第61話 戦いの後

 

 激しかった冥王星での戦いは終った。しかし、地球が勝ったのでもなく、グロテスターが勝ったのでもなく、突如乱入してきたワルモナイトのため両軍とも壊滅状態に陥って戦闘不能となり、痛み分けになったのが真相である。

 そして、ついに明かされたワルモナイトの野望の一角。そう、彼はグロテスター王家を打倒し代わって皇帝になり、怪人王朝による宇宙支配を狙っていたのだ。地球侵略は、その準備のため外に目を向けさせるためのものだったのだ。

 だが・・・はたしてそれだけなのであろうか。そして、隼人の親友・段田大輔を「息子」と呼び連れ去るワルモナイト・・・・。

 

 本星の尻に火のついたリバーバッテン卿は、あわてて残存艦隊をまとめ、故国救援に舞い戻る・・・。エドワルド太子も一緒だ。

だが、太子の腹心で守役だったバルボン将軍は基地と運命をともにし、隼人の姉・真理子は太子を庇ってワルモナイトの髑髏剣を受け、生死を彷徨い、地球側に取り戻された。

 そしてリバーバッテン卿は今、苦渋の決断をした。

「全艦、砲門・ミサイル発射用意・・・。標的・バウ・・・・・。」悔しさを滲ませる命令だった。

 地球の戦艦「霧島」と相打ちになって大破した新型戦艦「ガウ」・・・。リバーバッテンの旗艦、アンノンと同型の最新戦艦であった。

 大破しているとはいえ、まだまだ修理できる。しかし今は一刻も早くロイヤル星に戻らなくてはならない。破損したガウは足手まといになってしまう。 しかしその残骸を太陽系に残せば、たちまちのうちに地球人により調査・複製されてしまう。地球人は現に僅か2年でグロテスターの技術をものにし、宇宙艦隊を編成して挑んできたではないか。その主力は、2時代前の技術を基にしていたが、もしガウが敵の手に落ちれば、優位は完全に逆転してしまうだろう。地球人の手に渡さないため、撃沈処分をしたのだ。宇宙の闇に、音響膜が張り巡らされ、もの悲しく響くグロテスター国歌。今、最新戦艦「バウ」は撃沈処分に附され、同時に戦死した将兵の宇宙葬が行われた。

 

 

 その頃、地球側は、冥王星基地を叩きつぶす目的を達成したため、残存艦を纏めて退却の準備に入った。

しかし、隼人と由香、それに細川博士には、敵本星に乗り込むもう一つの使命があった。

 だが、戦いで旗艦「比叡」は大損害を蒙り、太陽系を離脱できなくなってしまった。

 4隻ある金剛級のうち、榛名だけは無傷だったが、この艦は純地球製のため、太陽系離脱能力は未知数であった。

 そして、真理子は今、危険な状況にあった。香織は一足早く、とりあえず普通の行動はできる程度に回復していたが・・・・。

「姉さん、死なないでくれ・・・」隼人は天を仰ぐ。

「そうだわ!私の胎内で産みなおせば・・・」

「それは名案だ・・・しかし・・・・」

 

 その頃、内部では意見調整が行われていた。一つは、敵本拠に行くことを諦め、地球に帰ること。2案は、イオに後退して修理の上、乗り込むこと。3案は、この場で応急修理をして乗り込むということである。七海提督の強い意思により、3案と決ったが・・・。修理する材料も施設もない。

 「そうだ!破損した金剛と霧島の部品を移植して修理すれば、比叡だけで乗り込めるぞ。そして残った残骸は榛名が曳航してイオへ持って帰り修理すれば良い」

 この案は早速実行に移された。だが・・・。グロテスター鋼鈑で出来た金剛の装甲版は、宇宙服を着た作業員の工具を受けつれなかった。

大ビンチ・・・・。

 「うむ・・・そうだ!バルディスターに作業をさせれば!」

隼人と由香に、大任が・・・。

しかし・・・

「いやです!真理子さんの命を救うほうが先だわ!」

「しかし由香ちゃん・・・」

「隼人君、あなたのお姉さんなのよ・・・」

珍しく大喧嘩する隼人と由香。

 大きく深呼吸した細川博士は、重い口を開いた。

「よし、同時進行だ。隼人は修理を。由香は真理子君の蘇生を」

「でも、どうやって?」

「香織君」

「え、わたし?」

「どういうこと叔父様?」

「つまり、由香は胎内で真理子君の蘇生を行い、作業は隼人と香織君の合体により行う」

「でも博士、私はチャージは出来ても合体は・・・」そう、香織の生体エネルギーの出力と、隼人との相性では、エネルギー補給は出来ても、合体は出来ないはずだ。

そして、かんかんに怒っている様子の由香。困惑した隼人。

「まあ三人とも落ち着きなさい。まず手順を説明しよう。最初に隼人と由香は通常通り合体する。そして真理子君をコアに収める。そして、コア、即ち由香の人工子宮を離脱させ、由香はその姿で真理子君の蘇生を行う。同時に、その際のエネルギーを接続した香織君を強制的にコアに変形させ代わりに収納する。これで両方の作業は両立する」

「さすが博士だわ。すぐにやりましょう。真理子の命も危ないし」

「わかったね由香ちゃん。行くよ」「いいわ。」

2人は合体した。そして、そのエネルギーを浴びた香織も変形し、コアに。

「今だ、真理子君を収容」

そして真理子を収容した由香が切り離され、代わって香織が・・・。

 

「由香ちゃん、姉さんを頼んだぞ」「任せて!でもあんまり香織さんといちゃついちゃだめよ」「安心しなって由香ちゃん。わたしそんなんじゃないから」

 

こうして奇跡のトライアングル合体は成功した。だが、愛の力で結合した隼人と由香とちがい、香織との合体では作業は出来ても、出力は半分で戦闘は出来ない。

 香織は、淡々と隼人に指示を出す。

「隼人君、金剛の第5ブロックを剣で切り離して、それを比叡に接続、溶接はバルディシューターの出力を加減して・・・だめ、もう少し右」

合体、といっても、実質香織が隼人の巨体を操縦しての作業のようであった。不可能と思われた作業も順調に。そしてついに完成・・。しかし同時に香織のエネルギーが切れ、二人は力を失って分離し、収容された。

 そして由香は、ついに真理子の蘇生に成功。ゆっくり目をあける真理子。

「ここは?エディは?お父様は?将軍は?」

「真理子君、お目覚めかな。ここは戦艦比叡だ。君は由香の力により、生身の人間として生き返ったのだよ。そして、隣に浮かぶ戦艦榛名で、なつかしい地球に帰るんだ。もう怪人に変身させられる心配はないんだよ」

「でも、私は・・・」

「真理子さん、わたしからもお願い。地球へ・・」

「由香ちゃん・・・。わかったわ。でも博士、私もこの比叡に乗せてください。道案内ぐらいはできますわ。されが罪滅ぼしにも・・」

「真理子君・・・」

 そこに、力尽きた香織と隼人が収容されてきた。

「隼人!」動かぬ隼人を抱きしめる真理子。やはり姉弟愛は健在だった。

「せっかくの再会に水を差して悪いが、由香、直ちに隼人とクロスして蘇生しなさい。あ、その前に香織君にエネルギー照射!」

由香は改造人間であり、また仲間の蘇生や補修も可能なのである。

 「ふ、真理子、この前は私の負けだったわ。」「いいえ、貴女の勝ちよ」

「とりあえず隼人君と由香ちゃんの邪魔をしては悪いわ。隣へ行きましょう」「ええ」

ライバル2人がこうしてともにお茶をするのは一体誰が想像できたであろうか。

 そして、1時間後・・・

「姉さん!」「隼人」

実に16年ぶりに、姉と弟は再会し一緒に過ごせることになったのだ。

「姉さん、もうどこにも行かないで」「隼人・・・」

 それを見守る由香と香織。

だが、その由香の体に異変が起きた。

 血・・・。そう、今日は彼女の生理日だったのである。全身が機械化されいていも、「女」としての機能は完全に残っている・・・いや、強化されていた。

「3ヶ月か・・・・。今ごろみんなは卒業式だな」隼人は思い出した。

 その頃、赤橋高校では卒業式。珠美や仁子、遠藤たちが母校を巣立つ。隼人と由香の卒業証書は兄の隆之が代理で受け取った。そしてもう1人の空席・・・。段田は敵に捕らわれてしまった・・・。

 空を見上げる珠美と永田。そして仲間達。「隼人君、姫、番長〜」

 

  その頃、ワルモナイトの要塞・イセキダーでは・・・・。

「イヒヒ、どうじゃ?」

「ハっ!素晴らしい肉体の持主です。改造するには惜しい・・・」

なんと、ワルモナイトとゾンビナイトが会話している。2人は同一人物のはず。

「そうか。そうじゃな。この肉体は俺様がいただく。すぐに鎧の制作に取り掛かれ。良いか、裏切ったら脳みそを締め付けるぞ。貴様も俺様同様、死なない体になったのじゃ。いや、貴様は俺様で、俺様は貴様・・・。そしてこの男も俺様の息子にして、俺様そのものとなるのだ。まったくお前はバカだ。実の娘でもないのに。しかしいいではないか。地球へ屍骸となったかもしれぬが帰れたのだからな。重ねて申すがこれからは貴様は俺様で俺様は貴様だ。」

「は、我々は三人で1人・・・」

真理子を救おうとして殺された三浦博士の脳は、なんとゾンビナイト(ワルモナイトのスペアボディ)に移植され、かつ自在に入れ替われるようになっていいたのだ。

「貴様にだけはこの男と俺様の素性を教えておこう。○○○・・・・」

「なるほど・・・」

こうして、ゾンビナイトとして生まれ変わり、不死身の肉体を得た三浦博士は、ワルモナイトに再洗脳され、さらに段田をくわえて三位一体の怪物に生まれ変わろうとしていた。

 

 そして、3つの陣営は、それぞれ別ルートで太陽系を離脱しようとしていた。

しかしそこには、対用の引力の限界と、他の恒星の引力圏の狭間の宇宙気流と隕石群が待ち構えているのだ。我等の比叡は地球人の船として初めてこの難所を通る・・・。そこで待ち受ける罠と試練とは・・・。そして、ワルモナイトの野望は?ロイヤル星の安否は・・・・?

 

続く