第35話 すもも園危機一髪!
火星人及びエドワルド黒太子との激闘、さらにその後ワルモナイトの巨大ミサイルを受けてボロボロになった隼人と由香。だが疲れを癒すまもなく、細川博士からの緊急司令が入った。
「隼人、由香・・・お疲れのところ悪いが・・今すぐ帰還してくれたまえ!君たちが火星で戦っている間に、浦賀の造船所が昆虫軍団に襲われたのだ。今、香織君が迎え撃っているが・・・苦戦している。頼む!」
「判りました博士!行くぞ由香ちゃん、地球に向けてスクランブルだ!」
「OK!」既に合体している2人は、バルディライナーになって地球に急いだ。
その頃、浦賀ドックでは、地球独自の技術で作られた初の宇宙戦艦「扶桑」が建造中だった。しかし、アブのような昆虫怪人の大群に襲われていたのだ。
香織は、単身迎え撃つ。今回の出撃に当り、右胸を回転速射砲に換装し、ベルト給弾により半永久に打ち続けられるようにして敵の大群に挑む。
彼女の基本設計は由香のプロトタイプだけあって由香とほぼ同じであったが、パートナーを失った彼女は、生殖や宇宙開拓の必要がないので(生殖能力は一応持っている)、自ら志願して純戦闘用に再改造を施され、胸に武器を取り付けられるようになっていたのだ。しかし、両方の胸を取り外すと、生命維持に必要な女性ホルモンが得られなくなる為、片方の胸は残すように改良された。
これらの改造は、自ら設計し、仁子の手によって改造されていた。
「嗚呼、仁子・・・もっと、もっと・・・わたしをもっと強く改造して・・・」
今や香織は、仁子の手によって再改造されることが最大のエクスタシーになっていたのであった。
それはさておき、群がる敵に火を噴く香織のバストバルカン!
次々打ち落とされるアブ軍団だが・・・多勢に無勢。ついにクレーンが倒れ、扶桑は破損してしまった。
「うわーーー」崩れ落ちる鉄骨。下敷きになる作業員たち。だが、身をもって多くの人命を救助した1人の男がいた。赤橋高校ラグビー部主将の段田大輔だ。
大輔は遠征費や生活費を稼ぐため、ここでバイトしていたのだ。彼は鍛えぬかれた肉体で鉄骨を受け止め、取り除き、30名もの命を救ったが、自らは鉄骨の下敷きになってしまったのである。
「扶桑」を破壊したアブたちはいよいよ香織に群がるが、香織は乳首が焼け焦げるまで射撃を続け、アブたちを沢山撃墜したものの、力尽きてしまった。
しかし、最後の力を振り絞り、アブのリーダー格に対して左胸(オリジナル)からバリヤーカノン(本来拡散して相手を包んだり,身を守るバリヤーを、塊にして発射したもの)を浴びせ、これを追い払った。
戦う力はもう残っていないが、サイボーグであり、かつある程度自己充電できる女性サイボーグである彼女は、力を振絞り逃げ送れた工員たちを助けた。その中に段田の姿も・・・。
「段田君!香織は応急手当を試みたが、病院に連れて行かないと危険な状態であった。だか、そのときアブの第2波が襲来し、もう1基のクレーンが倒れた。そして香織はアブたちに再び立ち向かう・・・もうエネルギーも砲弾もない・・・
そしてその間に、段田は行方不明になってしまった。
隼人と由香は一体・・・?
その頃、地球を目指す隼人と由香は・・・
「うわわーーーーっ!」
なんと、放射能を浴びて巨大化し、凶暴化した火星人に囚われてしまったのだ。
叩き斬ろうとバルディスターになったのが判断ミスだった。四肢を完全に触手で絡め取られ、動きを封じられてしまった。大ピンチだ。火星人は口を伸ばしてエネルギーを吸い取ろうとする・・・!
「隼人君・・・!」「由香ちゃん・・・」
バルデイスターが火星人の襲撃で帰れない今、大ピンチを迎える地球・・。
しかし、アブたちは香織の捨て身の戦いと、扶桑の建造を妨害するという目的を果たしたため一度引き揚げた。
香織はすぐに細川博士と仁子の手で修理された。
香織はサイボーグである自分より、段田のことが心配であった。
段田は一体どこに・・・?
所変わってここは、「すもも園」。孤児院兼私立小学校・幼稚園兼託児所である。
独逸人とハーフのハインリッヒ城之内教授と、その妻栄子(通称ジョー先生)が経営する理想の学園で、孤児たちに農作業を教えながら自立と教育を施し、小学校まではここで学び、中学はここから通い、中学を卒業すると進学又は自立できるようにしている。ここの生徒は優先的に奨学金がもらえるのだ。また、孤児でなくとも、一時預かりを行なっている。
段田はここのOBだった。
「あっ!ダン兄ちゃんだ!先生を呼んで来よう!」
段田は、傷つきながらも、生まれ育ったこの「すもも園」にたどり着き、納屋で昏睡状態になっていたのである。
「まあ、ダン!」
ジョー先生(39歳)は子供たちと一緒に作業していたが、駆けつけ、抱き起こす。
「せん・せい・・。ただいま」
ダンは再び倒れた。
先生は、今小学校高学年の子供たちと一緒に農作業をしていた。先生の甥であるエミール城之内(エミール)、悪戯者の半谷富男(トミー)、太っちょの須田太(スダッフィー)、ネクラで嘘つきの豆野樹(ジャック)、手が器用な根本宏(ネッド)、そして紅一点のおてんば娘の原田杏(アン)の6人だ。
「わーい、ダン兄ちゃんが帰ってきたぞ!」みんなは大喜びだが、
「シー。ダン兄ちゃんは怪我してるのよ。静かに寝せて上げなさい」
先生は、ダンの手当てをしようとしたが驚いた。めちゃくちゃに傷つき出血しているのに、骨折や内蔵に至る傷はないのだ。香織による応急手当も完璧だった。
「この子は・・・むかしからそうだったけど、人間離れした超人的体力の持主だわ・・・」
その日の夜、ダンは懐かしい先生や後輩たちに囲まれ、学園内で獲れた有機栽培農産物をふんだんに使った食事にありついたのである。
「ダン兄ちゃん、ラグビー教えて!」
「バーカ、杏は女の子だろ?」
「何よ!」張り倒される男の子たち。杏のおてんばぶりにはだれもが目を丸くする。
とりあえずサッカーで遊んでやった大輔。そしてその後の掃除の時間・・・。
悲劇が起きた。
掃除当番は杏と須田だった。
「キャーーー!蟷螂のお化け!えーい、あたいがやっつけてやる!」
「生意気なガキね。それよりお前、こいつを知らないか?」
蟷螂のお化けは、ダンの写真を見せた。
「しらないわ!えーーい、あっちに行け!杏はモップでカマキリンダを打ち付けた。」
「生意気な!殺してやる!」
「キャーー!」
杏の悲鳴を聞いた先生が駆けつける。
「あ、杏!大変、しっかりして・・」
「先生、かまきりのおばけが・・・」
「わたしの子供たちはこれ以上指一本ふれさせないわ!」
ジョー先生はスカートを自ら裂き、蹴りを入れて応戦した。先生も若いときはおてんばで「蹴りの栄子」「キックのジョー」(旧姓は町田だが、なぜかジョーという渾名だった。おてんばだったため男の名前で呼ばれたためと思われる)と言われていたのだ。
「小娘だけでなくババアも何て生意気なの!まとめて切り刻んでやる!」
「キャー!」先生もついにブラウスを切り裂かれ、豊満なバストがあらわに。
もう一太刀・・・というときに、
「先生!」
「貴様・・よくも先生を!」
「探していたぞ!貴様、アブノーマルの落としたディスクを持っているだろう?それを渡しな!」
「よし、返してやらぁ!」ダンはディスクを握り潰してしまった。
「あっ貴様!」
なんと、カマキリンダはアブノーマルが香織に打ち落とされた時落としたディスクを拾ったダンを追ってすもも園を襲ったのだ。
ディスクには、キングビートル2世とワルモナイトの間の重要暗号が記されていたのだ。しかし、大輔によって破壊されてしまった。
怒り狂ったカマキリンダは、大輔に切りつける。だが、超人である大輔は、逆にカマキリンダの鎌をへし折ってしまった。
「キャーーーー!」
「消えろ化け物!」
「おのれ・・アブノーマル!あちきを援護して合体せよ!」
するとアブの大群が飛来して合体して、すもも園を襲う・・・。絶体絶命だ。さすがの大輔も巨大昆虫には敵わない。香織の修理も完了しない。アーデルブルク一家は独逸に住んでいて駆けつけられない・・・まさに絶体絶命のビンチ・・・。
そのとき、空が真っ赤に光った。
一気に駆け下りる赤い火の玉。やがてそれは紫の巨人に!ぼくらのバルディスターだ!
「おのれバルディスター!どうしてここへ!」
火星人にわざと絡ませて強引に大気圏突入したのさ。火星人は焼け死んだ!今度は貴様の番だ虫けら!」
「アブノーマル、やっておしまい!」
アブノーマルは自在に空を飛び、口のドリルと手のビームで攻撃してくるが、バルディスターにとってはまさしくアブに刺された程度の損害であり、羽を毟り取られ、焼き殺されてしまった。
「覚えていろバルディスター!」
捨て台詞を残してカマキリンダは去った。
「隼人、由香、何で来たんだよ、俺様1人であんな蟷螂なんて・・・」
「悪かったな段田!」
「痛!」
「あら、段田君怪我してるじゃないの・・・怪我人はおとなしくしてなくっちゃね。」
「ヘヘヘ。」
「皆さん、ありがとう御座います。わたしも子供たちも幸い軽い怪我で済みました。
隼人さん、由香さんも今晩は是非」
隼人と由香はジョー先生にバルディバン、バルディーナであることを知られてしまったが、子供たちには内緒にしてもらった。
子供たちは、カマキリンダとアブノーマルを大輔が倒したと信じている。
「すごいぞダン兄ちゃん!」
「あたし、大きくなったらダン兄ちゃんのお嫁さんになってあげる!もう決めちゃった!」
「そりゃないよ杏・・ボクのお嫁さんになるって言ったじゃないか」
「ハハハ、トミー妬いてる」
段田は、ここの子供たちの英雄であったのだ。そしてそれはこの事件によりさらに確信的なものへと変った。
子供たちの笑顔が戻った。地球は間一髪守られた。
隼人と由香も、今日は子供たちの良きお兄さん、お姉さんとなって一緒に食べて踊って遊んであげたのだった。
子供たちは大喜び。
だが、細川博士は痛感した。
「隼人と由香が留守の間の戦力が欲しい・・・。このままではいつになっても火星以遠には行けない・・・」
続く。