第23話 炎のジャンヌダルク(第一章最終回)
「よっ!待ってました!」
「キャー!素敵!」
「みんな!」
そこでは、サトミが来るのを今かと待ちわびていたみんなが・・・。
南武高校の部員たち、大会実行委員、リコたち報道スタッフ。
応援にかけつけた学校関係者や応援団。そして、ともに青春を賭けたライバルたち・・・
殉教学院の新島、京王三銃士(福沢・大森・高橋)、旺盛の玄田、さらにはつい数時間前死闘を繰り広げた、神学館四聖人・・・。南武高校の、野球部エース・松崎大介と、バレー部主将・江川由美の姿も。
だが、サトミが一番嬉しかったのは・・・・
「パパ!来てたのね!」
そう、サトミの父、ラバウル航空隊飛行隊長・東七郎大佐が。
「サトミ・・。しばらくぶりだね。実は急な用事で今日ラバウルから飛んできたんだ。見たよ、素晴らしいタッチダウンだった。」
「パパっ!」父の胸に飛び込むサトミ。なきじゃくる。
「残念ながら前半は間に合わなかったが・・・。しかし、サトルからは聞いてはいたが、まさか高校でも続けていたとはな。小さい頃からフットボールばかりさせて、ちっとも女の子らしいことをさせてやれなかった父をゆるしておくれ」
「パパ、いいのよ、あたしフットボール大好きだから。でも・・」
「うん、わかっているよ。サトミはわたしの大事な「娘」なんだ。よかったら、これを穿いてみてくれないか?サイズが合わなかったらごめんな」
大佐は、なにやらプレゼントを渡した。勝利のプレゼント兼・クリスマスプレゼント。
「なにかな・・・」
「あ、これは?」
それは、可愛らしい高級ブランドのミニスカートだった。
「ちょっと恥ずかしかったが、所用でロンドンに出張した時買っておいたのだ。サトミも16歳。思えば学校の制服以外でスカートを買ってあげたことが一度も無かったと思ってな。それに、西本から聞いたが、おまえ・・・」
「パパ、ありがとう!早速穿いてもいい?」
サトミは、上は体操服、下は短パンのままだったが、そのスカートを穿いてみた。
「パパ、似あう?」
「ああ、とっても似あうよ。」
拍手と歓声が巻き起こる。そしてサトルも微笑む。
「おい新島・・・鼻血でてるぞ」
「えっ!イヤー、恥ずかしいなぁ福沢君」
「そういうキャプテンこそ勃起してますよ」
「頼伸、お前はどうなんだ?」
「ボクは大丈夫だけど・・大森さんはほら」
「ハハハ・・」
「サトミ・・おめでとう。よくに似あうよ。ところで父さん・・・ボクには?」
「すまん、お前の分はない」
「・・・」
一堂爆笑。
「さーて、今日は南武高校全国高校アメリカンフットボール大会優勝と、クリスマスと、それから、サトミちゃんのMVPを祝して、盛大に盛り上るわよ!せーの、メリー・クリスマーース!」リコが、切り出し、楽しいパーティが始まった。
数年ぶりに再開した、親友・西本と東。
「西本・・・サトルとサトミが世話になっているな。礼をいうぜ」
「東・・水臭いぞ。ボクたちの仲じゃないか。サトルくんもサトミちゃんも、わが子と同じに思っているよ。それにしても、サトミちゃんは本当に偉いよ。男の子でも音を上げるうちの練習、いつも元気よく先頭を・・・。大きな怪我はなかったけど、全身傷だらけ。嫁入り前の大事なキミの娘さんを・・。ごめん」
「いや、お前がいてくれたからよかったよ。だから俺も、安心して海外に赴任できるんだ」
「それにしても、飯田監督、いつまでもお元気で何よりだ。」その飯田監督はサンタに扮してプレゼントを振舞っている。
「それが・・こないだ一度倒れたんだ・・・。もう73歳。心配だな・・・」
「お前がついているじゃないか」
「ああ。」
一方、サトルと安東。
「サトル・・・覚えているか?おまえが4年生でこっち(関西)に戻ってきて(サトルは、父の仕事の都合で、横須賀市生まれ(海軍病院)、川崎在住→幼稚園神戸(アメフト始める)→小2・3米国(アメフト続ける)→小4〜6神戸(元のチームに復帰)→中学から川崎に戻る、高校からは父親はラバウルに単身赴任という生活)俺が主将で、チェスナットで大阪代表を破って優勝したのを。俺はお前が神学館にあがってくるのを待っていたが、関東に帰ってしまった。だか敵としてでもまた同じグランドに立てて嬉しいぜ。そしてお前の挑戦、いつか必ず受けてみせる。俺も絶対NFLに行く。そのときが本当の勝負だ」
「安東さん!」目を輝かせるサトル。
こちらはマネージャーたち。
「わーい、ごちそうだぁ!」
「ちょっとあんたたち!はしたないわよ。まず先輩や選手の皆さんに取り分けてからよ」
「まあまあ静香・・・今日ぐらいいいじゃないの!さあ、あんたたち、遠慮なく!」
「もう玲子ったら・・あまやかしちゃって・・」
「足りなかったら、千佳の作ったのもあるのよ」
「あっ、チカねえの作ったやつのほうが美味しそう♪」
ささっ
「あっ!ドロボー!」
大介が千佳のケーキを横取りしてしまった。ところが
「大ちゃんのはこっちよ。さあ返してあげなさい。あーんして」
「リコ姉ぇ!」
「あーっ羨ましい・・」
こちらは武田と玄田。
「武田!このワシに負けないパワーランナーは、おぬしが始めてよ。ワシは初めて、ライバルを得たぞ!礼をいう」
「フっ玄田さんこそ・・。俺が服部さんを抑えられたのも、玄田さんのおかげっす。正直、玄田さんのほうが手ごわかった」
「それはない。お前が成長した証拠だ」
武田と玄田は、チームを超えた、パワーランナーとしての師弟関係が生まれていた。
そのとき、剛の怒号が!
「おい貴様ら!コソコソ隠れてないで、こっちに来い!」
「ゲっみつかっちまったぜ!」
「あんたがつまみぐいしようとちょろちょろするからよ!」
「おい鈴木!あいつらを連行しろ!」
「オス!」
「さあ、キャプテンの命令だ!こっちに来い!」
ラインの主力の1人になった、鈴木タケシだ。
「あっ!お前たちは!」
そう、剛の命令でしょっぴかれてきたのは・・・
吉本工業高校主将・島田と、マネ長・麗菜だった。
「お前たちも、一応関東大会を競ったライバルだ。ここで一緒に喰う資格はないことはない。遠慮なく、喰え!」
「旦那・・・」
「バカ、さあ、こっちこっち!」
麗菜に手を引かれ、みんなの輪に入っていく島田。だが周囲の目は冷ややか。しかし、麗菜は動じない。
「フっ。あいつら、なんだかんだいっていいカップルじゃないか・・・」
しかしさすがの麗菜も、咥えていた煙草は取り上げられてしまった。
そこに、なにやらドアのほうから合図をするものがいる。
「紳の字、紳の字・・」
「ゲっ!徳男!それにサブにシローにブー子!お前たちどうやって?」
「それより、俺たちにも何か食わせてくれ・・・」
「あら、西山さんたちだわ。お兄ちゃん」
ジロっ!ひびる西山たち。
「フっ。今日は目出度い祝いの日。貴様らにも、おこぼれをやるか。」
「恩にきるぜだんなぁ・・俺たち朝から何も食ってないんだ・・・」
西山たちは、会計のガン子を拝み倒し、こだまと在来線の乗り継ぎで島田たちを追ったのだったが、試合には間に合わなかった。それも切符が足りず、三郎と四郎はボストンバックに入れて荷物として連れてきたのだ。本当は西山も荷物になりブー子を小学生料金にして持たせるつもりだったが、2メートル弱・100キロ強の西山が入れるかばんが無く断念したのだった。
「徳男、監督とガン子も来ているんだろう?」
「ああ、一緒に(一応4人で、三郎四郎は荷物扱い)来たんだが・・競艇に行ってしまった」
「まあ、監督はとてもここにはこれないだろうな」
「そりゃぁ、俺だって正直居心地がわるいが・・食い物のにおいにゃかなわんぜ」
「ガン子が一緒なら・・帰りの切符代は何とか稼いでくれるか。ブサイクだが金の面では頼りになる奴だぜ。」
吉本のメンバーはこうしてなんとか食い物にはありつけたが・・・来るのが遅かったのと、みんなの恨みを買っているためか、喰いカス、残飯のようなものしか食えなかった。しかし日頃酷いものしか食べていない彼らにとっては、これでもご馳走なのであった。(小学生のかじったうまい棒を取り上げて食べたりスーパーの試食や食堂の蝿のたかった日替わり定食の見本などを盗んで食べている)だが、麗菜は・・・
他の一般女子(報道、マネージャー、チア)たちと、何食わぬ顔して談笑しながら、美味しいものをたらふく食べていた。やはり、美人は得なのか・・・・。
そして、やはり主役はなんと言っても・・・
「サトミちゃん!サインして!」
「サトミちゃんと一枚!」他校の生徒や、南武の一般生徒たちが群がる。
てれるサトミ。
「さあ、サトミ!おまえはMVPなんだ。堂々と胸をはって!」
「そうよサトミちゃん」
「え〜宴もたけなわでは御座いますが、ここで今日の主賓・・本大会MVP・南武高校の東サトミ選手にひとこと!」
「ワーイ!「ヒューヒュー!」
ぱちぱち・・・大拍手。
「えーと、なんか何言っていいかわかんないけど・・・オレは・・いやあたしは、別に賞が欲しいとか、優勝したいとかじゃなくて・・・フットボールが大好き!これからもずーっとだよ!」
大拍手が巻き起こる。
「よし、俺たちのアイドル・炎のジャンヌダルクを胴上げしようぜ!」
「おおおーーーぅ!」
一回、2回・3回・・・・何度ももみくちゃにされて胴上げされるサトミ。敵も味方も、男も女もない。ここに集まった全員が、サトミを称えた。そしてみんなが誰も思っていること。形ややり方は違っていても・・・
みんなサトミが大好き!そして、フットボールが大好き!
真っ赤なユニフォームに真っ赤な闘志を燃やし、男の子顔負けの活躍をする女の子・東サトミ。彼女は今、幸せだった!
炎のジャンヌダルクに、幸あれ!
第一部完