25話 始動!南武高校

 

新入部員を迎えて1月。やってきました春合宿!ところで新キャプテン上村は、練習にある試みを取り入れていた。


新キャプテン・上村拓也&
新マネ長・入間千佳♪

「みんなはタッチフットボールというのを知っているかな?まあ一種のアメフトなんだが、タックルの代わりに、手でタッチしただけでダウンしたことになるんだ。タックルは禁止。それと人数は66。今、女子大生の間で大人気のスポーツなんだ。特に京王では盛んなんだよ。新入生の中には全くの初心者もいるし、体をほぐすのにも丁度いい。それに、これならマネージャーのみんなにも覚えてもらえるから、彼女たちにアメフトの醍醐味を体で知ってもらい、選手との一体感が生まれるとおもうんだ。」

「へぇー。でもタックル禁止、ラインなしじゃねぇ・・・」

「意外と、からだの小さな人や力の無い人でもできるのよ」

「そうなんだ。ぼくと千佳ちゃんでこの前、京王に偵察に言った時、高橋君たちが練習に取り入れていて、京王女子の子たちと仲良くやっているのを見て、ぼくたちも取り入れようってことに」

「ね♪」

「キャプテンとマネ長、いい感じ・・・」

「バカね、チカ姉のお目当ては京王のキャプテンの高橋さんなのよ」

 

 ということで、練習にはタッチフットが取り入れられたのだが・・・。

「ピーーー!」いきなり笛を吹かれるサトミ。

「サトミちゃん!タックルはダメよ!」

「みゆ・・タックルしてないよぉ・・押しただけ」

「そんなぁ・・・。」

一方、サトルは軽快に鮮やかに。新マネージャーの宏美も、兄の鉄平と息があっている。

「こういう形だけど、フットボールが出来て嬉しいわ」


タッチフットを通じて、女子マネージャーたちも楕円球を追う。その中でも、宏美の実力は選手であるサトミに拮抗していた。

「沙羅!わたしたちもまけないわよ」

「うん。」

「まなみたんとかなみたんも〜!」

「おっと、これは難しいなあ」

「ハハハ・・。武田君、キミにはちょっとパワーをもてあまし気味だね。これは僕達の体ほぐしだけど、実際ミックス(男女混成)試合では、もっと男性に制約があってハンデつけなくちゃいけないんだ。それでやってみるかい?」

男子プレーヤーの得点は認められないなどのハンデを取り入れた正式ルールでやってみると・・サトル以外の部員たちはてんでダメだった・・。

 ライン組はふてくされて筋トレに励む。

サトミは一応女なので、一番有利かと思われたのだが・・・。そうでもなかった。力任せな乱暴なプレーを連発して笛吹かれ捲くり。だが徐々に、他を圧倒しはじめた。

「さすがだ・・・。」

「キャプテン!これ、楽しいですね!女の子たちとも一緒にできるし、体がほぐれます。でも、どうして今まで取り入れなかったのでしょう?」

「サトルくん、それはお兄ちゃんが・・・」

「そうなんだ。ラインの人には縁がないからね。西本先輩はやりたくなかったんだろう。」

「ハハハ。そうですか〜。」

 

「待たせたねラインの勇者たち!今度はタックルの時間だ!」

 新キャプテン上村は、剛と違い強力なリーダーシップも、技術もなかったが、温厚で誠実な人柄で、チームを支えるタイプのキャプテンで、人望があった。またマネ長の千佳も母性あふれる、チームの母親的存在で、昨年までの硬派でバンカラなチームから、明るくたのしい雰囲気のチームに様変わりしてしまっていた。

 もちろん、不満もある。

「先輩!自分たちは女といっしょになって鬼ごっこをしに来たのではありません。体ほぐしも大切ですが、もっと実戦的で体力がつく練習もしないと」

力自慢の大河原は不満のようだった。

 それにしても・・・。剛を髣髴とさせる頼もしい巨体は西郷隆盛にそっくりであった。

今年の南武高校は、剛を初めとするライン陣が大幅に抜けてしまったため、それまで強力だったラインが弱体化してしまい、まさに大河原は救世主だった。

「でも大河原君、キミのパワーにフットワークが加わったら鬼に金棒だよ。頼りにしてるよ」

「東先輩!」

 

 一方サトミは・・・。


大きくなった胸にさらしを巻いて・・・。

「みゆ・・なんか胸が邪魔・・・。さらし巻いて」

「じゃあ、ここじゃみんなに見えちゃうから、こっちで・・・。」

木陰に隠れた二人。サトミは防具を脱ぐ。小ぶりな乳房がぷるるんと震える。

「きついけど我慢してね」

みゆきはサラシを丁寧にサトミの胸に巻いていった。

「よっしゃ!やっぱこうじゃないとね!」

元気よく、戦列に戻るサトミ。

「サトミちゃん・・・」

あいかわらず、男子顔負けの勇ましさ。だが、やはり・・・・。

僅かではあるが、動きが鈍くなってきている。それは素人目にはわからないが、サトルとみゆきにははっきりわかるのであった。ちなみに月のモノはすでに済ましてあり合宿では体調は万全であった。

 

 

「オス!やってるか!」

「あっ!主将・・じゃなかった先輩!」

今日はOB戦だ。こっちもキツイ日程だが、先輩たちに頼んで、組んでもらったから感謝しろ!」

前主将、西本剛だ。さらに、武蔵体育大学の強力な面々・・・。今日は合宿の成果を試すため、OBの胸を借りた練習試合を組んでもらったのだ。

剛も大学では1年生。その大きな巨体をこまかく動かして先輩に従ってはいる。だが入学早々、センターの定位置を奪取していた。

「ハーイみんな!さしいれよ!」

「リコさん、それにレイコ姉!」

「今度あたくしと玲子で、月刊アスリートの増刊・アスリートレディースを創刊してもらってあたくしが編集長になったのよ。そしてこれが第一号。」


アスリート・レディス創刊号の表紙を飾る、帝急新人エース・江川由美(南武高校OG)の勇姿!

「あっ!江川キャプテン!」

華々しく社会人バレー界にデビューした新人、江川由美の特集だった。

 「そのうち、サトミちゃんの特集もやるつもりよ。ま、今日は本誌のほうの仕事で来たんだけど、ね。本誌では平記者」

「ハーイ!元気してた?千佳がマネ長か〜。静香とちがって後輩たち甘やかさないか心配だぜ」

「もうレイコ姉ったら。千佳だってちゃんとやってるわよ。ふふっ♪」

そんな中、ついにOB戦のキックオフ!

今日も蹴るのはサトミ。鮮やかなキックに、OBチームはかなり押し戻されてしまった。つづいて激突!

さすがの大河原も剛に潰されてしまった。だが、剛は確かな手ごたえを感じていた。

「よし、俺様の後釜はなんとか確保できたな。」

そして、2年生になり身長も僅かだが伸び、さらに動きに軽快さが増し、その上パワーも身につけたサトル。間違いなく、彼は現在の高校ナンバーワンプレーヤーだった。

一方、その1プレーヤーを押しのけてMVPを獲得したサトミは・・・。

 明らかに、当りが弱くなっている。もっとも本来、攻撃の選手である彼女だから、選手の増えたいまではさほど問題はないのだが。そして肝心の攻撃!

 走るサトミ。そのヘルメットからは、髪の毛がはみ出し、風に揺れる・・・。

タッチダウン!ジャンヌダルク・東サトミは健在だ!

 だが・・・。

攻守が何度か入れ替わり、何度かめの攻撃のときである。

「ギャーーーツ!」

サトミはついに、タックルで押し倒されてしまった。

「うーん・・」

なかなか起き上がれないサトミ・・・。

今までとはやはり、何かが違う・・・。技の切れや、ガッツは増していた。だが、あれほど練習していたのに、どうして?体力がつづかない。

「フっ。これでWRはボクに決まりだな。」ほくそえむ岬。

その後も岬は、なにかとサトミを邪魔したりしていた。

「畜生・・・体が重いよぉ・・・」

 その肉体が徐々に女性化していったため、努力や素質ではカバーしきれなくなってきているのだ。そしてチーム内に強力なライバルの出現・・・。

どうするサトミ!

そして試合は終わった。

新年度第一戦は、66-45で敗北に終わった。武蔵体育大相手とすれば健闘したほうだった。だが西本剛は、自分がいれば勝っていたかもしれないと思うのであった。部員数は増えたが、あきらかに剛たちの代が抜けた穴は大きかった・・・。

「ハーイみんな、お疲れ様!バーベキューの用意が出来たわよ」

リコと玲子からの差し入れで、楽しいバーベキュー。

「レイコ姉、初任給で・・・」

「まいいってことよ。アタシにとってゲーターズは・・実家みたいなものよ」

「ちょっといいかしら」

「あら、静香!来てたのね」

「ええ、大学ではトレーナーをしているわ。」

「トレーナーか・・・。でも静香がついたら厳しくなりそう!武体大の選手も大変ねぇ」

「こらっ!」

楽しいひと時は過ぎていった。そしていよいよ明日は合宿最終日・・・京王を迎えての練習試合であった。さあ、練習とはいえ、京王は手ごわいぞ・・・がんばれサトミ!

 

 

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