96話 地獄の暴走機関車
リバーストン公爵の領地のひとつ、スクア星にたどり着いた隼人と由香。途中、戦艦クイーン・エイザベスに乗る大魔女メデューサ王女の襲撃を得るも、エドワルド太子や麻里子の来援もあり、これを退けた。魔力を失った王女は、弟であるエドワルドに引き取られた。
城に到着すると、嬉しい知らせが入ってた。七海提督がレモネード星で水雷戦隊と合流し、こちらに向けて出航し、さらに後続に、なんと秘蔵の第一艦隊が来るというのだ。
いよいよ、グロムウエルの篭る大魔城グロパレスとの決戦は近づいたのだ。
ひとときの休息を得た二人。
だが、チャーミーとムーリンの意識は今だ戻らず、ユリア妃も、言葉を失ったままだった。
しかし、三人を比較的安全なこの星に残すことができ、今後の戦いが有利になることは不幸中の幸いである。
しかし数日後・・。
二人のもとに、挑戦状が届いたのだ。
「地球の勇者バルデイバンへ。私はフロンテ・ロコモーション子爵だ。我々を苦しめた貴君に敬意を表するが、この私が必ず倒す。ロボ体型にて来られたし。開拓星ヤバンバで待つ」とあった。
罠かもしれないが、行かなくては隼人の男が廃る。由香もうなずく。
「フロンテ子爵・・・堂々たる挑戦状だ。無礼のないように全力で彼を倒す」
「わたしは、全力で貴方にエネルギーを送るわ」
「隼人君、由香さん、フロンテは若いが中々の策士。どうか無事で」
「隼人,由香、十分にチャージしてからクロスするのだ。さあ、行け!」
公爵と博士に見送られた二人は、まずデッキで十分にチャージして過熱し、満を期して真っ赤な火の玉となり、バルディクロスした。
そしてバルデイライナーに変形し、ヤバンバ星に一直線だ。
二人の不在を狙った襲撃に備え、香織は待機した。
荒涼とする大地に降り立ったバルディスター。
「フロンテ子爵はどこだ?」見渡す限りの平原。
一方、こちらはフロンテ子爵。
「臆することなく来たな。よし、わたしの出番だ。転轍器作動!蒸気圧よし!左右確認!出発進行!」
カシャ ポイントが切り替わる。
ターンテーブルが旋回する。格納庫から飛び出すくろがねの塊。それは二条の軌条に滑り出した。
バルデイスターはレーダーの感度や視聴覚を研ぎ澄ませる。
そのときである。
「ボォっ!ボワーーーーーーーっ!」突如、雷鳴のような汽笛がとどろいた。
そのドラフトはどんどん近づいてくる。
ジュジユジュジュジュジュ・・・・・ボォーーーーーー!ジャンジャンジャン・・・ジュジュジュ・・・・
どうやら蒸気機関車がこの星で走っているようだ。しかし見たところ線路はない。
しかし、それはやってきた。機関車というにはあまりにも巨大であり、しかも線路を走っていない。
「勝負だバルディスター。私がフロンテだ。そしてこれがくろがねの馬・・・メナード号なのだ。」
「望むところだ!」
メナード号は、線路のないところはキャタピラで走るのだ。しかも、動輪直径や軸配置を変更することにより、どんな勾配や路面状態でも対応できるのだ。もちろん、線路があればその実力は完璧になるのだ。
ドームに備え付けられた砲塔から激しく砲撃しつつ突進してくるメナード号。
バルディスターは剣で弾を払い、銃撃して応戦するが、激しい黒煙と白煙のため命中しない。その間にもどんどん突進してくるメナード号。
目前に迫るその巨体に、バルデイスターは絶体絶命。
「隼人君!」バルデイスターの中の由香の意識は恐怖のあまり隼人の意識にすがりついた。
「僕を信じろ!」
ガシャーーーン シュッシュッ・・・プシーーーーーーっ ガチヤガチャーーーン!
時速703キロで突進してきたメナード号をバルディスターはがっしりと受け止めてしまった。
「やるな・・・。だがこちらも負けてはいられない。諸君、もっと石炭をくべるのだ。燃やせ、燃やせ・・・」
「アイアイサー」
部下たちは石炭をどんどん火室にくべた。赤々と燃え上がる炎。その炎の力がボイラーに漲ったとき、メナード号はゆっくりと後退した。
「何をする気だ?」隼人が思ったときは遅かった。
煙室扉が開くと、そこからハイパーマグマ砲が発射されたのだ。
至近距離からまともにくらったバルディスターは5000メートルも跳ね飛ばされ、激しく損傷した。
勝利を確信したフロンテ。
「勝ったぞ。これで死んだ部下たちの仇もとれたし、わたしの名誉も守られたのだ。よし、最後の仕上げた。彼らを永久に葬る墓を作ってやろう。貨車の準備を急げ」
入れ替え用の小型機関車に押されて、貨車とクレーン車が到着した。
体のあちこちから白煙を噴き、破損したバルデイスターは動けない。
クレーン車はそのバルディスターを吊り上げて貨車に載せると、そこにメナード号が連結された。ガシャガシャコーーーン!
「よし、地獄谷に推進して叩き落してやるぞ。出発進行!」ボォーーーーーっ!
絶体絶命のピンチだ。
そして、
「今だ、突放せよ!」突放とは、連結器を解除した直後、機関車を貨車にぶつけ、その勢いで貨車を自走させることである。そして突き放された先は、地獄の谷だった。
まッさかさまに落ちていくバルディスター。
勝利を確信したフロンテ子爵は、バルデイスターに祈りをささげ、後退を開始した。
ところが、そのとき、濁流が迫ってきた。
上流のダムを何者かが破壊したのだ。
「イヒヒ、谷底に落としたぐらいでおっちぬあいつらやない。ウチが止めをさしてやるわい!」ツジーナと、その手下の仕業だった。
迫りくる濁流。
「まずい。下流には街がある。あれは私の初めての領地なのだ。ボイラー全開!あの岩山を崩し、水を止めろ」
「しかし閣下・・・!」
間に合わない、と思ったそのとき、立ち上がる巨大な影。
そう、バルデイスターが立ち上がったのだ。
隼人と由香の愛の力で結合したバルディスターは二人を構成するバルデイニウム合金が愛のエネルギーで膨張することにより構成される。そのため、由香の愛があるかぎり、破損しても必ず蘇る不死身の巨人なのだ。隼人の卓越した戦闘能力だけではなく、由香の愛が加わってはじめて存在しうる無敵戦士なのだ。
バルディスターはメナード号と協力して、岩を砕いたが、濁流は止められない。そこで、流れを街と離れた方向に変えるため、谷を切り裂いた。
成功だ。街は守られた。だがメナード号とバルデイスターは濁流に飲まれ、海まで流されていく。
巨人型のバルデイスターは、途中で踏みとどまり脱出に成功したが、メナード号は流され、ついに見つからなかった。
あと一歩でバルデイスターに勝利するところだったのに、手柄を横取りしようとしたツジーナのために、そして自分の領地を守ろうとして命を落としたフロンテ。その正々堂々と戦いを挑んできた勇者を二人は忘れまいと誓ったのだ。そして、その陰謀はツジーナのものであることを知る由はなかったが、グロムウエル一味を必ず打ち滅ぼすと誓った二人であった。
ただし、万が一計画通り谷底に落としたとしても、時がたてばバルディスターは復活するということをフロンテは知らなかった。その間に何者かが陰謀を働けば有効であったが、正攻法にこだわったため、実がなかったのだ。
もし、ツジーナが手柄を横どりするのではなく、この隙にスクア星を襲っていたなら、別な結果となったであろう。
グロムウエル帝国は、悪者、旧帝国内で出世できなかった下級貴族や非貴族将校、傭兵、無理やり改造された者の寄せ集めであり、悪の意思、グロムウエルに対する恐怖などでしかつながっていない組織的脆さを露呈した戦いであったのだ。
しかし、グロムウエルほどの者がそれを放置するはずがない。彼は、もともと悪いやつだった者も含め、部下たちの洗脳、改造、強化再改造を進めることを、ゾンビナイトになった三浦博士に命令したのであった。
一方、スクア星はフロンテの別働隊が襲ってはいたのだが、一般兵士による正攻法の攻撃であったため、難無く香織と城の兵士に撃退されていたのだった。
しかし、フロンテのような紳士的な敵はもういない。
今後襲い掛かるのは、真の悪、または良心を取り除かれた殺戮生体兵器のみだということを、隼人と由香は覚悟できるのか。
もう優しさや愛は、グロムウエル一味には通用しないのだ。
続く