95話 二つの姉弟

 

 グランケンシュタイン男爵を涙ながらに倒した隼人と由香は、リバーストン公爵の領地、スクア星で七海提督の艦隊を待つことになった。目指すスクア星は目の前だ。

 ところがそのとき、戦艦リバーストンは衝撃に包まれた。敵艦がワープアウトして接舷してきたのだ。

 そんな自在な攻撃的ワープが可能な宇宙船は、ひとつしかない。

グロテスター怪人共和国連邦超人軍団旗艦・クイーン・エザベス号の襲撃だった。

「エドワルドとチャーミーをお渡し!」

 大魔女メデューサ・アン王女が乗り込んできて、二人の引渡しを求めてきた。怪物と化してしまったが、エドワルドの実の姉である。

 だが、エドワルドはここにはおらず、チャーミーは昏睡したままだ。

「断る」毅然として公爵は対応したが、王女は手下を暴れこませた。

 隼人と由香が立ち向かう!香織と博士はチャーミー、公妃、ムーリンを守り奥に退いた。

 しかし、公爵を庇おうとした由香が、王女と手下に捕まってしまった。

「この女をかえしてほしくば、わらわにチャーミーを引き渡すのじゃ!」

「断る!」

「おのれ、わらわを愚弄いたすか・・・!ならばこうじゃ!」

王女が蛇つきの杖を振り下ろすと、隼人の隣にいた衛兵が石化した。
由香を人質に取られて手も足も出ない隼人。

 隼人は装甲サイボーグなので石化しないが、このままではかつての比叡同様、乗組員が皆石化してしまう。隼人は剣と銃を捨てざるを得なくなった。

 「くそっ・・」

ほんの数分が何時間にも感じられた嫌な空気が流れる。

そのときである。赤い影が光った。

 なぎ倒される兵士たち。

「あんたたち、もう大丈夫よ」

由香は解放された。

由香を抱き起こす隼人と香織。

「大丈夫か?」

「大丈夫よ。」

「なら、すぐ仮面を・・・。仮面がないと、石にされてしまう。」

「わかったわ」

隼人と由香の前に、敵兵士はさんざんに打ち破られた。

「おのれ・・・っ!」

追い詰められたメデューサ王女の怒りは頂点に達した。その口から、巨大なコブラが吐き出された。

 

 コブラは、他には脇目をふらず由香を追いかけ、嘗め回し、締め上げた。

「助けて隼人君!」

斬りつけようにも、由香を傷つけてしまい攻撃できない。

そのとき、クイーン・エイザベスが突如爆発した。内部からの爆発にはさすがの海獣戦艦もひとたまりもない・・

「何者じゃ?」

「姉上、わたしです」

白い影ではなく、続いて現れた黒い影が答える。

エドワルド王子と、麻里子だった。

隼人も叫ぶ。「姉さん!」

 「姉上はわたしをお探しとのこと。しかし、わたしが姉上についていくのではなく、わたしがお迎えに参りました」

「エドワルド!お黙り!ものども、かまわぬ。こやつらを懲らしめておあげ!」

しかし、兵士は香織になぎ倒され、隼人の剣はついに、コブラを輪切りにした。

由香と麻里子は傷ついた乗組員を介抱する。

 

 ところが、王女が杖を振り下ろすと、コブラはくっついて復活し、王女を丸呑みにした。

そして、むくむくと巨大化したのだ。

このままではこちらも内部から破壊されてしまう。

 由香は機転をきかせ、囮となって宇宙空間に躍り出た。追う蛇。

「しめた!行くぞ由香ちゃん!合体だ!」

「OK♪」

「バルディクロス!」

二人は合体し、バルディスターとなった。

バルディスターに絡みつく巨大コブラ。

 その怪力に苦戦するも、渾身の力を込めて腹を割くバルディスター!

断末魔の叫びを上げる巨大コブラ。その腹の中からは、メデューサ王女が出てきた。

 「姉上!」王女をエドワルド王子に託すと、復活しないように皮を焼き払った。

 

戦いは終わった。

「姉さん!」

「姉上!」

隼人とエドワルド王子は、それぞれの姉に駆け寄る。

 

 メデューサ王女(本名はアン王女)は、魔力を失い、髪は真っ白くなり、ヘラヘラ笑っていた。

 そもそも王女は生まれながらに心身の発育が遅れていたが、幼い頃祈祷師の力で突如強靭な肉体と超能力を身につけた魔女になってしまったのだ。

 「姉上・・・」エドワルドはその姉を抱きしめた。

そのとき、手にしていた蛇の杖が割れて、中から現れた骸骨が突然しゃべりだした。

「ムハハハ・・・。エドワルドよ。貴様の姉は返してやろう。その女に魔力をかけた蛇を取り付かせ、操った祈祷師の正体は、このワシだったのだ。蛇を失ったその女は、元の知恵遅れにすぎぬ。今までの超能力は、ワシの怨念のこもった蛇の力だったのだよ。ムハハハ・・・」

「おのれグロムウエル!」エドワルドは骸骨を叩き割ろうとしたが、言い終わると粉になって消えてしまった。

 

 そしてもう一組。

「姉さん、今度こそ僕たちと一緒に闘おう。エドワルド王子も・・・」

「隼人・・・」

「姉さん・・・」

時間が止まった。

「断る」それを切り裂いたのはエドワルドの声だった。

「王子」

「隼人。貴様と余とは、いずれ決着をつけねばならぬ身。例えグロムウエルという共通の敵がいようとも、馴れ合いは出来ぬのだ」

「しかし姉さんは・・・」

「隼人、聞き分けて。貴方に由香ちゃんがいるように、わたしはもうこの人の一部なの。離れては生きていけないの。」

「でも、姉さん・・・」

「隼人・・ごめんなさい」

隼人は麻里子を強く抱きしめた。しかし、その決意の固いことを知ったのだ。


 

「エドワルド王子。貴方との勝負は、グロムウェル一味を滅ぼしたあとだ。それまで、姉さんを頼みます」

「よかろう。余と勝負するまで、怪物になど負けるなよ。」

「伯父上。チャーミーやムーリン叔父を頼みます。そしてこいつらも。わたしは表向き、反逆者として死んだことになっている身。手下たちも皆、冥王星で戦死したことになっている身です。そしてわたしのデュークオブダークは、冥王星の氷の下のマントルの影響で特殊な磁気を帯び、レーダーに映らず、自在に瞬間移動できる幽霊戦艦となりました。ですから、今のままの形でゲリラ戦をしたほうが都合がよいのです。貴方は親父の弟として、お袋のぎりの弟として、反グロムウエルの旗頭になってください。頼みます」

「若、無理をなされるなよ。困ったときはいつでも私たちの元へ帰ってきてください。」

「かたじけない。では、さらば」


 そして、全ての力を失ったアン王女だったが、
「エデイ、今日からは、わたしが義姉さまのめんどうをみるわ。だから安心して。
隼人、リバーストン様、義姉さまはわたしとエディが引き取ります。」
クイーンエイザベスも失った王女には、帰るべきところはもうなかったのだ。
「マリー、そなたは・・・」

 

エドワルドと麻里子は、幽霊戦艦に乗ってワープアウトしていった。

 


麻里子は、エドワルドとともに闘うことを誓った。もう地球には帰らない。いや、彼女は「加藤真理」として16年前に、「三浦麻里子」としても1年前に、死んだことになっているのだ。

 

 麻里子と隼人。

アン王女とエドワルド王子。

 

グロムウエルの野望の前に犠牲となり引き離された二組の姉弟。

だが、隼人もエドワルドも、それを乗り越え、宇宙で最も悪い奴、グロムウェル終身護国卿を倒す決意を新たにしたのであった。

 

 そして、由香と麻里子は、それぞれの思い人のために、身も心も捧げて、自らも装甲を纏い、地獄の底までもついていく、と勇ましくも健気な女心を秘めて闘う決意をしたのであった。

 

 

続く。