77話 脅威!女の惑星(後編)
氷付けにされた隼人、捕らえられた博士たち・・・。
このスカイガーム星では、男性ホルモンが減退し男たちは萎えて女の言いなりになり、女傑・アッコンドラ侯爵以下の屈強な女たちに支配されていた「女の惑星」であった。
だが、侯爵の姪で後継者のアッコリーナが、自らの恋人・ジュリアンを助け出し、謀反を企てようとしているのを偶然知った香織は、隼人や博士たちを解放することとこれを結びつけ、アッコンドラ一味に闘いを挑むことになった。
「みんな、準備はいいわね!」
「はーい♪」
香織は、敵の女騎士を倒して剥ぎ取った衣装を揃え、自分と由香とチャーミーに着せた。そして、表向き騎兵隊長であるアッコリーナとともに、城へと潜入した。
城では、大学者タージ・マヨールが不気味な儀式を重ね、また幹部たちが男をいたぶっていた。
その幹部とは、ドン・ホークババー、ミズ・ホー、ギョーミーらであった。いずれも、男性を寄せ付けない醜悪な老婆であるが、逆に男性を憎み、虐めることに生きがいを感じている奴等であった。
マヨールは、氷付けにされた隼人を睨み付け、呪いの言葉をかけた。
「男、ああなんと汚らわしいのでしょう!このゴツゴツした鎧の下には醜い筋肉と汚らしいペニスが・・・。せめて鎧を着ているのが救い。この男を早く火口に投げ込ませなくては。いかに鎧を着ていようとも、火口に投げれば蒸し焼きになつて死ぬでしょう。イヒヒ・・」
一方、アッコンドラ侯爵は衛兵たちを相手に長刀の稽古。
「参りました・・・」
「ばか者!しっかりしろ!」
そこに、
「お母様、ただいま戻りました」
「おお、リーナ。お前もわらわの相手をしないかい?」
「遠慮しておきますわ・・・」
「びびってるんじゃないわよ!ガッハッハ・・・・」
ところが、そのとき、タージ・マヨールが叫んだ。
「侯爵様、いやらしい醜い臭い、男の臭いがするざます!」
「何んですって?」
幹部たちが青筋を立てて怒る。男と縁がない彼女たちは男の気配を感じただけで身の毛がよだつのだ。
「でも、男の人は誰も居ません・・・」
衛兵が答える。
「黙れ、ああこの穢れた臭いは・・・」
「お前とお前だ!」
マヨールは、香織と由香を指差す。
「なんのことかしら?」香織はすっとぼける。
「お黙り!この城には、処女または、5年以上セックスしていない女しか入れないはず。お前たちからは穢れた男の臭いがプンプンするわ!お前たちは、この星の人間じゃないね?本星の回し者か、それとも蛮族か?」
「フフ。ばれちゃしょうがないね。でも、化けの皮を剥がされるのはあんたのほうよ、このどブス怪人!」
そのときである。
「えーい、鎮まらんかい!」
「侯爵様、この者どもは・・・」
「なんだか知らないけど、わらわも丁度暴れたいと思っていたところじゃ。ものども、思う存分暴れるのじゃ!」
「オーーー!」
「やったろうじゃん!」
香織とチャーミーは、これに立ち向かう。
「私、ヘルメットって嫌いなのよね」香織はヘルメットを脱ぎ捨てた。そして変身!
ポニーテールを揺らして戦うのが、彼女の流儀なのである。
「わたしも!」チャーミーもヘルメットを脱いだ。由香も応戦する。
そして、果敢に女騎士たちと戦う。
それを見た侯爵は驚いた。
「チャーミー、なんでお前が?」
「侯爵様、身内と言えその者はわれわれの敵です。ひん剥いて捕えるべきです」
「むむむ・・・お前、おかしくなったんか?」
「おかしいのは、変なおばちゃんたちよ!」
そこに香織が割って入る。
「おばさん、あんたの相手はこのあたしよ。不足かしら?」
その侯爵に挑むのは香織。
「だれがおばさんか!」
香織と侯爵の激しい戦いが始まった。
その頃アッコリーナは、男性ホルモンを萎えさせる装置を探して城の奥に進んでいた。
そして由香は、氷付けにされた隼人を助け出そうと、全力を尽くしていた。
「隼人君、私の全部のエネルギーをあげる・・・」
由香はバルディーナに変身すると、胸からエネルギーを全力照射した。しかし、隼人はぴくりとも動かない・・・。
その頃、以外?なチャーミーの活躍によって薙ぎ倒される騎士たち。
以外かもしれないが、チャーミーはこれでも城のあととり娘。グロテスターでは、あととりたる長女は男性同様、騎士の訓練を受けなくてはならないのだ。
普通は弟が生まれた時点で修行を止め女を磨くのだが、実はアッコンドラ侯爵は長女として生まれ、弟である皇帝やチャーミーの父が遅く生まれたため、その間男として育てられたためこんなに勇ましくなってしまったのだ。というより、少女時代は誰も女だとは思っておらず、先代侯爵と結婚したとき初めて女であることが確認されたほどなのである。
チャーミーも、一人娘のため規定の15歳まで騎士幼年学校(地球の日本で言えば幼稚園から中学まで)に通っていたがその成績はトップである。しかしそれは、わがままで卑怯な方法や色仕掛けで男の子たちに勝ちを譲らせた結果であり実力ではない。それでもひととおりの剣裁きは覚えているのだ。
その意外な活躍に、城方からも強力な戦士が現れた。
「必殺腑分け人・ドクター・ニジーナ参上!」
虹色のマントを纏った、短髪の美女が躍り出た。
「あんたの相手はこのあたしよ!切り刻んで腑分けしてあげるわ!」
ドクター・ニジーナは外科医で、人間の解剖を趣味にしている恐ろしい女で、特に男性器を切り取りコレクションしている。またその腕は確かで、「必殺・腑分け人」と呼ばれているのだ。さらに、人間の衣装を剥ぎ取ることにも長けていた。
「おばちゃんになんて負けないわ」
チャーミーも果敢に立ち向かう!
しかし・・・腑分け人・ニジーナは強かった。
あっというまに押し倒され、裸にされるチャーミー・・・。
「可愛いおっぱいね。まだ10代・・・未成熟な乳腺を切り出してあげるわ・・・腑分け、腑分け・・・うふふ♪」
ニジーナはチャーミーの幼い乳房を弄び、メスで切開しようとした。
ところが、そのとき・・・
「ニジーナ、おどき!そいつはこのわたくしが殺るわ!」
それはタージ・マヨールであった。
「あたしは、男が憎い!でも本当は、美しい少女がもっと憎い!お前も醜く朽ち果てされてやる!」
「キャー!助けて〜」
それを見た侯爵は、
「先生、何するんじゃい!そいつはわらわの姪ぞよ!懲らしめるならともかく、殺したり顔を傷つけるのは許さないわよ!」
「ハハハハ・・オホホホ・・・・」
「何がおかしいんじゃい!」
「イヒヒヒ・・・男勝り、男嫌いといっても所詮侯爵も子供を産んだことのある母親。わたしの敵だわ。もう、用済み・・・あんたにも死んでもらうわ・・・」
「裏切ったわね!」
「何のことかしら?この大女・・・」
マヨールは角帽を飛ばしてきた。
間一髪、香織と侯爵はこれを避けた。
香織は叫んだ。
「正体を現したわね、みんな、このクソ婆の正体は・・・ワルモナイトの作った怪人よ!」
「怪人ですって・・・」
「キャー」
女戦士たちは我先に逃げようとする。
怪人、という言葉を聴いただけでおぞましく感じるのがこの星の一般論であった。屈強の女騎士といえども例外ではない。
その逃げ惑う彼女らを角帽が襲う。
幹部たちは、侯爵を見捨てて我先に逃げようとしたが、マヨールのメガネから発射されたビームに打ち抜かれあえない最期を遂げた。
「ばれちゃしょうがないわね」
黒いマントを外すと、マヨールはより醜いメカ怪人にその姿を変えた。
そして、チャーミーを襲う!
「チャーミー!」
そこに、装置を探していたリーナが戻ったが・・・リーナもまた・・・。
絶対絶命・・・。
そのときである。
角帽は両断された。
「待たせたな、みんな!」
「隼人君!」
隼人と由香が現れたのだ。
「お、男が何故?」
狼狽するマヨール。なぜなら、その改造された肉体そのものが、アンチ・メールユニットそのものだったからである。すなわち、マヨールがこの星に居る限り、全ての男性の生気は吸い取られ精力は減退し腑抜けてしまい戦えなくなって女の奴隷になってしまうのだ。
男性ホルモンを生命源にしている改造人間である隼人は、生身の男性以上にダメージが大きかった。では何故?
「まさか、女になったのか?」
「その逆だ」
隼人は、股間のカバーをスライドさせ、自慢のイチモツを屹立させた。
慄くマヨール。またそれを見たことがない、また久しく見ていない城の女たちも、そしてチャーミーを注目の上びびる。
「こうやったんだよ」「ね♪」
隼人と由香は、その場で体を重ねた。
赤熱してパワーアップする二人。
「おばさん、貴女は間違っているわ!世の中には男と女が居て、はじめて成り立つのよ。
男には男の、女には女の素晴らしさがある。そして欠点も。でもわたしたちのように、それを補い合って本当の強さと素晴らしさを生み出すものなのよ!」
由香は、香織たちが戦っている間、全力で隼人を解凍し、さらにその上に乗って全エネルギー・全精神を注ぎ込んだ。そしてその愛の力は、マヨールの作り出した邪悪の負のオーラに打ち勝ったのである。
「おのれ〜」マヨールは、垂れ下がったしわしわの乳房をさらして、それを高速回転させた。どうやらこれが男性エネルギーアンチ装置の起動のようだった。
しかし、由香のゆるぎない愛のエネルギーを直接供給された隼人には効き目がない。
「くそ婆、よくも香織さんやチャーミー姫をいたぶってくれたな!オレは、ブスとメカ怪人には情けはかけない!」
「お黙り!レデイに対してブスとか、怪人ですって?万死に値するわ!やはり男と美人は生かしてはおけない!」
その怪人としてのメカをフルに発揮したマヨールは手ごわい。
そのとき、侯爵が叫んだ。
「ちょっとまちな先生!そんなら何か?いままでわらわを立ててきたのはわらわが美女でないという意味かいな!」
侯爵の怒りの一撃が決まった!
「今だ!」
隼人と由香は力をあわせて、刀と長刀でマヨールを貫く!
大爆発するマヨール!
勝った!
しかし、その影でリーナが苦しんでいる・・・。
「どないした、リーナ・・・」
「侯爵さま、この子・・・」
つわりだった・・・。リーナは妊娠していたのである。
しかし、マヨールのアンチパワーの影響で胎児の成長が止まってしまっていたのだ。
それが、マヨールが倒されたことと、隼人と由香の愛のオーラを浴びたことにより甦ったのだ。またたくまに大きく膨らむリーナのお腹・・。
「お母様・・・わたし・・・」
「リーナ、がんばれ・・・」
「リーナ・・・」ジュリアンも駆けつけた。鎧を剥ぎ取られたチャーミーもいつのまにか着替えて「素敵♪」とはしゃぐ。
夫と息子を亡くして絶望のあまり、我を忘れていた侯爵も、この瞬間一人の女、ひとりの母親に戻った。
実は、リーナは、表向き姪であったが、実は侯爵の実の娘であった。双子は不吉と言うことで、跡継ぎではないリーナは妹にくれてやったのである。妹は、嫁ぎ先で子を産めない役に立たない嫁として虐待されていたため、わたりに舟であった。しかし、その家は事故で断絶し、また侯爵の息子のモリソンが暗殺されたため、返してもらったのが実態であった。
そのことは公然の秘密であったが、リーナはとっくにそのことを知っていた。
貴族社会ではこのように女性の地位が低いことも、侯爵がこのような女傑になってしまった理由の一つであった。跡継ぎを産めなければ罪人のように扱われ、また第一子である長女を除いて相続権もないのがこの星の貴族女性の実態であったのである。
(逆に、第一子である長女だけは、男性と同等の権威が与えられる。原則として婿をとることができるのは長女だけである)
アッコンドラ侯爵は女ではあるが、その生い立ちや体格から、男性にまったくヒケをとらない力と権力を兼備えていた。それが不幸な事故と怪人の陰謀などと複雑に重なり、男性の奴隷化、という誤った道を彼女に歩まさたのだった。
「由香とやら・・・ありがとう・・・
侯爵は由香を抱きしめて褒める。
「あんたのいうとおりじゃ・・・男と女がいて、初めて本当の力が・・・」
だが!
「安心するのはまだ早いわよ、隼人君、由香ちゃん!」
「黙れ〜!男なんて、男なんてこのわたしがこの宇宙から滅ぼしてやる〜
アッコンドラ、よく聞け、お前の夫を殺したのも、息子を殺すようにそそのかしたのもこのわたしなのだ!お前の権威を利用するためには、二人は邪魔だったのだ・・・
残念だ。お前ならわたしの理想とする女だけの世界の王となれるはずだったのに・・・。
かくなる上はお前にも死んでもらうわ!そして女の世界は私一人で作ってみせる!」
なんと破壊されたはずのマヨールが巨大化再生したのだ。
「バケモノめ、なんど巨大化しても甦っても無駄だ!」
「行くぞ由香ちゃん!」
「ええ♪」
「バルディ・クロス!」
二人は合体してバルディスターになった。
「おのれ、汚らわしいやつめ!」
10倍にパワーアップした巨大マヨールは、100倍にパワーアップしたアンチ・メールオーラを発生された。
「うう、」苦しむ隼人。だが。
バルディスターは少しゆらいだだけですぐに体勢を立て直した。
「バルディスターは、男だけではないのよ!」由香の声で叫ぶ。
そう、バルディスターは、その体格や色から、一見バルデイバンである隼人が巨大化した姿のようであるが、実際は男である隼人と女である由香が対等に合体した姿なのである。
男の闘争本能に由来する無敵の戦闘力と、命を生み出す女の無限の生命力が愛の力で一つになった姿なのである。
男の部分がダメでも、女の部分で生きられる。そして、その力は男の部分を何度でも甦らせるのだ。
男には男の、女には女のそれぞれのよさと弱点がある。
しかし隼人と由香は、細川博士の手によって改造され、その欠点を完全に補い合い、利点を無限大に増殖させる力を手に入れたのだ。
「黙れ黙れ・・・何が男と女だ!この世には女だけしか不用なのだ!死ねーーーっ」
だがそれもむなしかった。
バルディスターはマヨールをむしりとり、切り刻んで、完全に破壊した。
断末魔の叫びを上げるマヨール。
もう復活することはない。勝った。今度こそ本当に勝ったのだ。
その間、香織とチャーミーの助けでリーナは無事男の子を出産した。
そして、亡き双子の兄の名をとって「モリソン」と名づけた。
奴隷になっていた男たちも解放された。
抱き合って喜ぶ若い恋人たち。この星に平和と愛が甦ったのだ。
ジュリアンは、正式に婿に迎えられて、侯爵を継いだ。
アッコンドラは大后として隠居し、若い二人と孫を後見することになったのだ。
「よかったわね」
「みなさん、ありがとうございます。わたしたちは、隼人さんと由香さんに習って、男と女が力をあわせることの素晴らしさを政治に活かします」
「でもリーナ、隼人様のことをお婿さんにするのは、由香ちゃんじゃなくてこのわたしだからね♪次は、このわたしが隼人様の赤ちゃん産む番よ!」
「まあ、チャーミーったら?」
一同大笑い。
大后は、
「香織とやら、おぬし、強いのぉ・・・。この宇宙でおそらく、このわらわの次に強い女は、おそらくお主であろう!今度また手合わせを願いたいものじゃ。ガーッハッハ・・・」
「お手柔らかにお願いしますわ」
だが香織は知っていた。本当の強さを持っている女は、由香であることを。残念だが、香織には由香の持つ、「本当の女の力」はなかった。いや、それを持っているのは由香だけであることも知っていた。
『ふふ。あんたには敵わないわね・・・由香ちゃん・・』
食料や水、贈り物までもらった比叡は次の星に向けて出航しようとした。
だが、そのとき。
「勝ったと思ったら大間違いよバルディバン・バルデイーナ!わたしたちが必要としていたものは手に入ったから、私はワルモナイト様のところへ帰らせてもらうわ!」
なんと、ニジーナがマヨールの残骸を「腑分け」し、人工子宮を取り出して、それを持って脱出したのである。
マヨールの人工子宮の中には、この数年間吸い取ったこの星の男たちの精気が詰まっていたのである。
ニジーナは、ワルモナイトのスパイであったのだ。そして、黒幕と思われていたマヨールは、単なるエネルギー吸収装置に過ぎなかったのだ。
「またいつか、貴方達と戦うのを楽しみにしているわ」
ニジーナは去っていった。
ワルモナイトの完全復活のためのパーツが、また一つゲットされてしまった。
そしてこの星の不幸も、やはりその影にワルモナイトがあったのだ。
「許さないぞワルモナイト、ニジーナ!」
怒りを胸に、次なる星へ旅立つ隼人と由香。
その前に立ちふさがるのは・・・。エドワルド黒太子か、ワルモナイトか・・!
続く。