第52話 対米戦(その3) 対決!ジョーVSサトミ

 

第2クォーター途中・・アメリカ軍・マッカーサー監督は、選手の交代を告げた。

なんと、エースQBの、「ジョー」をディフェンスに入れてきたのだ。

それは、サトミ対策だった。「ジョー」ならば必ずサトミを止められるとの確信があったのだ。サングラスの奥の目が妖しく光る。

 ジョーの守備位置は、モロにサトミのマーク。

「あ、サトミに敵エースが・・・」サトルはサトミのカバーを考えた。そしてプレー再開・・・。

 

 しかし、日本側レシーバーはサトミだけではない。明らかにサトミ個人を狙ったこの作戦に、サトルは無視を決め込んだ。

 しかし・・・そうは甘くはなかった。

サトミのマークにぴったりついていたはずのジョー・・・。サトルが、彼女を外して他の選手にパスしようとしたのをジョーは見逃さなかった。

屈辱のインターセプト・・・。ここで前半が終った。

 

ジョーはサトルを指差し何か言ったように聞こえた。サトルは「卑怯者!」と言ったように聞こえた。

「うう、なんて奴だ・・・」

アメリカやや優勢で折り返した前半戦・・・。

 

「ようやったお前たち。じゃが、勝たねばならぬ。頼むぞ!」

「ハイ!」

 

ところでジョーの挑戦を受けたサトミは、返り討ちにしてやるぞと意気込んでいたが・・

「サトミちゃん、早く!」

みゆきに手を引かれる・・・

そう、サトミは今日もチアに参加するのだ。

そして、華やかなハーフタイムショーが始まった。

 勢ぞろいした両軍チアたち・・。

アメリカ軍チアはさすがに本場だけあって、肉付きもセクシーさも圧倒していた。

だが「わたし達だって負けてられないわ!行くわよ!」

 リーダーのリコの掛け声に元気良く飛び出す日本側チア・・・


元気一杯のリコ姉さんとサトミ

宏美を中心に・・・。

まなみたん・かなみたんを中心に南武マネたち

関西から参加のなつと、初々しい聖羅・美穂

YMCA娘も華を添える

まずリコ、サトミ。京葉YMCA娘。宏美、四葉たち南武・武体大マネ。今日は、芸能活動の一環としてまなみ・かなみも久々に参加。関西からはなっちゃん。そして初々しい新加入の美穂と聖羅・・・。さらに、なんとバレー全日本代表の、江川由美選手までもが助っ人に来てくれた。

「アメフト部員は大切なお友達だから・・」


バレー全日本・江川由美選手もチアの助っ人に。
美しい・・・。

黒一点・陽一の舞

そして、黒一点・・・陽一もチアボーイとして参戦、女子には難しい宙返りを難なくやってのけた。フツーの女子顔負けの美しさだ。

 

だが・・・

観衆の声援はアメリカに向けられた・・・。

「おお、すげーーーーっ!」


ラングレー4姉妹のチア競演!

ラングレー4姉妹の競演は、日本側及び、他のアメリカチアたちの存在を無にするかのごとき圧倒的存在感があったのだ。

 身長190センチ、バスト120センチのダイナマイトバディの長姉・メグ。

元気溌剌、爆発的躍動感の次女、ジョセフィン。

 清楚で可憐な三女・ベス。そしてぴょんぴょん飛び跳ねる可愛いエイミー。

特に、メグ(マーガレット)は実は全米チア選手権総合優勝経験者(14歳から6年連続)であったのだ。

リコたちが悔しがっても叶わぬ相手だった・・・。

 

だが・・。

 観衆の注目が、今一人の女子に集まった。

「お待たせ!」

「あっ!昨日は絶対やらないって言ってたのに・・・」

「あたしはね、人に負けるのが大嫌いなのよ。アメリカ人ごときに注目を奪われてなるものですか!でも、このあたしが入れば、必ずこっちが目だち、勝つことになってるのよね」

「言ってくれるわね!」

しかし麗菜の言うことに嘘はなかった。これまでも、麗菜の奇跡的活躍・存在感は一発逆転を演出してきた。

両軍チアは全員美女だが・・・。

 その誰よりも麗菜は美しかったのだ。


世界一美しい麗菜のキック

 

「ウッ・・・ナンテウツクシイノダ・・・シカシジャップデハナイナ・・・。ジャップガコンナニウツクシイハズガナイ。ソレニアノカオヤスタイルハドウミテモ白人ダ・・・。黄色イサルノクセニ白人ヲツカウトハヒキョウナ・・・。ダガ・・ホレタ♪」

マッカーサー監督をしてこう言わしめたほどだった。

 

 そして後半開始・・・。

攻守入れ替わって、アメリカチームの攻撃から。投げるのはジョー。

開始前、山名監督はただ黙って大きく頷いた。

「売られた喧嘩は必ず買え」と言っているのだ。サトミは今日初めて、守備についた。

「こうなったら逆にアイツをやっつけてやる!」

「無理するなよサトミ・・」

「うるさいわね!」サトミの闘志は燃え上がる。

そして、投げるジョー。

前半同様、変幻自在。変化球を投げるのでインターセプトは難しい。日本側ディフェンス陣は猛烈に当るが、アメリカ側守備陣に阻まれジョーに近づけない。

 アメリカ軍の陣形はまるで空母機動部隊のような輪形陣になっていて、クォーターバックが完全に取り囲まれて守られているのだ。

 サトルは、サトミの堅い意思を察知し、自らが囮になり敵を油断させた。そしてついに・・

サトミが厳重な警戒を突破した。そして、激突!


サトミはジョーにタックル!

なんと、ジョーの正体はジョセフィンだった!

「あっ!おまえは!」

驚いたのも無理はない。ジョーの正体は・・・。

「ハイ♪サトミ!【ジョー】ハ【ジョセフィン】ノ愛称ナノヨ。オドロイタカシラ♪」

驚くも何も、当った感触、パワー、どうみても女には見えなかった。しかも、朝ランジェリーフットボールでもその豊満な肉体には何度も激突していてその感触は確認済みのはずだったのに・・。

 笑顔で答えるジョセフィンだったが、ダメージは大きく、担架で退場のようだ・・。

「!」

サトミが見たのは、担架に乗せられるときちらりと見えた防具・・・。

 ジョーは、肩から腰まで、完全に男性体型に補正される特殊な防具を着こんでいたのだ。豊満なバストも、縊れたウエストも全て包み込んで。顔も濃いシールドで上半分を完全に覆いつくし、白人であることしかわからなかったのだ。

 ここで流れが日本に変わった。交替した2番手のアメリカQBはパワー・スピード・投球のスピード・体格ともにジョーを上回っていたが、大味であった。しかも、ジョーのことをあんなに必死で守っていたディフェンス陣も真剣ではない。

 そう・・・ジョーこそ、アメリカチームのヒロインであり、アイドルであったのだ。

全メンバーがジョーに惚れていた。屈強の男たち全員が、ジョーのためならたとえ火の中水の中・・という意気込みだったのだ。それはマッカーサー監督も同じだった。

「ジョー!俺様ノジョー・・・!ヨクモヤッタナアノ女・・・」

「ボス・・ワタシハダイジョウブ。スコシヤスマセテ・・・。」

ジョーは、小学生の時から、クォーターバックとしての天性の素質を持っていた。男の子たちの誰もジョーにはかなわなかったのだ。だが、中学でも高校でも、「女」だというだけの理由で、ジョーを試合に出してはくれなかったのだ。そんな彼女はチアをしている姉・メグの紹介でランジェリーボウルに参加、たちまちその中心になっていった。

2人の妹も参加させたが、生意気なエイミーはともかく、おとなしい文学少女のベスは本当はやりたくなかったようだ。

 だが、女相手、裸同然の競技に物足りなさと屈辱を感じていたジョー。

そんなジョーの噂を聞きつけたのがマッカーサー監督だった。

自らも天才クォーターバックと呼ばれた監督はすぐにジョーの素質を見抜いた。そして、反対を押し切って、全米選抜チームの、それも主力QBに据えたのだった。

ジョーは体格も良く、投球は完璧だった。強いて不安要素があるとすれば、それはやはり「女」であるがゆえの守備力不足と、「女」であるがゆえに狙い撃ちされることであった。

そこでマッカーサー監督は、ジョーの上からもう一人のジョーを被せることにした。即ち、胸を覆いつくし、ウエストを2回り太くさせる特注の防具とアイシールドで、女であることを隠したのだ。重くならないよう、重要部以外は金属や強化プラスチックではなく、ウレタンやスポンジで出来ていて軽くなっている。

 そこまでしてでも戦い抜こうとするジョーの姿に痺れないのは漢ではない。選抜チームの全員がジョーの虜になったのだ。

そのあゆみは、あまりにもサトミと似ていた。年も同じ・・・。

そう、まさしく【アメリカ版・東サトミ】であったのだ。しかし公式戦に早くから出場できたこと、双子の兄・サトルの存在など、サトミのほうが有利な面も多かった。

 しかし、練習でも、今までの戦いでも、一時は忘れかけていたジョーの守備力不足。

まさか日本人、それも女の子のタックルで動けなくなるとは・・・。監督の誤算だった。

「アア、ジョーヨヤハリオマエハ女ナノカ・・・」

その意味では、ジョーはアメリカ版・高橋千代であるとも言えた。

 いずれにしても、ジョーや千代のように体格も素質も優れていても、女子が男子に混ざってプレーするのはやはりハードルが高いと言えた。小学校からほぼ全試合フル出場しているサトミの存在は奇跡ともいえた。特に、中学〜高校1年までは、肉体的には限りなく男子に近く、女として目覚めてしまった今では経験とサトルの協力により活躍を続けられていたのだ。

 ジョーは思った。自分にも、サトルのような存在がいてくれれば、と。

 

さて、瞬く間に追いついた日本チーム。劣勢にたたされたことと、ジョーを傷つけられたことに怒り狂ったアメリカチームの怒涛の反撃が開始された。そして、遂に今度はサトミが・・・。巨大な黒人2人のタックルを同時に受け、もんどりうって倒れてしまった。

「サトミ!」抱き起こすサトル。サトミも、一時退場・・・。


黒人2人のタックルをまともに喰らってしまったサトミ・・・

今はサトルの腕の中・・・。

これで両軍とも文字通り野郎だけになった。

 ほぼ互角で迎えた最終クォーター。これを取れば勝負が決まる。まさに一進一退だった。

当初、日本チームをバカにしていたマッカーサー監督も焦りが出てきた。

しかし、ここで思わぬハプニングが日本側を襲ったのだ。

ガチャーン!もう何度目だろう。ゴンザレスの巨体を西本剛が弾き飛ばしたのは。

だが、その倒れたゴンザレスのスパイクで、脚を踏まれてしまった剛・・・。

 「ウッ!」鮮血が迸る・・・。

「お兄ちゃん!」「主将!」

なんと日本は、この重大局面で大黒柱、西本剛を失ってしまったのだ。大ピンチだ!

だが、山名監督は切り札を投入した。

「レイ君、ゴー!」

「ウーーーっ!」

なつがアンドレの尻をバトンで叩く。

人間山脈、牛とほぼ同じ体格を持つ安東零が、ついにデビューだ!

 今まで経験不足とあまりもの危険性から基礎だけを叩き込み練習試合にも参加させなかった零が、ついにアメリカ相手にその巨体を現したのだ。

 

「オオ、デカイ・・ダガソレダケダ」

その言葉どおり、最初の激突であっさり転ぶ零。

だが・・

「レイ君、ウチのバトンを良く見て・・。しっかり落ち着いて、練習どおりよ・・」

なつは、バトン一つで自在に零をコントロールできるのだ。

なつもまた、アメフトを経験したことのある少女だった。しかし彼女の場合、小学校4年ですでに諦めていた。それには2つの理由があった。一つは、サトミや千代に比べ、体格や素質が恵まれていなかったこと。もう一つは、その夢を托せる存在、兄の安東竜と、従弟の零がいたからだ。なつは怪物として忌み嫌われていた零を手なづけ、素晴らしいマシーンとして調教することに成功したのだ。

そして、3度目の激突。

「ウ」


身長263センチ・300キロの安東零・衝撃のデビュー!
身長220センチ・200キロのゴンザレスの首の骨を折って再起不能に・・・。

ゴンザレスはそれっきり動かなくなった。首の骨が折れてしまったのだ・・・。

全治1年・・・。幸い命は取り留めたが、彼の選手生命は終った。

「ウーーー!」雄叫びを上げる零。

その後も次々アメリカ軍を撃破していく零。もう誰にも止められなかった。

 しかし、チームメイトの全日本選抜は逆に恐怖を感じたのだ。この試合が終ればまた敵同士・・・。この怪物を止める術はあるのかと。

 そして試合も終盤。

「監督!もう大丈夫てす。わたしを出してください!」

「よかろう!」

サトミが帰ってきた!大歓声が上る。そしてジョーも戻ってきた。

そして、攻撃権を奪取したアメリカ軍。エースQB・ジョーの球は寸部狂わずエースレシーバー・クロマテイに。もしタッチダウンされれば負けだ。

「行くぞサトミ!」

OK、サトル!」

2人は、覚悟を決めて同時に突っ込んだ。まるで戦艦に突入する特攻機のように・・。


双子パワーでクロマティを粉砕!

決まった・・ぽとりと落ちる楕円球。

ピーーーー。試合終了。

89872点差で日本が辛勝したのだ。

しかし日本側は満身相違・・・。

負けたアメリカも、本場のプライドを傷つけられたはず。

だが、山名元帥と握手を交わすマッカーサー監督は言ってのけた。

「ゼネラル・ヤマナ・・・。今日ミーガツレテキタノハ半分ハ2軍ダ・・・。

来年モマタ勝負シヨウ・・・。ソノトキハ、最強メンバーヲソロエ、女デハナク本物ノ【エースノジョー】モ連レテコヨウ・・・!アイ・シャル・リターン♪」

「何度でもかかって来い!ワシが生きている限りな。ワシは貴様が今のワシの年になるぐらいまで生きているつもりだ」

「オオ、ゼネラル・ヤマナ、ミーモカナラズユートオナジヨウニナガイキシテミセルゼ」

「ガツハッハ・・・・」


「アイ・シャル・リターン!」

 

 そして、男たちや観衆の目を気にすることなく、ユニフォームを交換して互いの健闘を称えあうサトミとジョー。

「サトミ、ユーハワタシノシンユウヨ♪」

「ジョー、あたしもあんたと戦えて嬉しいわ。またいつか!」

抱きしめあう2人。そのまま両軍全員が2人を胴上げだ・・・。

それにしても気になるのは、ジョーとは別に、真のエースのジョーがいるというマッカーサーが最後に残した言葉だった。それはむしろ、サトミではなくサトルの将来に関わる問題になるとはこの時は知る由もない。

頑張れサトミ!・サトル!君たちの戦いはまだまだ続くのだ・・・。

 

 

←前話 →次話