新型駆逐艦を奪回せよ!(後編)
時に皇紀2670年9月・・・。細川総統による地球防衛軍結成以来、久々の水上艦艇による海戦が行われようとしていた。相手を撃沈していいなら、潜水艦や航空機、ミサイルで間に合うのだが、今回は勝手がちがう。出来うる限り敵艦を拿捕しなくてはならないのだ・・。
日本が誇る新型駆逐艦「幻」が謎の勢力に奪われて1月・・・。今やシーレーンを脅かす悪魔の海賊船となった「幻」。世界の盟主の名にかけて、なんとしてもこれを奪回しなくてはならない。
細川元帥自ら、旧式巡洋艦「春日」に座乗、精鋭・2水戦第1・第2駆逐隊が、これを捕まえようと、威風堂々と進んでいく。ひらめく旭日旗・・・。
しかし、敵は水陸両用の巨大ロボをも操る、謎の宇宙人なのだ。油断はできない。
「SOS・・・!清国の貨物船が襲われました」次々入る暗いニュース。しかも、下手人は日本の駆逐艦というのだから始末が悪い。しかも、この混乱に乗じて、豪州のポートダーウィンには、佐世保を襲ったロボットが上陸して暴れ、また海中へ去っていったという・・・!急げ!
その頃、「幻」のブリッヂでは・・。
「提督!まさか地球人がこれほどの艦艇を作ったとは!」
「うむ、我々の星の艦と違い、宇宙(そら)を飛ぶことはできないが、海上専用としては、我々のものより優れた部分もある。このままでは、我々の技術的アドバンテージも長くないな。徹底的に解析して、本国にデーターを送信せよ。」
立派なヒゲをはやした「提督」と呼ばれた長身の紳士が答える。
「しかし・・。出来うるならば、こんな海賊紛いのことはせずに、この星の一番の海の漢と、正々堂々の海戦をしたかったものだ」
「しかし、太子の命令ですから・・・。」
「本当だろうか?太子に限って、このような卑怯な作戦を考えるはずがないのだが・・・」
「我々グロテスターは紳士です。だが、野蛮な辺境の星の蛮族に対しては、許されるということではないでしょうか?ところで提督、作戦の第2弾に入りますので、母艦に戻りましょう」
「うむ・・。」
「幻」の右舷に渦が巻き起こり、巨大な宇宙船(というよりは、潜水艦に近い)が浮上する。
タラップが架かり、「提督」と呼ばれた者と参謀、乗員たちはこちらに乗り移り、代わって白装束の科学者と思われる者が乗り込んできた。
つづいて、例のロボが近くに現れ、下部のハッチにドッキングした。そう、この潜水宇宙艦こそ、グロテスターの先遣部隊旗艦の、戦闘母艦「ダークロイアル」だったのだ。そして、ヒゲの紳士は、かつてグロテスターが、気中海と呼ばれる星団を攻略したとき、英雄となった、サー・デームス・ウインタービル大将その人であった。騎士として、そして海の漢としての誇りをもった、大人物である。
さて、白装束の男が、「幻」から離れると、「ダークロイアル」は再び潜航し、あとには「幻」だけが残された。・・・?
そのころ、すばらしい高速で、危険海域に進む「望」以下8隻の駆逐艦に対し、細川一家を乗せた「春日」は追いつけないでいた。
「機関兵!もっとボイラーを焚け!破裂してもかまわん!」
細川元帥の怒号が響く。
「閣下、無茶です・・・。」
それを傍らで聞いていた隼人と由香は、クスっと笑ってうなづき合う。そして、細川博士のほうを見る。頷く博士・・・。
隼人と由香は、ブリッヂを抜け出した。
行き先は機関室・・・。そこには、今時?というぐらいの熱気と男くささの場所だった。上半身裸で、ねじり鉢巻の屈強の男たちが、そこにいた。
そこに、細川博士からの放送が入った。
「機関員は総員、上甲板へ!」
「ふざけるな!機関兵が持ち場を離れるってことは、自沈しかない!」
「繰り返す・・」
「よし、ワシが話をつけてやる!白いひげを蓄えた機関長が、飛び出す。
そこで、隼人と由香たちにすれ違う。
「何しに来た?ひっこめ」
「チュ!」由香はいきなり機関長のほっペにキスすると、隼人は同時にみぞおちを殴り、気絶させ、隣の控え室に運んだ。
「隼人くん、ほっぺだから許してね、チュ!」こんどは唇だ。
そして、二人は機関室に乱入して、そこを制圧してしまった。つぎつぎこびだされる機関員。
「みなさん、しばらく休んでいてください・・・」
機関室の中は、二人だけになった。猛烈に暑い。汗がほほを伝う。
「えーい、あついから脱いじゃえ!」由香は水兵服を脱ぎ捨ててしまった。
「こら、由香ちゃん、これから変身するんだから、脱がなくとも・・・」
そこに、博士からの指示が
「よし、準備はいいな。ボイラーの火を落したら、赤いレバーを引け。
「分かりました」
渾身の力でレバーを引くと、ボイラーとボイラーの間に空間が現れ、床からカプセルがせり出す。
「由香ちゃん、行くぞ」「うん。」
「バルディーチャージ・クロス!」
二人は、そのカプセルに入るや、抱き合い、同時に変身した。二人の身体は、そのまま激しく発光して、戦士の姿にも巨人にもならない。そのまま、激しく交わっている。尋常ならぬエネルギーが放出される。そう、本来合体巨大化するエネルギーが、ココに閉じ込められているのだ。
そして、「春日」は、突然、海面に浮き上がるような速度を出し、航海を続行した。
こんなこともあろうかと、細川博士は、「春日」を熱核推進に改造していたのだ。そして、熱核燃料の代わりに隼人&由香の合体パワーをも使えるようにして、非常時の超性能発揮を可能にしていたのだ。水上艦艇の概念を覆す異常な速度で進む春日は、駆逐隊に追いついた。
そして、遂に、日本艦隊は、「幻」を発見!直ちに駆逐隊は散開し、投降を呼びかける。だが、そのような事は通じない。いきなり、全周方向にミサイルを発射してきた。このミサイルをかわす事は、普通の艦艇にはほぼ不可能。しかも、視認できるほどの至近距離だ。だが、同じシステムを使う「望」型だけには、通用しない。敵の16本のミサイルと同じ数のミサイルが発射される。命中寸前に、上空で激しく激突するミサイル・・・。こちらの迎撃精度もまた、完璧だ。「望」型駆逐艦にミサイルを命中させるためには、望の迎撃ミサイルの同時発射数、16を上回るミサイルの同時発射が必要だ。しかも、艦隊を組んでいるため、仮に17本きたとしても、僚艦から迎撃できる。つづいて第2波!
つぎつぎ打ち落とされるミサイル。「矛盾」のことわざどおり、最強のミサイルは最強の迎撃ミサイルの前には無力。だが一方で、こちらも敵を攻撃する余裕がない。
しかし、なんとした事だ!完璧なはずの迎撃ミサイルを縫って、「幻」の放ったミサイルが、「雷」に命中!白煙を吹き上げる「雷」!しまった!先ほどのミサイル迎撃の際の破片がマストの一部を傷つけていたため、よけられなかったのだ。これも、旗艦からの誘導なら大丈夫だったのだが、訓練も兼ねて第2波は各自のミサイルでの迎撃を採った事が仇となった。しかし一方で、同じような不具合のみつかった「こだま」では、とっさにファランクスを作動させ事なきを得た。この差は、1月前に完成して、七海大佐のもと猛訓練をした「こだま」と、試運転もせず今日の日の戦いのため急遽引き渡され(竣工日は今日)「いかづち」の差、乗組員の質の差であった。
つづいて飛来した第3弾は、「光」が集中発射したミサイルで迎撃に成功した。
大破/炎上する「雷」!
各艦から、「幻」を撃沈していいか具申してきた。
七海は決断した。「水雷戦隊突撃!」
「細川閣下、お許しを!」
いっせいに飛び出す7隻の駆逐艦。そして、舷側に向けて、まだ使われていない新兵器、メガ粒子砲を試すときが来た。これは、熱核エンジン装備でなければ実用化できず、巡洋戦艦「八甲田」型にしか装備されていない。しかも、あまりにもの大型かつ強力さに、いまだ使われた事はなく、かつ、小型艦への装備は不可能とされていた。
しかし、出力を下げ、「舷側を貫通」することだけに(戦艦のものは、相手を一瞬にして轟沈・消滅させるほどのもの)絞った結果、可能になったのだ。なにも、相手を必ず轟沈させる必要はないからだ。さらに、出力を下げれば威嚇攻撃にも有効で、駆逐艦のもうひとつの任務である臨検にもその効果が期待されている。
「撃て!」
七海の号令で、ボタンが押される。すると、ほかの7隻も寸部たがわず同時に、赤いビームを照射。
「幻」の巨大なブリッヂにその光の束は命中。あくまで奪回を目指し、船体は狙わなかったのだ。
しかし、次の瞬間、一同は目を疑った。
「!」
なんと、無傷なのだ。グロテスターでは、メガ粒子砲などはとうに実用化されているため、コーティングがされていたのだ。
そして、そこにあの水中ロボと「ダークロイアル」も浮上した。
そして、激しい攻撃を開始してきた。もはや、レーザーやミサイルなどのハイテクで固められた艦と、異星人の未知の兵器の対決ではなく、巨鯨に挑む鯱の群れのように、七海率いる駆逐艦がダークロイアルに挑む。そこに、遅れて春日も到着、艦隊決戦となった。
しかし、敵にはロボットがいる。まず、大破していた「雷」が、ロボットの巨大な鉤爪に裂かれて沈没した。就航してから、1日もたなかった、あっけない最後であり、15人の乗員は全員運命をともにした。
ほかの7隻は、飛びかうミサイルやレーザーを巧みにかわし、迎撃しつつ、敵の母艦に肉薄した。
だが、切り札のミサイルは、迎撃のため使えない。そこで七海は古典的戦法をとった。戸惑う部下たち。かつて、駆逐艦には、魚雷発射管が標準装備されており、これで敵艦に肉薄攻撃するのが主任務だった。だが、戦いの様式の変化で、発射管はなくなり、のちに、対潜兵器として復活した。もちろん、「望」にも、対潜魚雷は装備されている。七海は、その魚雷で肉薄しようというのだ。
この攻撃方法は、本来望型の性能ともっともかけ離れたスマートでない運用方法であり、こんなことをするために造られたのではない。しかし、こんな使い方も出来るのだ。そのため、あくまで艦種は「駆逐艦」とされているのだ。
「ジュポ」次々飛び出す魚雷。至近距離からの攻撃でかわす事は不可能だ。次々あがる水柱!
前後して、周囲に散漫な水柱があがる。「春日」の旧式な6吋砲の射撃だ。
しかし、あれほど多数の魚雷が命中したのに、ダークロイアルは致命傷を受けていない・・・。
「地球にも、海の漢はいるようだ。私はうれしく思う。」
ウインタービル大将は、敵のあっぱれな攻撃に感心した。
「ならば、私も本気にならなくてはなるまい。」
ダークロイアルの甲板が割れると、砲塔がせり出してきた。そして、激しく砲撃してきたのだ。
一進一体の攻防・・・。ダークロイアルに群がる駆逐隊、それを妨害する幻、駆逐隊を援護する「春日」・・。細川元帥、七海大佐、そしてウンイタービル大将は、この戦いを心から楽しんでいる。
だが、そのような心を持っていないのが、悪のグロテスターだ。
この戦いに、あのロボが乱入してきたのだ。
「デブソン少佐!貴君は海戦が終わるまで待機を命じていたはずだ!」
「ハァ?聞こえませんなあ。こんなチャンス、ありませんぜ!」
ロボの操縦者、デブソン少佐は、ウインタービル大将の命令を無視して、駆逐隊に襲い掛かる。
「デブソン少佐、君は命令無視で軍法会議だぞ」
「ハァ?そういう提督こそ、散漫な指揮でチャンスをつぶしたと報告しておきましょうか、ハハハ・・」
「提督!あの男は!」参謀からの報告。
「そうだったのか・・・・。やはりな」
なんと、デブソン少佐は、怪人軍団のスパイだったのだ。
ついに、本性をむき出したデブソン少佐は、日本海隊だけでなく、ダークロイアルにも攻撃を仕掛けてきた。幻もダークロイアルにミサイルを命中させる。グロテスターの4軍団は、互いに手柄を争っているため、時には味方さえ殺すのだ。
「無念・・・。奴のようなものがわれらグロテスターにいた事が悔しい。残念だが撤退しよう」
「提督・・・・!」傷ついた母艦。その多くは、勇敢な日本の駆逐艦によるものだが、明らかに異なる爪痕も・・・。
母艦の周りに渦が・・・。
「勇敢な地球艦隊の諸君!わたしはグロテスター先遣艦隊司令長官・ウインタービル大将だ。
私は貴殿らと正々堂々の艦隊決戦をしたかったが、部下の裏切りでそれも果せない。今日のところは、卑怯者の誹りを受けても涙をのんで撤退する。次に合間見えたときこそ、正々堂々の勝負をしようではないか。そのときは、私も戦艦部隊を率いてくるつもりだ。さらば!」
このような通信を残し、ダークロイアルは消えた。各艦、爆雷を投下する・・・。それを、細川がやめさせた。
「・・・ウインタービルか・・。敵にも、海の漢がいたのか。これは、ワシも引退できんな、ハハハ」
「ウインタービルの旗艦を沈めるのは、この俺様だ!首を洗ってまっておれ!・・・・それにしても卑怯なのはあのロボットだ。そして、「幻」をまだ捕まえられないのか・・・」
そして、邪魔な上官が去ったデブソンは、その凶悪な本性をむき出しにして攻撃してきた。
そのころ、「春日」のブリッヂには、バルディバンとバルディーナに変身した隼人と由香が立っていた。すでに、機関は通常に切り替えた。
「僕はあいつを許せない。いくぞ、由香ちゃん。」「コクリ」。
細川元帥と博士も頷く。
「隼人、日ごろの鍛錬を忘れるなよ、そして由香を頼むぞ」細川元帥の激励を受けた二人は、仮面をかぶりなおすと、駆け出していった。
そして、ブリッヂから飛び出すと、その目の前で、まばゆい光とともに合体した。
バルディスターの登場だ。
しかし、なれない海の戦いに、苦戦する。
「くそっ!こんなはずでは?」苦悩する隼人に、細川博士からのアドバイスが。
「君の身体に不可能はない。念じろ。さすれば道は開く」
「そうよ、由香もついているわ。おさかなになりましょう!」由香の声がする。
するとどうだろう。両足がくっついて、足首からヒレ状のフィンが現れ、バルディスターは水中タイプに変形した。もともと、多目的なバルディスターは、空を飛ぶとき重爆撃機に変形できるが、水中でも戦える変形パターンがあったのだ。形勢逆転。鈍重な敵ロボの攻撃をかわすと、逆に押し捲り、ついに小島に追い詰めた。足場があればこっちのもの。バルディソードを抜き放ったバルデイスターは、一刀両断のもとに、ロボを両断、大爆発。デブソンは戦死した。
しかし、本題を忘れていた。隼人たちが、ロボと戦っている間にも、「幻」の暴走はとまらず、幻のはなった魚雷とミサイルが、寸部たがわず春日に迫る。あまりもの距離に迎撃ミサイルが撃てない。撃てば、春日にも当たる。そのとき、魚雷には「望」が、ミサイルにはバルディスターが割って入った。春日には、地球の指導者細川元帥と、宇宙位置の科学者細川博士が乗っているのだ。
間一髪、まず隼人は、望より早く魚雷に追いつき、切断。だが、ミサイルの方は食ってしまった。
はじかれる巨体。だが、ミサイルごときでやられるバルディスターではない。体勢をたてなおすと、二人に分離して、「幻」に飛び降りた。
試運転時から、「望」に出入りしている二人にとつては、迷路のような艦内も平気だったが、敵の仕掛けたトラップまでは気が付かなかった。
「きゃあ!」壁からせり出したマジックハンドにバルディーナがやられた。バルディバンはこれを両断して彼女を助けたが、こんどは自らが落とし穴に落ちてしまった。腕一本でかろうじて支える重い体を、今度はバルディーナの細腕がひっばる。なんとか、這い上がり、ブリッヂにたどり着いた二人が見たものは・・・・。
「キャア」バルディーナは目をそむけ、バルディバンの背中に隠れる
そこには、集中制御装置のあった部分に、人間の脳髄が直接セットされて、全艦をコントロールしていたのだ。
怒りに燃えていたバルディバン=隼人は、そのカプセルを叩き割った。照明が消える・・・。駆逐艦幻は、その活動を完全に停止した。動かなくなった幻は、望によって曳航されることになった。
そして、二人も望に移ろうとしたときである。
「待って!だれかいるみたい!」バルディーナ(すでにヘルメットははずして由香の素顔になっている)が叫び、船倉のほうへ駆け下りる。あわてて追う隼人・・・・。
「あ、いたいた!この人、干からびてるけどまだ生きているわ。」
バルディーナの両胸のカバーが開き、やさしい光が照射される。すると、そこに横たわり干からびていた若者の顔に、わずかに赤みがさしてきた。
よし、僕がおぶって帰ろう。
変身を解いた隼人と由香は、ある人物をつれて、生還した。その男は、幻が奪われたとき死んだと思われた、座毘駆馬少佐そのひとであった。うつろながらも意識を取り戻しつつある彼は、うわごとにつぶやく。「姉上、姉上・・・・」
隼人は、細川元帥、博士、七海大佐に、幻での出来事を報告した。
「そうだったのか・・。そこまで非人間的なことを・・・・。ワシは驚いた」
「ケっ!そんなことかい・・。」
「・・・しかし、これを実行したのは敵ですが、「望」型駆逐艦は、もともとこのように一人ないしは無人化できる設計だったのです。それを知った敵が実行したまで。我々は、もっと人間らしい船を作り、育てていかなくてはなりませんな。」
無事母港にたどりついた艦艇。「雷」を失ったことは残念だが、敵を倒し、幻を奪回し、その上死んだはずの駆馬少佐も生還した。
母港にたどりつくや、「姉上〜!」と叫び姉である岸理矢少将に抱きつく駆馬。それを見た由香はくすっと笑って、「隼人くぅん」と、キスをねだる。
パシッ!
「軟弱者!おまえのような弱虫は座毘家の恥です。あたくしの弟ではありません!」とびついてきた弟を、いきなりビンタする理矢少将。しかし裏腹にそのほほには涙があふれていた。人前で一度も涙をみせたことのない鉄の女の涙・・・。
そこに、細川元帥が近づき、
「国葬が挙げられなくて残念だったな。ところで若造、貴様はやはり少々潮気がたりんようだ。辞令だ」
そこには、このように書いてあった。「海軍少佐・座毘駆馬。本日付を持って、駆逐艦望航海長を命ず」
「七海に鍛えなおしてもらえ。それまで幻はおあずけだ。」
皮肉にも、新しい幻の艦長は、刈馬の親友でライバル、かつ岸理矢少将によって左遷された紫苑大将の息子の貴昴少佐だったのだ。
「小僧!そういうことだ!覚悟しろ」
ハハハハ・・・・楽しそうな笑い声が響く。
閣議の結果、あまりにも合理化しすぎた非人間的戦闘艦「望」は、帝国海軍の伝統にそぐわないとして、40隻の建造予定を半分の20隻に縮小し、戦没艦の補充を除き、新規の建造は行われない事になった。これには、大蔵省も大喜びだった。
いっぽう、冥王星のグロテスター太陽系方面基地では・・・
「ワルモナイト!貴様、余の名をかたってウインタービルに命令したな」
「ハァ、弁明はいたしません。若のやり方は手ぬるいと思い、行動したまで」
「クソ・・・」
決して一枚岩ではないグロテスター。勝ちさえすれば、どんな手を使おうとも、味方を犠牲にしてもいいと考えるワルモナイトら怪人と、騎士としての名誉が最優先される太子やウインタービルら正規軍の対立は、大きなしこりを残した。
また、ガダルカナル沖の海底基地では、ウインタービル大将が、戦艦部隊の増援を要請していた。
戦いは終わった。夕日と潮風が、由香の長い髪を、やさしくなでる・・・・・。