろん、タックルではないので、事故なのだが・・・。
得点には結びつかなかったが、初めて千代の動きを封じることが出来た。これが、きっかけとなった。
そして・・・ついに、南武高校側が初得点・・・。リズムを掴んだサトミは大反撃!だが千代たちもそう簡単に追いつかせてはくれない。一進一退の攻防が続く・・。タックルこそないものの、思ったよりはるかにハードな競技であった。
「もう千佳走れない・・みゆきさん、交替よ!」
ついに千佳は音を上げてみゆきと交替した。だが、これが大成功!
みゆきは、南武高校のマネージャーの中では、運動能力は最も劣っていたが、逆に頭脳は最高で、かつサトミとの相性が抜群だった。
完璧に訓練された京王の選手たちの動きを全て読み取り、正確なパスを投じる。
サトミ、ヒロミを中心とした他の選手たちを、まるで自在に手足のように操って・・・。
「みゆきちゃん・・・・ボクより凄いかも!」
県下ナンバー1QBと呼ばれているサトルでさえ舌を巻く上手さだった。
「フットボールはやはり力だけじゃないんだ。いや、力を排除すれば、むしろ体力や体格より頭脳のスポーツになってしまうんだ!」
一方、千代も・・・。
「あの補欠の子、出来るわ!なんてことなの・・あの子が入ってからあっという間に追いつかれてしまったわ・・・。足もあんなに遅いのに・・なんて頭脳なの!メガネに馬鹿なしとは言うけれど・・。悔しい!」
そして、遂に、絶妙のパスがサトミに通った!独走するサトミ・・。エンドラインまであとわずか・・。タッチダウンすれば同点、キックが決まれば逆転だ。ところが!
「イテーっ!」サトミは突然、足を引きずりだしてしまったのだ。そして千代に追いつかれてタッチされてしまった・・。そう、麗菜に踏まれた足が、突如痛み出したのだ。
「フフ。勝ち負けなんてどうでもいいの。サトミの苦しむ姿が見れればいいのよ」
ほくそえむ麗菜!
「タイム!」
南武側ベンチからタイムがかかった。
「サトミ・大丈夫か?こんなに腫れて・・・。スパイクも破れてる・・。きっと吉本のマネ長が、金属ポイントに細工したんだ・・・。千佳さんと交替したほうが・・・」
「いや、アタシ最後まで出る!だからお願い・・サトルのシューズを!」
「サトミちゃん・・無理しないほうが・・・」
「みゆ、テーピングとスプレー!」
「サトミちゃん・・・」
強行出場だ。
そして、運命の最後の攻撃・・・。
みゆきのパスは、サトミに!もちろん、千代のマークが・・・
だが!みゆきのパスは、サトミをスルー。捕ったのは・・・今まで目立たなかった四葉!
あっけにとられる千代。そして、そのまま四葉はタッチダウン。
「なんてことなの!」
四葉は素人とは思えない素晴らしいランを見せたのだ。
しかし、足を痛めていたサトミは自慢のキックを失敗、ここで試合終了・・。引き分けに終わった。
千代は思い出した。
「あっ!お前は・・・」
「思い出してくれた先輩?」
「でもなんで南武に・・・」
四葉は実は、京王女子中出身で、タッチの経験があったのだ。
「髪を短くしてたから判らなかったわ・・・。でもどうして?」
「女同士でじゃれあうより、頑張る男の子の力になりたい、なーんてね」
日頃無口な四葉にしては衝撃的な発言と、隠された過去であった。
「四葉チャン・・・最初から言ってくれればよかったのに・・いじわるね」千佳もちょいぷんぷん。
さて、OGチーム対南武は南武の勝ち、吉本対京王は京王の勝ち、OGチーム対吉本はOGチームの勝ちとなり、南武と京王が2勝1分、OGチームが1勝2敗、そして吉本は三敗という結果になった。
「サトミちゃん・・・。あんた、やっぱり凄いよ。根性もある。あんたなら、私が果たせなかった、男の子に勝つことがきっと出きるわ。頑張ってね!・・・でも・・・私の頼伸には勝てないと思うわ。あんたのサトルくんもね」
「任せておいて!でも惜しいな。京王が共学だったら、アメフトでもまた勝負できたのに」
「それは言わない約束よ。それに四葉も・・・。この中に、好きなコいるんでしょう?」
「さあね・・。」
どこまでもクールな四葉。
女の戦いは終わった。ガッチリ握手するサトミと千代。
千代の果たせなかった分の活躍を背負わされたサトミ。次の戦いは、再び鎧を纏っての男の世界での戦い。さあサトミ!自分の限界を超えるのだ!
そして麗菜の次なる陰謀は・・・・。