第一話 登場!炎の美少女・サトミ!

桜も散り、暖かなある4月上旬。

ガツーン!ガツーン!

HutHutHut・・・・!

激しい金属同士のぶつかり合いと勇ましい掛け声がこだまする。

ここは、神奈川県の私立南武高校グラウンド・・・。体育の殿堂・武蔵体育大学の付属校である。そして今ここでは、アメリカンフットボール部の激しい練習が繰り広げられていたのであった。

 アメリカンフットボール・・・屈強の男たちが、さらに重い防具を纏い、体当たりしながら敵陣目がけて突進する、荒々しく男性的な競技である。またの名を「鎧球」とも呼ぶ。まさしく球技の名を借りた格闘技、いや鎧武者たちの戦争だった。

 そして今日は、待望の新入部員の登録日。体育系の推薦入学を原則とする南武高校では、1人として運動の苦手な生徒はいない。小中で、それぞれスポーツの神童と呼ばれた者だけが入学できる学校なのだ。だが、アメリカンフットボール(以下アメフト)は中学以下での競技人口が少なく、特に関東では極端に少ないため、サッカーや野球、柔道や陸上などの経験者も門を叩く。アメフトはポジションがたくさんあり、パスを投げる者、受け止めて走るもの、それを妨害すべくタックルするもの、ボールを蹴る者、最初にガツンとぶつかり合う者などさまざまあり、格闘技や他の競技の経験者にも、必ず相応しいポジションがあるのだ。

 さて、今日ここに、17名の新入部員を迎えたわけだが、部員たちの中から一際大きな歓声が挙がった。

1C1番、東サトル、173cm60キロ、多摩川7中出身、経験スポーツはアメリカンフットボール。ポジションはライン以外なら何処でもできますが、中学ではQBをしていました!」

「おお、あの天才児の東サトル!」

そう、彼こそは、西高東低の叫ばれる学生、ことに中学アメフト界において、初めて関西代表神戸神学館を破った関東選抜チームのエースQBで、神学高等部、京王、吉本工業などの特待生の誘いを蹴って、この南武に入学して来たのだった。

「東。お前が来てくれるのを俺様は待っていたぞ!」

手を差し出す巨大な男。彼こそが南武高校センターでキャプテン、関東高校アメフト界最大最強の男、西本剛であった。

 その間にも次々自己紹介していく新入部員たち。

「武田信彦、180センチ80キロ。緑ヶ丘西3中出身。中学では野球部のセンターでした。ポジションはランニングバックを希望します。」

「体格も良いしいいRBになれそうだ。期待しているぞ。」

「鈴木猛、182センチ90キロ、ライン希望。柔道をやってました!」

「うん、もう少し体重を増やせばいいラインになれるな」

「五十嵐修、優秀館出身、175センチ55キロ。中学では陸上の短距離をしていました。」

「佐藤義信、福島県出身です」・・・・

次々に元気よく名乗り出る新入生たち。そして最後の新入生の番となった。

他の新入生と同じく、南武高校の白シャツ、紺のナイロン短パンを穿いた目のくりっとした美少年である。

ところが・・・

「おい東くん、君はもう自己紹介と申告終わっただろう?あ、え?」

「先輩、ボクならここですけど・・・」

「東サトルが二人?どうなっているんだ?」

「ハーイ♪東サトミ、1C2番、ポジションは何処でもできるよ!サイズはサトルと一緒。だって双子だもん」

 

「おお、そうか、双子か・・・!それにしてもよく似ているなあ。天才の東くんの弟なら、間違いないな。今年は豊作だ!今年こそ吉本と京王を完全撃破だ!」

「オー!」

歓声がまたまきおこる。

 

だが・・・。

「待てよ?妙だ。」

「どうした土井?」

西本主将が、不思議な顔をする土井副将に尋ねた。

「主将、ウチの高校って、出席番号は五十音順に、男子奇数、女子偶数のはず。たしか東サトミ君は2番と・・・・。それに、男子新入生は本人の強い希望のない限り優先的にアメフト部に入部するよう、事前にスカウティングしていたはずですが彼はリストに載っていません。まして天才の双子なら漏れるはずがないはずですが・・・」

周囲の疑惑の目がサトミに集まる。

沈黙を破ったのはサトルだった。

「こいつ・・・ボクの双子の『妹』なんです。中学でもずっとコンビ組んでました。こいつの実力はボクが保障します!」

「何!女?」

「女にアメフトができるものか!」

「しかしどうみても男、それもサトルとそっくりだぞ」

「男の体操服着てるしなぁ・・・」

「胸も無い。」

「ガヤガヤ・・・」

 

「トリャーっ!」

西本主将の雄叫びに一堂が静まる。そしてサトミに言った。

「東サトミ。サトルのいうように中学での経験があったことは認めよう。だがここは高校だ。中学とは比べ物にならないぐらいのレベルだ。女のおまえの入部は認めることは出来ない。いや、その知識を生かして、マネージャーになってみる気はないか?」

「イヤです!女だからって、女だからって・・・・!オレは小学校でも中学校でもそういわれてたけど、絶対男の子なんかに負けないもん!サトルにだって・・・。」

「そうだ主将の言うとおりだ。アメフトは男のスポーツだ。女の出る幕じゃない。

「ヤーネ、あの娘ったら・・・。男目当てでわざとタックルされて、怪我してそれを口実にゲットしようってつもりじゃないかしら・・・」

「ホントやな子!」

女子マネージャーたちまで、陰口をたたき出した。

「待ってください先輩・・・ボクからも、ボクからもお願いします!」

「ふざけるな、いくら中学MVPでもここでは1年、誰に口を聞いているんだ」

逆に怒鳴りつけられてしまった。サトル。

 

そのときである。

「見やがれ!」

サトミが絶叫とともに、短パンをずり下げた。下着は穿いていなかった。

「オレは男だーーーっ!」

見ると、毛一本もないつるりとした股間から、にょっきりと生えているものがある。それはサトミのクリトリスであった。無論、男性器ではないが、乳児のペニスほどの大きさがあった。

「サトミ!よせっ、みっともない!」

サトルが素早く前に立ちふさがった。

「先輩、このとおりです。こいつの熱意をわかってあげてください。足をひっばるようならこのボクが必ずカバーします。どうしてもダメならボクが辞めさせます。ですから・・・」

サトルの目は涙ぐんでいた。

 そして短パンを戻したサトミも涙ながらに

「オレは・・・いやあたしはフットボールが大好き。だから、お願い。がんばるから!」

 

沈黙が流れた。そして

「わかった。よし、オレの一存で入部を認めよう!だが泣き言は禁止だ。練習も全て男と同じ、いや部活ではお前を男として扱う。少しでも女の甘えが出たときは、出て行ってもらう。わかったな。みんなもそう心得るように!」

「ハイ!」

「サトル、サトミのことを頼んだぞ。」

「ハイ!」

元気よく応えるサトル。その顔を見てウインクするサトミ。もう涙はなかった。

 

「おう、そうだ、忘れていた。新入マネージャーを紹介しよう。」

「うぉおーーーっ可愛い!」

「サトミとは大違いだっ!」

1A28番、西本みゆきです。皆さんよろしくね」

「ヒューヒュー」

紹介されたのは、南武高校には似つかわしくない、華奢で肌の白い、眼鏡をかけたセミロングの美少女だった。

よだれをたらす部員たち。

先輩マネたちも不安だ。「何よ、可愛いじゃん・・・あたしたちの立場は・・・・」

「こいつは、俺様の妹だ!変な気を起こしたら承知しないぞ」

「えっ!主将の・・・・」選手たちは急にしぼんでしまった。

「・・・似てねー・・・・。」

「サトルくん、サトミちゃん、お久しぶりね」

「え、西本さんボクたちのことご存知なんですか?試合見てくださったんですか?」

「ふふ。もちろん見たわよ。でも小さい頃よく遊んだじゃない。お兄ちゃんとも♪」

「あーーっ!医者の西本先生のところの?パパの友達の!」

「やっと思い出してくれたみたいね。これからは3年間ずっと一緒ね。みゆきも応援するから、がんばろうね。」

「うん、みゆきちゃん、いや、子供の頃みたく「みゆ」って呼んでいい?オレじゃなくてあたしも頑張る♪」

 

 こうして南武高校アメフト部に、嵐を呼ぶ火の玉のような女の子が入部を果たした。さーて彼女の活躍は・・・。

次回にご期待ください。

 

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