76話 脅威!女の惑星(前編)
廃墟と化したワーテルロー星を後にした隼人たち一行。チャーミーは、未だに二人の変身の謎が分らないでいた。そのうち、次の星の空域に差し掛かる。そのときだ。
謎の引力によりその星に引き寄せられる・・・・。
その星の名は、スカイガーム。
「うわーーっ、総員何かに掴まれ!」
大気圏に引き込まれた比叡だったが、七海提督の絶妙の舵さばきで体勢を整えた。
だが・・・。
「うう、力が・・・」
「私もだ・・・」
「僕も・・・」
なんと、七海提督以下、倦怠感と脱力感に見舞われ、睾丸が縮み上がってしまった。
隼人も例外ではない。
「あれ、わたしは平気だわ」
「わたしもよ」
「あたしも」
何故か、由香、香織、チャーミー、すなわち女性は平気であった。
すると、レーダーに敵が・・・・。
「ゆ、由香ちゃん、い、いくよ・・・」苦しいながらも隼人は変身し、由香を伴って出撃した。
迫る敵。
その姿がだんだん明らかになってきた。
立ち乗りUFOに乗った騎兵のようだ。その数数十.
そして、驚くべきことに、それは全員女であった。先頭にはひときわ長身で巨大な長刀を持った短髪の女性が。
「ガーッハッハハ!どこの誰かしらないけど、この星で好き勝手はさせないわよ!さっっさとそこの池に着陸しなさい、ガーッハッハハハ・・・・!」
拡声器を使っているわけでもないのに比叡の艦内にまで響き渡る銅鑼を割ったようなだみ声。
しかし、艦の水平を保つだけで精一杯の比叡は降下できない。
「無視したわね!あんたたち、やっておしまい!」
「えーーい!」
立ち乗りUFOに乗った女騎士たちは、比叡に群がり、また、隼人と由香に挑む。
由香も自慢の長刀を振るって戦うが、肝心の隼人が・・・。
力が出ない。だが、男の意地で女ボスに立ち向かう。
「あんた、動けるの?」ボスは驚きながらも、長刀を振るってきた。
その刃は、由香の長刀の3倍ぐらいの刃渡りの巨大なものであった。
長刀を振るっただけで突風が巻き起こる。
短く切りそろえられた黒髪、鍛え上げられた肉体は2メートル近くあり、薄緑の絹のロングスカートの上に漆と金の鎧を付け、上半身は髑髏で乳房を隠し肩当をつけていた。
隼人はその体が全く動かず、非常用のメカだけの力で応戦する。それでも、経験と意地で敵の攻撃を交わしていたが、反撃できない。
そのとき、
「隼人様〜」
なんと、チャーミーがへんてこな鎧を着て割り込んできた。
「危ない」
チャーミーを助けようとした隼人は、長刀の直撃を受け、バランスを崩して落下してしまった。それを追う女軍団。
由香とチャーミーも追う。
その頃比叡では香織が孤軍奮闘して艦を制御していた。
科学者でもある彼女は悟った。
「男性の力を弱めるフェロモンが・・・全ての男性が萎えてしまうマイナスのフェロモンを出しているんだわ・・・この星は・・・」
「くそぅ・・・」悔しがる七海提督。
「そうだ、香織君、ものは試しに・・・」
「もう、博士ったら・・・」
しかしダメだった。香織がフェラチオしても自分から乗っても、博士の一物は萎えたままだった。
地上に落下した隼人は女ボスに長刀を突きつけられる。
すると、そこに黒いマントに学帽を被った醜いメガネの女が待っていた。
「侯爵さま、あとはお任せを・・」
「先生、ほんならたのみまっせ!」
黒マントのメガネが光ると、隼人は氷付けにされてしまった。
その間、不時着した比叡は接収され、博士以下全員が連行されてしまった。
そこで博士たちが見たのは、女たちに鞭で叩かれ強制肉体労働させられる男たちの姿であった。
この星は・・・。
「隼人君!」氷付けにされた隼人にすがる由香。
「おい、あんたも女なら、わらわの家来になって男どもに喝を入れんかい?」
「いやよ!貴女は誰なの?」
「生意気な小娘ね。人に名前を聞くならまずその無粋な兜を脱いで、自分から名乗るのが礼儀であろう!」
「・・・わたしは、地球の細川由香。バルディーナとも名乗っているわ」
「お前が、あの太陽系方面侵攻軍をたった二人で撃退したという地球の騎士の一人か・・・?まさかこんな小娘だったとは。ということはこいつがバルディバンか・・・。
ガーッハッハ。宇宙最強の男かなんか知らないが、この星に来たのが運の尽き・・・。男なんていうのは所詮ゴミ。女の足元にひれ伏すものなのよ・・・。カーッハッハハハ・・」
「貴女は誰なの?」
そのときである。
「あーっ!伯母様!」
そう叫んだのはチャーミーであった。
「チャーミーやんか?なんでお前がこいつらと・・・」
「由香ちゃん、この人はね、私の伯母様の・・・」
「アッコンドラ=ハイリティ=ダンデイ=ニカイラス=スカイガーム侯爵様よ!」
アッコンドラ=スカイガーム侯爵・・・・。身長2メートル、握力1トン。
グレートロイヤル帝國皇帝ジョーズ6世の実姉である。
本来、スカイガーム侯爵夫人であったが、夫の死後、後継者がなかったためその地位を継承した帝國唯一の女性侯爵である。
隼人はこうして氷付けにされ、一行は連行抑留されてしまった。
それでも、由香は姪であるチャーミーと一緒に居たため、粗末な扱いは受けなかったが、厳しい尋問を受ける事になってしまったのだ。
香織は、接収の折に上手く女騎士の一人の衣装を奪い城への潜入に成功していたが、まだ様子を見て潜伏している。
それにしても、この星の男たちは惨めであった。
七海提督らも、早速強制労働の石切場へ・・・・。
「カーハッハハハ。見たか!女は男より偉いのだ!」
「違うわ!」
「お黙り!」
「チャーミー、お前はわらわの姪だから、特別に明日その女と一緒にリバーストン星に送り返してやるからね。」
「伯母様、隼人様も返して・・・」
「そんな鉄クズならもっていきな」
「いけません、侯爵様」
「おお、先生・・・」
「その男からは邪悪な男のオーラが出ています。明日奴隷どもに永久に出て来れないように地獄谷の噴火口へ投げ込むべきです。」
「おお、そうじゃそうじゃ・・・何事も先生の言うとおりだわい、がっははは」
「先生」と呼ばれた女は、グレートロイヤル帝國一の天才学者、タージ=マヨール女史である。彼女は、グレートロイヤル帝国大学主席卒業の才媛であり、科学的・生物学的に女性は男性に勝る、ということを科学的に証明した、と吹聴していた。そのほか、化学、数学、歴史、天文学、医学、文学、グロテスター教、社会学、哲学などの分野でも、随一の実績を残している。だが、彼女は全ての男性を徹底的に憎み、否定し、滅ぼそうと考えていた。
「ひどい・・・・」
由香とチャーミーは泣き出す。初めて行動が一致した二人だが、それと気づくと
「フン」と顔をそむけあった。
その頃、奴隷収容所では・・・。
厳しい女たちの監視と拷問の中、犬の餌のような食事が与えられる。
「博士、親分、あたしがきっとフェロモン源を突き止めてあげるわ。辛抱して」
香織は女騎士に化け、博士と提督を励ます。
そのとき、香織は一人の女騎士が、ある男の手を取って脱走させたのを見た。
「あ、あの子・・・」
香織はこっそり後をつけた。
「ジュリアン・・・・。もう大丈夫よ。」
「アッコリーナ・・・でも君は・・・・」
二人は恋人同士のようであった。そして、女の身分は、かなり高いものであることが想像された。
香織は、近づいていった。
「何者?今の話を聴いたからには・・・」
「ふふ、私は敵じゃないわよ。」
本能的に香織には勝てないと思ったアッコリーナは、しーっ、と合図してから香織を秘密の隠れ家に案内した。
「私は地球から来た森村香織っていう女よ」
「地球なら知っています。でもよりによってこんな星に・・・」
「差し支えなければ、この星のことを教えてくれない?」
「・・・・」
「リーナ、こうなったらこの人に話してしまおう・・・」
「お話しましょう。この星はニカイラス侯爵家が治める惑星スカイガームです。
ほんの数年前までは、この星は平和で暖かな微笑みにあふれた星でした。でも・・・。」
数年前、侯爵がマゼラン星雲遠征で戦死して以来、この星には不幸が続いた。
天変地異、洪水、疫病・・・。
そして、跡継ぎのモリソン公が、男色相手に暗殺され、侯爵家が断絶の危機に・・・・。
急遽、未亡人が王の姉であることから、特別に侯爵の地位を継承し、後継者として姪、妹の娘を養女に。その養女がアッコリーナであったのだ。
「伯母上、いいえ母上は、元は少し乱暴だけど、強くて優しい人でした。ところが・・・あの醜い学者が来てから、変わってしまったの・・・」
侯爵の地位に付いた未亡人は、愛息の命を奪うことになった男色を憎み、同性愛者たちをまず処刑した。ついで、争いや戦争がおきるのは男が支配しているからだと、男を公職追放して女による支配を固めた。その頃、タージ・マヨール女史が最高顧問に就任し、その直後から男性たちの精力が著しく減退し、女たちに逆らうことが出来なくなってしまったのである。
どうも、男性の力が弱くなったのは、タージ・マヨール女史が何らかの邪のエネルギーを作り出したからに違いないのだ。しかし、警戒は厳重で、侯爵の後継者で、騎士隊長であるアッコリーナでさえ、たやすくは近づけないのだった。
そして、アッコンドラ侯爵の信頼は絶大であり、忠告すれば手打ちにされたり牢屋に入れられてしまうのであった。
そのうち、タージ・マヨール女史の力は次第に侯爵をもしのぐようになってしまったのだ。
その頃、チャーミーはわがままをして衛兵たちを困らせ、その混乱に乗じて由香とともに宮殿を脱出した。
そして、偶然にも、アッコリーナのアジトに・・・。
「あっ、リーナ!」
「あら、チャーミー?」
二人は従妹同士。「
「あ、香織さん」由香も香織の姿を見て安心。
「無事だったのね、二人とも。いいこと、必ず隼人君を助け出して、それから博士たちを比叡に戻すのよ。特に由香ちゃん、相手は女だけ。遠慮はいらないわよ。あんたの女の意地を見せるときよ!」
由香は、その奥ゆかしい性格のため、男性相手だと恥じらいや恐怖で実力が発揮できないことがあるのだ。
「でもチャーミー、どうしてあなたがこんなところに」
「それは、フィアンセを助けるためよ」
「お黙り!隼人君は私のものよ」
「ふふ・・チャーミーったら。」
「何よ、リーナこそその子誰よ」
「ジュリアンは私のフィアンセよ」
「生意気ね」
「まあまあ、三人とも、ここは仲良く」
「はーい、お姉さま・・・・」
チャーミーとアッコリーナはたちまち香織になついてしまったようだった。
「決戦は明日よ!」
香織の勝算はあるのか?氷漬けにされた隼人の運命は・・・。
続く