57話 開幕!最後の関門・関東大会

 

 伏兵・おさらぎ高校を苦戦の末倒した南武高校は、5年連続で神奈川を制し、関東大会に進出してきた。

東京代表は、常連・京王高校が順当に勝ち進んだほか、なんと、英王子等の留学・加入で話題を集めた超ぼっちゃま校、鹿鳴館高校が進出してきた。

また、埼玉・千葉代表には、昨年の雪辱を果たして京葉を破った殉教が1年ぶりに進出してきた。

 結果、第一試合の組み合わせは、東京勢同士がいきなり対決しないように、

京王VS南武(昨年、一昨年の覇者同士の対決)、殉教VS鹿鳴館となった。南武高校以外はいずれも高偏差値のおぼっちゃん校である。

一方、関西では・・・怪獣・安東零を中心に、主将の方岩晴久、須田半蔵、デイック前田、油屋渕弥ら破壊的巨漢を揃えた西の王者神学館が、文字通り対戦相手を完全に粉砕して既に優勝を決めていた。中には棄権するチームも・・・。

 安東、須田、方岩の通った後には草一本生えない、と言われるほどの完勝である。安東は、なんとセンターとセーフテイの兼務である。

主将は背番号1をつけた方岩だが、実際の指揮は、女子マネージャーの安東なつが執っているのが今年の神学館の特徴であった。

 

 さて、開幕を前に,サトルたち南武高校のメンバーたちは調整に余念がない。

サトルの方針で、南武高校ゲーターズでは、層がある程度厚いのにも関わらず、全ての選手が2つ以上のポジションをこなすようになっていた。たとえば、サトルは本来はクォーターバックだがレシーバーとランニングバックを、陽一もQBWRの両方をこなすように鍛えていた。

つまり、陽一がサトル、サトルがサトミと陽一のカバーをして、今までサトル・サトミのツイン攻撃で敵を翻弄したのに陽一も加わった三枚の片言攻撃を主体にしようとしているわけである。

 これは、不意にポジションを変更して敵の偵察をごまかしたり、来年以降のチーム編成を見越したものである。ヒロインのサトミ嬢は、WRとキッカーが本職であるが、バックスの練習もしていた。彼女のタックル力は決して強くはないが、サトルと連携することによってその効果を倍増させるのだ。

 ラインの中心、大河原清や、攻守に亘ってサトル、サトミ、陽一を護衛し、彼等を倒そうとする敵をやっつけるパラディン役の鉄人、武田もその肉体を更に磨き上げていた。

 同じく守備の要、佐藤義信は弟の高信とコンビを組むようになり、調整に余念がない。

そしていよいよ、京王高校との対決・・・。

選手たちは「スタイル」していく。次々と重い防具を装着していく選手たち。

ここでは特別に、紅一点・東サトミ選手の装着シーンを披露しよう。

 以前は野外で堂々と着替えていたが、現在は女子マネージャーの手を借りて更衣室で行なっている。

 


@体操服姿のサトミが・・・

A体操服を脱ぎ捨てる!

Bサトミは防具の下はいつもすっぽんぽん!

Cフッパンを穿きソックスとシューズを履く

Dその間にみゆきたちマネージャーが防具を組み立てる。

Eマネージャーの手を借りて防具を被る。その前に腹巻を装着。

Fヘルメットを被る

Gヘルメットを締め付けてもらう。

完成!サトミは戦士に変った。ヘルメットから覗く髪を除くと、男子選手となんら変らぬ厳つい姿に変わり果てたサトミ。

全国のフットボール少女の代表として、いざ出陣!

 

「ハット、ハット・・・」ガチャーン!

ライン勝負は清が圧倒、ダブルQBのサトルと陽一が自在にパスを回し、得点を重ねるサトミ。

老舗、京王は今年もまた東京を制した。だが、立花監督も亡くなり、エースの福沢も高橋も卒業した今、最盛期を迎えた南武の敵ではなかった。

いや、立花監督や高橋を欠いてもなお、関東大会に出場できる京王の層の厚さと底力。それこそがサトルの目指す常勝軍団の姿なのだ。

そのため、今大会あえて美味しいところを陽一に譲り、来年自分がいなくなっても優勝できるよう、今から準備しているのだ。

 今まで、優れた監督や選手が居なくなったことにより、急に弱くなったチーム、逆に突出した1人の選手の活躍で彗星の如く現れるチームと対戦してきたが、本当の強豪とは、この京王や、神学館のようなチームを指すのだということをサトルは知っていた。そしてそれを目指していたのだ。

卒業した西本元主将の意思でもある。前主将、上川もその期待に応え、関東大会準優勝を果たしたが惜しくも全国大会は逃してしまった。その無念を晴らすためにもサトルは全勝で関東大会を突破し、神学館と対決しなくてはならなかったのだ。

試合は勝利で終った。がっちり握手するサトルと京王主将、福沢健吉。先先代主将、俊吉の弟である。

「東君、僕たちにもまだチャンスは残っている。殉教、鹿鳴館を破ってキミと再戦だ」

「僕も殉教と鹿鳴館を倒すよ。」

スポーツマンらしい、2人のシェイクハンドだ。

 

その頃、殉教マネージャー、益田聖羅はその小さな胸を痛めていた。

殉教に身を置く彼女だが、鹿鳴館には血を分けた従兄のデビッドが、南武には恋人の陽一が身を置いているのだ。そしてデビッドは宿命から陽一を一方的に完膚なきまで叩きのめそうとしていた。

幸い、鹿鳴館との試合には敗れはしたものの、お互い紳士的チームのため大きな波乱はなく無事に済み、デビットとも敵チームの選手とマネージャーとして、挨拶程度の接触で済んだのだが・・・。

 次の試合は、南武VS殉教、京王VS鹿鳴館である。陽一のチームとな対決は辛いものがあったが、その一方で同じグランドで会える喜びもある。

しかし、彼女の恐れる陽一とデビットの宿命の決闘は、いずれにしても避けられないことのほうに、より心を痛めていたのであった。

 

 

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