51話 衛星イオの攻防()

 

 島本博士生存の可能性、の連絡を受けた隼人と由香は、基地に突入して行った。

たちはだかる防御システムを突破して奥へと進む二人。

 反対側から突入した陸戦隊と敵兵士の生々しい戦闘の跡・・・。

「うう・・」呻く負傷兵に敵味方の区別なく、治癒光線を発射し応急手当する由香。細胞の活性化で、傷口はふさがるがそれ以上の効果はなかった。

そのうち、青山隊長の姿を確認した。隊長は敵に肩を打ちぬかれ、指揮を続行できなくなっていた。

「おお、バルディバン君。君たちがロボをひきつけてくれたおかげで、なんとか突入できたよ。コントロールタワー総攻撃の報せを受けたところだ。いやー、全く恥ずかしいことだが、試作スーツの謎の男の活躍が実に大きかったよ。ところで君たちは何故今ごろ?」

「実はイオに初めて到達した島本博士からのSOSが・・・」

「何だと?この基地はもう目ぼしい敵は居ないはずだが?」

「いいえ、現に僕たちも敵兵士の襲撃や防御システムの迎撃を受けました。まだこの基地は生きています。それにコントロールタワーとは別に心臓部があるかもしれません。」

「おお、そうであった。」

その間、由香は隊長の肩に、治療を施した。今回は相手が隊長でもあり、また周囲の安全も確保されているので腰のポシェットから看護用具を取り出しての比較的まともな手当てである。

「ありがとう。しかし仮面で見えないが、細川中将殿の息女と聞くが、このような危険なところによく・・・」

「いいえ、彼と一緒なら平気ですわ」

そのうち、陸戦隊員たちが隊長の健在を知り集まってきた。

「隊長、ご無事で!」「隊長、コントロールタワーには黒スーツの男を先頭に突入して行きました。あの男の強さは鬼のようです」

「ふむ。貴様等負傷兵は、重傷者を収容し、後方確認しつつ収容を待て。私はこの部屋を臨時作戦室として、撤収と攻略を指揮する。

 お前とお前は、私と一緒にここに残れ!」

「了解!」

「私たちも島本博士を探しに行きますわ」

「ご苦労、気をつけてくれたまえ」

 隊長と別れた由香たちはさらに奥に進む。それにしても、「鬼のように強い地球人兵士」とは一体誰なのだろうか。隊員たちの様子や、蹴破られて死んでいた敵兵士の傷口から見ると、サイボーグである隼人たちに匹敵するパワーだ。

 

 隼人と由香は力を合わせ、トラップを突破していく。そのとき、爆発音が起きた。

「キャア」「しっかりしろ由香ちゃん」

 落ち着いたとき、ハッチを開いて外の様子を見ると、コントロールタワーが倒壊し、脱出ロケットが飛んでいったところだ。

作戦は成功した、に見えた。

 だが、そこに細川博士からの連絡が入った。

「敵司令部は逃げたようだが、今までのパターンからして自爆装置があるかもしれない。念のため隊長たちを避難させろ。それから島本は見つかったか?」

「いいえ叔父様、基地からは反応が・・・」

「そうか・・では自爆装置の有無を確認し、あれば破壊、なければ引き揚げろ」

「了解」

「そうか・・やったか!でもたぶんアイツだな」

「きっとそうね」

「でも、まだ僕たちの任務が終ったわけじゃない。自爆装置と島本博士を探し出さなければ」

「うん」

 

 「隼人君、見て、地下室よ」

「よし、突入だ。」

由香は超視力で隠し階段を発見した。もし真の心臓部や自爆装置があるとすれば、ここだ。

 すると・・「隼人君、SOSがまた聞こえるようになったわ。島本博士はこの奥よ」

「よし、一挙に攻めよう」

地下室へ踊り込む二人。

 

 「隼人君、この奥よ、あそこから反応が!」

「よし、行くぞ!」

しかしそのとき、「待て、貴様の相手は私だ!」

「お前は?」

「私はこの基地の責任者、ゴールドナイトことサー・ゴードンだ。バルディバン、いざ勝負!」

「ゴールドナイトか、相手に不足はない。だが、先ほど脱出ロケットが飛び出したが、何故責任者の貴様がここに?」

「ハハハ、私は騎士だ。基地を預かる身だ。基地に万が一があれば運命を共にするのは当たり前。この星の資料と、技術者を逃したのだ。貴様等に技術を1つ知られると10倍返しにされてしまうからな。」

「気に入った!いざ勝負!」

 鋭い剣裁きのゴールドナイト。隼人は苦戦する。だが隼人も負けては居ない。白熱する真剣勝負。

「由香ちゃん、今のうちに島本博士を!」

 

「何?こしゃくな。だがもはや奴の1人ぐらいどうでもいいわ。貴様との勝負のほうがよほど重要だ」

 「ゴールドナイト・・・!」

ゴールドナイトの甲冑は堅く、隼人の何でも切れるはずのバルディソードもよほど芯で突かない限り貫けない。また彼のビーム剣は、かなりの高周波で、隼人と言えども急所を突かれれば機能を損ねてしまう。2人の一騎打ちは一進一退であった。

 

そして由香は、ついに心臓部に到達した。

そこには、木星の大赤点からのエネルギーを効率よく吸収する装置が備え付けられていた。だが、操作を誤れば、大赤点エネルギーを一挙に受けてこの機知は蒸発してしまう。これが自爆装置の代わりのようだ。

 まず、装置をつぶさに観察する。由香のゴーグルで見たものは、細川博士に転送されるのだ。

「よくやったぞ由香。とりあえずそのままにしておけ。」

「分かったわ叔父様。あっ!何をするの・・」モニターが乱れる。

 なんと、男が装置を操作しようとしている。これでは自爆してしまう・・・。

「辞めて!」制止した由香は男を見て驚いた。

地球人だったからである。

「あ、あなたは島本博士?」

「いかにも。大赤点エネルギー変換装置はおれ1人のものだ。誰にも渡すものか!」

「まって、私も地球人よ。貴方を助けに来たの」

「助けに来ただと?だれが頼んだ?」

「でもSOSが・・・」

「そうか・・・だが遅い!」

「どうして?」

「こういうことだ!」

「あ、貴方は!」

「イヒヒヒヒ・・・・!」

 

「キャーーーーーー!」響き渡る悲鳴。

 

 島本博士の顔が二つに割れたと思うと、中から現れたのは・・・なんと!

「イヒヒヒ。これもお前をおびき寄せるワナよ。どれどれ・・・」

由香の秘部をまさぐるワルモナイト。

「すごいエネルギーだ・・・。だが惜しい。既にバージンではなかったか。それに改造されている。これでは俺様の血肉とはならないが・・・。それにしても改造されてなおこれだけのエネルギー。女、貴様地球人ではないな?白鳥座の女だったのか・・・」

「うう・・・(隼人君助けて・・・)」もう恐怖で声も出ない由香。このまま犯されてしまうのだろうか。

 

 その頃隼人は・・・

「見切った!」「こしゃくな」きらめく閃光。

「ううっ」

飛び散る鮮血。ゴールドナイトの右腕を切り落とした。

「参ったか!この基地のパスワードとワープゲートの通行票を渡して去れ!」

「それが騎士に対する言葉か!口を慎め。どうだ、とどめを刺さぬか!資料は死んでも渡さない!」

「ならば御免!」ゴールドナイトに止めを刺そうとする隼人だったが・・・。

「しまった、エネルギー切れだ・・・力が入らない・・・。戦闘モード終了、探査モードにしなくては・・・。だが、探査モードではあの堅い鎧を貫いて止めを刺すことは出来ない・・・」

 「どうした、早く介錯を・・・」

「ゴールドナイト、貴方は良く戦った。利き腕を失いもう闘うことはない。あとは養生してくれ。僕は彼女が心配だ」

 

(バルディバン・・・聞きしに勝る強さと優しさよ・・・。お前になら負けたとしても恥ずかしくはなかったぞ)

ゴールドナイトは、そう心でつぶやき自決した。

 

 扉の奥では由香が大ピンチ。よろめきながらも助けようと飛び込む隼人だが、一瞬早く、黒い影が先に突入した。

「バケモノ、貴様の相手はオレだ。その汚い手をどけな」

「ザコが生意気な!」

「あ、あなたは・・・」

噂の黒スーツの陸戦隊員だ。

 しかし、由香の見た彼は。聞きしに勝る強さだ。不死身の怪物ワルモナイトに一歩も譲らない。生身の人間でありながら、宇宙最強のサイボーグのはずの隼人に匹敵する。

 そこに駆けつける隼人。由香を抱き起こす。

「あ、隼人君・・ありがとう。でも隼人君のエネルギーが・・チャージしましょう」

「ありがとう由香ちゃん」

 体力を回復させた隼人はワルモナイトに挑む。

「待て、段田!生身のお前の敵う相手ではない!」

「ふ、女連れの貴様に言われたくはないぜ隼人!」

やっぱり、黒スーツの男は段田だった。

さすがのワルモナイトも2人相手には苦戦。

生意気な・・・これでも喰らえ!

ワルモナイトは胴体の目から怪光線を。

「うっ!」サイボーグの隼人は耐えたが、生身の段田にはかなりの衝撃だ。だが・・・

なにくそ!突撃する段田。彼はラグビー部の主将。タックルは得意だ。

そこに降りかかる鎌。

「うわっ!」ヘルメットが割られる。やっぱり段田だ。

だが、異変が起きたのはワルモナイトのほうだった。

「うううっ・・・」

苦しみだすワルモナイト。「うぅ・・・まさか、いや、そんなはずが・・・」

段田の顔を見たとたん、ワルモナイトが苦しみだしたのである。

 チャンスだ!だが、今は隼人にも段田にもワルモナイトに止めを刺す力は残っては居なかった。

「おのれ・・せめてこの基地だけでも・・・」ワルモナイトは自爆装置を作動させようとした。

そのとき・・・

「イオはオレのものだ。バケモノにも、地球人の誰にもやるものか!」

本物の島本博士が、装置を守った。だが、無常にも振り落とされたハンマー・・・・。

「うう・・イオはおれの・・・」

「島本博士!」

 駆け寄る由香。

「ワルモナイト、貴様・・よくも・・・」

「イヒヒヒ・・うっ・・苦しい・・・」ワルモナイトは隼人と由香も襲おうとしたが、段田の顔を見ると再び苦しみだした。そして段田もまた・・。

そのとき、激しい衝撃が。

「ワルモナイト殿、脱出じゃ」

なんと、三浦博士の円盤が突入してきたのだ。見ると瀕死のゴールドナイトも乗せられている。

「ウシシ・・・隼人に由香よ。イオごときはくれてやる。ほれ、イオニウムの精製法じゃ。本星まで来れるものなら着てみたまえ。ウシシシ。無理無理・・」

「三浦博士・・!」

 三浦博士は、ワルモナイトとゴールドナイトを救出して去っていった。

その直後、青山隊長たちがやってきた。

 そして由香は・・・

「島本博士、しっかりして・・・」

「イオはオレのもの・・・」そういい残して、息を引き取ってしまった。

何とか蘇生を試みる由香だったが・・・。

 「やめろ由香。島本は宇宙風土病にかかっている。生き返らせてもすぐ死んでしまうだろう。それよりワクチンを作ってすぐに青山隊長たちに接種だ。これは命令だ。」

「叔父様・・・」

 由香の体には、どんな病原菌にも耐えられる構造になっているほか、ワクチンも精製できるようになっている。そして、注射ではなく、胸のビームランプからの照射で接種できるのだ。

そして、それをさらに培養して他の隊員たちにも接種をすることにした。宇宙には地球には無い病原菌がいることがわかったのだ。

 イオ基地占領の報せを受け、投錨してきた艦隊。ここでしばらくエネルギーの補給と、応急修理をするのだ。

「島本!」細川博士は真っ先に駆け寄り、島本博士の遺骸を抱きしめる。

「島本、イオはお前のものだ・・・。この宇宙港を「島本ベース」と名づけてやるぞ・・・」細川博士の目には涙が一筋。

ついに先駆者島本博士が到達してから10年・・・衛星イオは地球人のものになった。

 だが、その島本博士はもう還らない・・・。

そして、段田とワルモナイトの間にある因縁は一体?謎が謎を呼ぶ。

一方、細川博士は、本格的修理のためには、冥王星に直行できず、宇宙チタニウムの豊富な、土星のタイタンに立ち寄らなくてはならないことを認識した。

 まだまだ道のりは遠い。闘え隼人、がんばれ由香・・。

 

つづく。