50話 衛星イオの攻防(前)
太陽系最大の難所・アステロイドベルトで、誇り高き騎士・シルバーナイトを倒し、見事突破した隼人と由香。
だが、行く手には巨大惑星、木星が。木星は惑星でありながらその規模や構造は恒星に近く、地球や金星、火星レベルの衛星を多数揃えていた。
そしてすさまじいばかりの引力。アステロイドを超えても、次は木星がたちはだかる。
ところで、この衛星は地球と似た構造のものが多く、その中でも最大の衛星・イオは寒冷ではあるものの、大気が存在し、熱さえなんとかすれば、人類が移住可能であることが分かってはいた。しかし当時の地球の技術力では、そこまで到達するのも難しかった上、人が住めるように暖房を続けるのに必要な燃料の問題もあった。
しかし、今から10年前、1人の学者が単身、有人探査船で飛び立った。その男の名は、島本一郎といった。島本も、細川博士や隼人の両親同様、三浦教授の教え子で宇宙への夢を持った青年科学者だったが、細川らとは若干距離を置いていた。
だが、飛び立って以来消息を絶ち、生存は絶望視され、隼人の両親同様、若い科学者の無謀な挑戦として学会からは無視されたのである。
そのイオには、宇宙船を航行させるのに最適なエネルギー鉱物・イオニウムが存在することがグロテスターとの戦いの中で判明した。金剛と比叡、和泉以外の艦艇は代用エネルギーを搭載しているため、冥王星にたどり着くにはぜひもここでイオニウムを積み込まなくてはならなかった。
しかし既にグロテスターが採掘をしている・・・。
つまり、採掘施設を破壊せずにイオを占領しなくてはならないのだ。
そのため、宇宙戦艦「扶桑」には、特殊陸戦隊が乗船し、隼人・由香とともに敵基地で白兵戦を行い、基地を占領する計画であった。
しかし、手をこまねくグロテスターではない。イオに迫る地球艦隊に対し、小さな衛星の影から宇宙魚雷艇が襲う。
「彗星」以下の宇宙駆逐艦がこれを追い散らすが、魚雷艇は牽制に過ぎない。巨大ミサイルが迫る。これを巧みに回避し、イオに迫る。しかし魚雷艇はなおも食い下がる。
「畜生!ザコどもめ。どこかに親玉(母艦)がいるはずだ!必ず見つけて叩き潰せ!」七海提督の号令で駆逐艦は宇宙の暗闇を駆け回る。すると・・・
「親分!いました!キングジョーズ5世型戦艦の口から魚雷艇が出入りしています!」
かつてワルモナイトの旗艦だった、キングジョーズ5世型戦艦・・・。鮫を象った獰猛かつ強力な艦である。水中、水上、空中、宇宙のいずれも高速移動できる(金剛などのR級は、海中、海上、宇宙では高性能だが、空中での飛行速度が遅く、水上以外では武装が半減する欠陥があった)上、口の部分で敵艦を食いちぎることもでき、ブリッヂの上部や安定翼も強力なカッターになっている、獰猛な戦艦である。
相手に不足はない。
だが金剛以下、主砲は宇宙では使えない。ビーム砲と魚雷(ミサイル)で勝負だ。しかし敵には対ビームコートが施されている可能性が高い。
しかし、水雷の権威、七海提督は、この強敵に正面から当っていった。
「金剛以下、戦艦・巡洋艦部隊はここで待機!俺様は比叡で突っ込む!水雷戦隊は俺様に続け!」
鈍重な戦艦部隊では、新型艦のキングジョーズに食いちぎられ、ミサイルの的になるだけだと判断した七海提督は、水雷戦隊に突撃させたが、なんと自らも突っ込んで行った。
敵のミサイル、ビーム、そして魚雷艇が迫る。しかしこれを巧みに交し、岩を利用して跳ね返して、キングジョーズ5世に迫る。
キングジョーズの砲火は比叡に集中する。だが、これこそが七海の作戦だった。比叡に敵の攻撃を集中させ、その隙に水雷戦隊に襲撃させるのだ。
「ドカーン」「ズシーン」次々命中する敵弾。さしもの比叡も木の葉のように揺れる。「親分、2番魚雷発射管損傷!ブロックごと投棄しないと誘爆します!」「畜生!」
だが・・・。「貴昴!アイツはボクがもらった!」「フフ・・甘いな。既にオレの魚雷が当っているぞ」
「何・・・!謀ったな?」「坊やだからさ」
貴昴少佐や駆馬少佐らの駆逐艦は、七海提督の猛訓練で宇宙空間でも自在に襲撃運動ができるのだ。
しかし、手負いの鮫と化したキングジョーズはそのまま比叡に突っ込んでくる。その鋭い歯で食いちぎり、道連れに自爆するつもりだ・・・。
「隼人、由香、頼む!」
「任せてください!」
飛び出し、合体した隼人と由香は光速で迫るキングジョーズの口に剣を突きたてた。
間一髪、切り裂かれて空中分解して瓦解したキングジョーズ。大勝利だ。宇宙に飛び散る敵の屍骸や残骸・・・。
「いまだ、大発準備!」
そのときを待っていた、陸戦隊指揮官の青山少将以下は大発(上陸舟艇)に乗り込んだ。
扶桑から切り離される大発。
「隼人と由香は大発を援護してイオに降下せよ!」「了解!」
ついに、イオ上陸作戦は開始された。
地上からは、猛烈な対空砲火が。しかしバルディスターは自らが楯になり、大発を守る。6隻の大発には、3000名の精鋭が分乗していたのだ。1隻でも失えば一挙に1/6が失われてしまう。隼人と由香は必死だった。
そして、ついに5隻の大発が着地成功。だが衝撃で大発の殆どは壊れてしまった。勝たなければ帰れない。バルディスターを先頭に基地に迫る。迎え撃つ戦車を踏み潰すバルディスター。
「よし、基地に近づいたら隼人と由香も分離して青山少将の指揮下に入れ!」「了解!」
だがそのとき、最後の大発に迫る黒い影。
「あ、怪物ロボットだ!」
なんと三脚の怪物ロボが大発に迫る!そしてその鉤爪が大発に・・・。火を噴く大発・・・。
「畜生!」バルディスターはロボに立ち向かう。
しかしこれは、バルディスターを陸戦隊から引き離す敵の作戦だということは分かりきっていた。だが闘わずにはいられなかったのだ。
一方、火を噴いた大発は、なんと敵の基地に直接強制突入した。
青山少将以下、出し抜かれ驚くが、後に続く。
基地の中では、敵兵士と陸戦隊の激しい銃撃戦、格闘が繰り広げられた。
次々倒れていく敵味方兵士・・。
地球側は全員、初めての宇宙戦闘で不慣れなのに対し、宇宙の覇者を自認するグロテスター兵士は強かった。
劣勢に立たされる陸戦隊。青山少将も肩に被弾、負傷する・・。絶対絶命・・。
だが、黒い強化宇宙服の男の超人的活躍で、遂に中心部に迫る。
「おお、君は・・・!」
驚く少将。なぜなら黒いスーツは人体に危険な試作品で普通の人間が着用すれば骨がバラバラになってしまうからだ。
「年よりはひっこんでな。ここから先はオレに任せろ!」
その迫力に、思わずたじろぐ少将・・・。
一方、ロボを倒した隼人と由香に細川博士からの連絡が入った。
「隼人、由香、基地からSOS信号が聞こえる。由香、お前の能力ならはっきり分かるはずだ。島本かもしれん!必ず助け出してくれ!」
「分かったわ叔父様」
隼人と由香も分離して基地に突入した。そこで待つのは・・・?
後編に続く