81話 泥にまみれた大バトル

 

 小惑星ザワロで実姉・麻理子との悲しい戦いを経た隼人と由香は、ワルモナイトを倒すべく、グロテスター本星へ急いだ。

 だが、二人を乗せた戦艦比叡は、惑星シナリの引力に引き込まれてしまったのだ。

いや、この程度の惑星の引力に負けるはずがない。ワルモナイト一味の罠に落ちて引き込まれてしまったのだ。ということは、この星には必ずワルモナイトの魔手が伸びている。

 七海提督の操艦でなんとか着水できた比叡だが・・・。

この星は、ほとんどが泥沼であった。それを干拓して人が住めるように改良してある。

 隼人と由香は早速調査に出た。チャーミーも追ったが香織に引き戻された。

「あんたじゃ危険よ。あたしと博士の手伝いをお願い」

「はーい、お姉さま」

香織と博士は、チャーミーにも手伝わせて艦の修理と地質調査を開始した。

 

 さて、この星の主は、実はムーリン王子であった。リバーバッテン家が開拓したのを横取りしたのだ。だが、いまや彼はグロテスターの仮君主であり、本星に君臨している。そのため、代官が派遣されて治めていた。

 その代官は、ヨッシャー男爵と言って、名門の出ではあるが、民に増税や使役を強いる過酷な代官であった。

 代官に就任以来、次々増税を打ち出す。

「地球に攻め込まれ、皇帝一家が謎の失踪を遂げた国家の一大事、臣民たるもの未曾有の国難には納税で応えよ」というのがヨッシャーの持論であった。

 そのため元々貧しい干拓地のこの星の住民は苦しんでいたのだ。

ところが、ごく最近になって、様子が変わってきたのだ。

 新しく結成された民商党が、

「ムーリン様が皇帝になったら、税金も、宇宙航路通行料も全部タダ。怪人や異星人にも参政権OK、学費もタダ、子供が生まれたらお金をくれる」と言って力を伸ばしてきたのだ。

 そのため、今では住民は皆民商党員になり、ムーリン王子の信者になっていった。

そして、その民商党の党首こそが、なんとあの女傑、ニジーナだったのだ。

 税金を多く取ることこそが正義と信じるヨッシャーは、これを弾圧しようと試みた。

だが、ニジーナの女の武器の前にあっさり降参し、魔性に落ちていったのだ。

 

 さて、そんなことは知らぬ隼人と由香は、貧しい中にも開拓者魂を感じさせるこの星をよく観察していた。

 やがては二人も、たった二人でこのような星を開拓して、子孫を残す使命がある。

 この星の人々は、その意味でよき手本でもあったのだ。

「由香ちゃん、この人たちの泥にまみれた汗をよく覚えておこう」

「うん・・・。」

 

 ところが、そんなとき。

 

「キャー!助けて・・・お許しください・・・」

なんと、長い髪の美女が、グロテスター兵士に追われている。

 追い詰められた女性は、ついに転倒し、兵士に銃を突きつけられてしまった!

 

「危ない!」駆け寄る隼人と由香。

隼人は兵士を殴り倒して追い払った。

「お怪我はありませんか?」二人は尋ねる。

「大丈夫です。どこのお方か存じませんが、ありがとうございました。」

「よかったわ・・・」由香は安堵した。ところが!

 

「良かったのは私のほうね。あんたたちをここで仕留められるのだからね。」

「お、お前は!」

美女は長い青みのかかった髪を掻き揚げると、なんとそれはかつらだった!

 中からは赤みのややかかった短髪が!

「隼人と由香!この星がお前たちの墓場よ!いでよ、ガマゲール!」

「キャー!」

なんと、巨大ながまがえるの怪物が現れたのである。

「ふふ。あんたたちに勝てるかしら。じゃあ、あたしはこの辺で見物してるからね」

「畜生!由香ちゃん、バルディ・チャージだ!」

「ええ」二人は変身した。

ガマゲールは、長い舌と目からのビームで激しく攻撃してきた。

 しかも、泥沼での戦闘に適した能力をもつガマゲールは次第に優勢になり、ついに由香がその長い舌に絡めとられ、押し倒されて嘗め回されてしまった。

 「由香ちゃん!」しかし、助けようとした隼人もまた、泥沼に引きずり込まれてしまった。もがけばもがくほど沈んでいく。絶対絶命のピンチ!

 「今だ、ガマゲール!二人を食べておしまい!」

巨大化したガマゲールは、ついに二人を食べてしまった。

ほくそえむニジーナ。

 だが、彼女は知らなかった。

巨大生物の体内に取り込まれた隼人と由香には、超必殺技があるということを。

そう、今までクラゲやヒトデ怪獣を倒してきた、あの技・・・。

 バルディ・クロスだ。

二人はガマゲールの体内で合体し、そのどてっぱらを突き破って脱出したのだ。

 

「ま、まさか・・・!」蒼白になるニジーナ。

「ニジーナ、覚悟しろ!」

バルディスターはニジーナの乗る飛行艇アンモナイザーに斬り付けようと飛び立とうとしたが、沼地のため推力が足りず、このままでは逃げられてしまう。

 そのとき・・・息絶えたと思われたガマゲールが、最後の力で舌を伸ばし、アンモナイザーを引き戻した。

「今だ!」バルディスターはアンモナイザーを真っ二つに切断した。

 泥沼に落ちていくアンモナイザー。

勝った!

 しかし、何故最後にガマゲールは裏切ったのであろうか。

 それは、戦いの後、別の調査をしていた博士と香織から聞かされて分った。

ガマゲールは、実際には人間だったのだ。大工のゲーンさんだったのだ。

 ニジーナは、税金はタダ、金はくれる、と言ったのに、実際には税金はタダにならず、金は貰えず、逆にグロテスターの軍需物資の製造にタダ働きさせられていたのだ。

 怒りに燃えたゲーンさんは、遊説中のニジーナに猛烈に抗議した。

しかし、ニジーナは、

「税金がタダになるのは、ムーリン様が正式に即位してから。王位継承順位が上位のエドワルド王子が生きていたから、ムーリンさまはあくまで仮の皇帝よ。そして裏切り者のエドワルド王子を倒してムーリン様を即位させるためにも、あんたたちにはタダで働いてもらわないとね」

「ふざけるな!」

怒りに狂いニジーナを殺そうとしたゲーンさんだったが、逆に股間を蹴り上げられ、無残にも失神し、体内にメカと蛙の細胞を埋め込まれ怪獣に改造されてしまったのだ・。

 ニジーナは、「腑分け人」とも呼ばれており、バイオ系改造手術の権威でもあったのだ。

腹を破られ死を感じたとき、記憶を取り戻したのだった。

 話を聞いた隼人と由香は、ゲーンさんの霊にそっと手を合わせるのだった。

この戦いのどさくさにまぎれて、ヨッシャーは脱出していた。あるじのいなくなったこの星だが、人々はニジーナの民商党の幻想から眼が覚め、エドワルド王子が即位したときのために自らの手で自らの星を守ろうと、開拓者魂で自活していく道を選んだのであった。

 

 だが、民商党の力は、遠く地球にも伸びていることを隼人たちは知らない。ニジーナはパーソナルスーパーワープ装置で、地球でも「虹村彩子」と名乗り、民商党を活動させ、反戦ムードを煽り、来る決戦に向けて建造中の宇宙戦艦の工事をサボタージュさせたり、高官に色仕掛けするなど暗躍していたのだった。その影響は、やがて地球連邦軍にじわじわ打撃を与えることになる。

 

 さて、そのニジーナだが・・・。

上手く爆発に巻き込まれずに脱出に成功はしたものの、自らが泥沼にはまってしまった。

「キャー・・・なんであたしがこんな目に遭うのよ・・・」

そこにイセキダーが飛来して彼女を助け出した。

 

「おぼえてらっしゃいバルディバン、そして地球人!いつかきっとこの屈辱は晴らして見せるわ!シャワーで泥を落としながら、復讐を誓うニジーナであった。

 

続く