第29話 星空の誓い
高校三年生、最後の夏休み・・・。隼人と由香は、遂に憧れの宇宙に飛び立った。
そこではスペースラガーボーグと戦艦イセキダーの妨害に遭遇しながらも、「先輩サイボーグ」である香織の指導と協力の下、隼人と由香は宇宙用サイボーグとしての機能を果たしていることを見事に証明した。そして隼人の両親と細川博士、そして香織と耕司の夢だった外宇宙への雄飛の可能性を示したのである。宇宙から見た地球は青く美しかった。そして無限に広がる世界に隼人と由香は思いを馳せる・・・。
そして地球に無事戻った二人だが・・・。
クラスメイトの永田たちと、思い出作りに、キャンプに行くことになった。
「キャー♪、ひ姫ったら・・なんでブルマなの?」
「あら、いけなかったかしら?だって由香、おてんばするときはいつもブルマなのよ。だって動きやすいんだもん・・・。それに、ちゃんとスカートも持ってきたの。向こうに着いたらちゃんとスカート穿くわ♪」
駅に集合した隼人、由香、永田、珠美、仁子、遠藤の同じ班の仲間たち・・。そして出発、となったそのときである。
「待ちたまえ諸君!」
「あ、博士!」
「未成年の男女が、野外で宿泊というのは実にけしからんことだな。こう見えて私は民生委員でもある。その立場からこのキャンプは許可できないな」
「もう叔父様ったら!」
「フフ。わたしたちが引率すれば問題ないってことよ♪」
「姐御!」「香織さん!」
要するに、おいてきぼりは許さないということであった。
「叔父様ッタラ・・過保護なんだから・・ぷんぷん」
由香はムットしたが、電車は鷹尾山に向かう・・・。
本当はもう1組、いずみとプラドも誘ったのだが、軍人であるプラドの休暇は許可が得られず、元々テントの定員は8名であったので問題はなかった。
そして、都会の喧騒を離れた大自然・・・楽しいハイキングの始まりだ・・・。
コースはほぼ平坦であったが、途中一箇所だけ、急な崖があった。人の背丈よりやや高い程度で足場もあるにはあったのだが・・・。
「キャッ!」
力のない由香は滑ってしまった。
「大丈夫由香ちゃん?」
「大丈夫よ♪そうだわ、隼人君下から推して!隼人君力持ちだし背が高いから・・」
「うん、いいよ由香ちゃん。よいしょっと!」
隼人の逞しい腕に、由香の丸いお尻をつつんだブルマの柔らかい感触が伝わる。
「わーい、ありがとう!」
それを見て勃起した永田は・・
「何するのよ変態!」
珠美のケツを撫で回してビンタされてしまった。
「あーあ、永田の奴惨めだな・・・」
「うふ♪ああみえてあの2人、上手くいってるみたいよ」
「上手くいっているといえば、あっちも見たまえ」
「工藤さん、本当にこんなところにアンモナイトがあるのですか?」
「遠藤君、ここは昔海底だったのよ。ほら、見て!」
「本当だ・・・さすが工藤さんは天才だなぁ・・」
「香織君、よかった・・・。本当によかった。仁子君は偏屈なおじいさんのせいで今まで人間らしさ、子供らしさというものに触れずに、がむしゃらに学問だけに励んできた。だが今は隼人や由香、それにタマちゃんという友達がいる。そして、人間にとって、特に若い女性に一番大切な心・・・愛だ。遠藤君なら、仁子君の高い知的水準についていき理解して支えになってくれるに違いない」
「そうですわね博士・・」
そういう博士と香織も、一段と親密度を増したようである。
だが、博士はめぐみ博士、香織は耕司のことを忘れられずにいた。さらに、博士は独身でありながらスナック・デイジーのママ、梨乃との間に4歳になる娘、エリナを儲けており、毎月養育費と称して梨乃から多額の現金を強請られていた。エリナが博士の娘であることは周囲はもちろん、グロテスターにも知られており、そのために攫われて由香は大ピンチになったこともある。http://megaballer.schoolbus.jp/valdy2008/v_story0007.htm
そのため2人はあと一歩を踏み出せずにいた。
さて、遂に山頂のキャンプ地についた一堂。
「わーい、いい空気。やっほーーーー!」
由香と珠美はおおはしゃぎ。由香はブルマの上からスカートを穿いた。もう山を越えたり木にしがみつくことがないと思ったからである。
「変なの姫ったら」
「だって女性はスカートが正装なのよ。わたしはいつだって自分が女だってことに誇りを持っているわ。出来うる限り女性らしい格好をしなさいとおばあさまにしつけられているの」
「でも何も山の中まで・・」
あきれるみんな。
なお、由香の祖母は、祖父、細川隆斉海軍元帥(兼摂政兼首相兼地球防衛軍初代総司令官)の宿命のライバル、山名宗厳陸軍元帥(兼京都府知事兼地球防衛軍陸軍部初代司令長官)の妹で、世界一の長刀と弓の使い手であった。兄である山名元帥同様、強い意思を持ち、世界一の権威を誇る細川元帥ほも尻に敷く女丈夫であるが、京生まれの古風で慎ましい女性でもある。
テントの設営、水場の確保、飯盒炊飯、仮設トイレの設置を終え、あとは夜を待つばかり。
それまでの間、4組の男女はそれぞれに・・・。
「あっ、カブトムシ見つけた!」
「レッド、取りなさい!」
「はいよ!なんか、珍しい色してるなぁ・・」
「まあ綺麗・・・ありがと♪ちゅ」
珠美は永田にチュツをした。
照れる永田。
「はは、レッドが赤くなった・・・」
「永田君、その虫を見せて!」
「おお、いいところに!工藤ならわかるだろう?これ、外国の品種じゃないのか?」
「外国どころか・・これは・・。」
「あ、何をする!」
仁子はカブトムシを岩に叩き付けようとした。すると、翼が割れてブーンと飛び、大木に掴ったかと思うと、見る見る巨大化した。
「フフ。よくも俺様を殺そうとしたな!貴様等はこうしてくれる!」
カブトムシ人間は、指先から白い粘液を出した。永田、仁子、珠美、遠藤はとりもちのような物質に絡めとられてしまった。
「ハハハ。貴様等はそこで俺様の復讐のショーを見てな」
「バルディバン!出て来い、勝負だ!」
「お、お前は!」
「ハハハ。そうだよ、オレは貴様に殺されたキングビートルの息子、キングビートル2世だ。そして、オレは貴様の分身でもあるんだぜ」
「はっ」
思わず左肩に手を当てる隼人。そう、隼人の左肩に寄生していたあの幼虫が成長した姿が眼の前にいる2世なのだ。
「本当はよ、貴様の肉体を全部食い尽くして人型になる予定が・・貴様がサイボーグだったせいで予定より早く蛹になってしまった。だが、思わぬ儲けモノをしたぜ。オレは貴様の居場所がわかるようになったのだからな。ヨリによって俺様のホームグランドともいうべき山に来てくれるなんて、襲撃の手間が省けたぜ。さあ、さっさと変身しろ!」
「望むところだ。バルディ・チャージ!」
ガチャーン、キーン、ガーン・・隼人と2世は激しい肉弾戦を演じた。
パワーは先代以上だ。3本の角も鋭く強い・・・だが、若さゆえその攻撃は荒かった。
よし、決めるぞ。
隼人の剣は分厚い甲羅を貫いたかにみえた。
「なんということだ・・・」
「言っただろう!俺は貴様に寄生したため、材質が貴様と同じバルディニウム合金なのさ」
「馬鹿な・・・」
しかしそれでも、隼人は優勢に勝負を進めた。そこにおっとり刀でバルディーナ=由香が駆けつけたからたまらない・・。
「待ってたぜハニー♪」
キングビートル2世は隼人との戦いをそっちのけに翼を広げて飛び、由香の背後に回ってその胸を鷲掴みにした。
「キャー・・放して・・・」
「ハハハ・・いい形だ・・俺様はバルディバンに寄生していたから、女の好みも同じなんだ。そういえばお前は、まだ蛹だったオレを助けてくれたことがあったな。益々気に入ったぜ。よし、おまえにクイーンビートル2世の称号を授けてやろう。このオレの分身が貴様の胎内に入ったとき・・・貴様はオレと同じ昆虫人間になるのだ・・・」
「キャー・・隼人君、助けて・・・由香、虫になりたくない!」
キングビートル2世は由香を押し倒し、その股間をこじ開けて幼虫をねじ込もうとした。必死に堪える由香だったが・・・なんと、隼人以外の男を拒む安全装置が働かない。キングビートル2世のボデイが隼人の細胞とバルディニウムY合金で出来ているためだ。
由香の貞操と運命はまさに風前の灯・・。
「今助けるぞ由香ちゃん・・」
「そうはさせないぞ」
「う、なんだ貴様等は・・・!」
「我々はキングビートル2世様に忠誠を誓う、昆虫四天王・・・」
「ワイはそのリーダーの、ゴキブラー様や!」
「私は宇宙の森の音楽家・ゼミナール」
「俺は人呼んで仮面バッター!」
「そしてあちきは紅一点、カマキリンダよ。ウララーーー」
昆虫四天王の妨害で、由香の救援を阻まれる隼人。そしてその間に自らのエネルギーが・・・。
勝ち誇る昆虫軍団。
だが!一筋の光が隼人を、もう一筋がキングビートル2世を貫く。
「わたしのことを忘れちゃいけないわね。」
「香織さん!」
香織のビームは、敵にとっては打撃だが、隼人と由香にとってはエネルギー補給となる。
だが由香のピンチはまだ続いている。
「しかたないわ。最後の手段・・女の武器をつかうか・・」
「ほーら、カブトムシ君、こっちこっち・・」
なんと香織は自ら股を開き、粘液を出した。すると・・・
「うう、どうしたことだ・・体が勝手に・・」
キングビートル2世、ゴキブラー、ゼミナール、仮面バッターは香織に引き寄せられていく。
その間に、隼人は由香を救出、そしてチャージ。
「隼人君♪」
香織は回し蹴りで4体を一気に蹴り飛ばした。
「かかったわね虫けら。わたしはこんなこともあろうかと、あんたたちを引き寄せるフェロモンを発生させたのよ。タマちゃんたちをハエとり紙に粘してくれたみたいだけど・・・こんどはあんたたちの番ね。虫にはそれがお似合いよ・・」
「おのれ・・・」
その間に由香は珠美たちを助けた。
そして、力の強いキングビートル2世だけが自力で脱出した。他の3人はカマキリンダに助けられたが弱ってしまい戦えなくなってしまった。
カマキリンダと香織が戦う。
そして、隼人と2世の第2ラウンドだ。
「キングビートル2世、オレが憎いか?おまえの両親を殺したオレが憎いか?」
「ああ、憎いとも。必ず仇はとってやるぜ。」
「貴様の兄弟たちを皆殺しにしたことも憎んでいるか?」
「いや、そっちはむしろ感謝しているぜ。俺たちはただ1匹の強い♂だけが兄弟を全員殺して親父の跡を継ぐんだ。」
「そうか・・・ならば貴様は本来はキングビートル殿の跡継ぎの資格のない弱虫の卑怯者だったのだな。」
「うっ、何を・・」
「ボキッ」隼人は、2世の左の角をへし折ってしまった。
「本当の勇者ならば、たとえ真実でも、自分の兄弟を蔑んだりはしないはずだ。もし、貴様が運良くおれに寄生できなかったら、多分別の幼虫がお前を倒し、キングビートル2世になっていただろうよ。
それにお前の親父さん、おふくろさんは本当に強い勇者だった。愛し合っていた。
女の子を・・由香ちゃんを弄ぶ貴様に2世と名乗って欲しくなかったぜ」
「何を言う、角はまだ2本ある・・・」
「馬鹿な。勝負はついた。貴様はまだ若い。命を粗末にするな。あとでもう一度勝負してやる。2月後・・9月にこの山で。それまで武人としての心構えを鍛えなおしておくんだな」
「馬鹿な・・・勝負しろ」
そのときである。
「き、キングビートル2世様・・・」
「か、カマキリンダ・・・どうしたのだその傷は・・それにゴキブラーたちは・・」
「それが、あの赤い女サイボーグがことのほか強く・・・野郎たち3匹は奴のフェロモンでめろめろにされて滅多打ちに・・・」
「覚えていろバルディバン・・・約束どおり2ヵ月後に貴様の首を取ってやる」
「よし、覚えておこう」
キングビートル2世一味はボロボロになって退却して行った。
そうして日が暮れる・・。
一味と入れ替わりに海軍のヘリが・・。
「お待たせ!」
なんと、プラドといずみが降りてきた・・。
「七海さんが特別休暇を下さったの・・翌朝までだけど・・・。」
「おじちゃん、粋なことするわね。顔に似合わず」
「顔に似合わなくて悪かったな!」
なんとはるか上空の爆音立てるヘリから怒鳴り返しても聞こえる七海の大声に驚く一堂。
軍艦には「伝声管」というものがあり、それによって鍛えられていたのだ。
日は沈み、真っ赤な夕焼けがあたりを包む・・・
キャンプファイヤーを囲んで踊る10人。
だが、やっと宇宙への目途がついたというのに、まだこの地上にはグロテスターの残党が、そして昆虫軍団がいるのだ・・・。
その頃、細川元帥と山名元帥、平野造船中将、菊本造船大佐らは、火星グロテスター基地を探知し、その攻略に向けた作戦を練っていた。
そして冥王星のグロテスター本部でも、あわただしい動きが・・。
バルディバンが宇宙に進出する力を持ったと取った彼等は、侵略をさておき、彼を地球に縛り付けるため残存勢力を結集して地上攻撃を計画していたのだった。
地球、グロテスターの激しい戦いは果てしなく続く。
負けるな隼人。あの夜空を制するのは君だ。
宇宙への夢と両親の復讐を炎に照らされた星空に誓う隼人であった。
第28話終わり。