56話 冥王星海戦A

 

 「吉村――――っ!」

地球連邦軍主力、七海艦隊が冥王星上空に到達したそのとき・・・先発していた吉村提督の戦艦「扶桑」は、圧倒的戦力差を誇る、リバーバッテン卿率いるグロテスター太陽系艦隊に集中攻撃され、爆発四散した。

 だが・・・その間に隼人と由香は合体して陸戦隊の大発を収めたコンテナを抱き、冥王星の大気圏に突入を成功させていた。さらに、吉村提督の巧みな時間稼ぎにより、リバーバッテン艦隊の砲弾を枯渇させることにも成功した。

 「吉村の仇だ!」

「やられるためにわざわざ出てくるとは地球人も人が良いものよ」

七海、リバーバッテン両提督の闘志は熱く、ほぼ同時に「全艦砲撃開始!」の号令をかけた。

 しかし・・・。地球の戦艦は実はグロテスターの機動戦艦「ロイヤル・ダーク」を拿捕改造した金剛と、そのデットコピーからなっている。この艦は、宇宙空間を自在に航行し、水上でも水中でも行動でき、大きな搭載能力を誇っているが、実は主砲は水上でしか展開できなかったのだ。グロテスターの艦の大半はこの構造であり、「玉はあっても撃つことが出来ない」砲塔が多すぎたのだ。だが地球側技術陣は、装甲外穀を少し低く改修し、背の高い位置にある第2砲塔だけは使用可能としていた。さらに唯一グロテスターより優れた兵器、魚雷にも力があった。なおこれらの機動戦艦は艦首に強力なビーム砲を備えているが、互いに耐ビームコーティングされているため、威嚇や牽制、小型艦にしか使用できなかった。

 だが、リバーバッテン卿の旗艦・戦艦アンノンと同型艦のバウは違う。真空でも使える新型砲塔を4連装3基も備えた新型戦艦なのである。

 地球側の「扶桑」も旧式ながら宇宙で使える砲塔を装備していたが、射程・威力とも不足で敵に打撃を与えることは出来なかった。

余談ではあるが、グロテスター宇宙艦艇には、大きく分けて「機動戦艦」「新型戦艦」「海獣戦艦」の三種類があり、海獣戦艦は魚や海棲生物をモチーフにした巨大ロボット要塞ともいうべき強力艦で、怪人軍団や超人軍団の旗艦として使われている。怪人軍団旗艦「キングジョーズ5世」、超人軍団旗艦「クイーン・エイザベス」、獣人軍団旗艦「プリンス・オブ・ホエールズ」の3隻と、撃沈されたキングジョーズ5世の代替2番艦「キングジョーズ6世」の4隻が存在していることを地球側は把握しているが、他にも数隻存在している可能性もある。

 一方、アンノンはガウのほか、冥王星基地として機能しているデューク・オブ・ダークの3隻の同型艦がある最新型の宇宙戦艦である。

このようなことから、両軍提督の闘志とは裏腹に、火を噴く砲は意外と少なく、こう着状態になりつつあった。

 「よし、俺様に続け」なんと七海提督は旗艦「比叡」を先頭に単縦陣で突撃して行った。

「自殺する気かね?」

 リバーバッテンはチャンスとばかりに砲門を開く・・・。

 次々命中する敵弾。だが皮肉にも、宇宙や水中での攻撃力を犠牲にしたグロテスター譲りの殻に守られて致命傷は出ない。

 「こちらからも行くぞ!魚雷用意!」

次々打ち出される魚雷。

グロテスター艦隊の陣形が乱れた。

 よし、あの先頭の艦に密着しろ!

狙われたのは、戦艦「ハーレム」だった。

 「切り込め!」七海提督の号令で強化宇宙服を着た乗員が飛び移り、白兵戦を挑む。そのため、両軍ともハーレムと比叡に発砲できない。

その間、プラドこと緑川大佐の「和泉」を旗艦とする水雷戦隊は、陣形の崩れた艦隊に肉薄していく。いかに装甲の厚いグロテスター艦とはいえ、至近距離から必殺の魚雷をお見舞いすれば・・遂に戦艦オボーロに火の手が上る!しかしその喜びもつかの間・・・駆逐艦「暁」が、ビーム砲の直撃をくらって蒸発したのだ。

 そうしているうちに、両軍入り乱れ、小型砲で接近して打ち合う「艦隊白兵戦」状態になってしまった。

  しかし、数と性能に勝るグロテスターが有利であることに代わりは無い。

だが、突如後方の空母「ギックリゴシ」と「ビックリマーク」が攻撃を受けた。

「何、地球側の艦載機の攻撃だと!けしからん」

 地球側の亜米利加軍・ハルゼー4世提督率いる機動部隊の奇襲が成功したのだ。 

 だが・・・装甲空母のギックリゴシとビックリマークに致命傷を与えることはできなかった。しかし、旧式の空母「オーミーズ」は悲惨を極めた。18発もの命中弾を受けて、宇宙の藻屑と消えてしまった。両軍通じて、初の主力艦の沈没である。

 「おのれ地球人め。宇宙の覇者、グロテスターの航空戦力を侮るなよ」

厚い装甲に守られて無事だったギックリゴシとビックリマークの飛行甲板が開く。 おなじみの円盤のほか、攻撃機が飛び立つ・・・。

 数分後、グロテスター攻撃隊はハルゼー提督の機動部隊を攻撃した。だが、ハルゼー提督は噴出しそうになった。

「なんだ、あれは!」 グロテスターの攻撃機は、鉄骨むき出しの骨組みに太陽電池を兼ねた2枚の羽根と、姿勢制御用の小型ロケットをつけ、むき出しのミサイルをワイヤーでぶら下げ、ブカブカの宇宙服を着たむき出しの乗員が乗り込んでいる構造だったからだ。

 あの神出鬼没、変幻自在の動きを見せる円盤を作った星の兵器とは思えないシロモノだったのである。

 「生意気だ、俺様の視界から消せ」

ハルゼー提督の号令で、宇宙戦闘機グラマンS2Fスペースキャット艦上戦闘機が飛び立つ。攻撃機を守ろうとする円盤との空戦・・・。

さすがに円盤は手強い。だが、攻撃機は全滅してしまった。一方スペースキャットも半数が円盤にやられてしまった。

 円盤は小型ミサイルと小型レーザーで攻撃するが、大きなダメージは与えられなかった。

 円盤は素晴らしい機動力を誇るが、航続距離が短く、対人・対陸上兵器に対する武装は強力でも、対艦兵器はあまり強いものを搭載できなかった。

一方、当ればどんな戦艦も大破させられる大型魚雷を搭載できる攻撃機は、あまりにも構造が旧式すぎた。

 それは何故か。それは、宇宙の覇者を自認するグロテスターにとって、地球人ほど好戦的で科学力のある異星人と戦ったことがなかったからである。今まで征服してきた星は、エメロード星のように中世的で牧歌的な星や知能の劣る獣人や原始人の棲む星が殆どだったからである。

わずか2年でグロテスターの技術を完全にものにし、艦隊を組織して立ち向かってきたのは地球人が始めてであった。そのため、常に一方的に航空攻撃ができたため、攻撃機の性能は100年間進歩しなかったのである。

 このため、両軍の航空攻撃はともに失敗に終ってしまった。

だが・・・実はこの航空攻撃は囮だったのだ。

 「何事だ!」混乱に乗じて、密かに接近していた宇宙潜水艦の雷撃を受けて、ヨークタウンが大破し、ワスプが撃沈されてしまったのだ。

「しまった、ワナか!畜生、これでキングダイヤモンド体型が取れなくなってしまったぜ」

実は4隻の亜米利加空母は、三角定規の形をしていて3本の滑走路と隠顕式艦橋を持ち、真中の穴の中に姿勢制御ジャイロ球を持つ構造で、24隻が合体していろいろな陣形をとり、防御力を増したり、大型機の運用が可能になるようになっていたのだ。しかし2隻がやられ、エンタープライスとホーネットの2隻だけでは、月面基地から飛来予定の重爆撃機を収容できなくなってしまったのだ。重爆撃機は半数が引き返し、半数が燃料補給のためイオに向かった。これでは決戦には間に合わない・・・。

「ガッデム!」

「ハハハ。見たか、わが宇宙潜水艦の威力を!ほくそえむ川×卿。

しかし、航空隊は見事全滅してしまった。

 装甲の強化するあまり、搭載機が25機しかつめず、その35は旧式な攻撃機だったので、もうグロテスターは航空攻撃ができない。

 ハルゼー提督は、駆逐艦に爆雷攻撃を命じるとともに、アドベンチャー攻撃機に付近の次元断層や隕石を哨戒させた。2次被害を防ぐためである。

「あ、潜望鏡発見」

「叩きのめせ」

 駆逐艦と攻撃機は潜望鏡のあった辺りに攻撃を集中すると、突如漆黒の宇宙空間が一瞬裂け、真っ黒い潜水艦が浮かび上がってきた。

「畜生、死ね!」潜水艦はこうして1隻は倒された。だがまだ他にいるかもしれないのだ。七海提督も潜水艦に対する警戒をしなくてはならなくなり、夢中になって攻撃している場合ではなかった。「あ、金剛が!」金剛が、潜水艦の攻撃で戦列から落伍してしまったのだ。

 この潜水艦だけは、まだ地球側は開発できていない。

 

さて、切り込み隊作戦だが・・・そのうち、ハーレムから続々と地球側水兵が比叡に乗り移る。艦長と思われる男を縛り上げて連行する。比叡が離れた直後・・仕掛けられた爆薬が炸裂し、ハーレムは爆沈した。

 戦いは両群が入り乱れて完全に膠着・混乱してどちらが勝っているか分からなくなってしまった。

 

そして、隼人と由香が合体したバルデイライナーは、冷たく霧深い冥王星の空を突っ切る。

 だが、そこに巨大な海星の怪獣が現れたのだ。

「隼人君、我々はここから発進する。君は巨人体型になって怪獣をひきつけてくれたまえ」

「了解」

 バルデイライナーの腹からコンテナが切り離される。コンテナは4つに分裂し、大発が現れる。大発は雪と氷と霧の中、ダーク城目指して突き進む。

「チェンジ・バルディスター」

バルディライナーは、合体巨人バルディスターが手足を折り畳んだ姿である。今バルディスターは冥王星の大地にそそり立ち、海星と闘う。

 バルディソードで手を切り落としても、次々生えてくる。そのうち、包み込まれてエネルギーを吸い取られてしまった。

だが・・「隼人君、思い切っていつかのように、内部で再合体して倒しましょう!」

「よし、いちかばちかやってみるか!」隼人と由香はバルデイバンとバルディーナに分離した。すかさず2人を食べてしまう海星。

「チャンスだ!行くぞ由香ちゃん!」「でも、ネバネバが・・・このままじゃとかされてしまうわ」

 合体できない・・・。だが、海星の口の中の触手が偶然由香の秘部を刺激した。思わず失禁する由香。すると、粘膜が洗い流された。

「今だわ!」由香は胸から誘導ビームを最大出力で放射、隼人を引き寄せる。

「バルディ・チャージ!」

2人は結合し、再びバルディスターになった。内部から突き破られた海星は、再生できず倒された。

「よし、青山隊長や段田たちが心配だ。僕たちも乗り込むぞ」「OK

 

だがそのとき、上空では異変が・・・・。

「何事だ!」

「おお、神よ・・・」

なんと、大規模な宇宙気流の発生で、両軍艦隊はばらばらに吹き飛ばされてしまったのだ。

冥王星と海王星の軌道は十字に交差しているが、その交点に偶然触れてしまったのだ。だが七海はともかく、川×卿はそのことを知っていたはず・・・。では何故?

そう、あの者が、人為的に軌道へ誘導するべく人工地場を作って交点に誘導していたのである。好敵手との白熱する戦いに川×卿ともあろうものが、まんまとワナに・・・。はるか彼方に鍵穴状の飛行物体が。そう、アイツの仕業だったのである。

 

戦いは地上でも、軌道上でも激しさを増す。

 隼人と由香は、冥王星基地を叩けるか。そして七海艦隊の危機は・・・

 

続く。