42話 狙われた遠足(後)
「キャー」
宇宙ハリガネムシの攻撃で、形勢逆転、縛り上げられ大苦戦する由香!その首に宛てられるカマキリンダの鎌!
だが、そのカマキリンダの呼吸も荒い。なぜなら、ハリガネムシが分離した蟷螂は弱ってしまうからだ。まさに、命がけの逆転技なのだ。
「覚悟!」
由香は失神した。
一方、残された先生や珠美たちにも悪の魔の手が!
「はいな、わてはゴキブやん!あんさんらをとっつかまえろってワルモナイト様の命令や。覚悟しとき!」
なんと、ゴキブラーの弟の、ゴキブやんが現れたのだ。
「キャーーー」絶叫する哲子先生と女生徒たち。
だが!
「やっぱり現れたわね悪の虫けら!わたしたちが相手よ!レッド、ブルー、イエロー、グリーン、行くわよ!」
「おう!」
「レッツ・バルディ!」
珠美たちはバルディレンジャーに変身した。
拍手が巻き起こる。
「さすがタマちゃんだぜ♪まさかこの退屈な遠足でショーが見れるとは思わなかったぜ」
「ヒューヒュー」
クラスのみんなは、「またタマちゃんの戦隊ごっこがはじまったぞ」ぐらいにしか捉えていなかった。
しかし、ゴキブやんは本物の昆虫怪人であった。
また、姿がゴキブリのため、先生や女子は気持悪がったが、男子たちは、
「そういえば隼人の奴がいないぞ。あの着ぐるみに入っているんだな」
と捉えていた。
だが、ゴキブやんは、正真正銘本物。
粘着油と触覚で次々縛り上げられる生徒たち。
「今度のタマちゃんは凝ってるなぁ・・」
縛り上げられてなお、そのように捉える者たちも多かった。
「こら、ゴキブリおばけ!お友達を離しなさい!行くわよレッド、攻撃よ!」
(ブルー=遠藤)待ってくださいリーダー、それではクラスのみんなが巻き添えに」
「大丈夫だわ。バルブレラの力を信じるのよ」
「よし、オレに任せろ」
「では僕も。慎重に・・・」
たちまちゴキブやんを追い詰めるバルディレンジャー。
「おんどれ、舐めたまねを!ほな、こんならどうや!」
「キャー」
まず珠美が捕らえられて胸をまさぐられ、助けようとした他のメンバーも・・・。
口から吐き出した粘液と伸縮自在の触覚攻撃で、バルディレンジャーの5人は全員木に貼り付けられてしまった。
大ピンチだ!
「助けて隼人君、姫〜」
だが、隼人と由香もそれぞれ苦戦中だった。
互いに息切れしてエネルギー切れ直前になりながらも、上になり下になって格闘を続ける隼人と2世。
そのとき2世の上半身の亀裂が深まり、中から怪しい光が見えた。
「しまった・・・バルディバン!俺の角を折って、一思いに心臓を貫いて殺してくれ!」
「何を言うんだ2世、勝負はまだだ!降参した相手の介錯は御免だ。戦って勝負をつけるか、又は逃がしてやるかのどちらかだ。負けた相手に止めを刺すのは僕の流儀に反する」
「ちがうんだ・・・・見ろ、オレの体を・・・」
「う、これは?」
「奴だ・・・ワルモナイトの野郎が、オレたち昆虫人間の天敵、宇虫冬草をいつの間にか・・そうか、あの作戦会議のときだ・・・
俺はもう長くない。この宇宙毒キノコに寄生された昆虫人間は知性を失って凶暴化して狂い死にするしかないんだ。
頼む、オレの意識があるうちに、この忌まわしいキノコに乗っ取られないうちに・・・」
「わかった!」
だが、一瞬遅く、宇虫冬草は2世の首を押しのけその醜悪な姿を現し、襲い掛かってきたのだ。
キングビートル2世の強靭な肉体はそのままに、全く知性のない戦闘マシーンと化した宇虫冬草!
「おのれワルモナイト!2世、貴様は俺に寄生していたことがあった・・・。いわば俺の弟のような存在だった。種族は違えども、戦いが終れば良き友になれると思っていた。その2世を・・・。くらえ、バルディソード・串焼き斬り!」
「うギャーーーー」
声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちる宇虫冬草。あくまで本体の心臓が止まれば、肉体は動かなくなってしまうのだ。
また、地面や動物など、宇宙昆虫人以外には寄生できないため、宇虫冬草の活動は停止した。
「念のため・・・」隼人は2世の心臓を焼ききったが、更に剣から炎を出して念入りに焼き払い、自らも苦しい息の中、穴を掘って遺骸を埋めてやった。
「成仏してくれ2世。仇は・・ワルモナイトは必ず倒してみせるぜ」
そのとき、ふと振り返った。
2世との激しい格闘で気づかなかったが、すぐ後ろで由香がカマキリンダに縛り上げられ、鎌でめった斬りにされていた。すでに意識を失っている由香だが、バルディニウム合金製のそのボデイはカマキリンダの鎌といえども致命傷は与えられなかった。
「おのれ虫けらめ!由香ちゃん、今助けるぞ」
隼人はよろめきながらも剣を杖代わりに立ち上がり、ハリガネムシを切断して由香を助け出した。
「は、隼人くん・・・。キングビートル2世さんは?」
横に首を振る隼人。そして、隼人もまたエネルギーが尽きようとしていた。
一方、、カマキリンダもハリガネムシを失い衰弱。
彼女は弱弱しく叫んだ。
「あんた、あんた〜どこいるんだい、今すぐ来て〜」
「ワシならさっきからここに居たが」
「ああ、あんた、覚悟はいい?」
「そうか・・ついにそのときが来たか・・・」
この男は、小さくて細くて弱弱しい姿をしているが、こうみえても四天王の上位にある、昆虫軍団参謀長のカマキリッキーといって、昆虫軍団の地球攻撃を立案していた者であり、カマキリンダの夫でもあったのだ。
そして、カマキリ夫妻は、絶体絶命のピンチになると・・・。
「あんた、早く入ってきて!」
「・・・・。」
カマキリ夫妻は交尾を開始。と同時に、カマキリンダはカマキリッキーを上と下の口から同時にバリバリと食べてしまった。
すると、むくむくと巨大化したではないか!
そう、彼等夫妻は、♀が交尾しながら♂を食べることによって合体巨大化するのだ。
「隼人君、わたしたちも合体よ」
「うん、行くよ」
「バルディ・クロス!」
隼人と由香は合体してバルディスターになり、巨大カマキリンダと対決した。
その頃、珠美たちも絶体絶命。
しかし、突如黒い影が。その黒い影はゴキブやんとは違いスマートだった。
「だらしないぞお前ら!」
「あ、あなたは!」
「なんやあんさんは!後から来て何しなはる!これでもくらえや!」
ゴキブやんは謎の戦士にビームを発射した。
だが、謎の戦士はバルブレラをとっさに広げた。そして、叫んだ。
「おいバカ!教頭のヅラをとれ!」
むっとする永田だが、言われるままに教頭のヅラをとった。するとどうだろう。
発射されたビームがバルブレラで反射され、それが教頭のハゲ頭でさらに反射されてゴキブやんに跳ね返った。
「ウギャーーーーーー」
怯んだゴキブやんのどてっぱらに強力パンチ。
「うわーーーーっ」大穴が開くゴキブやん。
「あんさんの名は?」
「俺は悪党に名乗る名前はないが・・冥土の土産に教えてやろう。俺は、バルディブラックだ」
「うう、バルディブラック・・・」
「おい、バカとブスとメガネとデブとのろま、何ぼーっとしてやがる。さっさとジャスティスブレークでそいつを焼け。焼かないと生き返るぞ!」
「ジャスティス・ブレーク」
バルディレンジャーたちはバルブレラを「正」の字に組み合せて放った。
「ばいなら〜」断末魔の叫びとともに崩れ落ちるゴキブやん。
「バルディブラック、貴方はやっぱり番長ね。でもどうして?番長たちのクラスは別の山のはず・・・」
「俺はサボっていたんだが、ドクター若松っていオッサンが無理矢理黒い傘を渡して、ここに来て先公を助けろって言うんでな。
「それじゃ、段田君、キミも僕らの仲間に?」
「おい、遠藤、お前だけはちっとは頭いいと思っていたが勘違いするな。知っての通り俺はラグビー部の主将だ。もうすぐ大会が始まる。だからお前たちの戦隊ごっこに付き合っている暇はない。だが、赤点を持っていると出場できないことも知っているな。しかし、善行表彰されれば単位が認められることになっている。どこで聞きつけたか若松のオッサンが英語の先生が悪党に襲われていると教えてくれたから助けたまでだ。
俺はこれからも、自分の身を守るためとすもも園の仲間を助けるためなら戦うが、貴様等と一緒になんかやってられるか!」
「ひどいわ番長」
「フ、何とでも言え。俺はバカと女に指図されるのが何より嫌いなんだ。あばよ!」
「べーーー、だ!」
そこにいつの間にかドクター若松と細川博士が。
「間に合ったか・・・。しかし段田君の強さは想像以上だ。ブラックスーツは試作品で普通の人間が着たら骨がバラバラになってしまうものだが・・・やはり使いこなしてくれたようだ。口ではああいっているが、照れているだけだ。タマちゃん、これでバルディレンジャーは6人だ!」
「ホホ、ワシの作ったものは常に勝つのじゃよ、ハッハッハ」
「何よ、発案者はわたしよ」
仁子は不機嫌。
細川博士は確信した。
「よし、これで安心して隼人と由香を宇宙に送り出せる。1月に出発できるよう、今から準備だ」
「先生、お騒がせしました。由香の叔父です。後日先生に重大なお話がありますので」
「主人から薄々は伺っております。そのお話はおそらく主人にもかかわりの深いこと。でもあたくしも教育者にして武人の妻です。何も恐れることはありません。」
「先生・・・」
哲子先生は以前のヒステリックな性格が変り、より知的で冷静、かつ母性のある性格になっていた。それは、その胎内に宿った新たな命によるものであった。後日先生に今までの全てを打ち明けた細川博士と七海少将。
その頃、巨大戦はあっけなく片付いた。
愛と奇跡の結合を果たした隼人と由香の前に敵はなく、そのエネルギーも無尽蔵のため、巨大カマキリンダ(カマキリクイーン)は真っ二つに引き裂かれて絶命した。
「ふう・・・手ごわい相手だったぜ。冬を前に焦る気持はわかるが、昆虫軍団もこれでおしまいだな」
「それにしても、キングビートル2世さんは可愛そうだったわ。許せないわねワルモナイト!」
「ああ、あいつが居る限りこの宇宙に平和は訪れないんだ。畜生!」
分離した二人が語り合っている時である。
突如、一瞬暗闇につつまれ、光った。
「呼んだかね、加藤隼人君。」
「あ、貴様はワルモナイト!」
「ハハハ。光栄だなぁ、覚えていてくれたのか。まあ、今日は君達に感謝の意を評しに来たのだよ。ムハハハ・・・」
「何!」
「いやー、美味かったよ、宇虫冬草の串焼きは。宇宙最強の昆虫人のエキスに加え、バルディニウムまで含んだ滋養たっぷりのな。
おかげでワシの肉体もあと僅かで甦ることができるよ。いやー、感謝感謝!」
「なんということだ・・」そのとき、一瞬ガイコツのサイボーグであるワルモナイトが生身の人間の姿に光った気がした。
「それに、ワシの探していた伝説の武器、カマキリクイーンの鎌も手に入った。
お嬢さんは知っていると思うが、ワシは以前、バルボン将軍のクソ爺からゴールデンハンマーを奪い取った。
実は、あの時もはじめから、お嬢さんではなく爺のもつ武器が目当てだったのだよ。ハハハハ・・・」
「何ですって!」(7話参照)
「これでワシの目指す宇宙同時革命に100歩前進だ、礼を言うぜお二人さん。ガッハッハハ・・・」
「待て!」
「無駄だ、無駄だ・・・ハハハハ。さらばじゃ」
「畜生!眼の前の敵を倒しても、結局ワルモナイトを利することになるなんて・・・。」
「隼人君・・・。」
ついに明かされたワルモナイトの野望の正体、宇宙同時革命とは?
そして、勝っても負けても、どちらに転んでもワルモナイトに利していたという今までの戦い。
隼人も由香も、騎士も海軍も獣人も超人も怪人も、そして昆虫軍団や海底師団も、全てワルモナイトのの野望の手のひらの上で踊らされていただけだというのか・・・!
だが、それでも戦わなくてはならぬのが隼人、お前の定めなのだ。そして、由香、キミの愛だけが隼人を助けられるのだ。
続く。