第65話 王妃の晩餐会
地球のいかなるビーチより美しい海岸で人魚のように戯れた由香、麻理子、香織。夕焼けが迫る。
「もうすこし、ここでこうしていたいわ・・・」
しかし、そうはいかなかった。今宵はこのレモネード星王室主催の晩餐会が開かれるのだ。
「でも晩餐会と舞踏会も素敵よ」
「そうね・・・。」
比叡に戻る三人だったが・・・・。
「申し訳ないでごサル。今晩の晩餐会は、明日に延期になったでごサル」
「えーーーっ!」
無理もない。直前になってのドタキャンなのである。
「まずい・・・。食料と水の補給を含め、この星には3日の滞在の予定だった・・・。このままでは目的地到達が遅れ、その間にワルモナイトが体勢を立て直し、地球が危うくなるかもしれない・・・」細川博士は危惧した。
「ガハハ。骸骨野郎が何をたくらもうと、俺様と隼人がいればやっつけてやるぜ」
七海提督は平気である。
地球には、冥王星海戦に間に合わなかった新鋭艦と、退却し修理中の金剛以下の艦艇が残り、冥王星とイオと月に防衛線を張って隕石ミサイルや怪獣、ロボットの侵攻を警戒していた。
「皆様、お詫びと言ってはなんですが、今宵はお風呂を用意したでごサル」
エンチョは、一同を露天風呂に案内した。
「素敵!」隼人と由香は、二人だけで独立区画を利用することになった。
「隼人君、由香、このままずっとこうしていたいわ・・・」
「由香ちゃん・・・」
由香は好き好んでバルディーナとなって戦っているわけではない。だが、彼女がバルディーナにならなければ、最愛の隼人が変身するバルディバンは、100%の力を発揮できないのだ。
二人は、生まれたままの姿で体を重ねた。
「もう少しの我慢だ・・・。由香ちゃんの19歳の誕生日までに必ずワルモナイトを倒して、地球とロイヤル星の戦争を終わらせてみせるさ」
「うん。そしたら由香、隼人君の赤ちゃんを産むわ・・・」
そして夜が明けた。隼人は武術大会の稽古に余念がない。細川博士と香織は、比叡の点検と物資の補給に余念がない。グロテス語の話せる麻理子とプラドはここでも大活躍だった。由香は、ドレス選びに夢中であった。そしてついに、晩餐会が開催された。
「皆様、ようこそレモネード星へ!」
挨拶した司会者は、レモネード星人(星猿)でも、ロイヤル星人でもなかった。まして地球人でも怪人でもない。なんとブタの獣人だった。
「今宵はわれらの偉大なる王妃殿下主催による晩餐会及び舞踏会です。私たちは地球の皆様を歓迎いたします!申し遅れましたが、私は執事トンキーでございます」
大皿にぎっしり盛られた山海の珍味や豪華な料理。そして着飾ったこの星の支配階級。
よく見ると、支配階級は地球でいうチンパンジーに似た顔立ちの者が多かった。あとでわかったことだが、この星では、オランウータンに似た聖職者、チンパンジーに似た貴族、猿に似た庶民、ゴリラに似た奴隷の4階級があり、その他に人権(猿権)のない下等な猿も存在していることがわかった。また、グレートロイヤル星人の紳士、貴婦人も参列している。
「皆様、王妃ゴリー・アンタハアッポ様のご入場です!」国歌が鳴り響く。入場してきた王妃は・・・。
「あ、わるいわるい、ま、今日はいっぱい食べて踊ってちょうだい、歓迎会だから。」
「ワーーーー」歓声が上がる。王妃は、ゴリラに似ていた。ゴリラは奴隷階級のはずだが、王家はなぜかゴリラのようであった。
しかしこの星の食い物はどれも美味い。酒も美味い。
「ガーハッハハハ、愉快愉快」七海提督は大満足だ。
だが、「ちょっと、それ食べないの?もったいないじゃん」「あっ!」なんと、王妃自らが来賓のテーブルにやってきて、料理をわしづかみにしてむしゃむしゃ食べてしまったのである。すごい食欲である。唖然とする一同。
だが料理は次々に運ばれてきた。
そして歌と踊り。トンキーのほか、ロイヤル星人の紳士と髪の長いチンパンジー女が目立っていた。
しかし、しかめ面をしているエンチョの姿を隼人は見逃さなかった。
「エンチョさん・・・」
「いいえ、何でもないでごサルよ。」エンチョは、明らかにトンキーに対し悪感情を持っているようであった。
「ところで、王妃様はあそこにおられますが、国王陛下にご挨拶がしたいのですが・・」細川博士が申し出たが、なんと国王は、隅のほうで手酌で一人酒を飲む紳士だった。
「この星では、王妃さまと、ロイヤル星の代官カナシバル総督、それに女官長ラエと側用人のトンキーが威張っていて、王様はあのとおりなのでごサルよ・・・」
エンチョはひそひそとささやいた。
だが、由香、香織、麻理子はそんなことお構いなしに踊る。そして、他にも一人、異星人と思われる黄色いドレスの美少女が踊っていた。王妃とラエも踊る。そして歌う。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、閉会の時間になった。
「本日はありがとうございました。地球の皆様、機会がありましたらぜひまた立ち寄りください」
こんなに満腹になるまで食べ物を食べたのは何ヶ月ぶりだろう・・・。
だが隼人は明日の大会に備えて、腹八分目にしていた。明日早い。一同は宿舎に引き上げようとした。
ところが。
「待てよ!あんたらノリ悪いじゃん!もう少し付き合えよ」
なんと王妃が追いかけてきたのである。
「ではお言葉に甘えて」
「男はいいよ。あんたと、あんたと、そしてお前!」由香と香織と麻理子が名指しされた。
「でも・・・」
「由香、折角の王妃様のお誘いだ。いってきなさい。香織君、由香と麻理子君を頼む」
「任せて」
そして、女たちとトンキーだけで2次会、三次会が開かれた。そして夜が開けるころ三人はやっと解放された。
「やれやれ・・・」
そしてこの日、隼人は国王杯武術大会に出場した。
由香も眠い目をこすり、応援に行こうとした。だが・・・。
「由香様。大変でございます。王妃様がお呼びでございます・・・」
エンチョが駆け込んできた。そして半ば拉致されるように連れ去られる由香。
「隼人君・・・」
「由香ちゃん」
「隼人!おじょうちゃんはああみえて芯が強い。貴様は予定通り大会に出て、地球人の意地を見せるんだ」七海に諭された隼人は、大会に出場することになった。
戦う相手は一体?そして由香の身に危険が・・・。
続く