第44話 大円団
疲れを癒し、痛み止めを打ち、更に千代から新たな防具を授けられ、ベンチに戻ったサトミとみゆき・・出番だ!
しかし・・・!そこで二人が見たのは・・・
「サトミちゃん!お疲れのところ悪いけど・・すぐアップしてくれ!見てのとおり、レシーバー陣がほぼ全滅状態だ・・・。僕とサトルくんで頑張るしかなかった・・・。さあ、急いで!」頼伸はせかすように促す・・。
ベンチでは、鉄平、キムタク、福沢、陽一、大森の5人が負傷して、手当てを受けていた。その中でも、古傷をやられた鉄平は、かなり酷い・・・宏美と四葉がかいがいしく手当てする・・・。マネージャーも、みゆきがサトミにつきっきり、由香が隼人と一緒に出かけてしまい、千代も試合に出ていたため、不足気味・・・沙羅が疲労で倒れてしまった・・・。
京葉の4人が任務に戻ったが・・・。みゆきの復帰は大きかった。更に・・
「わたしたちにも手伝わせて!」
「先輩!」江間静香先輩も応援に駆けつけた。
新しい防具を纏い、ピッチに戻ったサトミに、サトルと頼伸は、驚くべきことを教えた。
サトミが怪我をしている間、京葉の真の最強ユニットが活躍したこと。それは千代から聞いた。だが、千代が下がった後、悔しさに火がついた西軍の猛攻、というより、レシーバー、ランニングバック狙い撃ちの殺人的コンビネーションタックル・・方岩と須田の・・・を次々喰らい、傷つき倒れていく選手たち・・。ボールを運び、走る選手がもうほとんど残っていないのだ。いや、選手はいくらでもいる。だが・・鉄平、キムタク、陽一、福沢、大森に重傷を負わせた相手に、実力の劣るオサムや丘、それに京王や吉本の1年たちでは焼け石に水・・・。サトミの復帰は、実に頼もしかった。
「サトミ・・たのんだぜ!」
「任せて!」
しかし、そのサトミにも方岩と須田の殺人タックルが迫る・・。だが、間一髪、義信が身代わりに・・・
「よっちゃん!」
ベンチでは唯理が目を覆う。だが、なんとか義信は立ち上がった。
しかし、今度は頼伸が、まともに喰らってしまった・・・。
「イッチバーン!」勝ち誇る方岩。
担架で運ばれる頼伸・・・これで三銃士は全滅・・・。実は、東軍選手の弱点や古傷は全てナッちゃんが、調べつくしていたのだ・・そして今、いやおうなしにも、東兄妹が中心になって、強大な敵に挑まなくてはならなかった・・・。正規のレシーバーはもう、サトミしか残っていない。そこで、サトルもレシーバーに回り、頼伸に投げてもらっていたのだが・・・。島田が登場だ。
だが、今日の島田は、最初のプレーこそ素晴らしい活躍を見せたが、精彩がなかった。
それは、・・・・麗菜がいなかったからだった。「麗菜・・・助けてくれ・・・俺、お前がいないと・・」
だが、今はそんなことを言っている場合ではない。宿敵同士・島田とサトル・サトミの即席ホットライン・・・。だが、意外といける!
次々ダウンを奪う、兄妹!しかし黙っている方岩と須田ではない。遂に、サトミが!間一発、サトルの救援で直撃を免れたものの、脚を挫いてしまったのだ。だがそのことは誰も気付かない。
そして、更に襲い掛かる2人・・・。
だが!
「おっと、そこまでだ悪党!今日のオレ、あんまり出番なかったからな。お前たちの出番はここまでだぜ!」
迫り来る凶悪コンビを、我等の鉄人・武田信彦がまとめて吹き飛ばしてしまった!ボールを奪い取った信彦はサトルにパス!
日没まであとわずか・・・。このチャンスを逃したら、東軍は敗北してしまう・・・。
ところで先ほどから、会場の上空をヘリが旋回していたのに気付いた者もいた。一体・・。
サトミは走った・・。だが、脚を引きずりだす・・・そのことに気付いた安東が迫る・・・。
だがもう1人、サトルも気付いた。
「サトミ!合体だ!」
「OK、サトル!」
サトルとサトミは、肩を組み、密着して2人でボールを運んだ。まさに、「合体」!そして、タッチダウン!キックが決まれば、同点である。
だが、先ほどの怪我で、キッカーのサトミは、とても蹴れる状態ではなかった・・・。
「僕が蹴ろうか!」
「あたし蹴る!」東軍は、貴重なタイムアウトを取った。そのときである。上空を旋回していたヘリのハッチが開き、何者かが飛び出した!
一体、何者だ!黒いパラシュートが開く。なにやら赤い模様が描かれている・・・。
だんだん降下してくる謎の人物・・・。よく見ると、アメリカンフットボールのユニフォームを着ている・・。それも見覚えのある・・・。しかし、その選手には誰も見覚えがない・・・。そして、遂にその人物は着地した。
風圧でユニフォームが捲くりあがる。背中に、真っ赤な蠍の刺青が・・・。ヘルメットから、長い金髪がはみ出る。
そして、ヘルメットをとって振り返ったのは・・・
「ハーイ♪ただいま!」
「麗菜!」
驚くべきことに、ヘリから降下したのは、南アフリカに去ったはずの、吉本工業マネージャー、永森麗菜だった。しかし彼女、何故か千代と同じ♯00の、吉本のユニフォームを着込んでいる。
「このボールを蹴るのは、あたし♪」
「ちょつと待て!君は選手じゃないだろう!それに、今ごろ突然現れて・・!」
西軍から抗議が・・・。ところが。
「いや、その子はちゃんと事前に登録してある。今朝渡した、最終メンバー表を見ろ!」
細川総統が、一喝した。すると・・・
なんと、吉本工業の筆頭に、なんとキッカーとして、永森麗菜の名前が載っているではないか!
「ハハハ。こいつの叔父、ガラハッドとは駐英武官時代、同じ戦艦ドリンコートに乗り込んでいたのだ。国際貴族協会からの推薦で、わしの独断で加えたのじゃ!」
しかし当の島田と西山がきょとんとしている。
「麗菜、お前ボール蹴ったことあるのか?」
「姐さん、あんた、経験ゼロだろう?」一緒にいる二人が言うのだから間違いない。千代とは違い、麗菜は男子に混じって練習したことなど皆無・・・。
「ないわ」
ケロリとして言ってのける麗菜。
「あたしには不可能はないの。まあ見てなさい♪」
麗菜の出場と、キックが認められた。ホルダーは島田。
麗菜の、長い脚が、空高く上る・・・。
東兄妹の命がけのタッチダウン、信彦の鬼神の如き防御で勝ち取ったこの権利・・。
そしてボールは、見事ポストを通過!そして、と動時に試合終了・・・壮烈な試合は、ついに決着がつかず引き分けに終わった。
「細川!まさかあんな隠しだまがいたとはな・・いつもなから脱帽じゃ」
「いや山名さん、うちは大学生を5人使ったが、あんたは4人しか使わなかった・・。それにうちは、女を3人も使った・・・やりにくかっただろう・・。それを考えれば、実質はあんたの勝ちじゃ」
「細川・・・」
「山名さん・・・」
「カッハッハ・・・」豪快に握手する2人の老武人。
「山名さんよ、生まれた時は別でも、死ぬ時は同じ日に死のう。そうすれば早く生まれたあんたが、ワシに勝ったことになるからのう・・じゃが、ワシはまだまだ死にたくない。由香が子を産むまではな。」
「言ったな細川!ワシもあと50年は生きてみせるぞ、ガッハッハ・・・!」
さて、東軍をここまで善戦させたのは、三人の女性戦士たち。
サトミ、千代、そして飛び入りで最後の最後、美味しいところをもっていった麗菜・・。(ほんと、美味しいところはいつも・・)
そして、マネージャーやチアのみんな。そして、たった一人で西軍ベンチを支えた安東なつ。「男のスポーツ・格闘球技・アメフト」も、彼女らが影から支えていることを忘れてはならない。そして彼女たちは、美しかった・・・。
麗菜を乗せてきたのは英空母フォントロイの艦載ヘリ・・・。麗菜は、試合が終わるとまたアフリカに帰っていった。(まもなく、卒業式のため再び帰国するが・・)島田と西山は、名残惜しそうにヘリを見上げた・・・。西山は、ブー子を妊娠させたことを麗菜にこのとき話せなかった・・・。
MVPは、最も長時間活躍し、最も得点した、我等がサトミ♪いよいよあと2ヶ月で3年生・・最後の年が始まる・・・。頑張れサトミ!フットボールを愛する全ての女の子の夢を乗せて・・・。