52話 超電磁の戦い・衛星タイタンの攻防
死闘の末、七海提督の艦隊はバルディスターや駆逐艦の助けも借りて戦艦キングジョーズ5世を撃沈し、さらに衛星イオを占拠し宇宙航行に必要な資源・イオニウムを入手した地球防衛軍連合艦隊・・・。
イオは古くから構造が地球と似ており、気温さえ上昇できれば人間が住める可能性があった星であった。そのことに誰よりも深く着目し執着していた島本一郎博士は単身イオに乗り込み、半恒星である木星の大赤点からのエネルギーを取り入れることにより、あと一歩でテラフォーミング(地球化)できるところであった。しかし、グロテスターが資源確保のため進出し博士は捕えられたが、その技術と知識を惜しまれ、軟禁されながらも研究は続けさせられ、それはグロテスターの基地に大いに役立っていたのだった。
そして、隼人と由香、青山隊長以下の陸戦隊員、そして驚異的強さを発揮した段田の活躍によりイオ基地を使用可能なまま占領することに成功した。
だが・・・。
大赤点エネルギー変換装置を死守した島本博士は命を落としてしまった。彼の失敗は、人を信じる心が極端に乏しく、またおのれの技術と信念に固執したあまり、1人でこの大プロジェクトを成し遂げようとしたことにあった。誰か1人でも、助手や協力者がいれば・・・。細川博士はこの孤独な天才を惜しんだ。
さて、エネルギーの補給は完了したものの、キングジョーズ5世と宇宙魚雷艇の攻撃で艦隊は大損害を蒙り、修理が必要になってしまった。幸い宇宙ドックも無傷で確保できたが、イオには、宇宙チタンが存在しなかった。地球から普通のチタンを取り寄せるのにも時間がかかってしまう。だが、隣の惑星・土星の衛星タイタンには鉱物資源が豊富なことが既に無人探査機の調査で分かっていた。しかし何の設備もないタイタンでは修理は出来ない・・・。
そこで細川博士は、隼人と由香に白羽の矢を立てた。
「隼人に由香。君たち2人は合体してバルディライナーとなり、土星のタイタンからチタンを採掘し精製してイオに持ち帰れ。君たちの合体したバルディスターは本来、戦闘ではなく惑星開拓のためにあることを思い出して欲しい。巨人の姿も、戦うためではなく土木工事や資源の採掘のためなのだ。そしてバルディビームは敵を打ち抜くことではなく鉱物を精製するのが本来の目的なのだ。これは戦いや艦隊のためではない。君たち2人の将来のための試金石と考えて、やり遂げて欲しい。」
「分かったわ叔父様♪」「任せてください博士。行くぞ由香ちゃん!」「OK♪」
2人は比叡から飛び出し、合体してバルディスターになり、さらにバルディライナーに変形して一路タイタンを目指す。
「見て隼人君!土星の輪って近くで見るとアステロイドベルトに似ているわ。」
「それだけじゃない。地球や火星、月のような大きな衛星も混ざっている。僕たちの目指すタイタンもその一つだ。それに氷の粒もだ。気をつけて航行しよう。」「わかったわ」
2人の目指す資源の星・タイタン。そこは、寒い砂漠の星だった。土星には木星のような大赤点はない。太陽の光も十分に届かない。従って土星の衛星は寒いのだ。
「よし、一回り飛んで地形を確認したら、一旦分離して地質を調べ、探検してみよう」
「OK、楽しみだわ♪」
2人はタイタン上空をつぶさに観察し、チタン鉱脈を発見、マグマが冷えて出来た地形の詳細な様子を探るため一旦バルディバンとバルディーナに分離した。
「隼人君、凄い磁場よ。この星は強力な磁力を持っているわ」
「金属反応消去回路を作動させよう」「了解♪」
2人は内蔵された探査機器をフル活用しながらタイタンを探査する。これこそが2人の本来の改造目的の一つなのだ。
色々な発見のたび、大はしゃぎの2人。2人セットでの改造を受けたことの喜びを噛み締めていた。もし、単独で肉体を切刻まれ、無人探査機の代わりに惑星や衛星を探査しろと言われても残るのは改造された空しさだけだったであろう。
加えて二人は若い男女。助け合う中に愛の力が働きより強固に結びつく。
無人探査機の調査を上回る資源と、寒冷、磁場の存在を確認した二人は、いよいよ再合体して採掘を開始しようとしたそのときである。
「キャー!」
由香に岩石が命中する。そして隼人にも・・・。偶然とは思えない。これは何者課の攻撃だ。
やはり2人は闘わなくてはならないのか。愛し合い、また星を探査するために改造されたはずの二人に、今またグロテスターの刺客が。
「おはんたち2人にはここで死んでもらうでごわす」
「貴様は!」
「おいどんはグロテスター超人のひとり・ドレミファドンでごわす。バルディバン、覚悟!」
超人とは言うものの、彼はどうみても丸い岩石の集合体だった。というより惑星を象っている岩石サイボーグのようである。
特に頭部は土星に似ていた。
ドレミファドンは、その体、特に腕を無数の球体に分離して、二人を襲う。
「なにくそ!」バルディソードでそれを叩き割り、あるいは野球の要領で打ち返す隼人だったが、戦い慣れていない由香は勝手が違う。
さらに由香は、改造されているとは言え女の子である。いや、ロボットでも、生身の人間でもないがゆえに、機械の体の一部にむき出しの「女」の部分が存在する。生身の女性の場合、女性の部分は分厚い宇宙服の奥深く隠され、上に吸尿装置がつき保護され、ロボットなら形だけで何事もない。
だが、由香の乳房と股間の大切な部分は、金属に材質が変わっただけでその機能は生身の女性そのものであり、痛めつけられたり陵辱されれば深く傷つき感じてしまうのだ。そしてドレミファドンもまた、異形の戦士でありながらやはり生命を持ち、かつ♂であった。
由香に命中した岩は、打撃を与えるだけではなく、なんと手に形を変え、由香の敏感な大切な部分を弄ぶ・・・。
一方、岩石攻撃では隼人には敵わないことを知ったドレミファドンは、ついに伝家の宝刀・リングスラッシャーを放った。
頭の土星の部分の輪を、ブーメランカッターとして飛ばしてきたのである。
「うわーっ!」さすがの隼人もかすっただけで弾き飛ばされるほどの威力。
「次はお嬢ちゃんの番でごわす。」
「キャーーーーーー!」なんとリングスラッシャーは、縦に変化して由香の大事な部分を直撃・・・。
「由香ちゃん!」
「イヒヒ・・お遊びはここまでだ!」
ドレミファドンは回りの岩や鉱物を引き寄せて見る見る巨大化し、2人を踏み潰そうとした。
「由香ちゃん、大丈夫か?僕たちも合体だ!」「平気よ。さあ隼人君、私の中に入ってきて!」由香は先ほどのダメージで股間から液漏れを起こしていたが、気丈にも脚を開き、隼人を促す。
「バルディ・クロス!・・・うわーーーーっ!」「キャーー」
「何故だ?もう一度!由香ちゃん、誘導光線の出力を上げて!」「わかったわ!」
「ギャーーーー」
何故だ?合体できない。弾かれてしまう・・・。
その2人を踏み潰そうとするドレミファドン・・・。
「由香ちゃん・・・分かったぞ。奴の分離合体は強力な磁力によるものなんだ。奴との戦いが長引いたため、僕たちのバルディニウム合金も磁力を帯びてしまったんだ」
「そんな・・・ぁ!わたしたち消磁電路を作動させていたはずよ」
「いや、それを上回る磁力を浴びてしまったんだ・・・」
「そんなのイヤよ・・・。隼人君と合体できないなら由香死んだほうがマシだわ」
「イヒヒ、なら御嬢ちゃんから死んでもらうでごわす!」
「やめろ!」隼人は必死で由香を守る。そのとき、閃いた。
「由香ちゃん、君の武器を・・・バルディバトンを貸してくれ」
「いいわ・・・でもどうやって?」
バルディバトンとは由香の腰のポシェットに2本装備されている棒である。収納時はマッチ棒並みだが外気に触れると、2本のバトンになる。
これでそのまま敵を殴りつけても良し。また先からビーム刃を出して懐刀としても使える。だが通常は2本接続し(接続すると最大2メートルまで伸びる)長刀として使うのが一般的であった。由香は祖父母に仕込まれた長刀の名手で、インターハイ優勝者でもある。 あらゆる武芸を身につけた隼人もまた、長刀は得意だ。だが、どうやってこの巨大磁石怪物に挑むのか・・・。
2本のバトンを接続した隼人は、やはり長刀を作った。
ドレミファドンに長刀で挑むのか?違う!隼人はいきなり長刀を地面に突き刺した。
「由香ちゃん、合体誘導光線を出しながら長刀に掴れ。」
「わかったわ!」
隼人と由香は、由香のビームの力で弾かれながらも地面に刺さった長刀に掴まり、抱き合おうとした。
「隼人君、弾かれる体を地面に刺した長刀で支えるの?」
「違う!僕の言うとおりにしてくれ」
「でもまた弾かれちゃう!」
「もうすこしだ、頑張れ・・・っ」
「おおお、やったぞ!」
隼人の読みは当った。金属の棒を中心に、反発する二つの磁力。その反発力を上手く利用すれば、モーターが出来上がる。
「キャーーー」
「耐えろ由香ちゃん!」
長刀を軸に高速回転する2人。
赤熱し回転速度を増す2人。遂にその勢いで長刀は地面から抜けてしまった。だが、回転を続ける二人はそのまま宙に飛び、ドレミファドンに激突!
「うわーーーーっ!」
ドレミファドンは直撃を受け、結合が解けてばらばらになり縮んだ。
それを隼人は見逃さなかった。
「うう、合体できないでごわす!」
隼人と由香の電磁パワーで、逆に磁力が働かなくなって結合が解けたのだ。
「本体はそこだ!」
隼人は、ドレミファドンの本体を長刀で一突き。
「うわーーー」
反応は予想と違っていた。岩を砕く感触ではなく、陶器を割った感触・・・。
なんと、本体が割れると、中から大量の水が飛び散り、そして中から醜悪な電気ナマズが放り出され、タイタンの薄く寒く乾燥した大気に触れて干からびて死んでしまった。
ドレミファドンの正体は知能を持った電気ナマズの発電力による電磁石で鉱物が合体したハイブリット怪人だったのである。
「やったわ隼人君♪あ、握手できる!もう弾かれないわ」
「僕たちの愛の結合が電磁力に打ち勝ったんだ」
「うふ♪やっぱり愛は勝つのね♪あら、これは?」
なんと、リングスラッシャーがそのまま落ちている。触っても平気だ。
「きっと僕らのエネルギーを吸収して具現化したんだろう」
「きゃー、面白いわ」
由香はフラフープ代わりにして遊ぶ・・・。
しかしそこに
「隼人に由香、怪物を倒したらすぐに採掘だ。こちらも時間がない」
「了解♪もう叔父様ったら・・・」
「じゃ、行こうか♪」「うん♪」改めて合体した2人は、巨人化して予定どおりチタンを採掘完了、イオに戻った。
これで修理ができる・・・。
次はいよいよ敵の根拠地、冥王星に乗り込む番だ。
しかし、そう簡単に冥王星に近づくのを許すグロテスターではない。
隼人よ由香よ油断をするな。そしてその頃、地球では・・・。
続く。