第82話 砂漠の悪魔・サダフィー大佐
新たな強敵・ニジーナの罠を辛くも脱した隼人と由香は、宿敵ワルモナイトを倒すため、またエドワルド黒太子の事実上の妻となった姉・麻理子を救い出すため、ワルモナイトの根拠地を目指して進んだ。だが、目指すグレートロイヤル本星にワルモナイトがいるとは限らないのだ。
そんな中、二人を乗せた戦艦「比叡」は突然前方の惑星から激しいミサイル攻撃を受けた。七海提督の巧みな操艦で第一波、2波とかわすが、遂に被弾、その惑星の引力に引き込まれていく。
何とか体勢を立て直し、不時着したその惑星は、一面の砂漠の惑星だった。さらに襲い来るミサイルを、比叡は迎撃する。大気圏内では使用できる兵器が増えるのだ。
しかし、今度は地上から、戦車師団が迫る・・・・。
比叡にはまともな陸戦装備がなく、陸戦隊も下ろしてしまった。
「よし、僕が戦う!博士と香織さんは、その間に修理を」
「了解、任せて」
ところが・・・。
由香は謎の体調不良を訴え、出撃できなかった。
「大丈夫だ。あんな戦車軍団ぐらい、僕一人でやっつけてやる」
勇んで出撃する隼人。
「ごめんなさい・・・」
「いいんだよ。たまには休まなくちゃ。」
口付けを交して、いざ出陣!
迫り来る漆黒の戦車。その数15台。
前照灯が目のようで、怖い顔をしているいかにも強そうな戦車軍団だ。
しかし・・・。
バルデイバンである隼人の強さは、想像を絶するものだった。
砲弾を弾き、または切り裂き、手づかみにし、戦車の砲身を捻じ曲げ、蹴り飛ばし、車体ごと持ち上げて別の戦車に投げつけるなどして、次々と破壊していく。砂漠の砂嵐の中でも、電子眼マクロサーチャーは正確に敵の動きを捉えた。
まさに「宇宙最強戦士」の名に恥じない強さだった。
ところが・・・。そんな隼人に香織からのSOS信号が。
「隼人君、大変・・・修理が敵のゲリラに妨害されているわ。私一人じゃもう無理よ」
「分りました」
隼人は最期の戦車を片付けると、急いで比叡に戻った。すると、敵兵士に包囲され、香織は細川博士を庇っているがとても反撃できない。そこに隼人が駆けつけ、敵を蹴散らすが・・・。遂に香織が敵のリーダーに捕まってしまった。
「畜生、香織さんを放せ、卑怯だぞ。」
「卑怯だと?そんな言葉はワシの辞書にないわい。野郎ども、今のうちに爆薬を仕掛けろ」
だが香織も負けていない。一瞬の隙を突いて、肘打ちし脱出した。
しかし、その間に爆薬が炸裂し、比叡はさらに損傷してしまったのだ。そして運悪く、貴重な水タンクを破損し、真水の備蓄が半減してしまった。あらかじめ、その位置を狙ったのだ。しかもここは砂漠。最初のミサイルも彼の仕業だ。
「おのれ〜」
切りかかる隼人。
応戦する隊長。かなりの使い手だ。
「むむ、強い・・・・。貴方の名を聞こう。僕はバルディバンだ」
「ハハハ。知っているとも。貴様ごときに名乗るのは惜しいが、ワシはグロテスター陸軍の、サダフィー大佐だ!」
「サダフィー大佐、貴方はこんなに強いのに何故卑怯な罠をしかけるのだ。貴方は生身の人間でありながら、戦車より強いのに」
「戦車より強いのは当たり前だ。強さ、それはすなわち勝つことだ。勝つためならどんな手を使ってもいいのだ、イッヒッヒ・・・」
「では戦車も囮だったのか」
「そうだ。」
「許せない!」
しかし隼人は、生身の人間であるサダフィー大佐を両断することに一瞬のためらいがあった。だが、その一瞬のためらいのため、サダフィー大佐にチャンスを与えてしまった。
隼人が剣を振り落としたとき、上空にアンモナイザーが飛来し、戦車を投下したのだ。しかも、アンモナイザーは機銃掃射で援護した。
その間に戦車に乗り込んだサダフィー大佐は、砲撃しつつ脱出に成功した。
「待て」
それを追う隼人。
ところが、長時間戦い続けた隼人はエネルギーが切れそうになって動きが鈍くなってしまった。
それをひき潰そうとするサダフィー大佐。
だが、死力を振り絞り戦車を押し返す隼人。だがもう投げ飛ばす力は残っていない。
一方でサダフィー大佐も、意外なタフネスぶりに舌を巻き、最大出力にしたが隼人を潰せない。機銃掃射では彼の装甲はびくともしなかった。
そこに、再びアンモナイザーが飛来した。アンモナイザーは、ニジーナ専用の小型海獣艇だ。
「サダフィー大佐、パーツを投下するわよ」
「おう、頼んだぜ姐さん!」
アンモナイザーから投下された部品がサダフィー大佐の戦車と合体、サダフィーロボが完成した。
サダフィーロボは、まさに動けなくなった隼人を踏み潰そうとした。
そのとき!
「遅くなってごめんなさい。さあ、合体よ!」
エンジェルウイングを広げた由香が飛来し、合体誘導光線で隼人を宙に引き上げた。
「バルディ・クロス!」
二人は合体し、バルディスターになった。
こうなるとサダフィーロボは手も足も出ない。怪力を除くと、武器は戦車時代と同じ75ミリ砲1門とその先端のドリル、指揮ハッチの機銃ぐらいだからだ。他に両手に新たに180ミリ加濃砲が装備されたが、接近戦ではかえって使えなかった。
「僕たちの怒りの一撃を食らえ!」
ニジーナの救援も一歩及ばず、バルディスターの必殺パンチで吹飛ばされたサダフィーロボは爆発し四散した。
勝った!
残骸の下敷きになったサダフィー大佐は、砂漠の熱い砂がクッションとなり、一命を取り留めた。すかさず救出するアンモナイザーのニジーナ。
合体を解いて比叡に戻ろうとした二人は、戦車の残骸を見た。
「これ、隼人君ひとりで全部壊したの?」
「そうだよ。意外と脆かった。でも、同じ戦車でもサダフィー大佐の戦車は強かったんだ。
やはりメカは性能や武装ではなく、使う人間の心と技が重要なんだ。それは改造された僕たちの体も同じだと思う。」
「そうね。さすが隼人君。・・。隼人君、待って!」
「どうしたの?」
「人の気配がするわ。あ、あそこ!」
見ると、敵の戦車兵が大怪我をしてうめいていた。見るとまだ若く、美しい顔をした青年だった。
由香はすかさず胸のバリヤーを切り替え、細胞活性ビームを照射した。さらに、
「隼人君、あの機銃の銃身を折って来て!早く」
「でも、そいつは・・・」
「生きているのよ。死なない可能性のある命はどんな命でもほっておけないわ」
由香はそういうと、骨折した男の脚に銃身を当て木の代わりにして、自分の髪を少し切って縛り、治療した。
男はうっすら涙を浮かべたが、隼人に促された由香はその場を立ち去った。
「由香ちゃん、君は本当に優しいんだね・・・」恥ずかしそうにうなづく由香。
こうして、新たな強敵・サダフィー大佐の罠を破り戦車軍団も倒した二人。
だが・・・。
由香の体調はまだ万全ではなく、今度は隼人までも、無理に制限時間を越えて戦ったことと、そのときターボチャージャーに外気取り入れによる燃焼を利用したため砂を巻き込んだためにメカにダメージを受けてしまった。その上サダフィー大佐の仕掛けた爆薬で比叡の水が半減してしまった。
ここで足止めを食うことは、致命的な打撃になるのだ。
その頃。
「クソ。オレ様としたことが小僧に負けてしまったぜ。」
「いいえ大佐。あなたはよくやったわ。ここで3日、いや1日でも時間が稼げれば、あのお方の計画が著しく有利になるのよ。ご褒美に私の体をあげるわ・・・」
「ニジーナ・・・」「大佐・・・・」二人の悪は、みだらに結合し、互いの悪のオーラを高めあっていた。隼人と由香が、愛と正義のオーラを高めるのと同じように。だがそこには愛はない。欲望と邪心があるだけだ。
その言葉どおり、ワルモナイトの陰謀は着々と進んでいたのだ。それだけではなく、目の前にはニジーナとサダフイー大佐の次の罠が待っているのだ。危うし!
続く