36話 宇宙【そら】に翔る白球

 

8月・・・そう、球児たちの夏・・甲子園球場では、連日熱戦が繰り広げられていた。

隼人たちの赤橋高校は予選敗退のため、2人はテレビで観戦していた。

神奈川県代表は、武蔵体育大学付属南武高校。隼人と由香の1学年下に、脅威の2年生エース、松崎大介投手がいた。彼の投打に渡る大活躍で向かうところ敵ナシ。ついに決勝・・。

京都代表、SL学院との対決だ。

 

試合は大詰めを迎えていた。9回ワンナウト1塁。迎えるバッターは4番の巨漢、城国次郎。

身長2メートル1センチ、体重129キロの巨漢だ。

4番・ファースト・城国くん・・キャーー!助けて〜」

「に変りまして、仮面バッター1号君!」

なんと、グロテスター昆虫軍団四天王の1人、仮面バッターが乱入してきたのだ。

阿鼻叫喚になる甲子園。

仮面バッターは、大介に挑戦状をたたきつけた。

大介もやる気満々だった。だが、突如2人のアメフト選手が乱入し、仮面バッターを取り押さえようとした。

大介と同じ南武高校のユニフォームを着ている。2人のうち、1人は長い髪をメットから覗かせていた。女の子、であろうとはよもや知る由もなかろうが彼女は日本唯一の現役高校フットボーラー、東サトミ。もう1人はその双子の兄で天才QBのサトルだった。

「こしゃくな!」

バッターは、乱入してきたアメフト選手をバットで打ちのめすが、2人は何度叩かれても起き上がり突進した。

「うう、生意気な!同志よい出よ!」

「おう!」

すると、仮面バッター2号以下、3号、バッターマン、X、ドラゴン、ビートル、スーパー1、Zの8人が現れた。絶体絶命だ!

 

それをテレビで見ていた隼人と由香は・・・

「由香ちゃん!昆虫軍団が甲子園で暴れている!やっつけよう!」

「ええ。今彼等と戦っているのは・・きっとあのとき会ったあの子・・サトミちゃんたちよ。彼女たちが危ないわ。急ぎましょう。」

「バルディ・チャージ!」2人は変身、続いて合体、変形してバルディスターになり、垂直に成層圏に飛び出し、角度をつけて甲子園に落下した。この方法だと、鎌倉と甲子園はわずか15分で到達するのだ。

 

「サトミちゃん!」

由香はボロボロになって横たわるサトミとサトルを抱き起こす。

 

「ハハハ。バルディバンよ何しに来た?俺は貴様の相手などしている暇はない。俺が挑戦するのは、貴様ではない。彼だ!」

仮面バッターは大介をバットで指した。

「俺は、宇宙野球選手権最優秀打者なのだ。従って、この大会最優秀投手と対決する資格があるのだ」

「何言っているのよあなた!」

「引っ込め女!野球は男のスポーツだ!」仮面バッターは猛烈なノックで由香をボコボコに。「キャー」


「由香ちゃん!おのれ虫けら、よくも由香ちゃんを!」だが、挑みかかろうとする隼人を制して、大介が叫んだ。

「臨むところだ!」

しかし、キャッチャーたちは既に逃げ出してしまった。

「よし!おれがキャッチャーを引き受けよう。おれがキャッチャーなら松崎君も150パーセントの等級が出きるはずだ!」

「おもしろい!」「よかろう!」大介と仮面バッターも賛成した。

 

大きく振りかぶる左腕。

「ストライク!」

戦闘用サイボーグの隼人でさえ痺れる感触。キャッチャーはさぞ大変であっただろう。

「ストライク!」

追い込まれる仮面バッター。

「カキーン!」ついに捕らわれた白球。しかしファールだった。

だが!そのボールは高性能爆弾であった。場外に飛び出した白球は炸裂し多くの被害を与えたのだ。もし、ホームランされたら甲子園球場は・・・。

しかし、大介は淡々と4球目を投じた。

カキーン!だが、大介はこれをとってしまった。しかし衝撃で外野まであとずさる・・。

「アウトだ仮面バッター!さっさと退散しろ!」

「おのれ・・・俺はアウトになったが、まだ2号たちが居る!」

「しかしこっちはバッテリーしか居ない。勝負にならない!」

「黙れ!殺してやる!」

仮面バッターは怪人の本性ほむき出し、隼人をバットで殴りつけてきた。

その間、由香は治癒光線で大介を介抱する・・・。幸い、致命的な傷は負っていなかったが、ショックで倒れてしまった。だが球はしっかりとグラブに。この爆弾はノーバンドでグラブに入ると炸裂しない仕組みになっていたのだ。

 

殴りあう隼人とバッター。しかし、目を覚ました大介が叫ぶ。

「やい、仮面バッター!野球選手の癖にバットで殴るとは卑怯だぞ!野球で勝負しろ!」

「生意気な・・!よし、2号、3号、バッターマン、X、Z、ビートル、ドラゴン・・合体だ!」

9人の仮面バッターは合体して巨大化した。

 

「よし、僕たちも合体だ!」

「OK♪」隼人と由香も合体した。さらに・・

「松崎君!僕たちの体を君に貸そう!」

大介をその中心核に取り込んだ。大介の臍に合体チューブが挿される。

 

「仮面バッター!ここは狭い!あそこだ!月面で勝負だ!」

「のぞむところよ!」

2体の巨人は瞬く間に宇宙へ。

 

「バルディスター・・いや、松崎!ルールを説明しよう。1球勝負だ。この球は高性能爆弾になっている。これを俺様にぶつけろ。キャッチャーは居ないから、ぶつけてもデットボールにはならない。ぶつけられたら俺様は爆死だ。だが、俺様がホームランした場合、この球が着弾した都市は消滅する。そのルールでどうだ!」

「のぞむところだ!」

 

 

世紀の決戦。胎内の大介の動きにあわせて振りかぶるバルディスター。

仮面バッターの打撃力はすでに判明。当ればかならずホームランと豪語するのもウソではない。万が一にも打たれたら、地球のある都市が壊滅し100300万人の命が吹き飛ぶのだ。

だが、大介は平然と構えた。

 

暗黒の宇宙に白球が・・・

 

「ズバ゛――――ン!」

「ストライク、バッターアウト!」

 

見事、仮面バッターのどてっぱらを貫いた白球は炸裂し、仮面バッターは文字通り「バッター・アウト」となり宇宙のチリとなった。

 

そして、2日後に順延された再試合、大介はSL学園を1-0で完封し、2年連続、1年夏、2年春に続く3連覇を成し遂げたのであった。

スタンドでは彼の活躍を見守る、隼人、由香、サトル、サトミの姿も。

そして、大介の年上の彼女、西尾リコ記者もおおはしゃぎ。

こうして深まる夏も終わりに近づいていた。

 

だが、いつ襲ってくるかわからぬグロテスターの魔手に、休む暇のない隼人と由香であった。

つづく。