55話 海王星沖大海戦@

 

 グロテスター冥王星基地を叩き潰すため、宇宙戦艦「扶桑」は宇宙を進む。その少し後に主力艦隊が続く。

 隼人と由香は、先発隊の扶桑に乗り込んでいた。冥王星に近づいたなら、陸戦隊を収容したコンテナを抱いてバルディスターになり、突入する予定なのだ。その決死隊の中に、2人の同級生の段田大輔がいた。

 「段田・・・貴様なぜ学校を辞めてまで・・・」

「そういう貴様こそ。しかしなぁ、バルディバンの正体が貴様らだったとはな。オレはお前やそのお嬢さんと違って失うものが何もない。自分の力を試すため志願したのだ。それにだ・・・。良く良く考えてみると、陸戦隊員の中に、すもも園の先輩がいっぱいいやがる。ハハハ・・・。俺たちは全員、死んでも誰も悲しまない奴ばかり集められているんだ。青山隊長にしたってあの歳で1人ものだ・・・」

「そんなことないわ段田君」

「フ・・あいかわらずお嬢ちゃんだな・・・。」

「段田・・・」

しかし段田の言うことは本当だった。陸戦隊だけではなく、扶桑の乗組員は全員身寄りの無いものだけであった。まさに決死隊なのである。

 

そして扶桑は航海を続け、天王星を超えて、海王星に差し掛かったとき・・・。

「吉村指令!」見張り員が絶句する・・・。

「グロテスター太陽系艦隊本体だ・・・。」

 

 グロテスター太陽系艦隊2代目司令長官、リバーバッテン卿率いる主力部隊だ。新型戦艦「アンノン」「バウ」を中心に、金剛、比叡と同型のレボリューション、リゲイン、ロイヤル・ゴブリンはじめとする戦艦、巡洋艦、駆逐艦の大群が・・・。

「陸戦隊はコンテナへ乗船!乗組員は全員戦闘配置につきなさい。隼人君たちは直ちに合体してコンテナを抱いて冥王星に突撃せよ!」

「しかし、冥王星はまだ遠いです・・・・!」

「吉村指令、あと5宇宙時間で七海提督の主力が追いつきます。時間稼ぎして合流してみては?」

「黙りなさい。命令権は私にある。今が絶好のチャンスだ。行け!」

指令はいきなり隼人と由香の座席ごと宇宙空間に放りだした。

「指令!」サイボーグである2人は平気だったが・・・続けてコンテナが打ち出される。

「隼人君、青山さんたちを冥王星に送り届けるのが君の使命のはずだ。迷わず行きなさい!」

「指令・・・・」

「よし、行くぞ由香ちゃん」「OK、隼人君」2人は合体して変形し、コンテナを抱えると赤熱して冥王星に向かう。光速を超える最高速度だ。

2人の性能は今、完全に発揮できることが証明できた。

だが・・・。

 たった一隻の扶桑は、川×卿たちの艦隊に完全に包囲されてしまった。

ビームや砲弾、ミサイルが迫る。しかし、鈍重なはずの扶桑を巧みな操艦で攻撃をかわしつつ、反撃する扶桑。だが多勢に無勢。

 ついに被弾する扶桑。

その様子が隼人と由香の脳にも映し出される。

「畜生、今引き返してバルディスターになれば旗艦を叩き潰して反撃できるのに・・・」

「隼人君、吉村指令が危ないわ・・・でも、私たちは段田君や青山隊長たちを乗せいてるわ・・・」

「くそっ!俺たちには何も出来ないのか・・・」

 

そのとき、2人の意識にコンテナの中から話しかけた声があった。「甘ったれるな。お前たち2人だけで闘っているんじゃねーぜ。本当の目的は冥王星基地を叩き潰すことだぜ。」

「そうだ、そうだった・・・。もう迷わないぞ・・・」

再び赤熱して加速するバルディライナー。

 

 その頃、扶桑は断末魔を迎えていた。

多勢に無勢、次々命中する敵弾。さらに隕石の影から襲ってくる宇宙魚雷艇。扶桑は副砲でこれらを蹴散らすが・・・。肝心の主砲は、詰め込みすぎて却って一斉射撃できないようになっていて、敵主力に有効打を全く与えられず、一方的に袋叩きになってしまった。

 遂にうずたかく積み重ねられた艦橋が倒壊する。「あ、吉村指令・・・!」だが、ブリッジは根元のほうにあるためこの時点ではまだ要員は生きていた。

 そして、ついに追いついた七海艦隊。

「親分、扶桑が、扶桑が大破炎上しています!」

「おのれ、グロテスター・・・吉村、待っていろよ・・・急げ、最大船速だ」

しかし、その七海の眼の前で・・・

 「アンノン」の4連装主砲の13回目の斉射が、扶桑の弱点である第三砲塔の火薬庫を直撃した。

「フ、七海君が追いついたな・・・私の役目は終った。健司・・・父さんもお前のところに今行くぞ・・・」

吉村提督の1人息子、健司少尉は艦攻乗員として豪州沖海戦に参加し、敵旗艦空母ロイヤルダークの飛行甲板を破壊するも、東隊長機を庇って被弾し、壮烈な戦死を遂げていた。妻は早くに亡くなり、他に子も親も兄弟もなく、父1人、子1人の親子であった。

「親分、扶桑が・・・!」

七海提督の眼の前で爆発四散する扶桑。

「吉村!」絶叫する七海。

「おのれ・・・・全艦砲撃用意・・・水雷戦隊突撃!野郎ドモ、俺様に続け!」

 

「お、敵の主力だな。さっきの艦同様、宇宙の藻屑にしてやるぞ・・」ほくそえむ川×卿。

だが、ワトソン参謀が顔面を蒼白にして進言する。

「伯爵様、先ほどの戦闘で砲弾が1/3以下になってしまいました!」

「何だと!」

吉村指令は、隕石を巧みに利用しつつ、敵には損害を与えられずとも、砲弾を浪費させる持久戦を挑んでいたのだ。そして、自らがやられると同時に敵が砲弾を使い果たし、そのタイミングで七海部隊が到着、まさに命がけの作戦は成功したのだった。

 しかし・・・温厚で優しかった吉村指令はもう還らない・・・。

「よし、仇はとってやる・・・」七海提督の闘志は燃え上がる。

一方、砲弾とミサイルを使い果たしたがビームは使えることから、勝算ありと判断した川×卿も、気持を切り替えて迎え撃つ。

ここに主力同士の全面対決が始まったのだ。

 

続く