グロテスター・血の歴史
遂にグロテスター本星のある、グレートロイヤル系に到達した隼人と由香。だが、第4惑星である本星にたどり着くまでには、11の惑星と無数の衛星・機動要塞を突破しなくてはならない。
特に、最も手前にある15番惑星ホワイストンは本星を上回る防備がされている。損害を避けるため、ここを迂回して14番惑星のリバーストンを突破するのが賢明だが、そのためには宇宙気流を乗り越えなくてはならない。
「比叡」作戦室では、正面突破か、宇宙気流突破による迂回かの激論が交わされた。
前者は七海提督、後者は細川博士の主張であったが、最終的に「被害を避け一日でも早く本星に到達するには、迂回しかなく、その難関を突破できる操艦者は提督以外にない」と説得し、迂回コースで決まった。
一方、先に本星空域に達したエドワルド黒太子らの戦艦「アンノン」だったが・・・。
そこで彼らが目にしたのは、信じられない光景であった。
なんと、太子は戦死したことになり、国葬が営まれていたのだ。しかも、国王夫妻とジョーズ皇太子は幽閉され、叔父(国王の弟)のムーリン王子が、摂政宮としてそれをとりしきり、事実上の君主になっていたのだ。
「どういうことだ!」
だが、ムーリン王子は強欲だが無能な男であり、単独でこのような暴挙ができるはずがなく、何者かが黒幕になっていることは間違いなかった。
しかも、ムーリン王子の支配するテンプル星は、リバーバッテン卿の支配するワークキャニオン星と隣接していて、中間にあった衛星を言いがかりをつけて奪ってしまった男でもあり、川×卿にとっては不倶戴天の宿敵でもあった。
着水入港しようとしたアンノンは、あわや拘束されそうになった。太子戦死の責任を川×卿に追わせ、卿を死刑にすると言ってきたのだ。
「無礼者。わしを誰だと思っておる。それに、控えおろう!ここにおわすお方こそエドワルド黒太子であられるぞ!」
「ま、まさか・・・」使者は腰を抜かして驚き、逃げ帰った。
だが・・・数時間後、グロテスター本国艦隊が出撃してきて、アンノンを包囲して投降を呼びかけてきた。最新鋭のザンガード級、セブンスター級をはじめとする戦艦群に対しては、損傷しているアンノンでは勝ち目がない。
リバーバッテン卿は、強行突破をしようとした。だが貴族である彼は、ロイヤル王家の紋章をつけた本国艦隊にどうしても発砲できない・・・
「叔父上、どけ!余がやる・・・」しかし、それと同時に本国艦隊は攻撃を仕掛けてきた。初動が遅れたアンノンは絶体絶命・・・。
だが、そのとき黒い影が割って入った。
攻撃を一身に受ける黒い影。
「若、今のうちに」
「ん?今の声は?」どこかで聞いた声である。
本国艦隊司令ブルーザー大将は、割り込んできた謎の船に怒りを燃やし、攻撃を集中したが、全く手ごたえがなく、その艦はいつのまにかすーっと消えてしまった。
その間にアンノンは脱出に成功した。
この「幽霊戦艦」の正体は一体・・・?
脱出したアンノンは、川×卿の領地・ワークキャニオン星に向かった。
「叔父上、いったいわが星はどうなってしまったのだ・・・」
「若、まさか、まさかとは思いますが・・・・嗚呼、そんなことが・・・100年前の悪夢が・・」
「100年前の悪夢とはなんだ!」
「お話しましょう。その前に、わがグレートロイヤル星の歴史についておさらいしましょう。ご存知の通り、わが故郷ロイヤル星は、全体の9割が海でございます。われわれ人類の歴史は、新たな陸地を求めての冒険と航海の歴史でした。そして、海の果てまで突き進んでも、陸地はグレートロイヤル島とマイルランド島、そして酷寒の北極大陸だけだということが分ったのです。そこで、人工島や海底都市の建設を進めましたが、それでも人類煮の発展に追いつかず、今度は空、つまり宇宙への進出を目指したのでございます。最初は、人が住めない星しかみつかりませんでしたが、それでも資源を手にすることができ、その宇宙金属の力により、ついに本星以外での生存に成功するとともに、人工太陽の製造により、ロイヤル星系の外惑星全てに生存可能になったのでございます。そこから飛躍的に科学技術が進み、遂にはアンドロメダ星雲の覇者となり、その間、異星人や怪獣・獣人の存在を知り、これらを支配下に組み込み、銀河系へ進出したのでございます。
ところで、ロイヤル王家は、元々はダンデイ大公家といって、王家ではありませんでしたが、代々海洋開拓・宇宙開拓の先頭にたってきた栄光の家だったのです。ロイヤル星の神の血を引くアーク・ロイヤル皇帝家の断絶後、諸侯により新たな王として推戴され現在まで21代を重ねてきました。その歴史の中でも、初めて外宇宙へ進出してロイヤル星雄飛の礎を築いたジョーズ1世の時代が第一次黄金時代でした。その後、14代タートル王の時代に第2期黄金時代を迎えたのですが、その頃、すでにロイヤル星系外に移住した諸侯が独自の文化・勢力を蓄え、15代ハリー王・16代テリー王の時代に反乱を起こしてきたのです。しかし、偉大なる17代ジョーズ2世がこれらを全て平定した上、アンドロメダ星雲を完全支配し、銀河系への進出を果たしたのです。そして以後、王家から皇帝を名乗ったのであります。以後、ジョーズ3世、ジョーズ4世、祖父君のジョーズ5世、父君ジョーズ6世と歴代皇帝は「ジョーズ」を襲名するようになったのでございます。」
「それは知っている」
「しかし・・歴史書からは抹消されていますが、お爺様のジョージ5世の幼少時に、我が王家は断絶の危機にさらされたのであります。」
「何?話してみよ叔父上」
「は。ジョーズ4世は、病弱な上に酒豪で、わずか21歳で崩御されたのです。そして、ジョーズ5世はたった2歳で即位いたしました。当然執務は出来なかったので、ジョーズ2世の末子の、グロムウェル公爵ビクトール王子が、摂政になり、側近らを使って独裁政治を行ない、反対派を粛清し、あまつさえジョーズ5世を暗殺しようとしたのです。いや、暗殺に成功したと思い込み、自らが皇帝に即位しようとしたのですが、諸侯の反対により、「終身護国卿」となり、ガイフィールド男爵をナンバー2に据え、秘密警察のアクベェ所長と、側用人・ゴードンとともに独裁をすすめ、皇帝即位に反対した諸侯を処刑したり、領地没収したりなどの暴挙を重ねたのです。彼は、惑星開拓用改造人間「怪人」や、宇宙で捕えた獣人をボデイガードに使い、専横を極めました。実は側用人のゴードンも、怪人を再改造して人間らしく仕立てた者だったのです。さらにその怪人というのが、元々は囚人を、人間の住めない星の開拓強制労働のために改造した者であり、凶悪な者が強靭なメカの力を兼ね備えて手が付けられなくなっており、獣人も体型こそ人間ですが、顔や知能は野獣に毛の生えた程度で凶暴だったのです。そして、遂に全宇宙人類を怪人に改造して支配するという野望をあらわにしたのです。
しかし、ジョーズ5世は生きておられました。乳母の機転で身代わりの者・・・乳母の実の子が身代わりになったのでした。
そして、反対派の諸侯のリーダーが、私の祖父のアキレスでした。アキレスは時期を待ってグロムウエルを討とうとしましたが、彼に本家を取り潰され浪人になったセブンスターという剣士が、勝手にグロムウエル暗殺を企てて返り討ちになったため、ついに内乱状態になってしまったのです。アキレスは、幼君を奉じてグロムウエル討伐軍の総大将になり怪人軍団を打ち破りましたが、貴族でありながら怪人に改造されていたグロムウエルの腹心・ガイフィールドによって無念の最期を遂げました。しかし、マイヤー卿がガイフィールドと差し違え、アクベェ署長がゴードンをだまし討ちにして降参してグロムウェル一味は追い詰められ、ついに反乱は終結し、グロムウエル卿とアクベェ所長は宇宙監獄に幽閉され、このことは歴史から抹消されたのでございます。」
だが、この話を聞いていた麻里子が発言した。
「その、グロムウェル卿とワルモナイトは、あまりにも似ているわ」
「何!」太子も叫ぶ。
一瞬顔の曇る川×卿。
「実は、私も前からそれを感じていたのですが・・・100年前にすでに60近くだった人物・・・。しかも彼が入れられた監獄というのは実はスクラップ置き場で、食事も与えず、留置して数日後には餓死したはずの事実上の死刑ですから、それはありえないと・・・」グロテスターの法律では、王族は死刑にすることが出来ないため、事実上餓死させる場合でも、一応は流刑の形をとるのだ。
「グロムウェルには子供はいなかったの?」
「それはわかりません。しかし表向きグロムウエルは独身でした」
「臭いな。たぶんワルモナイトはグロムウエルの隠し子か、縁者なのだろう」
そのことの真偽は別として、今はっきりわかったことは、ムーリン王子を操り、ロイヤル星を乗っ取った黒幕は、ワルモナイト以外には考えられないということであった。
幽閉された国王夫妻と皇太子を助け出し、星を取り戻さなくてはならない。その上、侵略の復讐のため、隼人と由香をはじめとする地球軍も迫ってきている。
今、エドワルド黒太子とリバーバッテン卿は、外と内に強敵を抱え、絶体絶命になってしまったのである。
宇宙の隅々まで張り巡らされたワルモナイトの陰謀の網。
そして、隼人と由香がたどり着いたリバーストン星にも、その魔の手が伸びていたのだ。
続く。