最強戦士バルディバン・第一話「隼人と由香」

 「いゃあ〜ん♪隼人くんもっとゆっくり歩いてよ!」

俺は加藤隼人。鎌倉赤橋高校217番。今登校中・・・?なんだけど、なぜか二人三脚。

 いっしょにいるのは俺の婚約者の細川由香ちゃん。というか、みなしごの俺は父の親友だった彼女の叔父さんに引き取られて居候の身だ。

由香ちゃんは世間知らずのお嬢様でちょっと困惑するほど積極的。来月体育祭ということで、

今から二人三脚の練習っということでここのところいつもこんな感じ。本当はちょっと恥ずかしいんだけど、

「・・・由香のこと嫌い?」と目を潤まされると、もう・・・。

 自慢するようだけど、由香ちゃんはサラサラのロングヘアーのすごい美少女。その上頭もよくてとてもやさしい。しかも、お祖父さんはこの国の

国家元首、細川隆斎総統だ。(1)こんな素敵な子といつもいちゃついて周りの目は気にならないかって?心配無用。みんなもうあきらめてるよ

 幼稚園からずっとこんな感じだし、うちの学校幼稚園から短大(女子)までエスカレーター式で経営者も細川ファミリーだから、文句いう奴はいない。

 実を言うと、俺は学級委員長をしている。でもって、副委員長は由香ちゃん。でも俺は何にもしなくていい。毎年クラス替えのたび、

「隼人君が委員長、由香が副委員長♪」のひとことで決まってしまう。冒頭の体育祭の種目も全て由香ちゃんの独裁によって決められている(恐ろしいことに、フォークダンスのフィニッシュが僕達になるよう仕組まれている)もちろん、取り巻きの女どもも加担している。

(中略)かったるい授業も終わり、待ちに待った終業のチャイム。今日は月曜日だからサッカー部の練習も休み(弱いチームで練習もきつくない上剣道部と掛け持ちなので、練習にいけない日もあるけど)。こんな日は、決まって由香ちゃんのショッピングに付き合わされる。どうせ家に帰っても総統から剣道や銃剣道、その他の武道の特訓があるだけだ。武道合わせて88段の総統は俺を後継者として鍛えてくれている。残酷なほどのしごきだけど。

でも、彼女とお買い物、ということとなればおとがめなし。何せあの爺さん、俺以上に由香ちゃんには甘いから・・・。

 横浜で小物を買って(選ぶの遅い・・。遅すぎ)、横須賀に戻ったのは夕暮れ(鎌倉へはここから自転車で帰る)何故横須賀に寄るかといえば、軍艦を見るからだ。といっても俺たちは軍艦マニアではない。彼女の父、細川大佐が大東亜連合艦隊の第二艦隊(主力部隊)旗艦、重巡八甲田の艦長を勤めている。海軍軍人の父上は艦隊勤務で一年に何度かしか帰らない。目と鼻の先の鎌倉にいる由香ちゃんはいつも、「パパはどこ?」と俺や総統に聞いては涙ぐんでいた。母を幼い頃亡くしている彼女にとって、父親はたった一人の親。そんなとき、いつも総統夫人(由香ちゃんの祖母)が、「おとうさんは横須賀の海の上の大きなお船にいるのよ」と優しく教え、ときどき俺たち二人、それに由香ちゃんの兄貴の隆之兄さんをつれてこの海を見に来ているのだった。

 そんなわけで、両親のぬくもりをあまり感じられずに育ったという点では、僕と由香ちゃんは似たもの同士。でも・・・・。

 俺の両親は宇宙科学者だった。だけど、俺が3つのとき、宇宙の研究旅行のとき宇宙人の襲撃に遭い、姉さんともども死んでしまった。宇宙人を信じない世間の目は道楽科学者一家の不慮の事故ということで片付けられ、生き残った俺は研究仲間だった由香ちゃんの叔父さん、細川春彦博士に引き取られた。

 今でも空を見ると両親と姉を思い出す。いつかきっと宇宙戦士になって父さん、母さん、そしてやさしかった姉さんの仇をとってやる、それが俺の目標になった。

 由香ちゃんの場合お母さんは死んでしまったが、会えないとはいえ父さんもいるし、やさしいお祖父さん、お祖母さん、兄さん、叔父さんもいる。

でも俺は本当にひとりぼっちだ。

 そんなわけでいつもラブラブハッピーに見える僕たちも、僕は空、由香ちゃんは海を見ると切なくなってしまうのさ。そんなときは、いつもぎゅと抱きしめあうのがパターンとなってるんだけど・・・。

 そんな感傷に浸りながらも互いの愛を確かめているとき、由香ちゃんが突然海岸の丘を指差し、「あ、UFOよ!」と叫ぶ。

そんな馬鹿な?しかし、「宇宙人?」俺のハートが熱くなるのを感じた。実は博士から、俺の両親を殺した宇宙人が再び地球圏に現れたことを聞かされていたのだ。(それだけではないのだが、ここではひみつ)

 「よし、行ってみよう!」「うん!」俺はチャリンコの後ろに横向きに由香ちゃんを乗せると全速で丘へと近づいた。見ると、海への洞窟に何か作っているではないか?しかも、不気味な宇宙服に身をつつんだ怪しい奴らが小型潜水艇で軍港の方へ向かったのも確認された。スパイとしてもぐりこむのか、爆破するつもりに違いない。これは大変だ!しかし、その前にもっと切羽詰ったことに・・・。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」まるで金星あたりから降ってきたとも思われる悲鳴。しまった。自転車のところに残してきた由香ちゃんが捕まってしまったらしい。由香ちゃんを助けなくては!しかし一方で工作員を倒さなくては!

     ・・こうなったら、博士から授けられたこの力を使う決意をするしかない!

「バルディ・チャージ!」俺の体が一瞬紫色の光に包まれる。そして燃え尽きる体。そしてその瞬きが消えたとき、俺はダークメタリックパープルの甲冑に覆われた戦士、バルディバンにその身を変えた。ゴーグル越しに光る電子眼。外観だけではなく、今の俺の体は全身の95パーセントがメカで出来たサイボーグだ。力は人間のときの5(自慢じゃないが僕はもともと普通の人間の2倍の力をもっていたから、普通の人間の10)のパワー。100メートルを3秒で走り、銃弾をはじき返し、ビームは吸収する無敵の体。そう、俺はバルディバン!

「トォォォっ!」ひと飛びで由香ちゃんの方へ飛んだ俺は腰のホルスターから万能光線銃バルディシューターを取り出し、工作員めがけて発射した。狙いたがわず工作員の脳天を吹き飛ばした威力。由香ちゃんも無事だ。しかし嗅ぎつけた新手が迫る。

 「さあ、由香ちゃん、君も!」「ええ!さっきのお返しをしてあげるわ♪」

「バルディ・チャージ!」由香ちゃんの甘い叫び声が聞こえるや否や、由香ちゃんのセーラー服はピンク色の光に焼き尽くされ、光の人型となり、その光が消えると、そこにはメタリックピンクの鎧をまとったサイボーグの姿、バルディーナが!

 「バルディーナ、ここは頼む!海軍基地が危ない!」「オーケー♪ま・か・せ・て♪」(全身メカなのに、素顔も仮面の下なのに、なぜか由香ちゃんなんだよね・・)

 俺は海へジャンプして、そのまま潜水艇をキックして粉砕し、周りをマクロサーチャーで確認すると、すぐ丘へと戻った。実は・・・。

 案の定だった・・・。

「えーい♪」「きゃあ♪」はじめバルディーナははしゃぎながらバルディシューターを乱射して敵戦闘員を追い散らしていた。

だが、その一弾がある工作員のゴーグルを直撃したときだった。そこからはずるずると脳髄が垂れ下がり、組み込まれたメカが食い込んだ様子が見て取れた。バルディーナの電子スコープ・マクロサーチャーは、これを常人の数倍の精度で視認し、脳に伝えた。バルディーナの視力は、バルディバンである俺よりもさらに優れたものなのだ。実は初めて銃を手にした彼女、普段虫も殺さぬ彼女は、宇宙サイボーグとはいえ、人間をその手で殺してしまった。

しかも、それを超人的視力で(しかも、コマ送りで)見てしまった・・。先ほどの威勢はどこへやら、「キャァ・・・、イヤっ」の悲鳴とともに彼女は失神し、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。そして、股間の装甲が左右に少し開いたかと思うと、冷却水を失禁してしまった・・・。

 それを見た工作員たちは、興奮して群がってきた!バルディーナ大ピンチ!

ボン!ぱん!バン!危機一髪、彼らの頭は吹き飛んだ。「間に合った・・・。」バルディーナを抱き起こすバルディバン。

 更に群がる敵に、ついに伝家の宝刀バルディ剣を抜く。真っ二つになっていく敵。バルディーナも、なぎなたとバルディシューターで援護する。

 そして、ついに敵のボスが現れた。それは、海老のような姿をした宇宙人だった。

「グゴゴ・・・。俺様はロブ星出身のグロテスター戦闘隊長、エビラー様だ」と宇宙人は名乗った。(注、バルディバンのメットには、宇宙翻訳機がついている)

 「キャァ、ざりがに!ざりがによ!」赤い鎧と緑に光る目、そして巨大な鋏。身長は馬場さんぐらいだ。こいつは強そうだ。

 俺たちは、コンビプレーでこいつを倒すことにした。すなわち、バルディーナの攻撃バリアー(本来拡散して自分や対象物を守るバリアービームを収束して打撃にするもの)でひるんだところを、剣で両断、という作戦だ。

 ビビー・・・・・・・・・・!バルディーナの胸の二つの膨らみが僅かに隙間が出来たかと思うとそこからピンク色のランプがせり出し、敵めがけて放射される!ピンク色の光の束は螺旋を描いて収束され、ザリガニに命中。同時にバルディバンは高く跳び、剣を振り下ろす!「グシャ!」

やった!見事敵の右腕を切り落した!つづいてこんどは左を!「ガシャ」しまった。剣を挟まれてしまった。しかも、異常なパワーだ。仕方なく剣を小さくもどして今度はキックとビームのコンボにしようとテレパシーでバルディーナに合図。さあ、行くぞ!

 そのときだ・・・。急に俺はめまいがしてきた。体が重い・・・。この鎧は体の一部なので重さは感じないはずだ・・。だめだ・。体が思うように動かない。まさか、サイボーグ体の拒絶反応か・・・・。畜生、もはやこれまでか・・。ザリガニは動けない俺にむかってのしかかってきた。しかも、信じられないことにさっき落とした腕がまた生えてきた!大ピンチ!

 そのとき、俺とザリガニの体をピンク色の光が撃った。そして、2体は全く別の反応をしめした。すなわち、敵はひるんで一瞬もだえたのに対し、俺はわずかだが力が湧いてきたのだ。それは、バルディーナの攻性バリアーだった。敵にとっては打撃となるが、この光を吸収できる俺にとってはかえってプラスになる成分が含まれていたのだ。

 「隼人くん、しっかり!エネルギー切れよ!早くわたしのところへきてチャージして!」 

 うかつだった。バルディバンは信じられないパワーと戦闘力を発揮する代わり、生体エネルギーの消耗が激しく15分しか戦えないのだ。

しかし、バルディーナが一緒にいれば、エネルギーチャージして何度でも復活できるのだ。

 敵がひるんだ一瞬をついてバルディーナのいる大木の下へと急ぐ。うなづきあう二人。

     ・・・。バルディーナの股間の装甲が左右に開く。バルディバンの股間の装甲が下へスライドする。すると2体の合体装置が現れる。

「エネルギー・チャージ!」性交の要領で抱き合う2体のサイボーグ。すると、ふたたびものすごい力がみなぎってきた。これならやれる!

「これでおあい子、ネ♪」仮面だけを外したバルディーナ=由香ちゃんはにっこり微笑む。黒髪が潮風に流される。やつぱり、可愛い(はぁと)

 一方、敵はさきほどのダメージから回復するため、脱皮をおこなってふた周りほど巨大化していた。両者とも力は最強に。

 バルディバンの剣が勝つか、エビラー隊長のハサミが勝つか!勝負は一瞬だった。

 エビラー隊長は、まるで伊勢海老のグラタンのように真っ二つになり、同時に燃え尽きて赤いカラだけを残したのだった。

 洞窟にのこっていた潜水艇と書類は研究所員に連絡して押収し、洞窟内のほかの施設は工作員の死体ともども焼き尽くしておいた。

 俺たち二人のはじめての戦いは終わった。しかし、グロテスターとの戦いははじまったばかりだ。がんばれ、新ヒーロー!

一番星の瞬く夕暮れの海岸の道を、家路にと急ぐ二人であった・・・。

第一話・完。