第13話 殉教再び!新島の挑戦!
厳しく、そして激しい神奈川県大会を勝ち抜いた南武高校。特に、旺盛二高の機関車人間・玄田との死闘・・・・。そして倒れた老将・飯田源蔵。誰もが傷つき、疲れ果てていた。
だが、これはまだ登山で言えば6合目。いよいよ関東大会だ。
東京1・2位、神奈川1位、埼玉(千葉・茨城含む)1位の4チームによる総当りで優勝したチームが、関西代表とクリスマスに激突するのだ。
今年は、神奈川はわが南武。
東京1位は、名門・京王高校。2位は、横山監督を迎えてから急速に強くなった吉本工業高校。そして埼玉は、爽やかで敬虔なクリスチャンの新島率いる、殉教学院だった。
そして南武高校の初戦の相手は、5月の練習試合で対戦した、殉教だった。
試合に先立ち、おもいがけず主将・新島の訪問を受けたサトル。
「サトル君。僕と賭けをしよう。僕が勝ったら、サトミちゃんとデートさせて欲しい。」
「えーっ!なんでボクに聞くんですか〜?サトミの奴男の人になんて興味ないはずなんですけど・・・」
「フっ。男の子に興味がないだと?だからサトミちゃん本人じゃなく、キミに言うんだ。」
「?」
「まだわからないのか?サトミちゃんはキミのことが好きだから、男の子に興味がないんだ。でも、そんな彼女を僕は好きになってしまったのだ。もちろん、だからといって試合では遠慮しない。キミたち兄妹を全力で叩き潰す!」
「・・・。でもボクたちクリスチャンじゃないし・・・。新島さん、牧師さんの子なんでしょ?」
「ハハハ。サトル君も気が早いなぁ。なにも1度デートしただけで将来の結婚なんて。それとも1度でもデートしたら、キミの妹さんは僕に釘付けになるとでも?」
「こらーっ二人で何言ってるのよ!」
「ゲ・サトミ・・・!聞いてたの?」
「聞いているも何も、オレはモノじゃないんだし。新島さんもどうしちゃったのかな。
でもいいわ。負けたらデートしてあげる。」
「それじゃあ」
「バカね。こっちが絶対勝つって自信あるから受けて立つんじゃないの。そうね・・こっちが勝ったら、クリボーに応援に来てね。」
「そんな・・・。どっちが勝ってもまだ京王と吉本が残っているのに・・・」
「サトルくんらしくないな。じゃあ賭けは成立だ。試合で会おう」
「・・・あの人変わったなぁ・・。敬虔なクリスチャンだったのに賭け事だなんて・・・」
「あたしが可愛いからでしょ。」
「え?」
「パチーン」殴られるサトル・・・。
そして試合の朝が来た。
整列!
コイントス、先攻は南武だ。
もうすっかり正QBとして定着したサトル。1年では、サトルのほか、サトミと、武田もスタメンに定着した。武田はサトルのような華はないが、上背があり、パワーのある、ちょうど旺盛の玄田を小さくしたタイプの選手で、入部当初から期待されていた。
それに加え、今日は丘も出ている。旺盛戦で、同じポジションの2年、馬場が玄田に潰され、入院してしまったからだ。元々2年生が少ないこともあり、1年の出番も多い。
ハットハット・・・ガシャーン
今日も不動の大国柱・西本剛の壁が敵の侵入を完璧にブロック。
サトルは、ゆうゆうとパスを出す。1度の攻撃で前に投げられるのは1回だけ。
あとはバックパスか手渡しになる。その絶妙なパスは、サトミではなく、武田に通った。
サトルーサトミのホットラインは、見抜かれているからだった。武田は、まるで玄田のように突進し、次々ダウンを奪う。丘も負けていない。武田の進路を掃討する。タッチダウン!1年生では3人目の得点だ。あわてて武田にマークが集中する。となると今度は、サトミさまの出番。早くも2タッチダウンを挙げた。
「キミたち!南武の主力は1年だぞ。だらしがない!」
新島の檄が飛ぶ。
サトルの攻撃は続く。武田(RB)、サトミ(WR)、丘(TE)の1年カルテットの活躍は、殉教を圧した。
だが、今日初めてスタメン起用された丘は、まだ緊張しているところがあった。
「あっ!丘君!」
なんと、絶妙だったはずのパスを、新島にインターセプトされてしまったのだ。
サトルが、武田が懸命に追うが、そのまま新島は独走タッチダウン。
「見たかサトル君!今度は僕の番だ!」
それから新島の頭脳的な攻撃がはじまり、あっという間に逆転されてしまった。
「交替だ!」
「丘君、気を落とすな。後半またがんばろう」
丘は、すっかり気落ちしてしまった。
そしてハーフタイム。
「主将!後半、また丘君を出してください。僕に考えがあります。」
「丘、サトルがこういっている。行けるな!」
「ハイ!」
そして後半が始まった。
流れは殉教にある。
「ねえサトル・・・やばいよ。このままじゃアタシ・・」
「絶対勝つ見込みあるってたのは誰かな?いいか、丘君と一緒に突っ込むんだ。そして僕と信彦君(武田)は外から追う。そして向こうが突っ込んできたら、組換え。判ったな?」
「あ、そうか・・・。丘君もあたしたちと体格が似ているし」
「そういうこと。いつも二人でやるあれを3人でやるんだ。それに信彦君が援護してくれる。主将と違って、ラインじゃないからすぐに動けるし。」
「僕たち1年の力を見せてやろう!」
「オウ!」武田と丘も張り切る。
後半は、殉教ボール。新島のパスは正確だ。そして他の選手たちもすごい。チームワークは完璧。なぜなら全員中等部からの仲間だからだ。
鮮やかなダウン!
「おいサトル!あれをやるしかないな!」
「了解!」
サトル・サトミ・丘の3人は、まるで機動戦士ガンダムの、ジェットストリームアタックのような3身一体攻撃をかけた。成功だ!敵は味方同士で衝突、こぼれた球を武田が拾う。そこで武田は倒されたが、ここから攻守交替だ。大成功!
「味なマネを!よし、僕も本気を出すぞ」
新島も青い炎を燃やした。
そして、一進一退の攻防が続く。
だが、3身一体攻撃は2度は通用しなかった。丘のタイミングが悪かったのだ。
そして練習試合のときと同じく、1タッチダウン差殉教リードのまま最終Q!
正攻法に切り替えたサトルは走る、走る・・・。駆け寄るサトミ。サトルの手から、サトミへと手渡されたボール。だが、サトミを徹底マークしていた新島。
新島の鬼神のようなタックルが迫る!ガシャーっ
倒れる選手。だが、それはサトミではなかった。
「丘君!」
脚を引張ってきた丘が、サトミにタックルしようとする新島の前に割り込み、楯となったのだ。本来、この楯の役をするのもTEの仕事の一つ。
その間にサトミはタッチダウンを決めて、キックも決めた。そして試合終了。
「丘!よくやったぞ。今日一番の殊勲は、おまえだ!」
西本主将に褒められる丘。だが、新島の激しいタックルで全治2週間、次の試合には出れそうにもなかった。
「みんな、丘のためにもクリボーに出るぞ!」
「おーっ!」
そして試合後・・・・。
「負けたよ。サトル君。でもまだ判らない。もしかするともう一度当るかもしれない。それまで勝負はお預けだ」
「はい、新島さん。」
堅く握手する二人のQB。
「丘君って言ったかな。彼も妹さんのこと好きみたいだな。失敗を取り戻すためだけなら僕のあのタックルは止められなかったと思うよ」
「よくわからないけど・・・。サトミって持てるんですねえ・・・。ボクはあいつ見ても鏡みてるのと同じで、なんとも思わないんだけど・・・。」
「ハハハ。贅沢だな、キミは」
こうして初戦はなんとか勝利で飾ることが出来たのであった。
それにしても新島はイイ奴だった。