第18話 大勝利!関東制覇!
攻守交替!南武の攻撃!ピッチに入る東兄妹。そしてそれを待ち構えていたかのように守備に就く、島田。その目が怪しく光った。
ハット・ハット・・・・ガチャーン!
激しいライン同士の激突。クォーターバック・東サトルの投げる球は・・・。
だが、すぐに投げない!いや投げられなかった。全てのレシーバーにマークがついている。では、走るか?いや、そうも言っていられない。「殺し屋」こと、吉本工業高校のタックル・西山の巨体が地響きを立てて迫る!この西山の殺人的タックルで、京王高校・福沢、殉教学院・新島、そしてこの試合でも、サトミを庇おうとした馬場が餌食となり、退場を余儀なくされている。そして、西山は相手選手を病院送りにすることに、無常の喜びを感じているサディステックな男だった。審判に判らぬよう、卑怯なチョークをかけることもなんとも思わない。いや、普通に当っただけでもその破壊力は抜群。凶器を使うこともあるが、そんなものが無くとも、彼自身肉体そのものが、「島田という狡猾な男の使う凶器」ともいえる。いかに鍛えぬかれ、また軽快に受身をとれるサトルでも、まともにぶつかっては危険だ。というより既に、サトミを庇ってタックルを受け、受身をとったものの、衝撃が残ったままだった。次に喰らったら、サトルといえども・・・。
突っ込んでくる西山。サトルは最後まで諦めず、周囲を注視した。「!」
一瞬だが、マークが薄くなったところがあった。
「今だ!」
彼は、渾身のパスを投げる!そこで待っていたのは・・・最愛の妹・サトミ!
手を伸ばしインターセプトしようとする吉本の三郎と四郎の手をすり抜け、パスがサトミに通った!と同時に、サトルは西山に激突された。パスを投げた後のQBへのタックルは反則だが、微妙な瞬間。審判の笛は鳴らなかった。西山はどさくさにまぎれて、肘鉄を喰らわして来た。「ウッ!」一瞬苦しむサトルだったが、鍛えぬかれた腹筋により、内蔵の破壊は免れた。しかし、サトルは自分のことより、気になることがあったのだ。
「しまった!ボクの失投だ!」
丁度そのとき。パスをキャッチし、突っ走るサトミに吉本のディフェンス陣が殺到した。だが、また前半のように、鮮やかに跳んで、そのタックルをかわしたかに見えた。だが
「キャーっ!」サトミは珍しく悲鳴を上げた。
「グチャっ!ズルリ」」
なんと、着地と同時に、島田のタックルを受けたのだ。ジャンプと着地の力学が加わり、ダメージは大きかった。その上、その衝撃で、サトミのフッパンは脱げ、シャツも捲れてしまった!そもそも、島田は本来タックルするようなポジションではない。また、体格的にも、女の子であるサトミより若干だが背が低く、筋力もなかった。喫煙者なので持久力も無い。足も遅くは無いが、サトミより遅い。だが何故その島田が、この痛烈なタックルが出来たのか。
審判は、何故か笛を吹かない。なぜなら。
「フフ。紳一ィ♪」吉本ベンチでほくそえむマネ長の麗菜。彼女が持つ細い物体は・・・。
そう、レーザーポインターで審判の目をくらませたのだ。したがって、激突の瞬間を審判は見ていない。線審からも、巨漢選手が目隠しした形となった。
島田は、サトミを押し倒しただけでなく、衝撃でずり落ちたフッパンの中に、手を入れてきたのだ。今までも、殉教・新島、吉本の西山と松山に、フッパンの上から、彼女自身に触られたことはあった。だが今、島田の汚い手が、直接その神聖な場所に!
サトミは、生まれつきクリトリスが大きかった。母親がハーフだったことと、双子だったサトルと密着していたためその男性ホルモンの影響を受けたためだった。サトミの女としての性徴が遅いのも、男子並みの体格もこれに影響されていたところが大きい。そのクリトリスは、試合の興奮からさらに肥大化し、幼児のペニスほどになっていた。その最も感じやすいところを、島田に摘まれてしまったのだ。さすがのサトミも、悲鳴を上げたのだ。
しかも、サトルは遠く離れた場所でクラッシャー・西山に倒され駆けつけることが出来ない。この一連の動きは、全て島田が寸部の狂いも無く計算し、そのとおりになったものだった。つまりわざと、一瞬サトミのマークを外し、パスを受けさせ、サトミの運動能力と性格を計算し、最初のタックルを、迂回ではなく、飛び越えることを予測し、その飛び越える力学をも利用して、非力な自分でも確実に倒せるように待ち伏せ、しかも、「女」の部分を弄ぶことにも成功したのだ。恐るべし、島田!この一連の動きは、実はわずか数秒。我に返った審判や、敵味方選手が気付いたときには、すでにしらじらしく、島田は離れ、サトミも服を直していた。
だが!天は南武高校を見捨ててはいなかった。線1本分ではあったが、サトミの倒れた位置は、攻撃権クリアしていた。そう、誤差の範囲だったが、唯一島田の計算が外れたのだ。引き続き、攻撃することができる南武。
「クソっ!ままええわ。次の策があるわい」苦笑いする島田を睨みつけるサトミ。
だが、島田の卑劣なセクハラは、他の者には、よくわからなかった。客席からは丸見えなのだが、よほどの性能のカメラか望遠鏡でなければ、はっきりとしたところまでは見えず、またほんの一瞬の出来事ゆえに撮影は難しかっただろう。
一方サトルは・・「嗚呼、ボクのミスだ・・・」
前半に露呈したことだが、体力・技量・頭脳・走力・耐久力が満点で、しいていえば体格不足から当りがやや弱い程度(それも、主に攻撃担当のため問題なし)の、ほぼ完璧なプレーヤーと思われていた東サトルには、致命的な弱点があったのだ。それは、妹のサトミを庇うあまり、彼女が極度のピンチに陥ると、我を忘れて取り乱してしまうことだった。自分自身に降りかかるピンチは、どんな困難でも頭脳とテクニックで克服するサトルの、たった一つの泣き所、それがサトミだったのだ。
サトミは、体力・走力・センスともに、並みの男子を大きく上回り、体格もさほどのハンデはない。むしろガッツと、フットボールに対する愛では、男子部員を圧倒しているところもあった。今までの実績もある。だから、彼女はレギュラーとして、南武高校のチームに受け入れられ、起用されてきた。だが、いかに外見も能力も男子に近くとも、彼女は男子ではない。あくまで女なのだ。その、女としての弱点を衝かれたとき、意外な脆さを露呈するのだ。いや、彼女自身の脆さよりも、そのことが天才のはずの兄・サトルを無力化してしまう。そしてそれこそが、東兄妹をアメフト界から抹殺しようとする、島田の陰謀だったのだ。
だがそれを見抜けぬ剛ではない。すぐさま、サトミをベンチに引っ込めた。気をとりなおしたサトルは、見事立ち直り、武田の活躍もあり、このチャンスをものにすることが出来た。だが、島田に酷い仕打ちをされた上、剛によって下げられたサトミは大不満・・・。
一方、2度の西山のタックルを受けたサトルも、試合での疲労も加わり、ダメージを隠せなくなってきていた。他の選手たちもみなそうだった。だが、剛を中心に、吉本の攻撃をシャットアウトし、試合は膠着状態になった。
そして迎えた最終クォーター。
「主将!やはりサトミを入れないと,点が取れません。ボクももう、取り乱したりしませんから、サトミを使ってください!」
「ダメだ!敵(島田)は、明らかにサトミを女と判って、わざと責めていることが判った以上、もうサトミを使うことは出来ない。いや、これからは試合では使えなくなってしまうかもしれん・・・。」
「そんなぁ!あたし触られたって倒されたって気にしてないよ!」
「黙れ!俺様だって悔しいんだよ!」
「何故、女に生まれたのだ・・・。」
ハドルの時間はあっという間に過ぎる。試合は再開された。同点のまま、タイムアップが近づく。延長戦か?
「ピピーっ!」
審判の笛が鳴った。あっ、副キャプテンの土井が倒れている!
交替は避けられない。しかし、旺盛と吉本との試合で、南武高校は怪我人続出。守備の選手は残っているのだが、走れる選手、レシーバーとか、ランニングバックとかは、もう・・・
そのとき、飯田監督が初めて立ち上がった。そしてサトミの肩に手を乗せた。
「サトミくん・・・。任せてもいいかな?」
「監督!」
「サトミちゃん!」みゆきたちも大喜び。そして、残り5分・・・。
サトミは再び、グランドに戻ってきた。
「サトミ!」
「サトル!キャプテン!オレは女じゃないよ。絶対負けない!だから・・・絶対パスを!キャプテンや信クンは、絶対タックルを止めて!オレ、絶対この試合決めてみせる!」
「サトミ・・・!」思わず妹を抱きしめるサトル。
「アホ。また出てきおったな。徳男、最後はお前だ。犯れなくて残念かもしれないが、殺れ!これはな、キャプテンとしての命令や」
「紳の字!腕が鳴るぜ!」
「ハッハ・・・」
そして、南武高校最後の攻撃が始まった!サトルは、走った。サトミも、鈴木も、佐藤も、丘も、そして信彦も走る。南武のランナーたちが、一つの火の玉、そうチームカラーの燃える火の玉となって、エンドラインに走る!しかし、吉本のタックル陣が迫る!だが炎はぱっと散ったかと思うと逆にそのタックルを次々と受け止める。そして、最後にサトルとサトミだけが残った。そして、立ちふさがる敵もただ1人・・・。そう、「殺し屋」西山徳男、背番号69番。殉教・新島の選手生命を絶ち、京王・福沢を倒し、この試合でも馬場と土井を病院送りにし、サトルをも傷つけたタックル専門・破壊王が兄妹に立ちふさがる!
ガーン!鈍い音がした。西山のタックルが、決まった・・・かに見えた!だが、もんどり打って倒れたのは・・・西山のほうだった!そのまま突っ走るサトミ。だがそこで審判の笛が鳴った。
まさか、殉教のときのように、サトミの反則を取られるのか・・・。
いや、そうではない。サトミのタックル突破自体は認められ、西山が倒れたのは、タックルの失敗とみなされた。では何故・・・。そしてタックルをはじかれたにしては、妙に痛そうな西山!では、その瞬間を、特別に解説しよう。
ボールを持ち突進するサトミに、一旦は西山のタックルが決まった。西山のヘルメットは、サトミの鳩尾に食い込み、その手はパンツを掴み、ずり降ろした形となった。普通なら、ここでやられたほうは失神するだろう。だが、なんと胃液を吐きながらもこの激痛に耐えたサトミは、ボールを放さず、西山の股間に思い切り蹴りを入れたのだ!本来なら、両者とも悪質な反則であるのだが、一瞬の出来事に、単にサトミが西山の、2倍(サトミ60キロ、西山110キロ)の体重を跳ね除け、突破したようにしか見えなかったのだ。では何故審判は・・・。
そう、ずり降ろされた途中のフッパンのまま、思い切り蹴ったため、またしてもフッパンが破れてしまったからなのだ。もちろん、このダウンは認められる。たが、試合継続のため、着替えが必要になった。ところが・・・困ったことになった。なんと、1試合で2枚のフッパンが破れてしまったため、替えがないのだ。補欠や控えから借りようにも、サトミは小さく、体格が違いすぎて他の選手のものは借りられなかった。審判と、飯田監督がなにやら相談している。
そして飯田監督はベンチに戻った。みゆきが何かを手にしている。着替えのため一旦ベンチに戻ったサトミに、みゆきはその物体を手渡した。みゆきは、試合中だというのに、スカートを穿いている。
「サトミちゃん・・・これわたしのだけど・・・」
なんとそれは、ブルマだった。更衣室は遠いので、サトミ自身の着替えを持ってくるのはたいへん、そこでたまたまスカートを(チアに着替えるための道具として)ベンチに持ってきていたみゆきの穿いていた、ブルマを着用して試合に出ることが「特別の事情」により認められた。
一方、西山は白目を剥いて痙攣し、担架に乗せられて退場して行った。今まで、数多くの男たちを壊してきた邪悪な男の、みじめな退場であった。
「新島さん、福沢さん、土井先輩、馬場先輩・・・仇はとったよ!」
スタンドでも「よくやってくれた、南武!」福沢も声援を送った。
さて、本当に最後の最後の攻撃。
「さあ、あたしたちも負けないで元気よくキックよ!」リコ率いる、チアたちも元気よく応援した。それを見たサトミは、閃いた。
「キャプテン!サトル!お願い!」
「おお、もう残り時間はないし、どのみち次の得点が決勝点だ。我々にはもう延長を戦う体力は無い。よし、あとはもうお前1人に任せるしかない。俺様たちの出番は終わりだ」
「サトミ!」
サトミが選択した戦術は・・直接ゴールポストをキックで狙う、フィールドゴールだった。
失敗すれば一巻の終わり。だが、途中敵に妨害されること無く、短時間で得点できる唯一の手段であった。サトミの最も適正のあるポジション・・・それはキッカーだった。それを見抜いたのは、剛だった。
サトルは、慎重にボールを立てた。そして!
「スポーン!」心地よい響きとともに、ブルマを穿いたサトミの綺麗な足が高々と上った。と動時に、青空に吸い込まれていくボール。それは、今、白いポストを、通過した!
審判の両手が上る。そして次の瞬間、笛が。
「ピーーーーーー!」
試合終了!本年度、全国高校アメリカンフットボール選手権関東地区優勝は、神奈川県代表・武蔵体育大学付属南武高校「ゲーターズ」と決まった!万雷の拍手。
抱き合うサトルとサトミ。バンザーイ、バンザーイ!
その頃、吉本工業ベンチでは・・・「アホ。これでワシの賭け金もパーや。だがな」
「どないしました監督?」
「ウッシッシ・・・実はな、2位の場合でも元だけはとれたんや。それにな、個人記録にも掛け金があってなぁ・・・お前も西山も、ようやってくれたわい」
なんと、試合を賭けの対象にしていた横山監督。負けて丸損と思いきや、2位の場合でも元が取れるように仕組んだ上、個人記録のほうの賭けで大もうけしていたのだった。これにはさすがのワル・島田も脱帽した。「さすが監督や・・・」
「島田、来年こそワイを億万長者にしてくれな」
壮烈な試合は終わった。だが、まだもう一試合・・・そう、最強の敵・神戸神学館高等部との、クリスマスボウルが残っている。だがサトルもサトミも、そして仲間たちも傷ついていた。
さあ、いよいよ最終戦だ!負けるなサトル!がんばれサトミ!