49話 白銀の騎士再び!アステロイドベルトの死闘

 

 月を発ち、火星を越えて木星へと向かう第一宇宙艦隊。はるかに巨星・木星を仰ぎ見る。

しかし・・・。その行く手には、太陽系最大の難所、アステロイドベルトが立ち塞がっていたのだ。

司令官の七海提督は、全く初めてのこの航海に全く動じず、静かにそして激しく艦を操り突き進んでいく。時には砲撃で岩を叩き壊しながら。

 やっと、第1外郭を突破した時である。さらに激しい流れの第二郭に突入・・・しかし、さすがの七海提督も強行突破は躊躇われるほどの小惑星と岩石か艦隊を襲う。

 「緑川!(プラドの地球人名)貴様はこの海峡を超えたことがあるはずだな!」

巡洋艦「和泉」のプラドこと緑川大佐に指令する。

「はい、偵察しつつ先導します」

和泉を先頭に、単縦陣で進む艦隊だったが・・・。

「しまった!」いきなり、アメリカの重巡洋艦「ラスベガス」が落伍した。

「七海長官!小惑星の影に宇宙潜水艦と宇宙魚雷艇が潜んでいます!」

「何だと?水雷戦隊、直ちに撃滅せよ!緑川は宇宙ソナーで敵潜を探知せよ!それから俺様のことは長官ではなく「親分」と呼べ!」

「了解しました親分!」

 「彗星」以下の駆逐艦は、宇宙ソナーを装備した「和泉」からの指令で岩の間を駆け巡り、また次元断層に潜む宇宙潜水艦に宇宙爆雷を投下して道を切り開く。

 何もない宇宙に突如輝く爆発。見事敵潜を撃沈したのだ。

 また宇宙魚雷艇は雲の子を散らすように逃げ去った。

初めての戦いにもかかわらず、この第一の罠を突破したのだ。

 しかし、「比叡」「金剛」以下、戦艦にも1〜数本の魚雷が命中し、特に最初に奇襲を受けたラスベガスは懸命の復旧作業にもかかわらず、ついに真っ二つに割れて星になった。

 だが、彼等の前にもっと手強い敵が待ち受けていたのだ。

「親分!」悲鳴にも似た駆馬少佐からの打電。

「何事だ?」

「惑星破滅ミサイルが、艦隊に向かっています!もしかわせば、そのままの軌道で行くと地球に・・・」

「!」

「おじちゃん!」由香も驚きおののく。

 そのときである。その巨大ミサイルの上に、なにやら騎乗の人影が見える。

いや、ミサイルの巨大さから推定するに、巨人である。それはだんだんはっきりと見えてきた。

「人」と見えたのは・・・。上半身が人、下半身が馬を象った、巨大ロボットであった。

そして、宇宙にも響く特殊音波でこのように宣言した。

「勇敢なる地球の諸君。わがグレートロイヤル星の名誉にかけて、この防衛線は通すわけにはいかない。

だが、もしこの私を、一騎打ちで倒すことが出来れば、特別に通してやろう。さあ、出てくるがいいバルディバン!君がいるひとはわかっているぞ!君が出てくれば、このミサイルを止めよう」

 

「あ、あれは・・シルバーナイト!」シルバーナイトは、かつて隼人と由香の2人に、殉教学院グラウンドで一騎打ちを挑み、終始優性に勝負を進めながら、最後は由香の愛の力の前に敗れ去った誇り高き騎士であったが、名誉の戦死を遂げたはずであった。

「さあ、出て来い!さまなければこのミサイルが艦隊ごと吹き飛ばしてしまうぞ」

 

「これは罠だ!」参謀が止める。

「いいえ、僕は行きます。指名されて敵に背を向けるぐらいなら死んだほうがマシです。そして多分・・彼もまた同じはず!」

「おう、それでこそ加藤の息子よ!骨は拾ってやるぜ、さあ、行け!」

宇宙に飛び出す隼人=バルディバン。

「待って!由香も行くわ!」

続いて飛び出す由香=バルディーナ。

だが、「来るな由香ちゃん。これは男と男の一騎打ちだ!」

「いいえ、私たちは2人で一人。それに巨大な敵にこのまま挑むのはいくら隼人君でも無謀だわ」

「おお、良く来たな二人とも。さあ、合体したまえ!」シルバーナイトは由香の気持を察したのか、合体を促す。

そして、驚くべき行為に及んだ。

「約束どおり、バルディバンが私と一騎打ちに応じてくれた。ミサイルは止める」

なんと、ミサイルの弾頭を切り落としてしまった。

「だが地球の諸君。ミサイルは推進力を失い、地球に到達することは無くなったが弾頭は生きている。万が一わたしたちの勝負に卑怯な助太刀をした場合は、私の頭脳と直結している起爆装置を作動させる。そうすれは諸君等も私もそしてバルディバンも、一瞬のうちに宇宙の塵と化すことを忘れる出ないぞ!さあ、バルディバン、いざ勝負じゃ!」

「望む所だ!さあ、由香ちゃん、合体だ!」「うん」

「バルディ・クロス!」2人は合体して、バルディスターになった。そしてバルディソードを抜く。

「いざ参る!」

2体の巨大戦士は、宇宙の岩場に隠れ、また踏み台にしながら剣を交える。

「うう、凄い剣裁きだ」

思わず小惑星に隠れるバルディスター。だが、その小惑星がいきなり爆発。

「隠れていても無駄だ!そんな卑怯な戦法を執るなら、こちらも飛び道具を使わせてもらう!」

シルバーナイトは、楯からミサイルを発射してきた。さらに、宇宙アーチェリーで射掛けてきた。

隼人はとっさに平たい岩を楯代わりにしてこれを防ぎ、同時に間合を詰めて斬りつけたがかわされてしまった。宇宙での戦いは、彼のほうが何枚も上手だ。そのとき由香がアドバイスした。「隼人君、楯にミサイルを装備しているということは、楯にこちらの攻撃を当てれば、逆に誘爆するんじゃないかしら?」

「おお、それだ!バルディスターはバルデイライフルで楯を狙い撃ちした。だが、楯がアームジョイントで伸びでこれを防ぐ。

「楯で防いでも中のミサイルが・・・」

だが、楯に傷は付いても、誘爆は起きなかった。

「ハハハ、よく考え付いたな。しかし、楯に爆薬を積んだら逆効果なのは承知。このミサイルは、炸薬は入っていないのだ。だが、この宇宙では慣性の法則により物質は命中した時の貫徹力だけでも十分に小惑星程度なら破壊できるのだぞ」

「うむ・・・」

「それ、もう一つお見舞いだ」

このミサイルは、敵を倒すというよりは、牽制と、邪魔な岩をどかすのが真の狙いの武器であった。

 そして一進一退の攻防が続く。

暗黒の宇宙に光る剣と剣の交差。そして敵はお互いだけではない。凄い勢いで流れる岩石を避けながらの戦いでもある。そして、少し大きめの岩を足場にしての戦いも繰り広げられた。

 そのとき、隼人は奇妙なことを感じ取っていた。

「もしかして彼は・・・?」

 白熱した戦いの末、バルディスターとメカシルバーナイトは、遂にアステロイドベルトを突破してしまった。

 木星が迫る。木星は太陽系最大の引力を誇るのだ。そして、大赤点と呼ばれる強力なエネルギー放射部分を持っている。木星は限りなく恒星に近い構造を持った惑星なのだ。具体的には大赤点は恒星部分といってもよい。

「しまった」

シルバーナイトは、大赤点からの引力線に足をとられてしまった。木星には何重もの衛星軌道があるため、実際にその引力に引き込まれるためにはもっと接近しなくてはならないが、大赤点から放射される強力な磁場に直撃された場合は、その限りではないのだ。

「いまだ!」

 シルバーナイトの足を1本切り落とした隼人。 しかし今度は彼が木星の引力に。

「ソレ!」シルバーナイトの残った前足の蹴りで弾き飛ばされる隼人。そして再びアステロイドベルトに。

3本足になっても、まだ突進力を持つシルバーナイト。

「よし、いまだ!」

隼人は、剣を額に当てて、倒れこんだ。シルバーナイトの突進を逆に利用したのだ。

「グワワーーーーッ」

シルバーナイトの胸に突き刺さる剣。今まで何度斬りつけても貫けなかった厚い装甲が遂に・・・。

「見事じゃ!君たちの勝ちだ。さあ、早く私の首を切り落として、起爆装置を止るのだ。それから・・これを持っていくが良い。」

「これは?」

「これは冥王星〜次の前進基地、レモネード星へのワープゲートの通行票だ。これを旗艦に取り付ければ、ワープゲートは自由に通行できるぞ」

「しかし・・何故?」

「ハハハ、私は一度死んだのだ。だが、ワルモナイトはウラヌスとともに静かに眠る私の魂をこの世に無理矢理呼び戻し、このような新たな体を与えて君たちと戦わせたのだ。私も騎士。正々堂々君ともう一度勝負がしてみたかった。だが、私は死んだのだ。死者は死の世界に帰るのが一番。早くこの忌まわしい体から逃れたいのだ。頼む、私の首を落として起爆装置を・・・」

「シルバーナイト、やはり貴方は・・・」

そうであった。彼はこの戦いを通じて、宇宙空間での巨大化戦の全てを隼人に伝授しようとしていたのだ。

「隼人・・・君と言ったな。私も騎士の端くれ、母星を敵に売ることはしたくなかった。だから君と戦った。だが、私は知っている。我が故郷、グレートロイヤル星の真の敵は、ワルモナイトだということを。頼む、我が故郷を救ってくれ。ワルモナイトを・・・」

「シルバーナイト!」シルバーナイトは息絶えた。

「御免」シルバーナイトの首を切り落とす。そして2人は分離して、内部に入り、起爆装置を見つけ出した。

「博士、どうすれば?」

「むむ・・それだ、その緑の線を断ち切り、赤い線を引き抜くのだ」

一か八かの賭けであった。失敗したら吹き飛んでしまう。艦隊もバルディスターも消し飛んでしまう。唯一、由香だけは不死身だが、この弾頭が爆発した場合、再生には100年かかってしまうだろう。

「やった」弾頭とシルバーナイトの遺体の全ての動力が停止した。

そして、その遺骸と弾頭は、静かに木星の引力に引かれて、その重力で潰されて一瞬輝いた。

地球を吹き飛ばしてしまう弾頭も木星にとっては隕石が落ちた程度に過ぎないのだ。あらためて思い知らされる偉大な巨星・木星。

そして今、それはシルバーナイトの巨大な墓標となった。

 

「シルバーナイト・・ロイヤル星の偉大な騎士・・貴方の遺志を継いで、必ずワルモナイトを倒します」

誓いも新たに、イオに向かうバルディスター。後に続く艦隊。

 そこに待ち受けているのは、どんな強敵であろうか。

太陽系外に出る手形は手に入れたが、そのためにはイオと冥王星の基地を叩き潰さなければ通れないのだ。

 

続く。