第54話 恐怖の宇宙カニ・カニメテ襲来
隼人と由香は、土星の衛星・タイタンより宇宙チタンを採掘し、またイオ基地をほぼ無傷で接収できたため、艦隊は修理を実施できることになった。
苦戦の末、戦艦キングジョーズ5世を撃沈したが、味方にも多大な損傷があったためである。
一方、暇になった隼人と由香は、スキンシップにいそしんでいたが、基地とはいえ宇宙なので生身での結合はお預けなのがちょっぴり不満であった。
その2人が不意に本部に呼び出された。
「もう叔父様ったら・・・いいところだったのに・・・」
司令室では、細川博士や七海提督に並んで、温厚そうな提督が微笑んでいた。戦艦「扶桑」艦長の、吉村裕治提督である。
「隼人に由香。今回の作戦は敵の本拠地、冥王星基地を占領して地球への侵略を防ぐとともに君たち2人を太陽系外に送り出すことにある。そのために「扶桑」には青山少将以下の陸戦隊が乗船しているのは知っているね。幸い艦隊の後尾にいた「扶桑」は損傷がなかった。そして扶桑は速度が遅い。そこで、駆逐艦4隻を護衛につけて先発させることになった。その前に紹介しよう。扶桑を指揮する、第2遊撃隊指令兼扶桑艦長の、吉村さんだ。吉村さんは七海親分とは同期の間柄で、以前は兄上の指揮下で軽巡洋艦を指揮していたのだよ」
「はじめまして吉村です」
「はじめまして」
吉村提督は七海と並ぶ水雷の権威と呼ばれているわりには全くそうは見えない、温厚そうな紳士であった。だが、その姿にはなんともいえない悲壮感と無常観が伴っていた。
「隼人に由香。君たち2人は、木星圏外まで吉村さんを送り届け、その後タイタンで我々と合流せよ。頼んだぞ!」
「はい!」
「扶桑」は駆逐艦「時雨」以下を従え、出航していった。
要するに旧式で足手まといの扶桑を先に行かせる、あわよくば敵の攻撃を吸収させる、というのが真の狙いなのだが、この冷酷な作戦を考えたのは神山参謀であった。実は、クールで知的で計算高い神山参謀と、熱血漢の七海提督は犬猿の仲で、それぞれ、石田三成と福島正則のようだと言われていた。
だが、「扶桑」はともかく陸戦隊員を無駄に出来ないため、隼人と由香に護衛させることにしたのだが、これでは本末転倒である。
それはさておき、既に土星まで到達している隼人と由香のナビゲーションにより順調に進む第二遊撃隊(ちなみに比叡、金剛以下の本隊は第一遊撃隊、欧州の艦艇で編成されたのが第3遊撃隊、そして主に米国籍の艦で編成された機動部隊と補給隊の5群に分かれての行動となっている)
しかし、先頭を行く駆逐艦「時雨」から、緊急打電が入った。
「大変です吉村指令!衛星ガニメデ付近にレーダー反応あり・・・あっ!戦艦クイーン・エイザベス発見!」
なんとかつて奈良を空襲したこともある戦艦クイーン・エイザベスがガニメデにいる、というのだ。 しかし先日タイタンに行った時は敵艦隊は存在していなかったはずである・・・。ワープしてきたに違いない。ちなみに旗艦クラスのグロテスター艦はワープゲート無しでも自在にワープできる。
「そうですか・・・避けては通れませんね。諸君、戦闘配置につきなさい」
穏やかだが、凛とした吉村指令の命令が下される。
巨大なエイをかたどった戦艦クイーン・エイザベスは、空中でも宇宙でも水上でも海底でも、自由自在に動き回れる上、強力な武装を持ち、かつ超人軍団の旗艦であるためオカルト力ももった恐るべき艦であり、その実力はキングジョーズ5世、プリンスオブホエールズ、デュークオブダークと並ぶ4大戦艦と呼ばれていた。なお、デュークオブダークのみ、同型艦としてアンノンとバウがある。
クイーンエイザベスの最大の長所は、動きが軽快で素早いことである。攻撃しつつ、素早く敵の攻撃をかわすことができるのだ。
扶桑は、12門の巨砲をもつ地球で一番の重武装艦である。しかし、未熟な宇宙技術により造られ、その後グロテスターから分捕った技術を無理矢理後付で取り付けたため、非常に不安定な形をしており、全力攻撃すると振動で故障や破損を起こす恐れがある欠陥品であった。だが、吉村提督は冷静に、半数ずつ砲撃することで見事に振動を抑えた。 しかし、その弾は空しく宇宙に吸い込まれる。クイーンエイザベスの恐るべき機動力の前に交されてしまうのだ。
クイーン・エイザベスのブリッジでは、グロテスターの魔女、メデューサ・アン王女がほくそえむ。
「オホホホ・・・そろそろポン骨人形どもが出てくるころぞ。イヒヒヒ・・・なんとしてもガニメデ引力県圏内まで誘い込むのじゃ」
そして、その狙い通りガニメデに引き寄せられる艦隊・・・。
「いまだ、斉射!魚雷戦用意」
「あっ!」なんと、全弾命中かと思われたクイーン・エイザベスが突然消えたのである。ワープだ・・・。
そして、目前に迫るガニメデ・・・。
「反転」
冷静かつ適切な吉村指令の命令で、なんとか引力にひきつけられることを避けた艦隊だったが・・・。
ガニメデ星からのミサイル攻撃が・・・。
「吉村指令、僕たちが行きます!」
「頼みましたよ」
「行くぞ由香ちゃん!」「OK、隼人君」二人は宇宙に飛び出す。
そして隼人はバルデイソードでミサイルを次々切り落とす。由香はバリヤーを照射してミサイルの足を止める。
なんとか、ミサイルを全て駆逐した2人に、真の脅威が迫る。
「隼人君、見て!蟹よ!大きな蟹!」
なんと、人間より大きな巨大な蟹が空を飛んでくる!大きさといい、能力といい、これは普通の蟹ではなく、グロテスターの蟹型怪獣に他ならない。
「よし、やっつけてやる」
「バルディ・シューター」2人は光線銃バルディシューターで蟹を狙うが硬い甲羅に弾かれてしまう。
逆に、蟹は目から怪光線、鋏から火の玉、そして口から泡を吐いて攻撃してくる。
「あ、バルディシューターが・・・」泡は武器を溶かしてしまうすごいものだった。本体も少しずつ融かされたが、2人の再生能力が勝った。
そして、ついに2人は蟹を追ってガニメデの大地へ・・・。
氷と山の地形に苦戦する2人。だが、蟹は蟹・・・地上では、横にしか移動できなかった。
「よし、今度は剣で闘うぞ」「わかったわ」
隼人は剣、由香は長刀を振るって蟹と戦う。
「えい!」「おう!」2人の剣風に、次々と切り落とされる蟹の手足。だが・・・すぐに再生されてしまいきりが無い。
そして遂に・・・
「キャー!隼人君助けて!」
由香が蟹の鋏に腕を取られ、もがいてももがいても外せず、逆に歯がいじめにされてしまった。
剣で攻撃すれば由香まで斬ってしまう・・・。
絶体絶命のピンチだ・・・。
「由香ちゃん!・・・そうだ、バリヤーだ!胸のバリヤーを最大出力で放射するんだ!」
「わ、わかったわ」
すると、蟹の弱点である腹に隙間が出来た。あまりものエネルギーに驚いた蟹は由香を話す。その一瞬の隙を突いて隼人の剣が!
「大丈夫か由香ちゃん」「大丈夫よ。それよりあの隙間に長刀の柄を挟んでおいたの」
「でかしたぞ」
「よし、隙間に向かってバルディシューター!」バルデイシューターは体内で再生できるのだ。
ピキビキ・・・皹が入り砕け散る蟹・・やった、勝利だ・・・ではなかった。なんと、脱皮して一回り巨大化したのだ。そして攻撃を繰返すたびどんどん脱皮して巨大化してしまった。
「よし、僕たちも合体だ!」「まってたわ!」「バルディ・クロス!」2人は合体してバルディスターとなった。
だが、あくまで蟹は強く、不死身だった。苦戦する2人。
そのとき隼人は閃いた。
「見ろ、さっき焼ききった腕やはさみを。地球のかにと同じく、熱を通すと赤く変色して煮えている。僕たちの火力では硬い甲羅にはじかれていたけど、部分部分に細かくなればあのとおりだ。ということは、より強い火力と・・・できれば水があれば・・・。」
「さすが隼人君。それなら・・・あ、あそこから水蒸気が漏れているわ。きっと地下に水脈とマグマがあるんだわ」
「よーし!わかったぞ。吉村指令、こちらバルディスター。ポイントX-009に一斉射撃をお願いします」
「了解!」艦隊からの艦砲射撃で岩盤が崩れ、仲からマグマと水が噴出し、氷の大地のそこだけが灼熱の熱湯の池となった。
「よし、狙い通りだ。いくぞ蟹の化け物」
バルディスターは、蟹の鋏を掴んで熱湯の池にぶち込む。するとどうだろう・・・真っ赤に茹で上がってしまった。だが、地球の蟹と違い生きている。
しかし、体はもろくなってしまった。こうなったらもう蟹に勝ち目は無い。
腹をこじ開けられ、内部を焼かれた蟹は絶命、手足は全てバラバラに・・・大勝利だ。
「よくやったぞ隼人君」吉村指令からも祝電が。
しかし、この戦いをモニターで見ていた七海提督はよだれを出していた・・・。
「美味そうだったなぁ・・・」
扶桑以下は、冥王星目指して土星を越えて行った。そしてそれと入れ替わりに比叡以下の本体が土星に到達・・・。
「よし、われわれも全力で扶桑を追うぞ」隼人と由香を収容した艦隊はいよいよ進撃する。
だが、途中の海王星では、グロテスター太陽系艦隊のリバーバッテン卿指揮する戦艦アンノン以下の大艦隊が待ち構えていることを地球側は誰も知らないのだ・・・。
余談ではあるが、宇宙蟹「カニメテ」の殻はその後継ぎ合わされ、ガニメデ基地の看板となったが、まるで蟹道楽のようだと不評であった。
続く