第94話 木を植える男
ついに、その正体を明かし蘇った悪魔、グロムウェル卿。その怨念は、ワルモナイトとして生き続けてきたが、チャーミーとムーリンの血を浴びて、その肉体が完全に復活したのだ。 グロテスター怪人共和国連邦総統となった彼は、超機動人工惑星要塞グロパレスを発動させ、それまでのグロパレス星を爆破してしまった。そしてその所在はつかめない。
間一髪脱出した隼人たちは、昏睡状態のチャーミーとムーリンを守って、リバーストン大公の領地のひとつ、スクア星に後退し、地球からの援軍を待つことにした。
一方、生きていたバルボン将軍に助けられたエドワルドと麻里子も、脱出に成功した。
しかし、スクア星に行く途中、グロベン星には、グロムウエル一味の要塞があったのだ。
その事を知らず寄航した戦艦リバーストンは激しい攻撃を受ける。
しかし、基地は荒野のどこかに隠され、反撃できない。そこで、隼人と由香が出撃した。
一面の荒野に、緑の一角を発見した二人。そこはオアシスであった。
1人の男が木を植えている。しかし、彼は人間ではなかった。全身メカの、サイボーグであったのだ。
「貴方は誰?」
由香が尋ねる。
「私はグランケンシュタイン男爵だ。この星の責任者だ。わたしは木を植えている。立ち去るがよい」
「我々を攻撃したのは貴方か?」
「いかにも。この星の緑化を邪魔するものは、なんぴとたりとも立ち入らせるわけには行かないのだ。それが、グロムウエル様から与えられた私の使命なのだ」
「何?貴様はやはりグロムウエルの手先?」
「無礼な!私の体を見ろ!人間をはじめとする動物や、内燃機関を持つ機械は、二酸化炭素を排出して星を汚す。星を緑化するためには、動物や機械はあってはならない。だが、管理する者がいなければ荒れてしまう。
そこで、選ばれた人間が、それを管理する必要があるのだ。わたしは、大気を一切汚さないイオンエンジンを組み込んだ改造人間となり、この星を守っているのだ。無駄な人間や生物を減らし、優れた頭脳と、環境に優しい優れたメカニズムを持った改造人間が宇宙を支配するべきだというグロムウエル様の考えに共鳴し、実践しているのだ。見たところ君たちも改造人間のようだ。再改造を受け、イオンエンジンを組み込み、私の部下になるなら、自由にしてやってもいいぞ」
「それは出来ない。」
「ならば、君たちの吐く息でこの星が汚れるので、立ち去るがいい」
「・・・・」
この男の考え方は立派だが、やり方を間違えているのと、グロムウエルに騙されているのが気の毒だと思った二人は、それを諭そうとした。
だが、「残念だが君たちは除去しなくてはならぬようだ!」
男爵は、激しく攻撃してきた。
伸縮自在の腕と、怪力の前に追い詰められる二人。また、外装も硬く、隼人の剣も拳も受け付けない。ついに、由香が捕まってしまった。
「観念しろ。君の人工心臓を取り出し、イオンエンジンと置き換えてやる。そうすれば、もう息をする必要もないし、大気も汚さないで済むのだ」
「やめろ!」
絶体絶命の由香。
ところが、そこに横槍が入った。
「イヒヒ、男爵さん、せっかく女を羽交い絞めにしたんやから、やっちゃいな」
「貴様はツジーナ!」
宇宙海賊ツジーナとその手下たちが現れたのだ。
ツジーナは、男爵に由香をレイプするように促す。助けようとする隼人を手下たちが妨害する。彼らは弱いが、数が多い。
しかし、男爵は由香を押さえつけようとするも、レイプしようとはしない。
「男の癖になさけない。ほなら、ウチが!」
男爵は完全に機械化されている上、生殖や性交は非合理と考えその機構を省いており、またその意思もないため、ツジーナの意を解さなかったのだ。
だが、由香を捕らえ改造する意思は持っていたため、この妨害に激怒した。
「邪魔するな雌狐!」
ツジーナを突き飛ばす男爵。
「ギャー!」
「言わせておけば・・・。やいロボ公、ウチはグロムウエル様からこいつを預かっているんだよ!覚悟シナ!」
それは、改造人間制御装置であった。
「ううーーーっ」頭を抱えて苦しむ男爵。彼は巨大化し理性を失い、激しく攻撃してきた。
その隙に由香を助け起こした隼人。
「大丈夫か?」
「ええ。それよりも私たちも合体しましょう」
「行くぞ!」
「ええ」
「バルデイ・クロス!」
二人は合体して、巨大男爵と戦う。
巨大化した男爵はよりパワーアップし、さらに凶暴化して襲い掛かったが、愛の力で合体した隼人と由香の前に、あえなく敗退した。
「木を・・木を植えなくては・・・」最後に正気に戻った男爵はそういい残して散華した。
それを見たツジーナのポイズンボートはワープして逃げ去った。
「待て、ツジーナ・・」
戦いは終わった。地下に隠されたミサイルサイロも全て撤去した。
爆破して大気を汚さないように・・・。
男が植えた苗木は、やがて大樹となるだろう。だが彼は、木だけでなく、他の生物
も共存共栄しなければ、真の幸せな星であることに気付かなかった。すばらしい環境も、そこに住む全ての生物のためであり、木だけでは成り立たないことを。そして、その目的のため、自らを生物であることを否定してしまった、悲劇。頭が良すぎたための悲劇であった。
隼人と由香は、男を倒したが、男の遺した木を大切にしようと誓ったのだった。
そして、グロムウエルとツジーナを倒すことも誓ったのだった。
続く