第12話 危うし!老将飯田監督倒れる!

「何!監督が!」

「ご隠居!」「先生!」

心配して駆け寄る選手たち。もはやハーフタイムの作戦どころではなかった。

「心配ない。軽い貧血だ。しかし先生も御年。大事をとったほうが良い。先生には私とみゆきがついているから、みんなは試合に集中したまえ」

スポーツ医学の権威・西本がそういうのだから,いのちの心配はないのであろう。だが選手たちの精神的支柱になっていた飯田源蔵が倒れたのは、ショックが大きい。しかも今、試合は圧倒的不利な状況にあるのだ。

だが。こんなときこそ、主将の存在感が重要になってくる。

「うろたえるな!俺たちは必ず勝つ!先生もそのように指導してきたはずだ。サトルっ!ちょっと耳を貸せ・・・」

「・・。」「はい!」

「みんなにも言っておく。試合はまだ半分も残っているんだ。しかも、今度はうちの番だ。

今のうちにガンガン点を取って、とりまくるんだ。とられたら取り返せ!わかったな!玄田のランも凄いがオレ様のタックルのほうがもっと凄いことを思い知らしてやる。」

「ハイ!」

その間、チアリーダーによるハーフタイムショーが繰り広げられた。ところで、その中になんとサトミも混じっていた!僅かな間に着替え、ショーが終わったらまた武装して戦うのだ。なんとも忙しい・・・。

 

そして後半が始まった。今度はこっちの番とばかりに、サトルの技と頭脳が冴え渡り、大逆襲を開始した。得点がどんどん詰まっていく。ウソのように追いついてきた。

「勝てる!」誰もがそう思ったとき、旺盛が選手交代を申し出てきた。

「玄田だ!玄田が守備にも出てきた!」

しかし南武側は、指揮官の飯田源蔵監督も、参謀格のチームドクター・西本も、才媛・みゆきもいない。玄田恐怖症にかかってしまった南武メンバーたちは動揺した。

だが!

「サトル・サトミ!いよいよだな!」

「ハイ!」「まかせて!」3人だけは元気が良い。

そして、いよいよ守備に出てきた怪物・玄田との大決戦だ。

QB・サトルは投げない。走る、走る・・・。

そこに、玄田が突進してきた。玄田は速い。そして素早い。だが、サトルもまた然り。その場合、現に球を持っているほうが有利。そのためサトルも玄田に追いつけなかったのだ。しかし攻守逆転。それでも玄田は速い。しかし瞬間、身をひらりとかわし、その瞬間、ボールはサトミの手に渡った。サトルはバランスを崩したが体勢を立て直してサトミを追う。それを、やはり一度はサトルに突っ込みバランスを崩した玄田が追う!三人とも速い!特に、一旦つまずいたとはおもえぬ玄田の迫力ある追跡に、東兄妹が追いつかれてしまうのは数秒後だ!大ピンチ!だが二人のうちどちらがボールを持っているかわからなかった。

そのぐらい頻繁に手渡しで進んでいるからなのだ。あと少しでファーストダウンが奪える。あと10歩!だが、そのとき無情にも玄田の120キロの巨体が二人を押しつぶした!かに見えた!

「ガツーーン!」今までになく大きな衝撃がおきた。何が起きたかさっぱりわからない。ざわめく観客。だが何故か審判は時計を止めない。なぜならサトルがボールを持って走っているから。

 しかしあの衝撃は?まさかサトミがペシャンコに?

いや、サトミもサトルと一緒に走っている。では!

なんと、ペシャンコになったのは玄田だった。そう、サトルとサトミは、二人で入れ替わりながら玄田を翻弄し、あらかじめ剛を待機させていた地点まで誘導し、タックルされる瞬間にすばやく散ったのだ。勢いよく剛にぶつかった玄田は、もんどりうって倒れた。

 その間、サトルはタッチダウン!

担架が入る。玄田は動けない・・・・。退場だ。しかし誰も重くて運べない。結局6人がかりで運んだ。

 玄田を失った旺盛は、選手の層が厚いはずなのにかっかりペースを乱され、結局このプレーがきっかけになって、南武は大逆転勝利、神奈川県を制した。そしてついに、関東大会に進出を決めたのだ!

 「旺盛は、選手層が厚かった。だが、あまりにも玄田が素晴らしい選手だったため、だれも自力で活路を見出そうとするものがいなくなってしまった。みんな玄田さえいてくれれば勝てると思っていたからだ。いいか、選手一人一人が、自分が主役だと思わなくては勝てない。これは飯田監督の口癖だったな。よし、みんなで先生に報告に行くぞ!」

「オー!」

かくして、南武高校は奇跡の逆転劇で強豪・旺盛二高を破り関東大会進出を決めた。圧倒的不利、指揮官不在の中、キャプテン西本剛の強力なリーダーシップと、東兄妹をはじめとする1人1人の踏ん張りが奇跡を呼んだのだ。幸い、飯田も意識を取り戻した。関東大会の指揮も執るという。


飯田源蔵監督

 

「サトル!ごめんね・・・」

「どうした?」

見ると、サトミがつけていた、防具のショルダーの、強化プラスチックと金属の複合材が割れている。

「サトルのショルダーって、あたしのと違ってたんだね。ほら、ここ」

サトルとサトミはおそろいの防具をそろえていたが、サトルは独自に補強を防具当番の際にしていたのだ。自分の体型の微妙な成長に合わせて。

「もし、あのとき玄田にやられたのがサトルだったら・・・」

「いや、いいんだよ。ボクのものはお前のもの。お前のものはボクのものじゃないか。防具の修理は得意なんだ。気にしなくていいよ。でも・・・・」

「どうしたの、にやけて・・」

「お前のチア姿、似あってたよ!正式にチアになったらいいのになって!」

「もうサトルつたら!あたしはこっちがいいの!」とメットを指差す。

「ははは。それもそうだね!」

双子の兄妹は心のそこから笑いあった。

強敵・旺盛を倒して関東大会に駒を進めた南武。しかしその前には、玄田よりもさらに恐るべき敵が待ち構えていることはこのときはまだ知らない・・・。

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