92話 幻の母

 

 ここは、新皇ムーリンの居城・グロパレス。あえてグレートロイヤル星系外に設けられた要害都市だ。

 先帝の弟でありながら、クーデターを起こして帝位についた(実際には、ワルモナイトら怪人軍団が起こしたクーデターに傀儡として推戴されているだけ)ムーリンだが、ここにきて諸侯・将軍たちの間からの支持が高まってきた。その理由のひとつが、彼らの多くが怪人の陰謀を知らず、ムーリンが真に国を思って立ち上がったと思っていたこと(皇帝は名君とされていたが、かねて後継者のジョーズ皇太子の暗愚ぶりが懸念され、第二王子のエドワルドか、王弟のムーリンが次の皇帝にふさわしい、といわれていたのだ。)もうひとつの理由は、グレートロイヤル帝国は、皇帝を頂点とした絶対封建主義で、王族・貴族らか支配下の惑星を封建支配し、下級貴族や職業軍人たちの出世の妨げとなっていたことである。

すなわち、前体制の崩壊により、彼らには大きなチャンスが到来したということになる。

彼・・・、フロンテ=ロコモティブ=スチブンソン子爵もその一人だった。容姿端麗・頭脳明晰の彼はまた、大変な苦労人でもあった。れっきとした貴族の出だが、父がものごころつく前に戦死し、母の出自が卑しかったためその戦死恩給もなかったため、貧民の子同様の少年時代を過ごしたものの、頭脳によりのし上がってきたのだ。ただ、領地をもたない貧乏貴族だったので、これまで活躍の機会がなかった。

 彼ら若手下級貴族や、非貴族の将軍たちの発言力は高まり、そこに宇宙一周の女宇宙海賊ツジーナも加わり、ムーリンのもと、宇宙征服の野望を企てていたのだ。

 

 さて、そのグロパレスを目前にした戦艦リバーストンのリバーストン公爵の心境は複雑だった。ムーリンは弟であり、自分は兄ではあるが母方の公爵家を継ぐため皇籍離脱しており、立場が逆転したこと。ワルモナイトの陰謀を全て知っているが、妻を人質に取られていること。そして、おそらくニセのエドワルドの首を差し出されたとしても、自らも投獄される恐れが高いこと。それでも、行かねばならなかったのだ。そしてムーリンが、姪である娘のチャーミーを是が非でも后にしようと企んでいることも不安であった。

 

そんな中、グロパレスからの使者が飛んできた。

そこには、ユリア公爵妃からの手紙が添えられていた。

「チャーミー、私の娘チャーミー。今すぐ会いたい・・・」

動画つきのそのメッセージでは、公爵夫人がチャーミーに会いたがっていることが。

チャーミーは母と引き離されて久しいが、まだ10代の女の子。母恋しくて仕方ない年頃。

それを読んだチャーミーは、いてもたってもいられなくなり、暗黒の宇宙に飛び出してしまったのだ。

 手紙には、グロパレスの人工月の宮殿にいると記されていた。

 

グロムーンへたどりついたチャーミーは宮殿へ迎えれられた。

「ママ!」

そこには夢にまで見た母の姿が。

「チャーミー・・・」チャーミーを優しく抱きしめる母。だが・・・。

その力がどんどん強くなる。

「ま、ママ、苦しいわ・・・」

しかし、返事はない。母の目が怪しく光る。

「あ、ママじゃない・・・。これは人形・・・・」

 

「姫、おとなしく我々に同行してもらいますよ。イヒ・・・」

「あなたは誰なの!」

「オレ?オレはフロンテ子爵の一の部下、エムデン少佐様だ!ニセメッセージ、ニセ公妃作戦、大成功・・・これでフロンテ様は承相に。そしてこのオレは将軍に抜擢だ。イヒ。悪く思うなよ姫」

「無礼者!」

「おっと、ニセ公妃を作った我々もお忘れなく」

「わかっているぞアフロン、デブロン・・・」

「エヘヘ」

「助けてーーーーっ」

だが、エムデンとその手下に包囲されている。

 

 

 しかし、正義は必ず現れる!

「姫を返してもらおう!」

「そうよ!」

「おっと、やっぱりお出ましか・・・。アフロン、デブロン、あとは頼んだぞ」

「了解」

「バルディバン、お前は包囲されているぞ!」

「何?」

「キャー、隼人君、見て、あれを・・」

「なんということだ・・・・・」

 

見ると、今まで倒した、蟹怪獣カニメテ、惑星人ドレミファドン、イカ女、三脚戦闘ロボ、スペースアシュラが現れたのだ。

単独でも手ごわかったこれらの敵が、一度に。

その上、人形の公妃までが、ロボット化して襲いかかってきたのだ。

今までの経験から、敵を倒していく隼人だったが、由香がニセ公妃に捕まって絶体絶命だ。

「由香ちゃん!」

「わたしは大丈夫よ。目の前の敵を倒してチャーミー姫を助けて」

 

しかし、由香のピンチをほっておけない。

隼人はニセ公妃を両断した。

「おのれ・・・っ!これならどうだ!」

アフロンは、デブロンに枠を作らせた。そこに液体ゴムを流し、つづいてせんずりをして出した体液を混ぜた。そして、デブロンに攪拌させた。

そして、由香をほおりこんで、さらにゴムを流した。

「由香ちゃんに何をする!」

「ま、あわてるな、彼女は返してやるよ」

「由香ちゃん!」

ゴム型の中から、無事開放される由香。

「だが、本番はこれからだ」

アフロンは、その型に、体液をたらしたアメーバを流し込もうとした。

そのとき、ツジーナがしゃしゃりでてきた。

「お待ち!このウチの愛液をたらせばより強力な・・・」

「姐さん、余計なことをするな・・・っ」

「お黙り!」

突き飛ばされたアフロンとデブロンは誤ってゴムの中に落ちてしまった。

そして・・・。

型の中からは、由香と寸部たがわぬニセモノが現れた。

「おお、これがうわさに聞いたコピペメーバか・・。いてまえ!」

ツジーナは、ニセバルディーナに本物のバルディーナとバルディバンを襲わせた。

再生怪獣軍団も襲う。

隼人は怪人を、由香はニセモノと戦うが、本物はニセモノに圧倒されつつあった。

「うシシ、ウチのがまじったから、ただのアメーバとプラスチックが本物より強いんや・・・!」

しかし、本物を締め上げるニセモノに異変が。

だんだんと体が反り返り、ついには破断されてしまったのだ。

「フフ、バカねツジーナ!」

「香織さん!」

「チャーミーは無事よ。」

そのとき、ゴムの塊がうごめいて、デブロンが這いだした。

「師匠、師匠・・・」

 

師匠のアフロンは、ゴムに溶かされて同化されてしまったが、デブであるデブロンは、体や頭髪から分泌される油が離型剤の役割を果たし、同化を免れたが、髪の毛は全部抜けてしまった。以後、ハゲロンと改名することに。

「姐さん、何で体液なんか・・・。余計な水分を入れると、収縮比が変わって縮んで、反ってしまうんだ・・・」

「ただしい比率で混合しても、強い熱を加えれば反るわね」と香織。

「そ、そうだが・・・」

「隼人君、由香ちゃん、チャージよ。合体することはないわ。重なるだけで十分よ」

「わかったわ」

「バルデイ・チャージ!」

二人は強く抱き合ったが、合体誘導光線を出さなかったのでバルディスターにはならなかった。しかしその熱気を浴びた再生怪人軍団は、皆反り返って断裂し、全滅した。

 

「おぼえていろ・・・」

ツジーナ、ハゲロン、エムデンは逃げ出した。だが、脱出艇をツジーナが持ち逃げしたので、男二人は取り残されてしまった。

「貴様もグレートロイヤル星の正規軍人なら、僕と勝負しろ!」変身を解いて人間の姿になった隼人は、剣を抜いて勝負を申し入れた。

「う・・・」

一目散に逃げるエムデン。しかし、その先は断崖だった。

「降参しろ」

「・・・・・」

エムデンは追い詰められ、断崖の底へと飛び込んで行った。

そのころ、デブロン改めハゲロンはコソコソとどこかに逃げていった。

 

グロパレスでは・・・。

「バカなエムデンよ。ほっておいてもチャーミー姫はここに向ってもうすぐ来るのに」

幹部たちが嘲笑する。

「ああ、エムデン・・・。功を焦ったな・・・。わたしの計画はおしまいだ・・・・」

責任をとって、フロンテ子爵は左遷されてしまった。

そして、功を焦って横槍を入れた張本人、ツジーナは反省の色はない。

それどころか、将軍たちのあらさがしをして、彼らの知らぬ黒幕・ワルモナイトにあれれ吹き込んでいる様子。何が何でも目立ち、ワルモナイトとムーリンに取り入ろうとしているのだ。権力に目がくらんだ浅はかな女の野望が、地球―真グレートロイヤル王家と、ワルモナイトー新グレートロイヤル王家の両陣営に、多大な迷惑と悲劇をもたらそうとしていることは、まだ誰も知らない。結果、得するのはワルモナイトだけなのに・・・・。

 

 

続く