93話 悪魔の戴冠式

 

 ついに、隼人と由香は、ムーリンの支配するグロパレスに到達した。むろん、正体は隠して。それは、エドワルド太子も同様だ。彼は、反逆者として表向き処刑され、チャーミーの父であり、伯父であるリバーストン大公に討ち取られたことになっているのだ。

 大怪人ワルモナイトは、かねてからグレートロイヤル王朝を乗っ取り、それを足がかりに全宇宙の支配を目論んでいたが、彼はすでにグレートロイヤル星を滅ぼし、新たな本星にグロパレスを建設し、皇帝の弟のムーリン王子を傀儡の皇帝に立てて、暗躍していたのだ。 しかし、意外と王朝の専制に不満だった下級貴族や将校たちの支持を得て、いまやムーリンが皇帝として認識され、君臨し始めていたのだ。

 だが、皆はその黒幕のワルモナイトの正体を知らない。

 

リバーストン大公は、臣下筆頭の身であり、かつ兄であるにもかかわらず、心ならずも立場上、ムーリンに従わざるを得なくなってしまった。しかも、妻を人質に取られているのだ。大公の心は暗かった。そして、もっと彼の心を痛めているのは・・・。最愛の娘、チャーミーを差し出すように言われていることだった。

逆に、チャーミーが存在する限り、リバーストン夫妻がムーリンに殺害される恐れはなかった。

 

「リバーストン大公様、御成り・・・・」

 

「よく参られた兄上!早速だが、反逆者エドワルドの首を!」

「・・・・」

「おお、まさしくこれは!」首実検をしたムーリンは、配下に命じて首を晒した。

嗚咽がどこからか聞こえる・・・・。

 

「リョナサン・・貴様の死は、無駄にしない・・・」

兵士に紛れた、本物のエドワルドは誓った。この首は、よく似たリョナサン少尉のものだったのだ。

 

「ところで兄上。いや、今日からは、義父上・・・」

「ムーリン・・・いや、陛下、その儀は・・・」

「いや、ボクちゃんもうきめちゃったんだもんね!さあ、早くチャーミーを!」

「しかし、叔父と姪の結婚は・・・」

「何をいまさら。我々王族は皆血族結婚じゃないか。遠くてもはとこぐらい。かまうもんか。承知しないと兄上といえども、ただでは置かないぞ。なにせ、ボクちゃんは皇帝陛下なんだもんね」

「・・・」

「ムー兄ちゃんのバカ!わたし、ぜーーーったいあんたのお嫁さんなんかならない!」

「これ、チャーミー、はしたない・・・・」

「パパ、わたし嫌!」

「仕方ない、ものども、姫を奪い取れ」

「はっ」

「イヤー,離して・・・」だがクロロホルムをかがされたチャーミーは拉致されてしまった。

 そして翌日・・・。

ムーリンとチャーミーの結婚式と、正式な戴冠式が執り行なわれた。

グレートロイヤル星の主だった貴族や将校が参列しているのは当然だが、それに混じって異形の戦士たちが目立ち、逆に庶民からの祝福は皆無という、異例のものであった。

父にも諭され、チャーミーはしぶしぶ、ムーリンの妃となることを承諾した。

 

その頃、隼人と由香、香織、それに本物のエドワルド太子は、囚われている麻理子、皇后、リバーストン夫人を奪回する計画を立て、併せてグロパレスの破壊を細川博士たちと練っていた。

 

グロパレスはまだ完全には出来上がっておらず、奴隷たちがこきつかれていたので、潜入は容易だった。

4人は、奴隷や兵士、女中に扮して、潜入に成功した。

「成功を祈る」細川博士は祈ることしか出来ない。

 

華やかな中にも不気味な宴をよそに、城の奥に進む4人。

隼人と由香、太子、香織の3手に別れて進む。

隼人と由香は、いつでも変身できるようにしながらも奴隷に身をやつした。

一方香織は,上手くメイドに成りすますことに成功した。

 

そして、その夜・・・。事件が起きた。

 

ムーリンの妃となったチャーミー。当然、「初夜」を迎えた。

「離して兄ちゃん!」

激しく抵抗するチャーミーだったが、遂に観念して、ムーリンを受け容れた。

「ヘヘヘ・・・ついに、ついにこの柔肌が・・・。

ボクちゃんはこいつが生まれたときから、この日が来ることを待ち望んでいたんだ・・。赤ん坊の頃から、撫で回したこのぷにぷにをな・・・」

チャーミーの無垢な柔肌を嘗め回し、触りまくるムーリン。なんと、彼女が生まれたときから目をつけていたという執着心・・・。

そして遂に・・・。

「ヒギーーーーッ」ついにチャーミーの処女幕は破られた。

だが、次の瞬間、悲鳴を上げたのはムーリンだったのだ。

 

「き、貴様はワルモナイト・・・この神聖なしとねに・・・」

「ムハハハハ・・・・」

「何がおかしい!」刺されて重傷を負いながらも、ムーリンは叫ぶ。そしてチャーミーは虫の息だ。

 

「ガハハハ・・・。無礼なのはどちらだ。誰に口を聞いているのだムーリン!」

 

「何?ま、まさか・・・」

 

ムーリンと、チャーミーの血を浴びたワルモナイトの骸骨ボデイが真っ赤に光ったかと思うと、にわかにむくむくと膨れて、醜悪な浅黒い初老の男の姿になったのだ。

 その顔に、見覚えがあった。といっても、肖像画であったが・・・。

 

「貴様は、いや、貴方は・・・まさ、まさか・・・。さ、300年前・・・・」

ムーリンはそう言うと、失禁をして気絶した。彼の小便と、二人の血、そして貫通したとき迸ったチャーミーの処女喪失の血・・・。その怪人物は、それを全て舐めとった。

【我、ここに甦り!】

今まで、処女の生き血や人肉食をしても、脳しか甦らなかったその肉体。

 それは、「王家の若い男女の、初夜の直後の鮮血」によって、ついに甦ったのだ。

ムーリンを傀儡にしていたのも、チャーミーを手に入れようとする心情をも利用したグロムウエルの深謀遠慮だったのだ。

 

そこに踏み込んだのは、エドワルド太子だった。

「叔父上、チャーミー・・・!」

「き、貴様は何者だ?」

「フフ、貴様もご先祖様に対する口の聞き方を知らぬようだな・・・」

「まさか、貴様は歴史上の反逆者、グロムウェル卿!まさか、だが似ている・・・肖像画に・・・。しかし、300年前・・・」

 

「そうだ、300年間・・・長かった。貴様の曽祖父によって、皇籍を剥奪され暗い宇宙に捨てられた恨み、今こそ晴らしてやる・・・・。貴様が生きていたことなどお見通しだ。だが、貴様の父親と兄はこの手で殺して、そして喰ってやった。母親はそれを見てショック死したので、やはり喰ってやったのだ。ムハハハ・・・・」

 

「何、母上までも・・・・。おのれバケモノ・・・」

切りかかるエドワルドだが、手ごたえがない。

「愚かな。わしは生物と非生物の概念を越えた神なのだ。貴様も食ってやる・・・」

 

 その頃、香織と合流した隼人と由香は、チャーミーの母、リバーストン夫人の無事を確認し、脱出させようとした。「

「貴女がリバーストン夫人ですね?皇后陛下は?」

うつむいて首を振る夫人・・・。

皇后は、手をかけられることはなかったが、夫と長男が殺されて食べられたのを見てショック死し、同様に食べられたと言う。以後夫人も口を聞けなくなったのだ。

 しかし、チャーミーの母であるため、丁重に扱われていた。

 

だが、ワルモナイトの怪人軍団が迫る。

「みんな、行くわよ、バルディ・チャージ!」3人はサイボーグ体にチェンジした。

蹴散らす三人は、エドワルドとグロムウェルの死闘に出くわす。

「ここは、貴様らの出る幕ではない。早く叔父上、伯母上とチャーミーをつれて脱出しろ」

「でも・・・」

そのうち、怪人と、ツジーナ、そしてその手下たちに囲まれてしまった。

不死身のグロムウエルと、倒しても倒しても出てくる怪人たちに苦戦する4人。

 

そのとき、飾られていた鎧が動き出し、4人を救った。

そこに襲い掛かるグロムウエルの鉄拳。

 仮面がはずれ出てきたのは・・・

「姉さん!」し、しかしその髪は・・・」

麻理子は鎧の中に閉じ込められ仮死状態だったが、エドワルドと隼人のピンチに目覚めたのだ。それは奇跡だった。

「エディ」「マリー」

麻理子は隼人ではなく、エドワルドと抱き合う。

「隼人、由香ちゃん、香織・・・これはロイヤル星の問題よ。あなたたちは姫たちを連れて逃げて・・・」

「でも姉さん」

「隼人、聞き分けて。姉さんはもうこのロイヤル星の人間よ・・・由香ちゃんを大事にするのよ・・」

 

しかし、そうはさせじと迫るツジーナ一味。

しかし三人の怒りのキックや剣が唸る。

怪人たちはついに全滅した。追い詰められたグロムウエルは、

「ムハハ・・・。わが肉体は甦り、そしてグロパレスも完成した。この星にはもう用がない。星もろとも死ね」

と言って、惑星の自爆装置を起動させた。
「待て、グロムウエル!」追う隼人だったが,そこに現れたのは宿命のライバル・・・。


「邪魔するな」
だが、かつての友は一言も話さぬ野性の狂戦士となっていた。
 振り切るので精一杯だった。
「死ぬなよ・・・また会おう・・・」

大地震が起こり、逃げ惑う人々。

 ゾンビナイト=三浦博士など一味はすでにグロパレスに避難している。

崩れ落ちる惑星。絶体絶命の隼人、由香、香織、エドワルド、麻理子、チャーミー、ムーリン、リバーストン夫人。

戦艦リバーストンの大公と細川博士も手も足も出ない。

 その窮地を救い、横付けしたのは、いつかみた幽霊戦艦だった。

「若、こちらへ・・・」

それは、冥王星で戦死したはずのバルボン将軍で、幽霊戦艦は見る影もなく崩壊した戦艦デュークオブダークだったのだ。

あのとき、爆破された冥王星基地と運命をともにしたデュークオブダークは、主な戦闘員は戦死し、生き残った上層部は脱出したが、氷に埋まっていた機関部は無事で、機関長以下機関兵は無事であり、あとで惨状を知り、虫の息だった将軍を蘇生し、応急修理して、太子のピンチをかげながら助けていたのだ。

 

「太子、僕たちもこの船で一緒に戦わせてくれ」

「好意はありがたいが、それは断る。これは我々ロイヤル王家の問題だ。地球人の手は借りたくない。ワルモナイト改めグロムウエルは余が倒す!お前たちはチャーミーと伯母上を伯父上のところに返したら、地球に帰れ。もう地球侵攻はないから安心しろ」

「そうよ、隼人。早くムーリン王子と姫を本格的治療しないと二人とも死んでしまうわ」

「でも姉さん・・・」

「わたしはもうこっちの人間よ。」

「・・・」

「そうだ・・・こ、これ・・・」

それは、ニジーナから奪い取った、麻理子の髪だった。

「あ、それは・・・。ふふ、わたし、あの女につるつるに剃られてしまって、やっとここまで伸びたのよ・・・。懐かしい私の黒髪・・・。折角だけど、それは月にある両親のお墓に一緒に埋めて・・・」

「でも・・・」

さあ、隼人、早く姫たちを・・・」

 その間に、リバーストンが横付けされてきた。

隼人たちは断腸の思いで麻理子と別れた。

 

だが、地球に帰るつもりはない。宇宙の諸悪の根源・グロムウエルを倒す誓いも新たに、七海提督が戻るまでの間、反逆者にされてしまい、グロムウエル一味から追われる身になってしまったリバーストン大公とともに戦うことを誓ったのだ。

 

 そして、ムーリンとチャーミーは一命を取り留めたものの、昏睡したまま眼を覚まさない。肉体的ダメージだけではなく、何らかの呪いがかけられたようなのだ。

リバーストン夫人も口を聞けぬままだ。最愛の妻と娘を取り戻したものの、大公の心は暗かった。

 

そして砕け散った星に替わり、不気味に宇宙に浮かぶグロパレス。

そこでほくそえむグロムウエル、ゾンビナイト、ツジーナ、その他の悪人たち。

そして、グロムウエルは、自ら「グロテスター怪人共和国連邦総統」を名乗り、全宇宙の支配を宣言したのだ。こりことは宇宙に広がる手下たちや、屈服した領主たちに伝わった。

 いまや、旧グレートロイヤル帝國連邦でも逆らうのは、リバーストン大公家、リバーバッテン伯爵家ぐらいになってしまったのだ。

 

本当の戦いが、今始まった。

隼人と由香の「愛」

、エドワルドの「栄光」

、そしてグロムウエルの「悪」

3つの力が、複雑に絡み合い、宇宙を揺るがす最終戦争が今始まったのだ・・・。

 

続く