第3話 合宿・そして初陣!対殉教学院!

バスが山道を急ぐ。南武高校アメフト部員たちを乗せて。行き先は那須野の合宿所だ。ゴールデンウィーク返上の合宿。不満を唱える部員はいない。なぜならみんな大のフットボーラー、フットボールに全てを賭けているからであった。

「ついたぞ!」

「え!まだあんな高いところに・・・・」

「バカモノ。ここから全力で駆け上がるのも練習だ。」

「さ、監督とマネージャーはリフトで」

なんということだ。駐車場から合宿所まではさらに山道を駆け上がらなくてはならない。だが!

「おっ先〜ほら、サトル、行くよ!」

先頭に飛び出して駆け上るのはサトミだった。他の部員たちも彼女の勢いに押されて元気よく登って行く。しかしその背には重い防具や器具を入れたバックも背負っている。これは最初から大変な試練だった。

 それにしても入部から1月、サトミはすっかりみんなのムードメーカーとなっていた。

そして、激しい合宿が始まった。ぶったおれる者も続出するなか、サトミとサトルはがんばった。そして55日。埼玉県代表の、殉教学院クルセイダーズを迎えての練習試合。

1年でスタメンに選ばれたのは、サトルとサトミだった。

「新島、よろしく頼むぜ」

「西本君こそ、お手柔らかに。」

南武高校ゲーターズVS、殉教学院クルセイダーズの練習試合。両主将、西本剛と新島潔が固く握手する。

 先攻は、南武だった。

「ハット・ハット・・・・」

センター西本の力強いスナップ。これが1年ながらこの試合、スターティングQBに抜擢された天才児東サトルに渡った。

「ガツーン!・ガシーン!」ぶつかり合う巨体と巨体。そしてボールをもつサトルに殺到する敵のタックル陣。だが、素早くかわしたサトルは、とんでもないところにボールを送った。天才とはいえ、所詮は1年、敵の猛烈なタックルを恐れての失投、と誰もが思った。だが、誰もいないはずの空間に、赤い矢が飛んできた。

それは、サトミだった。まるではじめからそこにボールが来ることが判っていたかのように、ガッチリとすんなりキャッチした彼女は、そのままタッチダウン!鮮やかな先制点だった。舌を巻く殉教の選手たち。

「おい君たち、あの二人は先月高校に上がったばかりの1年だ。負けちゃいけない!」(それにしても東サトル君・・・うちに欲しかった選手だ・・・)

 サトルに驚嘆しながらも、選手を励ます新島。そして、さすがは埼玉で最強の殉教、あっというまに追いついてきた。しかしサトルも、マークされはじめたサトミを囮にして自ら走り込んでタッチダウンしたり、一旦先輩QBで別のポジションに入っている選手にボールを戻し、自らがサトミとWレシーバーとなってのショートパス戦術などでぴったりと追いつき、一進一退の攻防が続いた。新島はサトルを徹底マークした。なぜなら攻撃・守備とも自分と全く同じポジション。このままでは選抜の際のポジションを2歳年下の悟るに奪われてしまうからだ。サトルも、手本ともなるこの敵チームの先輩に、ライバル心と尊敬の眼差しを向けていた。

そしてハーフタイム。

「お兄ちゃん、すごいわ。うちのほぼ全得点をサトルくんとサトミちゃんが挙げてるわ。それにおにいちゃんもサック決めた!」

マネージャーのみゆきも大喜び。その頃殉教ベンチでは・・・・。

「僕達には天なる父の加護がついているんだ。練習試合とはいえ負けられないぞ!」

すると賛美歌にも似た殉教の応援歌が聞こえてきた。

負けじと南武も応援歌を大合唱。そしてついに後半が始まった。

こんどは、ぴたっと点が入らず、第3Qは両軍無得点。そして運命の最終Q

開始数分後、サトルからサトミに、この日一番のパスが通った。

このまま行けば、同点、キックが決まれば逆転である。サトミは駆けた。それを追う両軍の選手たち。

 そしてついに、新島が追いつき、タックルをかました。

「ガシャーン!」防具の激しくぶつかる音。両者とももんどりうって倒れた。怪我はないか?駆け寄る両軍の選手たち。だが新島は、今までフットボールをしてきて、経験したことない不思議な感触を感じていた。

「まさか・・・。」

そう、わざとではない。だが、タックルに入った新島の腕は、サトミの股下から胴を掴み、引き倒した。そのとき、勢いあまって股間をぎゅっと掴んでしまったのだ。このようなことは良くあることだ。そのため選手たちは、股間には頑丈なファールカップを入れている。もちろんこのようなケースはまだマシなほうで、時にはスパイクで股間を蹴り上げられることだってある。その場合、例えファールカップをしていても、衝撃でしばらく動けないことがあるほどなのだ。しかし、新島の感触は硬い強化プラスチックのカップではなかった。もっと柔らかく、そしてしっとりとした生々しい感覚だったのだ。


サトミに、新島のタックルが決まる!だが!

「東くん、き、キミは・・・・・!」
股間の感触からサトミを「女」だと知ってしまった新島は動揺を隠せない。自らが倒したサトミを優しく抱き起こして詫びるも、サトミは気にせず、試合の続行を望むのであった。

「東君。き、君は・・・。」

自らが倒したサトミを優しく抱き起こした新島。その驚きは隠せなかった。

そう、サトミは女の子で、その大切な部分を、こともあろうに握り潰してしまったのだ。その活躍ぶり、体型、短髪からはちょっと判らなかったがサトミはまぎれもない女の子。そして女の子であるがゆえ、ファールカップはつけていなかった。激しい動きに食い込んだフッパンには、くっきりと割れ目が浮かび上がっていた。

「ごめん、わざとじゃないんだ。許して欲しい。」

ほおを赤らめながら詫びる新島。

「なーに、いいってことよ。それより時間が勿体無いから試合試合。ダウンは奪ったから、ここからまたウチの攻撃だよ♪」気丈に答えてウインクするサトミに、集まってきた両軍の選手たちもほっと胸をなでおろした。

そして、ここから後のサトルとサトミは誰も止められなかった。

特に、新島は明らかに自らのペースを見失っていた。新島は牧師さんの子で潔癖で純情。事故とはいえ、女の子のあそこを揉んでしまったことで気持が浮つき、雑念から抜け出せなくなってしまったのだ。しかし新島も意地がある。最後の力を振り絞ってサトミにタックルした。確かな手ごたえがあった。だが!サトミの腰から、するりとフッパンが抜け落ちた!

サトミはそのまま見事タッチダウン。

その後のキックも決まり、そこで試合終了。南武が殉教に勝利したのであった。

整列する両軍の選手たち。

「シターーーっ!」ガッチリ握手する両主将。

「西本君、秋の大会が楽しみだね。それにしてもいい選手をそろえた。」

「フっ。お前こそ、埼玉・千葉・茨城(SIC地区)予選如きで落ちるなよ。次に会うときは関東大会準決勝だ!」

 そして新島は、東兄妹に寄って来た。

「サトミちゃん・・・。君が女の子だったなんて、本当に知らなかったんだ。許してほしい。そしてサトルくん、これからも妹さんを大事に。そして選抜の正QBは君には渡さないよ。」

「はい、新島さん。でもボクも盗ってみせますよ!」

「まあ、気にするなよ。アタシ自分のこと女だって思ってないから。遠慮されると余計に困るんだよね。次当る時も思いっきり当ってきてね♪」

 「ああ、二人とも次に当る日を楽しみにしているよ」

 

「サトル・・・。あの人、いい人だね。」

「うん、同じQBとして尊敬できる人だ。」

兄妹は、敵とはいえ、爽やかで潔癖な新島に、好意をもったのであった。

こうして二人のデビュー戦は、勝利で飾られた。

二人の活躍はまだまだ続く。

だが・・・。

この試合を1人の女が見ていたのだ。

「この娘だわ。この子しかいない・・・。」

女の目が怪しく光る。一体・・・。

次回をご期待ください。


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