第48話 対決! 2人の小公子
月刊アスリートのリコのおせっかいで、南武高校は新生・殉教学院との練習試合を組むことになった。サトルにとってはキャプテンとして初の試合・・いやおうなしにも心が高まる。
「みんな、今日は僕たちの底力を殉教に見せてやろう!陽一!とくにキミは今日がQBデビューだ!たのんだぜ」
「ハイ♪」
愛するサトルの直々の指名に、燃える陽一。だが、サトルと陽一が気になるのは・・
殉教の1年生キャプテン、細川天平の存在だった。
「しかし、何故1年が?それに、体格も陽一並み・・顔も陽一以上に女顔・・彼のいったいどこが・・・」
さすがのサトルも、どう対処してよいかわからなかった。
さて、試合開始・・握手する両キャプテン・・・。
「東さん、今日は胸をお借りします」
端正な顔、礼儀正しさ・・厳格なミッションスクール・殉教の主将に相応しい爽やかさと美しさを持っているこの美少年・・。
『あ、この顔は・・どこかで見た気がする・・・』サトルは一瞬思った。
陽一は、『うっ、なんて可愛いんだ・・お人形サンみたいだ・・・ボクの好み・・だけど、この歓声は許せないな・・歓声は、このボクとサトル先輩だけのものなんだ・・よし、あいつをきっとやっつけてやるぞ!』
キャー!キャー!天平くん〜
ポピー(殉教女学院)のチアたちの大歓声。
「キャプテン、今日、ボクを両面で使ってください!あの子とどうしても、直接対決したいんです!」
「よし、いいだろう。僕とサトミも両面で出る。それと・・1年だが、高信君、キミも今日がデビュー戦だ!」
「え、マジっすか?やったー!」
「よっちゃんは高信君が暴走しないように見張るんだ」
「任せてください」
キャプテン、サトルの指示が飛ぶ・・そしていつもどおり、キックオフはサトミ・・・
「えーい♪」いつもながらカッコいいキック・・だが、「最も美しいキッカー」の称号を、東西戦の際なんと素人の麗菜に奪われてしまった彼女、ならば正確さとパワーでは・・といわんばかりの素晴らしいキックを見せ付けた。男子でもここまで飛ばせる奴はいない・・
そして対決が始まった・・・
戦いは、終始南武ペースだった。拍子抜けするほど殉教は手ごたえがない。
だが、僅かなチャンスをものにして反撃してくる。
その攻め方は、あの京王の「真の最強ユニット・千代シフト」と酷似していた。
そう、天平を回りの選手が、完全にガードして指一本触れさせないのだ。
サトルも、陽一も、佐藤兄弟も信彦も、敵をどんどん倒すが、天平にだけはまだ指一本触れていない・・
「う、あの天平という子は、きっととてつもない重要人物なんだ・・だからほかの選手たちは、異常なまでに、勝敗を2の次にしてまで彼を守っているんだ・・ならば、彼を無視して裸にしてやろう。陽一、サトミ、・・それに僕の3人が天平君に当る・・ラインのみんなや信彦君、佐藤兄弟は、彼を無視してほかの選手を片っ端から潰すんだ。そしてかれを裸にして、僕とサトミが囮になり、最後は陽一に決めさせる!いいね」
サトルの指示は的確だった。
次々倒される、殉教の選手たち。そして遂に・・・
陽一のクリーンヒットが、天平に決まった、かに見えた。しかし・・
「ううっ」
両者とも動けない・・2人ともアメフト選手としては最低限の肉体・・当りは強くない。だが、逆に当たりにも弱い。まして天平は初めて受けたタックルだった・・・。
そのとき、ベンチから聖羅がやかんを持って飛び出した。
「ジャー」
冷たい水を、まず陽一に、続いて天平に・・・そして抱き起こす。2人は息を吹き返した。
「め、メルシー」
思わず陽一はフランス語でお礼を言った。すると聖羅は、
フランス語で「どういたしまして。お怪我はありませんか?」
と丁重に答えた。
「キ、キミはフランス語が話せるの?」
「ええ、わたし中学までロンドンだったの・・英国では日本人が英語習うようにフランス語が必修で、わたし、フランス語が学校で1番だったの・・そういうキミはどしてフランス語を・・?」
「ボクはママがフランス人で中学までベルサイユで育ったんだ・・」
「じゃあ、わたしたち、似たもの同士ね♪」
聖羅はほほえむ。しかし審判の笛が鳴る。試合の進行を続けよとの警告だ。
「最後に聞くけど、どうして味方の天平君ではなく、敵のボクから先に抱き起こしてくれたの?」
「それは、僕たち殉教の教えだからです」
答えたのは聖羅ではなく、天平だった。
試合は、南武が圧勝した。だが、殉教のカウンター能力、そして勝ち負けよりも、博愛心、道徳心を重んじる姿勢にサトル以下、胸を打たれた。
そしてわかったことだが、天平は、殉教の母体、聖ポピー修道院の、マザー・ガラシャの1人息子で、学園内ではイエスか天草四郎並みに尊重されているということであった。
だが、マザー・ガラシャの正体などは一切謎に包まれ、ここ30年以上、誰もその姿を見たものがないという。年齢も国籍も一切不明。天平の父親が誰であるかも不明であった。
そして陽一は・・
「ボクは女の子には興味がなかったはずなのに・・・」
そう、陽一は聖羅に恋してしまったのだ。初恋だった。それまで彼は男にしか興味がなかったのだ。
そして、聖羅も・・
「あの子、なんていう名前なのかしら・・お名前だけでも聞いておけばよかったわ・・あとでおねえちゃんに聞いてみよう・・・」
聖羅もまた、陽一に一目ぼれ・・
しかし、この2人に芽生えた愛が、やがて世界を揺るがす事件と悲劇に繋がろうとは、このときはだれも知るよしがなかった。
試合には勝った。サトミもまだまだ男子に伍して戦える。陽一もQBとして合格、高信も馬場の穴を埋められそうだ(顔は兄の義信に似ているが、タイプ的に馬場に似ていた)
そして、いよいよ日米戦に向けた調整が始まろうとしていた・・
南武高校からは、サトル、信彦、清、サトミ(キッカーとしてはレギュラー、レシーバーとしてはバックアップ)がレギュラーとして、陽一と義信がバックアップとして選出され、マネージャーとしては宏美、四葉、唯理、みゆきが選ばれていた。武体大からは西本剛、馬場鉄平がレギュラー、上村拓也がバックアップに、マネージャーとして静香、千佳、真亜子が選ばれている。
さあ、いよいよ黒船が来る・・・がんばれニッポン、がんばれ南武高校・・・。