ここのところ、隼人に元気がない・・。夜寝ているときうなされたり、由香を強く求めたりする・・・。うわ言によく聞き取れないが「姉さん・・」といっているようにも聞こえる。
 彼には年の離れた姉が一人いた。しかし、両親がグロテスターに惨殺されたとき、姉の乗った脱出カプセルは宇宙に流され、回収されなかった・・。生き残ったのは彼一人である。そして、細川一家に引き取られ、由香と婚約して現在に至る。
 彼があの「事故」にあったのは、3歳。4歳の誕生日の少し前・・・。姉の真理は、10歳年上の13歳・・中学1年生だった。生きていれば今、27歳である。まだ中学生なのに、背が高く、細身で、髪の長い、美少女だった。そして年の離れた弟である隼人を誰よりも愛してくれた。
 由香の長い髪に、姉の面影を求めている一面もあったのだ。

 「姉上!」以前の戦いで、隼人と由香が助け出した、座毘駆馬少佐が、恩人である二人よりも、海軍の仲間たちよりも、そして実の兄で陸軍大将の義廉よりも先に、姉である岸理矢少将の胸に飛び込んでいく姿・・・。あれを目の当たりにして、姉とのつらい別れを思い出したのだ。しかし、普段はごく普通に勉学にスポーツに、そしてグロテスターとの戦いに取り組み、そして由香との愛を育てていた彼だったが、ふと、さびしくなったとき、独りになったとき、姉に甘える弟を見たときなど、いたたまれなくなる・・・。しかしそんな彼の気持ちを察してか、由香の愛がやさしく包むのだった。
 さて、そのころ、人気を博していたモデルあがりの女優がいた・・・。三浦麻里子。長身・長髪、くびれた腰、大きな胸、小さい尻、長い足を持つ、絶世の美女だ。しかも、彼女はA級ライセンスを持つオートレーサーでもある。最近はタレントとしての活動が多く、テレビにもよく出てくる。ある日曜日。
 隼人は、彼女に釘付けになる。嫉妬する由香・・・。
 「隼人くん!こんなテレビ見ないでトレーニングよ!疲れているなら、由香と一緒に寝るのよ」
「・・違うんだ・・・。」
「え?何が?・・もぉう、デレデレしちやって・・・」
 無理も無い。隼人はタレントなどに興味が無く、テレビもほとんど見ない。まして、由香以外の女性は眼中にない。その隼人が、テレビに映る三浦麻里子に釘付けになっている・・・


「似ているんだ・・・。」
 「誰に?」
「姉さん・・。名前も似た『マリコ』と「マリ」・・・・」
「違うわ。隼人君の姉さんはお月様で亡くなったと聞いたわ。それに、お姉さまは「真理」で、あのひとは「麻里子」。他人の空似よ」
 「そうだね・・。姉さんが生きているはずないよね・・。さて、ロードワークにいくか」
「まって、由香着替える」
 二人は、体操服に着替えて、ロードワークに出発。例によって、堅く足が結ばれている。二人三脚で裏山を一周するのだ。二人の呼吸はばっちり。体力のないはずの由香も遅れない。いや、隼人が大きな手で後ろから押している感じで歩調を合わせている。由香の、丸いお尻の弾力と、風に乱れて首に絡む髪のサラサラした流れが、隼人にとっては心地よい。そのときだ。一台のバイクがぶつかりそうになった。こっちは二人三脚なのでよけきれない。とっさに由香をかばい、隼人はわずかにかわしきれず、バイクと軽くぶつかった。
 「キキキーっガシャン」バイクは転倒した。隼人は無事である。紐も衝撃でちぎれたので、由香も尻餅をついた。
 「大丈夫ですか?」隼人はライダーに尋ねる。黒尽くめに薔薇の刺繍の繋ぎを着たそのライダーは、起き上がり、ヘルメットを脱ぐと、長い髪が現れた。


「あ、あなたは三浦・・・ま・・」
 「ごめんなさい。私としたことがちょっと考え事しちゃて・・・。こちは怪我ないけど、そっちは・・。彼女が転んだみたいだけど・・・」
 「僕は平気です」「由香も大丈夫よ」
「そう、よかったわ・・。でもキミ、どこかで会った事無い?」
「・・・。テレビでは良く見かけます。それに、あなたは僕の・・」
「ダメ、それをいっちゃ」由香に止められる。
 「ふふ。仲いいのね、キミたち。じゃあ、あたしは、これで・・」メットをかぶりなおした彼女は、走り去っていった。
 帰宅後、「かっこいい!由香もバイクのろうかしら?」
 「なんだよ、この前はあんな女あつかいしたくせに。それに由香ちゃんにはバイクは無理だな。スクーターで我慢我慢」
「もう、失礼なんだから。そんなこと言う隼人君にはおしおきよ」
由香はいきなりキスしてきた・・。いつもこれだ。
 「ごめん、ごめん・・・。じゃあ、生クロスで勘弁して・・・・」「やったー」
 これが、自称宇宙最強のサイボーグ戦士の日常である。だが、セックスは二人にとっては生身の人間の食事に相当するものなので、攻めないでやって欲しい・・

 さて、ここはうらびれた洋館・・・・。変人科学者・三浦右衛門博士の屋敷だ。
「お父様、ただいま」
「おお、麻里子か・・。ん?どうしたのじゃ、その傷は・・」
 麻里子の父だったのだ。
「ちょっと単車で転んだの。平気よ。じゃあ、シャワー浴びてくる・・・」
「・・・麻里子や、許しておくれ・・・。これもわしら親子が生きるためじゃ・・・」
 鼻歌を歌いながらシャワー浴びる麻里子。だが、突如意識を失う・・・・。
その異変を、あらかじめ知っていた、いや仕組んだのは、父の三浦博士だ・・。
 全裸の麻里子をベットに固定した博士のほほを伝う涙・・・。
 「不憫な子よ・・・。一度はその命を落とし、わしとあの国の者らに蘇生され、そして今、その体を切り刻まれようとしている・・。許しておくれ。逆らえば二人とも殺される・・・。そして、わしの技術の証明もしなくてはならんのだ・・・。」
 非情のスイッチが押される。麻里子の長い髪は無残に剃られ、頭蓋が切開され、脳が取り出される。内臓も全てマジックハンドで腑分けされていく。代わって、いろいろなメカが組み込まれていく。そう、博士は今、麻里子にサイボーグ手術を施していた。
 取り出された内臓も、捨てるのではない。これらから細胞核を抽出して、あとで注入するのだ。
綺麗に剃られた陰部が今、陰唇から中の子宮までそっくりくり貫かれ、その場でメカにセットされ、再び戻される。
今三浦が行っている手術は、バルディバン・バルディーナの手術と似ていた。というより同じだ。
 違うのは、あきらからに肉体組織とは異なる兵器類が埋め込まれている事だ。
 同じ女性サイボーグの由香と比べ、母乳の授乳組織が残り、またバリヤー発生装置を兼ねた由香の乳房と異なり、そこはガトリング砲になっていた。目のレンズも光線を出せるようになっている。人工子宮の中に、エネルギー増幅装置と卵巣が組み込まれ、再び体へと戻される・・。
そして、最後に培養カプセルに入れられ、そのまま2、3日放置すると、手術は完了。こうして、麻里子はサイボーグとなった。


それからしばらくしてである。陸軍の官舎に、何者かが侵入して、破壊活動を行った。警備に当たっていた宿直兵は、全て下半身裸で、全身の生気を吸い取られ、干からびて死んでいた。
そして、施設の一部が破壊されるとともに、国防上の機密も奪われてしまった。グロテスターの工作員に違いない・・・・。
 また、防衛施設庁長官が、ペニスを切断され暗殺されるという事件も発生した。

 細川博士は、いざというときのために、隼人と由香にも、警戒するよう呼びかけた。

 そんなある日。不思議と事件はとまり、警察が躍起になって犯人を捜査している中、二人は、ジョギング中に、再び麻里子と出合った。
「あら、この前のお二人さん・・。相変わらず仲いいわね。」
「こんにちわ。じゃ、また・・・」(麻里子に見とれる隼人の腕を抓る由香)
 「・・・・やっぱり、姉さんに似ているなあ・・・」

 そして、事件はその10分後におきた。しかも、すぐ近く。爆発炎上する装甲車工場・・・!
隼人と由香は、大急ぎでそこに向った。なんと、そこには麻里子が倒れている・・。
 「そういえば、麻里子さんは、この工場の方へ走っていったな。きっとこの爆発に巻き込まれたに違いない。博士のところに運んで、手当てをしてもらおう」
「ええ。その前に、由香が少しやってみる・・・」由香は、応急処置をした。ゆっくりと目を開ける麻里子。
 「あ、キミたち・・。ありがとう。ひどい目にあったわ。でももう大丈夫よ。」
 「気をつけてください。最近、なぞの組織による怪事件がおきていますから」
「そうよ。きっと宇宙人の仕業だわ・・」
 「そうかもね・・・。じゃあ」バイクに跨り、走り去る麻里子。二人はそれを見送ると、爆発した工場跡にこっそり忍び込んだ。警察もまだ到着していない。サイレンの音が迫る。ところが、それが突如消えた。
 現場に急ぐパトカー、消防車・・・。それに道を譲る麻里子のバイク。無事すれ違った、まさにその瞬間だ。バイクは転倒し、麻里子は悶え苦しむ。どす黒い光(紫とも濃い赤ともつかない暗い光)に包まれた彼女の体は、透き通り、中にはメカが見える。やがて、黒と赤の光は固体化し、彼女は異形の戦士にその姿を変えた。魔女か、般若のようなその姿は、変身前と同じ、いやもっと長い黒髪を振り乱し、パトカーを襲ったのだ。炎上する車列。やっと脱出した警官に、鞭が唸る。びしっ。したたかに打たれた警官は気を失ったが、なんと、魔女は、彼を逆レイプした。股間の装甲が左右に別れ、ぐいぐい吸い込んでいく。やがて、彼は全身の生命を吸い取られ、無残に根を食いちぎられ、果てた。別な警官は、鞭が脳天を直撃し、即死した。
 そこに、隼人と由香が駆けつけた。
「出たな!グロテスターの怪人」
「由香ちゃん、行くぞ!」゜オーケー!」「バルディ・チャージ」二人は腕をクロスして、バルディバンとバルディーナに変身した。この変身方法だと、変身時間が半分に短縮される上、活動時間は長くなる優れもので、二人同時に変身するとき便利な機能だ。
 問答無用に迫る鞭。その鞭が、バルディーナの首に絡む。


「キャア」悲鳴を上げて苦しむバルディーナ。すかさず、剣でこれを切り落としたバルディバンは、振りかぶってサイボーグ魔女に斬りかかる。魔女も、短剣を額に当て、襲い掛かってきた。二人の体が交差する。そのときだ。二人は、同時に苦しみだした。
「う、うわわわわわわっ、く、苦しい・・」「あっ、うううう・・ぁぁ」
 「隼人君!」バルディーナが駆け寄る。
バルディバンと魔女の変身が解除される。「!」
「麻里子さん!」なんと、魔女の正体は麻里子だった。しかし、様子がおかしい。うわ言に、「・・はーくん、パパ・・・ママ・・あ逃げて・・」とつぶやいている。
隼人は「おねぇ・・・」と
 そして、先に起き上がった隼人は、麻里子をゆすり起すと、
「姉さん、姉さんなんだな?」と尋ねる。
 「・・・はーくん?隼人?」
 「そうだよ、僕だよ、思い出してくれたんだね。分かる、由香ちゃんだよ。よくままごといっしにしたでしょう?」
「マリさん・・?麻里子さん・・・・・」

 やはり、麻里子は行方不明だった隼人の姉・マリだったのだ。
「残念だけど違う。あたしは三浦右衛門の娘・麻里子・・・。あたしに弟などいない。どけ」
「でも、さっきはーくん、隼人って・・・」
「う、うう・・・苦しい・・・あ、あたしは・・・あたしは誰?」再び苦しみだした麻里子。
 そこに、グロテスターの兵士と三浦博士を乗せたヘリが飛来し、トラクタービームで麻里子を回収、飛び去ろうとする。バルディシューターで撃墜しようとしたバルディバンをバルディーナがとめた。
「麻里子さん・・・いやお姉さんが乗っているのよ」
「ねえさーーーーーーーーん!」
 空に向って叫ぶ、バルディバン。
「畜生、グロテスターめ。姉さんを帰せ。そして元に戻せ・・」
「・・・隼人くん・・・・」
 そして、ヘリのなかで意識を取り戻した麻里子、いやマリは、
「全て思い出したわ・・・。あたしは、中学のとき、家族月旅行のとき、宇宙人に襲われ・・そのあとの記憶がなかった。そして、気が付いたらお父様。あなたの一人娘として暮らしていた・・・。
 でもあなたがこいつらの仲間だったとは・・パパとママの仇の一味だったとは・・。
悔しい・・・。で、でも、今まで育ててくれてありがとう。」
「麻里子・・・。わしを許しておくれ。わしは、わしは・・・」
「三浦博士、これ以上喋ると二人とも処刑ですぞ。まずは基地でお嬢さんの修理を」
銃口を突きつけられた三浦博士と麻里子・・・。
 真相は、こうであった。
あの襲撃の際、マリを乗せたカブセルは、グロテスターによって回収された。そして、地球人のデーター採取のため、徹底的に調べられた。そのデーターは、驚くべき結果だった。なんと、地球人とグロテスター人の体組織は、ほぼ100パーセント同じで、血液型の種類やたんぱく質も全く同じだった。過去にも似た人種はいたものの、ここまで似ている種族は珍しく、しかも、銀河の正反対にいたことが不思議だったのだ。そのデーターを元に、地球に第一次工作隊を侵入させ、拠点を築くとともに、地球人協力者を得た。その中に、細川博士の師匠で、サイボーグを提唱した三浦博士がいた。彼は、時期尚早と反対する細川、加藤ら弟子たちを押し切り、強引に死刑囚をサイボーグ化し、しかも不完全なため、死なせてしまい(失敗してもいいように死刑囚を選んだのだが)そのため、変人、人道無視の学者のレッテルを貼られ、追放されてしまったのだ。しかし、彼は研究をつづけ、今度は一人息子を改造したが、これも失敗し、これに悲観した妻は、かねてからの困窮もあり、まもなく病死してしまった。そこで地球乗っ取りを企むグロテスターと知り合った彼は、その優れた科学を学び、逆に地球の自然科学・物理を教え、相互協力関係を結び、そのエージェントになったのだ。そして、「まりちゃん」という名前しか覚えていないマリを「麻里子」と名付けて譲り受け、娘として育てたのだ。そして、バルディバンとバルディーナの解析が終わったグロテスターからの資料を基に、これを凌駕するサイボーグを作るよう司令された三浦は、反対したものの麻里子を改造して、恐怖のメカ魔女ブラデイ=マリーを完成させたのだ。マリーは、自らの意思とは無関係に、三浦または、怪人軍団のもつ司令ボックスからの操縦で変身し、暴れるのだ。そして、バルディバンたちの性交によるエネルギーチャージを曲解し、逆レイプにより男性の生気を吸い取る事で変身時の活動を維持するようにされてしまったのだ。
 そして、今弟の共振で記憶が蘇ってしまった彼女と、育ての父三浦博士に、悲劇が起ころうとしていた・・・。

 一方、姉の生存、しかしその姉が怪人に改造されていたという残酷な結末に、がっくりと力を落す隼人・・・。姉と弟に、さらなる苛酷な運命が・・・。
だが、彼には、バルディーナ=由香がいることを忘れてはならない。悲しみを二人の愛で乗り越えるのだ。

 つづく