最強戦士バルディバン(前置きかなり長いです)
ストーリー
帝都大学に3人の若き科学者がいた。医学博士でロボット工学者でもある細川春彦、宇宙ロケット工学博士でパイロットとしての腕前も一流の加藤武夫、そして、生物学者で栄養学者でもある紅一点の赤丘めぐみ。かれらは、一つの共同研究をしていた。「宇宙での人類の繁殖。」なかでもリーダーの細川は、地球防衛軍総司令官で新日本帝国総統である細川隆斎元帥の次男でもあり、またまれに見る才能をもった天才で、その知力と財力と権力を武器に、優れた研究と発表を重ねていた。
かれらは、人間が外宇宙で子孫をのこすため、光速を超える宇宙船の開発とあらゆる過酷な条件に耐えうる特殊強化服、それに栄養剤などの研究に取り組んでいたのだった。
ところが・・・。加藤博士とめぐみ博士はいつしか愛し合うようになり、めぐみ博士の体の中には新しい生命の息吹が生まれようとしていたのだ。
加 「細川・・・。すまん。」
細 「いいや、別に気にすることはないよ。それより君たちの結婚式、3人だけで、月の裏で挙げないか?」
め 「細川君・・・。ありがとう。」
こうして加藤博士とめぐみ博士は、人類ではじめて、宇宙で結婚式を挙げたのだった。
その後も3人の研究はすすみ、細川はある日突然加藤に言った。
「わたしは、君たちの結婚を少しも妬んではいない。しかし、一つだけ頼みがあるのだ」
「何だ?」
「恥ずかしいのだが、うん、つまりその」
「貴様らしくないぞ?まさか1日だけ貸せ?なんて言わないだろうな?」
「そんなこといったら君に殺されちゃうよ。私の頼みとは君たちが・・」
「俺達が?」
「次の子供を、種付けから出産まで、宇宙で、月面研究所でやって欲しいのだ」
「うっ。するといよいよ?」
「ああ、我々の研究は次の段階にとすすむのだ」
・ ・・こういった経緯で人類ではじめて宇宙で生まれた子供。彼こそがこの物語の主人公となる
「加藤隼人」なのだが、彼の活躍はまだ17年のちのこととなる。
一方、隼人が月で生まれた約1月後、鎌倉の細川邸は喜びにつつまれていた。細川元帥の長男、細川大佐に長女由香が誕生したのだ。この少女こそ、のちに隼人と運命の糸で結ばれるとともに、全宇宙の生命を司る超人類的存在となるのだが、それは17年後のことである。
さて、加藤夫妻と長女・マリ、3歳になった長男・隼人は家族で月面旅行にきていた。この時代、(近未来)
個人で宇宙旅行にいけるのは細川のバックがある加藤一家ぐらいのもので、それも観光とかあそびではなく、あくまで夫妻の科学者としての研究のためであった。
「パパ!ママ!僕はここで生まれたの?」
「そうだ隼人。お前は宇宙の子なのだ」
「そうよ。新しい時代を開く子なのよ」
「んもーうママッたら!そんなむずかしいことはーくんに言ったってわかんないでしょ」
今年で中学1年になるマリは母に似て綺麗な長い髪と大きな瞳をもつ美少女に成長していた。
「あ゛!おねー!あそこに何かいる!」
隼人は一体何を。「はーくんそっちいっちゃだ・・・・め?」
「どしたのおねー?」
「あっあれ・・・ロボットよ!早くパパに知らせなきゃ!早くこっちにくるのよ!」
隼人たち姉弟が見た「ロボット」とは・・・・
加藤博士「何!ロボット?そんなバカな」
めぐみ博士「あなた!子供たちもいるわ。ここはひとまず宇宙船へ!細川君にもしらせなきゃ」
4人は急いで宇宙船に戻り、地球に向けて緊急発進した。
しかし、その謎のロボットは追いかけてきた!そして、宇宙船にその腕を突っ込むと、中から宇宙人たちが!
「めぐみ!ここは俺がくいとめる!お前は子供たちをつれてカプセルで脱出しろ!」
「あっあなた!」
加藤博士の宇宙服は、細川博士の開発した特殊強化服で、宇宙空間での過酷な環境と予期せぬ敵との遭遇を考慮して武装してあったのだ。
「ママー!」めぐみはマリの手を引き、隼人を抱いて脱出ブロックへと急いだ。振り向いてはいけない。
そしてまずマリをカプセルに入れ、もうひとつのカプセルに隼人とともに入ろうとした瞬間!宇宙人に追いつかれてしまった。かまわずマリのカプセルを暗い宇宙へと射出。そして隼人をカプセルにいれると、
「はーくん、ママをゆるしてね」
管制室を自ら宇宙人を巻き込んで爆破してしまった。また、加藤博士も強化スーツと武道の力で戦ったが、結局死んでしまった。
その後、マリのカプセルは行方不明になり、隼人のカプセルだけが大気圏突入し、アメリカ海軍によって救出された。
この事件は、単なる金持ちの道楽科学者の勇み足による不幸な事故として片付けられ、宇宙人の侵略基地が月にあるなどとは誰も信じなかった。
そして、隼人は細川に引き取られることになった。
細川研究所は、広大な細川邸の一角にある。隼人は、幼くして両親と姉を壮絶な失い方をした上、「宇宙人を見た」という話を誰も信じてくれないため、卑屈な少年になってしまった。
そんな彼に、だれよりもやさしく接してくれるのが、戸籍上はいとこ、となる細川由香だ。彼女は、まるでフランス人形か妖精か天使のように姿も心も美しい天真爛漫な少女で、事実上地球を支配している祖父の細川元帥もこの孫娘にはめっぽう弱く、まるでこの世の全ての愛を一身に受けて育ったような、お嬢様だった。
「あのね、おじいさま。由香ね、おおきくなったら隼人君のおよめさんになるの!」
この一言が二人の運命を決定付けた。細川元帥によってわずか4歳の幼稚園児は正式に婚約者とされ、隼人は細川ファミリーの正式な一員となった。但し、正式に結婚するまでの間は旧姓の加藤を名乗ることになった。
こうして2人は、細川元帥の薫陶を受け、順調に成長して行った。
細川博士には3人の子がいた。長女は新武天皇の皇后に。長男は帝国海軍で戦艦の艦長をつとめ、次男は稀代の天才科学者細川春彦博士だ。(細川大佐の妻、美齢は香港人で既に他界)
由香には2つ上の兄、隆之がおり、彼は祖父から帝王学を学び、将来の指導者として期待されていた。しかし彼は、のんびりとして鈍重な一面もあり、細川家が代々受け継いできた武道の継承者としては、不適格だった。
そのため、元帥は隼人に剣道を中心にあらゆる武道を身につけさせ、将来の後継者とすることにした。
一方、由香に対しても、武家に生まれたからには、となぎなたを仕込んだ。
そうして2人は高校生となったが、由香は、友達が少なくやや暗い陰のある隼人を明るくしようと自らサッカー部のマネージャーとなり、隼人を入部させた。集団スポーツにより、人間関係を豊にしよう、と思ったのだ。
(もうすでに、「妻」としての自覚ができているのだ。)2人は美男・美女だがあまりのあつあつぶりと天下公認の仲、とあって誰も割って入ろうとする者はいなかった。
さて、細川博士の研究はついに結論に達した。それは、「繁殖能力を持ったサイボーグ」をつくること、そして「サイボーグに強化服をきせること」「サイボーグが合体することにより、巨大ロボとなり、更に外宇宙宇宙船となる」こと。であり、サイボーグは、人間の体にメカを組み込むのではなく、生物と結合することによって生命活動を維持する生体金属を使って細胞の1つ1つを改造し、生体細胞とメカ細胞の配列の組換えによって変身・合体を可能とし、かつ、エネルギー源を男女の愛情に求めた、燃料不要の神を越えた存在、となる。常識では絶対不可能だが天才である細川博士はそれを実現しようとした。
つまり、養子の隼人とその婚約者で姪の由香を、改造しよう、というのだ。
しかも彼は、本来の宇宙開発より前に、かつて親友の命をうばった宇宙人の正体とその侵略の魔の手を察知し、そのためにも超人的戦士を必要とした。
もともと隼人は、宇宙にかける夢、宇宙人に対する憎しみは強い。その上体力も元々超人的だ。たぶん2つ返事で了解するだろう。だが由香は?彼女は女の子。しかもとりわけ体が丈夫なわけでもない。それに父(彼女から見ると、祖父)が反対するだろう。だが、女である彼女を改造しなければ、この計画は永久に実現しないのだ。
覚悟をきめた細川はついに2人を研究室に呼び出した。そして二人に正直にはなした。
以外にも由香は、「隼人クンといっしょなら平気!」とけなげにも了承したのだ。逆に隼人が逆上し、
「俺は改造を受ける!強い力がほしい。宇宙人を殺したい!親とねえさんの仇を討ちたい!でも由香ちゃんは・・・
それに博士(注、戸籍上の親ではあるが、隼人は細川を父とは認めておらず「博士」と呼ぶ)、あんたは血を分けた実の姪の体を切り刻んで平気なのか!」とつめよってきたのだ。
「姪だからこそ、そして君が私が育てた子だからこそ、君たちでなくてはならない。それに、男女2人で1つの生命を維持する設計なので、もしどちらかがだめなら代わりの者をさがさなくては・・」と言いかけたとき、さえぎるように、「代わりなんてイヤ!由香は隼人君と一緒。他の人なんかだめなの・・」と叫び、泣き出してしまった。
「由香・・・・」。隼人も決意した。やさしく由香を抱くと、「博士、お願いします。」と了解した。
そして、一週間後、隼人は眼を覚ました。確かに自分はつるつるに毛をそられ、手術台に寝かされ、改造されたはずだった。しかし、髪は生えそろい、心臓の音までする。「俺は、本当はどうなったんだ?由香ちゃんは?」と思うと、細川が入ってきた。「おはよう。どうだい調子は?」
「博士、僕は本当にサイボーグなのですか?それに由香ちゃんは?」
「フフ。確かに手術は終わった。だがまだ君は完成していない。そのためには、ん。コホン。」
「由香を起こさなくては。」
「起こす?」
隣のへやにいってごらん。
言われるままに隣の部屋を覗くと、中央のカプセルのなかに、由香の美しい、一糸まとわぬ姿があった。
「隼人君、由香を起こすことが出来るのは君だけだ。」
「てもどうやって?」
「それは、君の体が一番良くしている」というと細川は部屋にかぎを掛けて去ってしまった。由香の入ったカプセルとともに狭い薄暗い部屋に閉じ込められてしまった。
カプセルの中の由香は、息もしていなければピクリとも動かない。それでいて何故か死んでいるようにも見えず、人形のように、いや、妖精か天使のように、あまりにも美しかった。
隼人はこの家に来てからの12年間をあれこれと回想した。うれしいとき。かなしいとき。修学旅行。運動会。いつも由香といっしょだった。(注、幼稚園から高校まで、ずっと一緒だが、その陰には細川元帥の圧力があった)
婚約者、といってもまだ実感なんて、と思っていたけど、じつは幼稚園のときすでに二人は夫婦になっていたのかもしれなかった。お風呂も、ずっといっしょだった。(隼人は恥ずかしがっていたが、由香に入られてしまうのだ。そして、彼を含めて、彼女の瞳を見てその望みにNOをいえる人物は、誰もいなかった)しかし、なぜかまだあの体験はなかったのだ。
「そういうことか・・・・」隼人はカプセルを静かに開けると、由香の冷たい体を抱き起こした。
「由香ちゃん。今、おこしてあげるね・・・」
そういって彼は、彼女をひざの上にのせ、体を重ねた。幼いころからの思い出が頭の中にあふれる。孤独だった自分をいつもなぐさめ、励ましてくれたのは、いつだって・・・。
時間のたつのも忘れた頃、かすかなぬくもりが。由香の心臓が動きだしたのだ。
「はやと・・くん」由香は、泣きじゃくった。そして改めて二人は深く結合した。
それから二人はシーツをまとうと、研究室へ急いだ。(かぎは、いつのまにか解除されていた)
御目覚めかい、由香。
「おじさま!」
「よし、二人そろったところで最終工程に移る!二人はあのカプセルに入れ!」
なに、あれ?
「あのカプセルに入ることにより、二人は完全な超人となるのだ」
二人は、言われるがままにカプセルに入った。すると、今まで体験したことのない強烈な衝撃に襲われ、悶絶したが、それが収まると、何か不思議な力が湧いてきた。
カフセルから出た二人は、お互いを見て声を失った。まるでロボットか宇宙服のような姿に、変貌していたのだ。
「隼人君、今日から君はバルディバン。由香はバルディーナとなったのだ。」
「バルディバン?」
こうして実験は成功し、(もとの姿に戻る実験も成功)二人ははれてサイボーグとなったのだった。
しかし、宇宙人の魔の手は迫る。それに、単に人体と機械の結合に成功したものの、まだ生命力、戦闘力のテストも済んでいないし、生殖機能のチェックもまだなのだ。
二人の前途は、まだまだ多難であった・・・・。
序章おわり。