第19話 特訓!目指せクリボー!
負傷者続出、大激戦ののち、姦計を以って関東のアメフト界を制そうとした吉本工業高校の野望を打ち砕き、見事優勝を果たした武蔵体育大学付属南武高校鎧球部「ゲーターズ」!月刊アスリートでは増刊号を出して、これまでの軌跡を紹介した。
大巨漢・西本剛、若き天才・東サトル、そしてジャンヌダルク・東サトミのことを、関東でアメフトを知る者のなかで知らぬものはいなくなった。当然、ファンも。
だが、東兄妹は、吉本工業高校の西山から激しいタックルを受け(サトミは、さらに島田と、女子マネの麗菜からも攻撃を受け)、打ち身のため治療を受けていた。
「ギャーーっ!みゆっ、しみるぅーーーっ!」
「がまんしてねサトミちゃん・・?こらっ!パパはあっちでサトル君を見てあげて!」
「もうパパったらぁ・・」
「オレ気にしてないけど・・・。それにしても島田の野郎、こんなところに爪立てやがって!」なんと、サトミは島田にフッパンをずり下ろされた際、マンコに爪を立てられ、その敏感なところまで負傷していたのだ。そのため、女の子であるみゆきが治療していた。(医者の娘で、医学部を目指してはいるが、無免許診療である・・・バレたら大変)
それだけでなく、西山のタックルで左肩、麗菜の足払いで右足首を捻挫していた。
運命のクリスマスボウルまで1月!一日も早い完治が望まれる。一方のサトルは幸い軽症だった。
傷が一足早く良くなったサトルは、主将・剛の部屋に呼ばれた。
「サトル!傷はもう大丈夫か?ところでこのビデオを見ろ!」
「はい。ボクはもう大丈夫ですが、サトミの奴がまだちょっと・・・。」
「うむ。これは、神学館の試合だ。」
「あっ、安東さん!」
「おまえ、安東を知っているのか?」
「はい、ボクが小学生の時チェスナット(関西で行われている、小学生の防具つきタッチフットリーグ)のキャプテンでした。やっぱり神学館に・・・」
「そうか。コイツのテクニック、知性、スピードはお前と通じるものがある。今、こいつが神学館のキャプテンだ。そして・・・」
画像には、他にも凄い選手がたくさん映っていたが、安東のほか、さらに3人の凄腕がいた。
「安東を含めたこの4人は、層が厚い神学館で両面でフル出場している。名づけて、「神学館四聖人」という!」
「四聖人?」解説しよう。四聖人とは、そもそも、大ブリテン及び北アイルランド連合王国(通称・英国)を守護する、基督教の聖者のことなのだ。英国は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国が連合して成り立つ国だが、イングランドの守護聖人を「聖ジョージ」、スコットランドは「聖アンドリュー」、ウェールズは「聖デビッド」そしてアイルランドは「聖パトリック」という。その四聖人になぞらえられるのが、神学館の、安東竜(アンドリュー)、服部緑郎(パトリック)、田所譲司(ジョージ)、そしてハーフのデビット関根(デビット)の4人だったのだ。彼らは、攻撃では「ユニオンジヤック」、守備では「グランドクロス」という、超絶連携技を使って、関西では向かうところ敵無しだった。
「安東さんも凄いけど、他の3人も・・・特に服部さん、あんなに大きいのに!」
「ウチでは、俺様がいるからライン勝負だけは神学館のデーターを圧倒しているんだが、バックスが弱いんだ。しかも、西山と玄田に潰されて、出られない奴が8人もいる。」
「サトミは間に合います!」
「うーん。女のサトミが果たして通用するか・・。それにあいつを入れてもあと1人、当りの強くて俊敏なバックスが欲しい。欲を言えばあと2人、いや3人・・・」
「そんなに?ボクは入っていないんですか?」
「もちろん、お前が入ってくれれば間違いない。武田は当確だ。だがお前は大切なQB。守備や、連携で倒れられると困る。馬場が間に合わないのが痛い・・・。」
「丘君は?」
「おお、あいつか・・・。少しもの足りんな。それにもう1人欲しい。」
その頃。リハビリを終えて、用足しに学校に戻ったサトミは、思いがけず、佐藤に会った。「オッス!よっちゃん!」
「やぁサトミちゃん。」
「ところでよっちゃん・・・何持ってるの?」
佐藤義信は、アメフトのキャリーバッグのほかに、なにやら大きな風呂敷と、とてつもなく長い物体を持っていた。風呂敷の中には、ヘルメットのようなものが入っているようだ。
「これから、稽古に行くんだ」
「何の?」
「薙刀さ」
「へぇ〜薙刀って、あのよく大奥とかの腰元が持っている〜あれ、男の人もやるんだ」
「そうなんだよ。サトミちゃんはよく、『女の癖にアメフトなんて!』と言われてるけど、ボクも小さい頃から『男の癖に薙刀なんて』と言われてたんだ。だからキミの気持はよくわかるんだよ。でも、薙刀が女性専用の武器になったのは江戸時代になってからで、それ以前は、たとえば弁慶のように、大男も使っていたんだ。それに江戸時代だって」
「でもさ、なんでまたそんな難しそうなのを?普通の剣道じゃダメなの?」
「僕も、やりたくてやっていたわけじゃないんだ。だけど僕の家は、東北地方のある小さな藩の家老の家柄で、それと同時に薙刀の師範でもあったんだ。合戦とか、ふつう騎馬武者とか、鉄砲隊とか、槍とかを思い出すだろうけど、もし負け戦になったとき、城に雪崩込んで来た敵から奥方や姫を守るのは、家老の薙刀だったんだ。だからその誇りにかけて、継承者を絶やしてはならないとおばあちゃんが。父さんが跡を継がず公務員になってしまったので、僕が継ぐことになったんだ。」
「へぇ〜こわそうなばあさん」
「怖いなんてものじゃないよ。みんなに安達が原の鬼ばばと呼ばれているんだ。」
「でもさ、なんで福島から出てきて、それもアメフトを?」
「実は薙刀の競技人口は極端に少なく、まして男子の指導をしてくれるところはないんだ。でも、鎌倉にお住まいの、細川隆斎提督(地球防衛軍初代総司令官、元首相)が、稽古をつけてくれるし、武蔵体育大学には薙刀部がある。それに、せめて高校3年間だけでも、なにか違ったスポーツをしてみたいと思って、田舎から出てきたんだ。」
「よっちゃんはえらいね!そういえば、吉本戦、よっちゃんのデビュー戦だったね!」
「うん、サトミちゃんやサトルくん、それに武田君みたいに上手くはないけど、僕なりに頑張ってみたよ。」
「もっと頑張ろうよ!」
「そうだね。」「バイバイ♪」
そして、5日後、打倒神学館の、激しい練習が再開された。
「サトミ、もう大丈夫か?」
「うん、あたしもう大元気。ね、みゆ♪」
「ええ、もう大丈夫よ」
「よし。これでキッカー確保と。」
その前に、ミーティングルームで神学館のビデオを見せた。
「うウッ!これが噂に聞こえたグランドクロスか!」
みんなは、その派手な技に、驚くばかりであった。
そして、その対抗策をあれこれ考えていた時・・・。
「西本〜!」
「お前は!」
京王の主将、福沢だった。
「対神学館の特訓やるって聞いてさ、俺たちで役に立てることがあったら!」
「俺たちだと?」
「オス!」
「お前は玄田!」
「それからうちの高橋と大森だ」
「ハーイ、福沢君たちはあたくしからの贈り物よ〜」
「リコさん!」
福沢「そうなんだ。リコさんから事情を聞いて、いてもたってもられなくなって・・。俺たちが、「仮想・四聖人」になってやるよ!本当は新島も来たかったみたいなんだけど・・奴はまだ歩けないんだ。」
「福沢!」
「水臭いぞ西本!お前たちは、俺たち関東の代表なんだ。相手が神学館であろうと、勝ってもらわなくては。」
玄田「そうだな。それに福沢、おぬしは去年のクリスマスボウルで神学館に負けた借りをこいつらに返してきてもらわなくてはならぬからな」
サトミ「へぇ〜、あたしら福沢さんの借金の取立て人かぁ〜」
一堂爆笑。
改めてビデオを確認した後、京王の3人+玄田を仮想・四聖人に見立てた、激しい特訓が始まった。しかし、仮想ではあっても、この4人は凄かった。なにせ本来、京王は昨年の覇者。今年も最激戦地区・東京を1位で通過した強豪なのだ。もし、吉本工業高校の島田と西山の汚い反則タックルがなく、万全の体調で試合をしていたなら、いかに大巨人・剛と大天才・サトルを擁する南武でも、勝てたかどうかはわからなかったのだ。そして今日、福沢も高橋も大森も、ベストコンデションだった。加えてあの玄田。
玄田「ワシはおぬしのとこの選手、4人も潰してしまったからな。罪滅ぼしをせんと。」
剛「俺様こそ、お前を3人がかりで潰して、自分を卑怯者と思ったよ」
玄田「いや、あれはワシとおぬしの一対一だ。それで負けたのだから悔いはない」
剛「玄田・・!」
仮想四聖人に、南武のラインバッカー、ランニングバック、タイトエンドなどのポジションが出きる選手が4人一組で当った。だが、どうしてもダメだった。
「もう少し、間合の取り方の上手い奴がいれば・・・!まてよ?」
「義信!お前、前からラインバッカーやりたいと言っていたな?」
「はい。」佐藤義信は、オフェンスラインの選手だった。
「よし、お前、今日からバックスに転向だ!」
「えっ!今からですか?」
「そうだ。聞くところによるとお前は、薙刀の家元だそうだな。そして薙刀は、打ち物でありながら、相手と間合をとり、しかもフットワークも大切だ。この勝負に、そのお前の力を借りたい!」
「ありがとう御座います主将!でも誰から?」
「ごめんなさい。わたしがサトミちゃんから聞いたのをお兄ちゃんに・・・」
剛「よし、武田、義信、丘、・・そしてサトミ!お前たちでやってみろ!」
「ハイ!」「任せろ!」「やってみます」「チョロイわ!」
そして、この4人がやってみると・・!
「おお、思った以上だ。義信はラインバッカーに向いていたんだ!」しかし・・。
「ダメだ・・・。これでやっと互角、やや弱い。これでは四聖人には通用しない・・」
新たに才能を見出された佐藤、そしていまやサトルと並ぶ2枚看板にのしあがった万能ランナー、武田、この二人は、剛の予想以上に働いてくれた。だが、実力のやや劣る、丘と、女の子の上、怪我から復帰したばかりのサトミのところが特に弱かったのだ。
そのとき
「主将!相手が4人だからといって、ボクたちも4人の必要はありません。ボクも入れてください!」
「サトル!お前まだわからんのか?お前は大切なQBなんだぞ!」
「もちろんです。でも福沢さんも新島さんも、そして安東さんだってQBのはずです。それに・・・!見たところ、サトミが穴です(こんにゃろっ!と睨むサトミ・・・)ボクとサトミは双子、体は2つでも、本来1人の人間なんです。だから、5人で4人とカウントして、やらせてください。サトミと相互にカバーし合えば、ボク本来の負担も減ります」
福沢「サトルくんのいうとおりだ。やらせてみよう」
「よし、やってみろ。だがくれぐれも無理をするな。お前がつぶれた時点でうちは負けだ。」
リコ「あら西本君。それはないでしょ。南武高校の大黒柱・大巨人西本剛が、味方のエースQBを敵に潰させるものですか!」
「うう、たしかにそうだった・・」と恥ずかしそうな剛。
そしてその結果は!
「おおおおっ!この手ごたえだ!」
福沢たち4人の攻撃を、ひらりとかわしてブロックした5人。
「よし、このユニオンジャック破りを、ペンタフォースと名づけよう!」
「おお、ペンタフォース!」
「次は、グランドクロス破りだ!」
もう、日が暮れた。水銀灯が点灯される。そして、月が満点の空の中央に昇ったとき・・
「やったぞ!」
「よし、これをムーンライト・エクスプレスと名づける!」
「やったなサトルくん」
「いいえ、ボクはなにも・・・。信彦君、丘君、義信君・・・そしてこいつを褒めてやってください」
「サトルったらぁ」
「サトルくんは本当に偉いな。西本、お前は本当にいい後輩たちに恵まれたよ」
その頃、吉本の部室では・・・
「おお、もう退院したんか?」
「ああ、寝てられないよ。」
「それにしても、全治1週間が、3日で治っちまうとはな」
「しかしよぉ、紳の字!あの、サトミっていうねーちゃん・・・!ゴツゴツとしてたけど、あっこだけはしっとりと柔らかかったなぁ。オレ、マジで犯りてぇよ」よだれをたらす西山。
「そうだなぁ・・。ワイなんて栗つまんでやったで。そしたら「ヒィ」なんて声出してよぉ・・」
「帰りにでも待ち伏せして、本当に犯っちまうか?」
「グヘヘ・・・」
ところが!
「パシーっ!」「バコっ!」
ちょっと紳一ぃっ!あたいって女がありながら何さ!お前なんかこうしてやる!
なんと、麗菜は島田をボコボコに往復ビンタして押し倒し、下を脱がせて上に乗り、いきなり始めてしまった。
「おおっ、姐さん、オレにも」
「黙れタコっ!誰がお前みたいなブサイクに!」思い切り顔面に蹴りが!
「あの、あのね、副キャプテン・・・わだすでえがったらどうぞ」
「おお、ブー子!お前は気が利くなあ!じゃあ遠慮なくやらせてもらうぜ」
ブー子、本名山田信子は、吉本工業高校のマネージャーの1人で、荷物運びと、部員、特に西山の性欲処理を担当している、チビでデブの女の子だった。顔ははっきりいってブサイク(絶対我慢できないほどではない)が、気持が優しく、そして何より性欲が旺盛だった。
こうして、南武高校のメンバーが、京王と旺盛の主力の力を借りて打倒神学館の特訓に明け暮れていた頃、吉本の部室では、乱交パーティが始まっていたのだ。
「おお、やっとるな。ワシも混ぜてくれへんか」
モック監督も加わった。だが、モック監督が手を出そうとしたガン子(田島岩子)は、ジェンダーのような堅い女で、顔も一番ブス(見るに耐えない、醜女の見本)だった。「監督!訴えますよ!」
「わりぃわりぃ。じゃあ、これやるさかい、堪忍な」
ガン子は、性的なことには頑固だったがお金にはがめつかった。そのため、乱交も外に漏れることは無かったのだ。ほっと安心する監督。
「これ徳男、そろそろわしと代われや」
そして、遠くはなれた神戸では・・・
「アンドリュー、関東は今年は京王じゃないぜ」
「南武って言うたか?あまり聞かへんが、武体大の付属ってことや」
「誰が相手でも俺たち四聖人に勝てるはずがない」
「ソーデスヨ、ミーハゼーッタイヌカレマセンデ」
「おまえたちは幸せだな。」
「どうしたアンドリュー」
「東サトル・・・。そうか、あいつか・・・。小学生以来だな。楽しみだぜ」
待ち受ける神学館・四聖人たちも闘志をたぎらせていた。
そして。
「サトミちゃん・・・。きっと応援に行くからね。それまでになんとか歩けるようにならないと。おやすみ」
入院中の新島はサトミの写真(リコの記事の切り抜きを引き伸ばし、フレームに入れたもの)にキスをして、眠りについた。
いよいよ、運命の決戦の日が・・・