26話 ヒーロー不在!地球の危機

 

バルディバン(隼人)とバルディーナ(由香)のカップルは、同じくカップルで挑戦してきた、グロテスター昆虫師団のボス、キングビートル夫妻との壮絶な戦いの末、敵夫妻の合体したエンペラビートルの羽を毟り取り、その継目から内部を焼ききってこれを倒した。

だが、その際、毒燐粉を浴びてしまい2人は昏睡状態に陥ってしまった。

 その上、クイーンビートルの産んだ幼虫に寄生された隼人の左肩が動かなくなってしまい、通常、合体・分離再生すれば全てのダメージが回復するはずが、何故かより激しく損傷した部分は元に戻ったのに、左肩だけは未だに完治していなかったのだ。

 しかも、由香までもが毒に冒され倒れてしまった今、由香の自然再生能力を待つ以外、2人の復活は見込めなかった。

 

 その頃、由香の兄、隆之は「隼人と由香を聖ポピー修道院に連れて来い」という謎のメッセージを受けた。だがとても2人を連れて行ける状況ではない。そこで彼は、とりあえず単独で修道院に乗り込むことにした。だが、彼は大のクリスチャン嫌いであった。それは幼いとき、クリスチャンだった母が亡くなったとき、神道を信奉する細川家のことを神父が悪く言ったからであった。逆に、隆之は伴天連など信じたため母は早死にした、とさえ思っているほどだったのだ。

だが、今彼は妙な胸騒ぎがした。ポピーは亡き母が好きな花だった。

 そして、聖ポピー修道院に着いたが・・それは、殉教大学の本部でもあった。折りしも、グランドでは高等部のアメリカンフットボールの練習試合が行なわれていた。

 実は、隆之はこう見えて、鹿鳴館大学のアメフト部のラインメンであった。(現在、戦争のため休部中)ただし、そのレベルは低く、とても殉教に太刀打ちできるものではなかった。

修道院訪問とメッセージの謎解きを忘れ、試合に食い入ってしまった隆之。

 試合終了だ。

殉教のクォーターバックの鮮やかなボール裁きに魅入っていた隆之であったが、ヘルメットをとったそのクォーターバックを見て驚き、思わず声をかけてグランドに乱入してしまった。

「由香!お前、病院で寝ているはずがこんなところで野郎に混じってアメフトとは・・はしたないぞ。叔父貴や隼人には何て言ったんだ・・・それになんだよその短い髪は・・・?」

 

「フフフ。ぼくは由香姉さんではありませんよ、兄さん・・」

「何?我輩を兄さんだと?悪いがちょっとさわられろ」

「いゃん♪」

「ゲ!男だ・・・。お前は何者だ?由香にそっくりな顔の上、我輩を兄と呼ぶとは、いかなる了見か答えよ!」

「あの紙飛行機は僕が飛ばしたんです。そうですか・・姉さんはそんなに酷いんですか・・。

では、この羽を姉さんに上げてください。きっといいことがありますよ。

そして・・姉さんが元気になったら、兄さんと姉さん、それに叔父様と隼人兄さんの4人でここを尋ねてください。合わせたい人がいます。今日のところは、お引取り下さい」

「待て、貴様の名前を聞いておこう」

「天平・・細川天平です」

「ほそかわだと?・・・まあ、怪しい奴だが悪者には見えぬし何より由香にそっくりだ。このお守りの羽は必ず由香に渡す。だが、今度合った時は、全てを残らず白状するのだぞ」

「はい。急いでください。早くその羽を姉さんに・・・」

突如現れた、由香にそっくりな顔をした美少年、細川天平とは何者?隆之は戸惑いながらも病棟に急いだ。

 

 その頃、上陸した敵戦闘ロボはコンビナートを破壊しながら東京に向かっていた。しかしバルディスターがいない今、対抗しうるものはない。望型駆逐艦でさえ、牽制するのが精一杯で、その鉤爪にやられたら紙のように裂けてしまう。戦闘機も無力だ・・。

 

 「博士、行かせてください!」

「香織君、無茶だ。いくら強化されたとはいえ君のビームでは敵の目を潰すので精一杯だろう。それにどうやって近づくのだ。自重したまえ。隼人と由香の目覚めを待つんだ」

「いいえ待てません。こうしている間にも敵は・・わたしに考えがあります。」

「とりあえず言ってごらん」

「ジェットウイングと、バイオニックミサイルを使います。それで上空から近づき、敵の急所を狙います。巨大ロボとはいえ、隼人君と由香ちゃんの性エネルギーから抽出した超絶エネルギーを詰めたあのミサイルを一発でも受ければ必ず倒れます。私の左右の胸に一発ずつ。それで敵のロボを2体・・・」

「馬鹿な。ウイングはともかく、あのミサイルは危険だ。それにあれを装備すると君のバリヤーやビームは使えなくなる上、人工肺の能力も1/3に低下、また乳腺よりのホルモンがなくなるため、君の活動時間は30分になってしまう。許可できない」

ジェットウイングとは、バルディバンとバルディーナが空を飛ぶための追加装備であった。だが、由香のサイボーグ体の突然変異により、エンジェルウイングを身につけたため,由香用のものは余っていたのだ。

「行かせてください。地球を、日本を・・・わたしは守りたい。今それが出きるのは私だけなんです。」

「・・・仕方ない。準備したまえ。その前に・・」博士は、いきなり香織の唇を奪った。

「必ず帰ってきてくれたまえ・・銀座ランタン亭を予約しておこう。」

「特上のワインと神戸牛のコースをお願いするわ」

博士は、香織の胸にバイオニックミサイルを2基装着した。そしてジェットウイングで飛び立つ香織。

 

 「行くわよ怪物。女の意地、正義の怒りを受けてみなさい!」

だが、一発目のミサイルは惜しくも外れてしまった。これで、万が一もう一発で敵ロボを一体倒したとしても、もう一体の東京上陸は避けられない。

だが香織は焦らなかった。ギリギリまで近づき、もう一発・・・。

「ズィーーーーーーン」

「やったわ!」敵のロボは粉々に爆散した。

「博士、ランタン亭はおあずけね。あの世で耕司と戴くわ。隼人君、由香ちゃん、若、珠美、仁子・・さようなら。マリコ、もう一度勝負したかった・・」

 そう、香織ははじめから自爆するつもりだったのだ。

ところが・・・「「キャー」」

香織の仮面と翼に凶悪な鋏が。失速する香織をさらにガッチリと捕えた悪の爪。

もう自爆どころか、その胴体がちょん切れる寸前だ。大ピンチ。

「香織君、危険だ。肉体を放棄して脳だけになって脱出するんだ!」

ところが、敵のロボがのけぞり、香織を放してしまった。隕石のように落下する香織。

これまた絶体絶命だ。そのとき、黒い影がさっとあらわれ、香織を捕まえた。

怪鳥のように見えるその巨体。すわ、新手の敵ロボか、それとも獣人軍団の怪鳥か・・・。

だが、良く見るとそれはロボットであり、独逸の国籍マークが記されていた。

「お嬢さん、ゆっくり見物してな。あとは我々に任せてもらう。いくぜ兄者!」

「おう!」

 先ほど、怪鳥はコンテナのようなものを落としていたが、そのなかから水陸両用の重戦車が現われ、さらにロボットに変形した。そしてそのロボットの背中に、先ほどの怪鳥がドッキングしたのだ。

「私の名は、ミハイル=アーデルブルク大尉。栄光ある独逸陸軍軍人にして、世界一の科学者ゲオルグ=ハインツ=フォン=アーデルブルグ博士の長男だ。そしてこのロボはケーニッヒティガー3世」

「おれはその弟のヘルマン=アーデルブルク空軍少尉だ。このメッサーコンドルの力を見せてやるぜ」

 

「おお、アーデルブルク博士がついに・・・」

細川博士の数少ないライバルの1人、独逸のアーデルブルク博士が、陸戦用巨大ロボと、それを空から支援し、また合体することによって飛行能力を与えるメカ怪鳥を完成させたのだ。

埋立地で一進一退の攻防を繰り広げる敵ロボとアーデルブルク兄弟。そしてついに、分離合体を駆使し、火力と装甲に勝る兄弟が敵ロボを倒したのだ.歓声があがる。

もう、バルディスターだけに頼らずともグロテスターのロボに対抗できる戦力を人類は持ったのだ。

「ムハハハ・・細川よ。地球を守るのは貴様等日本人だけではない。そして我々独逸の技術こそ世界一、いや宇宙一なのじゃ」

アーデルブルク博士の高笑い。

 さらに・・・沖合いに巨大な水柱が上る。

すると・・骨組みだけになった、巨大な鯨が浮かび上がってきた。

それはなんと、ワルモナイトの旗艦、プリンス・オブ・ホエールズではないか!一体だれがこの殊勲を?」

 

「お兄様、わたしもやったわ!ヘルマン、迎えに来て。わたし海から出られないの」

なんと、博士の長女、ローレライ中尉の乗る、人魚型潜水艦その名も搭乗者と同じローレライが、胸から発射した巨大魚雷でブリンス・オブ・ホエールズを大破したのだ。

よろめきながら浮上し、宇宙への脱出を試みるホエールズ。

「まて、逃がすか!」

怪鳥メッサーコンドルは、こんどはローレライと合体、翼をもつ人魚型ロボになって敵を追った。

だが・・・

「ゲッハッハッ・・バルディスターならともかく、貴様等ごときがらくたに敗れる我々ではない。死ね!」

なんと、プリンス・オブ・ホエールズから、巨大なドクロが飛び出し、手足が生えて全身ドクロの巨大サイボーグが現れたのだ。

そして、骨型サーベルでメッサーコンドルの翼をたたききる。

「キャー」

ローレライとヘルマンは落ちていく。幸い、下は海であった。

「よくも妹と弟を。ガイコツめ、この私と勝負だ!」

ケーニッヒテイガーとドクロロボの激しい戦い。

全く互角だ。だが、敵にはダメージがあってないようなもの・・・。

「なんということだ。生命反応もメカ反応もない・・・」

ミハイルは唇をかんだ。

「グヘヘへ・・この程度が地球最強のロボットか?」

形勢逆転。一方的にやられるティガー。

だが。

「こうなったら最期の手段だ。さらば祖国よ、弟よ、妹よ・・」

ティガーは自爆した。「グロロロー」

ドクロのサイボーグも木っ端微塵に。壮烈な相打ちだった。

「兄者!」「兄さん!」

ところが・・爆発の中から、一つの小さなドクロが残り、怪しく光る目を輝かせながらこういったのだ。

「グロロ・・・。地球人もなかなかやるな。それに免じて今日のところは引き揚げてやろう。ワシの名は・・怪人軍団長、ワルモナイト・・・不死身のワルモナイトだ。

ワシは絶対死なない。絶対不死身なのだ。グヘッヘヘヘ・・・また合おう」

 

「あれが、あいつが・・・悪の張本人、ワルモナイトだったのか・・・」

ミハイル大尉の命と引き換えに東京は守られ、ワルモナイトの旗艦も大破、彼自身も胴体を失った。だが、ワルモナイトは不死身なのだ。そして貴重な戦力、ケーニッヒティガー3世を失ってしまった。そして香織とローレライ、ヘルマンまでもが重傷を負ってしまった。

 もう地球には、残された戦力はないのだ。ここにまた獣人か騎士が襲ってきたら・・。

だが、隆之が帰ってきた。

 天平と名乗る不思議な少年からもらった羽で由香のほほをなでると、みるみる赤身がさし、由香はその愛くるしい瞳を開けた。

「お兄ちゃん!」

隆之は、一部始終を話して聞かせた。

「わたし、修道院に行くわ。隼人君、起きて・・・」

由香が隼人にキスすると、隼人も目覚めた。だが、左肩はなんとか動くものの、どういうわけかまだ力が出ない。

 「叔父様を呼んでくるわ」

だが、細川は香織に付きっ切りだった。

「仕方ない、我輩たち3人で行こう」

 

こうして3人は、聖ポピー修道院に向かった。そこで彼等を待つものは・・・。

そして香織は助かるのか。

その頃、一機の円盤が傷ついたホエールズとすれ違った。

「遅かったか・・・だが、私は行かねばならない。そして必ず彼をしとめて見せる。騎士の誇りにかけて。あの母艦のやられようから見て、怪人に倒されるような男ではあるまい・・」

一体彼は何者だ?

 

続く。