第28話 憧れの宇宙へ
隼人、由香にとって最後の夏休みがやってきた・・・。2人は、この夏休み,将来への夢への実験も兼ねて、5日間の宇宙旅行に飛び立つことになった。とはいえ・・2人きりではなかったのだが・・・。
由香の叔父、細川博士は、そもそも、宇宙開発のために隼人と由香を改造し、バルディバンとバルディーナとした。ところが、グロテスターの地球侵攻により、これを迎え撃つ戦闘用サイボーグに用途変更されてしまい、中々宇宙に飛び立つことが出来なかった。なんと、宇宙開発用サイボーグでありながら、まだ一度も宇宙に飛び立っていなかったのである。
豪州沖大海戦、昆虫軍団との対決ののち、シルバーナイトとの一騎打ちを除き隼人と由香はグロテスターと戦うことがなく、また、隼人と由香のほかに、独逸のアーデルブルク博士が、対グロテスター用兵器の開発に成功したこともあり、この機会にいよいよ実験を開始することになったのだ。もちろん、油断は出来ない。グロテスターは滅びたわけではない。態勢を整えているだけだ。ただ、彼等の内部での分裂・対立は泥沼化しつつあったのだ。
エメロード星からの亡命者、いずみ、そして同じく白鳥座からの亡命者で由香の母であるマザー・ガラシャの言、さらに捕虜や敗れた騎士たちの証言から、怪人軍団長・ワルモナイトこそが、悪の黒幕であることが明らかになり、利用されているグロテスター本星(ロイヤル星人)もまた、殖民星や獣人同様、ワルモナイトの犠牲者である一面を持つことが徐々に明らかになってきたのである。そして遂に地球人類の前にその醜悪な姿を現したワルモナイトは、全身が髑髏で構成された年齢・国籍・性別・人種・構造・動力源一切不明の邪悪な不死身の怪物であった。
さて・・細川博士は、助手の香織及び仁子を伴い、隼人と由香の最終調整に取り掛かっていた。
「へぇ〜これが隼人君と姫の体・・・」2人がサイボーグと知っていても、改めてその内部機構解剖図を見せられると友人たちも驚く。
「わたしも由香ちゃんと同じ仕組みになっているのよ」香織が解説した。
そして、彼等とともに計器を操作するメガネの男は、遠藤醇一。仁子、珠美、永田と同じく、隼人と由香の班メイトで、仁子が転入するまでは学校1の秀才と言われた男であった。細川博士は彼の才能を見抜き、助手に加えた。これから半年間英才教育を施し東大工学部に入れる予定である。ところが・・・
少々頭の足りない珠美とスケベの永田までが、くっついてきてしまった。もとより2人は、隼人と由香の正体を既に知っており、やむをえずつれていくことになった。結果的にこの旅行は班旅行を、細川博士と香織と言う成人2人が引率する形となったのだが・・・。
ロケットやシャトルなどを使わない、恐るべき旅だったのである。
「準備はよいかね?」
「叔父様、大丈夫よ。」
「僕も問題ありません」
「じゃあ、おねがいね」
「はい!いくぞ由香ちゃん!」
「うん、隼人君・・・」
「バルディ・クロスチャージ!」
既に変身していた2人は、結合してチャージし、さらに合体融合して戦闘巨人バルディスターとなった。
そして、博士たちの乗った司令コンテナを手に取る。
「頼むぞ隼人」
「由香ちゃん、変形だ」
「OK♪」
バルディスターは手足を折りたたみ、宇宙重爆撃機バルディライナーに変形し、コンテナを腹に抱いた。
実はこのバルディライナーへの変形こそ、2人の実験の最大の問題である。今までも敵との戦闘で変形したが(大気圏内を飛行する際はこの形になる)、本来の宇宙探査はこの形で行い、必要に応じて人型のバルディスターや、2人に分離・縮小したバルディバン/バルディーナとなるわけで、これこそが2人の本来の姿ともいえるのだ。
4、3、2、1・・・・コンターーーック!
バルディスターは全力推進して、今相模湾を飛び立った。
ぐいぐい加速していく。コンテナの中では、プロティーナに変身した香織と宇宙服に身を固めた博士、仁子、遠藤、永田、珠美が必死にGに堪える。
そしてついにバルディライナーは大気圏を離脱し、地球と月の中間地点の重力安定空域に到達した。
「あ、綺麗・・思わず珠美は声をあげる。永田と遠藤も宇宙は初めてだ。というかそれが当たり前で、宇宙に行ったことのある細川や香織、宇宙で育った仁子は特殊な人間である。宇宙用サイボーグの隼人と由香でさえ初めてなのである。その2人は、宇宙船の姿になっていた。
「良し、隼人、我々を切り離したまえ」
「了解!」
バルディライナーは司令コンテナを切り離すと、バルディスターに変形した。
「見て・・・隼人君・・地球もお月様もまんまるだわ・・・」
果てしなく広がる宇宙と青い地球に2人は感激した。隼人は実は月の生まれである。しかしそれは15年も前のことであった。3歳の時、両親の事故死(実はグロテスターの偵察隊の攻撃)に伴い、地球に来たのである。
宇宙に描ける夢は誰より大きく、グロテスターに対する憎しみは誰より強い隼人。
バルディスターの視点は、融合している隼人と由香にも伝わる。二人は、完全に一体化していながら、独立の意思も持ち合わせている。まず、合体して機体を構成している二人がいて、その全運動神経をつかさどる隼人の意思がある。あたかも隼人は10倍に巨大化したような感覚を持っているのだ。一方で、その中枢部には、由香の人工子宮がそのままセットされていて全てのエネルギーを生み出している。そしてその中では、合体を解除した際の、次の隼人と由香の生身の肉体が用意されており、最初から結合した状態で胎児のように羊水に納まっている。バルディスターの機体は、2人のアーマーを構成していたバルディ合金が2人の愛の精神エネルギーで膨張・実体化したものであり、エネルギーを抜くと急速に集束して隼人と由香の肉体に吸収され、2人は初めからサイボーグとして解除のたび新しく生まれ変わっているのである。
つまり、隼人の中に由香がいて、その中にまた2人がいるような構造になっている。そして、その思念は、裸で抱き合った2人の姿として通信モニター等には映し出されるのだ。
「よし、合体、変形、大気圏突破いずれも成功、2人の生命及び機体に損傷零、大成功だ・・。我々も宇宙に出られたぞ。おめでとう隼人、由香・・・」
「ありがとう叔父様」
「では次の実験に入る・・・。分離せよ」
「え、今ここでですか?月面別荘に着いてからではなく?」
「そうだ。今ここでだ。今回の旅行は今後数千年から数万年掛けて行なわれる壮大な計画の第一弾なのだ。悪いが遊びではない。私も香織君も仁子君も、そして遠藤君も覚悟は出来ている・・・まあ、オマケ2人は置いておいて・・・」
「いやん!オマケはひどいわ!」
司令を受け、分離する二人。巨大なバルディスターは一瞬輝くと見る見る縮小し、等身大の隼人と由香の変身した2体のサイボーグに分離した。
「いつまでもくっついてないで離れろ」
「え、でも・・・」
「キャァ!」
いきなり宇宙空間に投げ出された2人は、体の制御が出来なくなり、おかしな姿勢でもがき始めた。丁度泳げないものが海で溺れるように・・・。2人は通常の宇宙飛行士の訓練さえ受けずいきなり放り出されたのだ。
「ひどいわ叔父様・・由香、お股が裂けちゃう・・助けて隼人君・・・」
「ぼ、ぼくも体が制御できない・・あ、流されていく・・由香ちゃん、博士・・・」
2人はバラバラに漂流しはじめてしまった。実験は失敗か・・・?
そのときである。
「もう、見てられないわ。博士、私が教えてきます。」
ヘルメットを被りなおした香織が飛び出す。
「頼んだぞ香織君」
「ビーーーー」
香織は胸からバリヤーを発射して2人を引き寄せた。
「あ、香織さん、ありがとう御座います」
「情けないわよ隼人君。宇宙最強サイボーグが泣くわよ。いいこと?この宇宙では360度上下左右、球体の視界と移動ができるのよ。基本さえマスターすれば、あなたたち2人はこの宇宙を、文字通り自由自在に行動できるようになるのよ。この宇宙は、星の近くを除いてはほぼ無重力。だから体の出力は余り関係ないの。少しだけ力を出せばその方向に慣性の法則で移動できるわ。スラスターはむしろブレーキ代わりね。あと、この宇宙には本来、上下左右と言う概念はないのだけど、わたしたちは元々が人間だから、頭が上で足が下なのが自然よね。それで私たちの踵には重力制御装置がついているのを忘れた?」
三人の踵には、重力安定装置が内蔵されている。地球上とは重力の異なる星でも接地重量を一定に保つ装置である。この開発に実は細川は難儀した。
女性である由香や香織に取り付けるのには、踵の面積が狭すぎたのである。しかし香織を使った数々の実験の結果、踵の形状のみをハイヒール型(体の他の部分は、出来うる限り裸の女性のボディラインを踏襲)とし、縦に重ねることによって所定の性能を得ることが出来たのである。
ちなみに、隼人の踵には重力安定装置が片足につき4つついているが、香織と由香は2個重ねて左右に装備している。元の体重が半分以下なので、装置そのものの数も少なくて済むのだが、それでも最初の計画の1基ずつでは所定の性能を発揮できなかったのである。元々ハイヒールには馴れている二人、問題なく使いこなしていた。
「判った?まず足を下に。それさえマスターできれば、あとは肩、肘、足の裏、そしてお尻のスラスターを使って姿勢を制御できるはずよ。判ったわね?じゃあ、手を放すわよ」
香織は手を放した。
一瞬、のけぞったが2人は姿勢の制御に成功した。手を取り合って喜ぶ二人。細川博士も涙を流して狂喜した。
「見ているか加藤、めぐみ君、耕司君・・・ついに隼人と由香は完全に成功したぞ・・・」
元々運動神経バツグンの隼人と、順応性の高い由香は、すっかり体の制御にも馴れた。「隼人君・・」「由香ちゃん・・」見つめあい、ダンスを踊り始める二人・・・
「いいなぁ・・」モニター越しに羨ましそうに見とれる珠美と仁子・・。
だが!
「うっ!いきなり何をするんですか香織さん!」
なんと、星空を背景にワルツを踊る隼人を、いきなり香織が回し蹴りしたのである。
「妬いてるのかな、姐さん・・・」
「こら、そんなことないわよ!」いやらしい視線で見る永田を嗜める仁子。
「隼人君、浮かれている場合じゃないわ。言ったでしょう、この旅行は重大な実験だということを。一つの実験が成功したら、次のステップよ。そう、宇宙空間での肉体の制御の次は、戦闘訓練よ!さあ、かかってらっしゃい!」
「お、おう!」戸惑いながらも応戦する隼人。だが驚いたのは香織のキック力であった。
「戦う前に一つだけ聞いていいですか?香織さん、再改造を受けたのですか?」
「それは戦ってみれば判ることよ!」
香織のキック、パンチは考えられないほど強力であった。一方、力いっぱい反撃しようとする隼人は逆につんのめってしまった。
「ヒントをあげるわ。最初に、体の制御の仕組みを教えたわね?この宇宙空間では、ミサイルや機銃なんていらないのよ。そう、この石ころでも」
香織はただよってきた小石を投げつけてきた。それは、なんと隼人のアーマーをへこませたのである。
「そうか!」
「わかったようね。そうよ。この宇宙では筋力や動力は関係ないの。一旦加速がついた物体はどんどん加速してぶつかった対象を貫いてしまうのよ。しいて言えばそれでも隼人君、あなたのほうが私より有利だわ。それは力が上回っているからではなく、質量が上回っているからよ。それがわかれば、女の私なんて怖くないはずよ。こう見えても私もサイボーグ。死んだりはしないから思い切り!」
隼人は、その運動神経を集中して香織の動きを見切った。そして、そのキックをガッチリ受け止めてしまった。
「香織さん、一撃離脱ではたしかに腕力、動力は関係ありませんが、こうして組んでしまえばやはりパワーがものを言いますね!」
香織をぐいぐい締め上げる隼人。
「由香ちゃん、何をしているの!私を援護よ。体の制御をマスターした隼人君に私一人で敵うわけないでしょう?」
「は、はーい」
由香はおっとり刀で隼人に接近してくすぐり、香織を離させた。
「行くわよ隼人君!今度はわたしの番よ!えーーい♪」
由香は反動をつけて飛び蹴りをお見舞いしてきた。初めてとは思えない、体の機能を駆使した高度な技である。だが隼人は一枚も2枚も上手であった。
「いやん♪エッチね・・・」隼人はそのキックも受け止め、股を裂いてしまった。ぱっくりと開く合体装置。隼人と由香は、互いに欲情してしまった。
「このままチャージしよう。そろそろエネルギー切れだ。しかし、地上よりも長く戦えるぞ」
「ふふ。それは重力や大気の干渉がないからよ。そのかわり・・・体の機能の密閉には気をつけるのよ。宇宙には空気や水がないから、体の中で循環させなくてはならないわ。
兎に角戦闘訓練も合格よ。さあ、存分に楽しみなさい・・・」
「ありがとう御座います香織さん。よし、お墨付きを貰ったぞ・・行くぞ由香ちゃん!」
「ええ、いいわよ・・えっ?いやん・・そんなはずじゃ・・」
2人はいざ結合、という段階になって、中々上手く装置を接続できないでいた。
「焦っちゃダメよお二人さん。由香ちゃん、女の武器を一つ忘れてない?」
「あ、そうか・・♪」由香は胸から誘導バリヤーを照射した。
「やったぞ!入った!」
「うん、もっと中に入ってきて・・・♪」
「幸せそうねお二人さん・・さて、お邪魔虫は母船に戻るとするか・・・」香織が司令室に戻ろうとしたそのとき。
「隼人君、由香ちゃん!敵よ!」
なんと、月の裏側から円盤が出撃してきたのである。円盤は小型で、一つ一つにサイボーグ怪人が乗って自在に攻撃してきた。
隼人や由香より前に、司令室が危ない。
(キャー)
香織の必死の防戦も空しく、被弾してしまった司令室。幸い、中の博士たちは無事だったが、月の引力に引かれて落ちていく。中の空気も抜けていく。宇宙服の中の酸素は持っても1時間あるかないか・・・。
15体のサイボーグたちは自在のフォーメーションを組んでくる。
隼人と由香も立ち向かうが・・・。相手は15体、こちらは2体。しかも宇宙での戦闘は初めてである。
「隼人君・・外装がちがうけど・・彼等はラガーボーグよ!」
「何、あのラガーボーグ!」隼人と由香は、奥多摩工業高校の不良ラガーメンを改造した変形・合体・連携自在のラガーボーグを苦心の末破ったが、その間にさらに2組30体のラガーボーグが完成してしまったのだ。そのうちの1組か、又は新たに改造した15名が宇宙用に改良されて襲ってきたのだ。名づけて、「スペースラガー」!
さらに背後には、前方後円墳のような形をした戦艦が現れた。
「ガハハ。これが我等超人軍団・怪人軍団の連合旗艦、イセキダー15世だ!行け、ラガーボーグよ!
そのブリッヂでは、ワルモナイト、三浦博士、工藤博士が!
ワルモナイトの命令で、工藤博士が素材を作り、それを基に三浦博士が完成させた脅威の大戦艦だった。
戦艦からの艦砲射撃がスペースラガーたちを支援する。絶体絶命だ。
「由香ちゃん、一か八か、合体して戦おう」
「OK!バルディ、クロス!」
2人はバルディスターになった。敵もスペースラガージャイアントに合体した。
これで一対一だ。だが、宇宙での戦いに慣れている彼等は、トリッキーな分離で翻弄し、装甲やパワーでも上回っていた。特に、装甲と重量が上回っていることは、この宇宙空間では絶対的な有利な条件であった。しかも、落ちていく司令室を助けなくてはならない。一応香織が守っているが、サイボーグとはいえ女の細腕1本では防ぎきれない。幸い、隼人と由香の挑発に乗ってラガーメンが合体したため、何とか難を逃れたようなものだが、流れ弾や戦艦からの攻撃もある。残された時間は少ない・・・。スペースラガーたちは一度分離して、ラグビーボールをキックしてきた。先が尖ったラグビーボールは宇宙空間ではさらに威力を増した。ボコボコにされて怯んだバルディスターを取り囲むようにして再合体した彼等に締め上げられるバルディスター!
そのときである。
バルディスターは衝撃を受けた。なんと、締め上げていたラガーボーグが分離している!
背中越しに巨砲が命中したのだ。誰だ!
「ガッハツハ、俺様だ!七海玄八少将様だ〜」
「七海のおじちゃん、どうして?」
なんと、七海少将が敵から分捕った戦艦、ロイヤル・ダーク改め「金剛」に乗り込んで駆けつけてきたのだ。技術者の菊本造船大佐も乗っている。彼等も、宇宙へ打って出るための試験に出てきたのだ。
「戦艦はワシが引き受ける。隼人はラグビー野郎をやれ!」
「七海さん、助かります」
「バカモノ、敵はまだ生きているぞ!合体させるな!」
「由香ちゃん、僕たちも分離だ!1人ずつ倒すんだ!いいかい?この宇宙では手加減は命取りになる。必ず仕留めるんだ。彼等はもう人間じゃない。いいね!」
「わかったわ・・・。えい!」
由香の尖った爪先は、この宇宙空間では凶悪なカッターとなる。意外にも、隼人より先に敵の首を取ったのは由香だった。
「キャア!」一瞬顔を背ける由香だったが・・・。やはり心優しい彼女は根本的に戦闘には向いていなかったようだ。
「よし、ぼくも負けてられないぞ!」勝手を知った隼人の前に、もはやラガーボーグは敵ではなかった。
「キャプテンはこいつだな!こいつを殺せば、合体できなくなるはず!」
隼人は、8番と激しい空中戦の上、これを倒した。
コントロールを失った他のメンバーは、隼人に各個撃破されたり、金剛に特攻したりして全滅して行った。大勝利だ。
どうやら宇宙用に改良したラガーボーグは15人しかいなかったらしく、補欠は出てこなかった。
「覚えていろバルディバン!」
イセキダー15世は退却、金剛も退却して行った。
「あ、博士たちを助けなくては・・・」
忘れていた。博士たちの命が危ない!
酸素が少なくなり苦しい息の中、細川は司令を出した。「合体してくれ。そしてわたしたちを収容して欲しい」
「了解!」
その間にも、まず体の一番小さい珠美が力尽きてきた。
「タマちゃん!」
香織は、マスクを脱ぎ、自分の内蔵した予備酸素を口移しで珠美に与えた。しかしこれで2人は動けない。唇が離れたら珠美は死んでしまうからだ。またサイボーグとはいえ、とっておきの体内酸素を供給してしまえば香織の命も危ない・・・。
間一髪、バルディスターは司令室をキャッチした。
「珠美君、良く頑張った・・もう大丈夫太だ。」
バルディスターの胸のカバーが開く。そこは、胸の中央ではあったが、どことなく女性器のような形をしていた。
「さあ、叔父様、早く入ってきて・・」なんと、クリトリス状の部分に由香の顔が浮き出ている。「ゲっ!姫・・」永田も失神しそうになった。
狭い隙間から入っていくメンバーたち。弱っている珠美を先頭に、女性陣から。最後に博士と香織が入るとカバーは閉じられた。
「さあ、みんな裸になるんだ」細川は命令した。肉のような襞のあるぶきみな部屋の中。命じられるままに生まれたままの姿になった6人。
「よし、この管を臍に刺せ」
「え?」
「早くしたまえ!」
細川に命じられるままにする一同。すると一瞬めまいがした。次の瞬間・・・ピンク色の光に包まれた空間に浮かんでいる彼等。
「ようこそ、わたしたちの中に。」
中央では抱き合っている隼人と由香が・・。
「ゲヘっ!」欲情した永田は珠美を襲おうとしたが、すり抜けてしまった。
「なんじゃ?」
「永田君。我々は今、実体のない精神体だ。我々の体は先ほど、由香の人工子宮内の胎盤に接続されている。わたしたちは思念だけでこのバルディスターの中枢にいるのだよ。
隼人と由香は合体後はいつもこの状態でわたしの司令を受けていたのだ。」
「なるほど・・・わかりました。」
「さすがは遠藤君だ。飲み込みが早い。」
「ここは絶対安全な場所だ。隼人、月面別荘に行こう。そこで合体解除して我々を降ろしてくれたまえ。地球への帰還もこの方法で行くからな諸君」
「了解」
一堂は、ついに月に降り立った。そして・・・
「加藤・・お前の息子はやったぞ!」
一堂は加藤夫妻の墓に手を合わせた。
「父さん、母さん・・僕はここに帰ってきました・・。この由香ちゃんを連れて・・。そしていつかきっと姉さんも取り戻して見せます。姉さんは生きていたんです・・・」
隼人の幼い頃の戦慄の光景がフラッシュバックする。グロテスターの襲撃でこの月面別荘からカプセルに乗せられて打ち出された隼人を庇って、壮烈な爆死を遂げた母。そして父。
改造され仮面と一体となつたこの顔では涙は流れないが、彼は号泣していた。
「隼人君、由香が、由香がついているわ。お父様やお母様の夢はわたしたちが・・・」
「由香ちゃん・・」
由香を抱きしめる隼人。一堂もらい泣き。
「なにを湿っぽくしてるのよ!お待ちかね、レクレーションの時間よ!ここは宇宙空間だから、性差や改造とは無関係に思いっきり楽しめるわ」
香織がサッカーボールを取り出した。宇宙での4対4でのサッカーだ。
そしてフォークダンス。ヘルメットの中のみんなの笑顔は見ることはできないが、彼等は今、月面旅行を満喫していたのだった。
そして数々の実験を繰り返しあっという間に楽しい5日間は過ぎ去り、地球に帰った8人。だが、敵には恐るべき大戦艦イセキダー15世が完成していたのだった。そして地球に帰った隼人と由香を地中で待ち受けている強敵たち・・・。
一方、平野造船中将は、分捕って改造した「金剛」を元に、同型艦の「比叡」を完成させていたのだ。
まだまだ苦しい戦いは続く。負けるな隼人・・・!
終わり。