33話 宇宙の紳士・川×卿
「何だと!もう一度言ってみろ!」
冥王星本部ではエドワルド太子が激怒していた。
「は、火星基地が地球人の戦艦・・・それも我々の技術を真似たモノに占拠されました・・・」
「ワルモナイトの戦艦が守っていたはずだ!アレはそう簡単にはやられないはず・・・」
「それが、敵はものすごい魚雷を持っていて、その上バルディスターにロボが倒され、ワルモナイト様は木星に退却したのであります・・・」
「もっと詳しく報告せよ!」
「は、イセキダーは敵の強力魚雷4本を受け損傷し、やむなく・・」
「小破ではないか・・・けしからん!やはり怪人や地球人の裏切り者には任せて置けぬ!余が・・・余が直々に参って火星を奪い返してくれようぞ!爺、「デューク・オブ・ダーク」の碇を揚げよ!」
「お待ちください若・・・デューク・オブ・ダークは冥王星基地そのものの機能を果たしています。出航には本国の許可が・・・」
「黙れ爺、貴様まで臆したか!・・・よし、ウインタービルを呼べ!ダークロイヤルで出撃だ!」
「恐れながらウインタービル卿はエメロード星総督に左遷され、ワープゲートを使っても50日たたないとこちらへは・・・」
「うう・・・おのれ!こうなったら円盤に単騎乗り込んででもバルディバンと決闘を申し込んでやる!」
「若!お鎮まりください・・・」
「放せ爺・・・!」
そのときである。プーンとなんともいえない高慢な香水の臭いが立ち込めてきた。
「ハハハハ・・・!若は誰かお忘れではないかな?」
「お、叔父上!」
「ごきげんよう若君・・・ご健勝何より、ハハハ・・・」
「お、叔父上!スーツとネクタイの新調なら間に合っているぞ!また女漁りにでも来たのか?だいいち貴方のその派手な衣装と下品な香水は・・」
「これは失礼。しかし若、貴族たるものお洒落も大切ですぞ」
「で、用件は?」
「ハハハ。若は先ほどまでのお話をこの叔父との再会の喜びの余りお忘れと見える。
火星に攻め込むのではなかったのかな?」
「そうだ!余の誇りにかけて奪い返してやる!」
「しかし・・・艦隊は増援要請中で・・・」
「アーハッハハハハ・・・・!」
「その艦隊が今到着したのだよ」
「ということは・・・」
「いかにも。このわたし、サー=ルイス=ニコニコ=ビックリマン=フラスコ=リバーバッテン伯爵が第2代太陽系方面艦隊司令長官を拝命したのだ。ハッハッハ・・・よろしく!」
「叔父上が?」
このケバケバしい紳士、リバーバッテン卿はエドワルド太子の母、エイザベス王妃の弟で、派手で女好き、遊び好きの驕奢な人物だが、軍人としての能力、実績は本物であり、タイガー惑星の反乱を鎮圧するなどの武功を重ねた栄光の軍人にして最高の紳士を自認する貴族なのであった。
「よし、叔父上、余も乗せてくれ・・いや、リバーバッテン大将、余を乗せよ!命令である!」
「おお、そうこなくては。しかし、若は幼い頃よりこの叔父の船でよく舟遊びをし、星めぐりをしたのを思い出しますぞ・・」
「恐れながら伯爵様、これは遊びではありませぬぞ!」
「ハッハハ・・あいかわらずバルボンは石頭だな。わたしにとっては戦い、いや人生そのものが遊びなのだよ。紳士たるものそうでなくてはならん。ハッハハハハハ・・・」
「碇をあげよ!」
リバーバッテン卿の旗艦・・戦艦「アンノン」は、総旗艦「デューク・オブ・ダーク」の同型艦で、古城のような外見をしているが、リバーバッテン卿の趣味で外装が白とピンクで塗装されているため、傍目にはラブホテルにしか見えなかった。さらに・・・
「叔父上・・この艦の乗組員は・・まさか?」
「いいえ、女ではありませぬ。国中から選りすぐった美少年だけを乗せております。」
「叔父上はそっちの趣味もあったのか!」
「左様。紳士たるもの、男女両方を乗りこなしてこそ本物ですぞ、ハッハハハハ・・」
後に続くのは同型艦の「ガウ」こちらは迷彩が施され戦いの船の感がする。以下、大小の艦艇が続く。
あっという間に火星空域に殺到・・・。たちまち守備隊は全滅、火星は再びグロテスターに奪い返されてしまった。
「ハハハ、たわいのない。聞くところによると敵の戦艦は、R級を元にしているそうではないか。2時代前の旧式艦ベースではたかがしれていよう。我が「アンノン」こそ宇宙最強戦艦なのだよ、わかるかね若?」
「叔父上、いやリバーバッテン!少しは黙ったらどうだ!」
「これは失礼・・・」
「コチラカセイ・・・テキカンタイノコウゲキヲウク・・天皇陛下万歳」
「けしからん!七海、直ちに奪い返せ」
「しかし、閣下、比叡だけでは・・・」
「なに、兵力不足は精神力で補うのじゃ。この七海にお任せあれ!」
「頼んだぞ七海!」
だが、さすがに兵力不足は否めず、同型艦の「榛名」「霧島」の完成を待ち、10日後に出撃することになった。
その情報は隼人と由香にも伝えられた。
「隼人、由香、また行ってくれるか?」
「比叡」は、将来隼人と由香が宇宙に旅立つ時、途中まで母船となる任務も持ち合わせ、2人のサポート機材も搭載されていた。逆に、隼人と由香の合体エネルギーを使って他の同型艦にはない超能力も発揮できるのだ。二人は今回、「比叡」に乗り込んで出撃となった。
「おお隼人におじょうちゃん!大物だ!艦隊が来たんだぜ」
「おじちゃん、うれしそう・・・・。変なの。キライ!」
敵が攻めてくるのを喜ぶ七海の神経が理解できない由香であった。
その間、瞬く間に火星基地は修復され、同時にリバーバッテンが小姓や側女を呼び寄せ、さらに友人、知人まで呼んで連日宴が続いていた。
「叔父上・・ここは戦場だぞ」
「まあ若も一杯・・」
パリーン!グラスを突っぱねる太子。飛び散るグラス。
「太子・・血が・・・」
破片で傷付いた太子の傷口に熱い唇が。
「マリー!お前も来たのか!」
「はい、ワープゲートで一瞬のうちに」
しかし、その最中見張り員からの報告があった。
「リバーバッテン卿!大変でございます。敵戦艦3隻が攻めてきました!あ、魚雷です・・・」
「ハハハ。あわてるでない。よし、出撃だ。碇をあげろ」
切り替えが早いのがリバーバッテンの信条である。戦士の顔に素早く変わった。
火星上空では、「アンノン」「ガウ」VS「比叡」「榛名」「霧島」の決戦が始まった。
「アンノン」の4連装主砲はものすごい速射能力がある。次々命中する。だが、比叡以下は仁子が開発した超合金セラミック複合装甲のため、これを凌いだ。
「むむ、オンボロR級のコピーとおもいきや・・・。ではビーム砲だ」
「よし、こっちもビームだ」
ビーム同士がぶつかると相対効果で消えてしまう。
「ガッハツハ。こんどはこっちの番だ。魚雷発射!」
必殺の阿弥陀魚雷だ。
スクリーンにターゲットが映し出される。
むろん、遊び心の誘導装置はカットしている。だが半分以上は当てる自信が七海にはあった。
ところが!
「七海少将!て、敵艦が・・・なんと16隻に増えました!
「なんだ、いいじゃないか、敵が多いほど遣り甲斐があるではないか!みろ!」
全部命中!全艦轟沈!
「ガッハツハ!水雷の鬼、七海玄八様の腕前を見ろ!」しかし、さすがの七海も腰を抜かした。
なんと、さらに16隻の戦艦が現れたからである。
「ホログラフかもしれません」
「バカな!たしかに手ごたえがあったはず・・」
狼狽する幕僚。
「ハッハッハ・・・・見たか地球人め。これぞわたしの「ダミーシップ」だ。
真空に触れると1000倍に膨張する材質で作った模型だ。これで敵の魚雷を撃ち尽くしてやるぞ。」
「さすが伯爵!」皆褒めるが、太子は「くだらん!」
「お待ちください、どちらへ・・・」
戦いは一進一退となった。完成したばかりの「霧島」と「榛名」は損傷と故障を起こしてしまった。
「畜生・・・榛名、霧島は帰れ!」
一方、ガウも損傷した。
一対一の攻防になったのだ。
「敵の艦長はなかなかやるな、ハハハ」
「今度の敵の親分も手ごたえがある」
ところが、そのとき、ワルモナイトのイセキダーが現れたのだ。
「これはこれは太子様、わざわざ救援ご苦労様です」
「おのれバケモノ・・・」比叡とアンノンに割って入った形になったイセキダーを避けようと、アンノンは転舵したが、射点をふさがれてしまった。
「太子と川×卿はどうぞ冥王星にお帰りください。火星はこの俺様のものですから、イッヒッヒヒ・・・」
なんと、ワルモナイトは地球とリバーバッテンの艦隊決戦のどさくさにまぎれて、火星を自分のものにしようとしたのだ。
「しまった!基地には客人たちが・・・ただちに彼等を救出しなくては」
リバーバッテンは退却した。追う七海。だがイセキダーが立ち塞がる。
そして、流れ弾で基地が炎上してしまった!
「叔父上は、女たちと民間人を連れて脱出してくれ。」
「しかし若・・・」
太子は強引にワープゲートを使いアンノン、ガウを退却させた。
比叡も被弾して基地に墜落・・・
「キャー!」
由香は悲鳴をあげた。
「だいじょうぶだおじょうちゃん!比叡は沈まぬ!」
「ハハハ、落ちろ落ちろ・・・」
勝ち誇るワルモナイト。
だが、比叡が態勢を立て直して反撃したからたまらない。イセキダーは至近距離から16本の魚雷をくらってしまった。「おのれ・・・」
隼人と由香が艦内でチャージしたため、比叡は復活したのだ。比叡が不死身なのは、実は隼人と由香が乗っているからなのだ。
「うっバルディ反応が・・・。よし、ロボット出撃だ!」
イセキダーからは性懲りもなくロボットが出撃してきた。
「由香ちゃん、行くぞ!外でもう一回合体だ!」
「OK、隼人君♪」
2人は艦外に飛び出すとまばゆい光ととともに合体し、戦闘巨人バルディスターになった。
ロボと一騎打ち。だが、弱すぎた。実は、ロボはバルディスターを倒すためではなく、比叡と引き離すのと、イセキダーの脱出の時間稼ぎのためだったのだ。
ズカーーーン!両断されるロボ。
しかしその間に、ワルモナイトたちは脱出してしまった。
そして、隼人と由香に、地球にいる細川博士からの命令が届いた。
「隼人、そのまま火星基地に乗り込め!」
「了解。行くぞ由香ちゃん!」
隼人と由香は、基地に突入して分離した。
そこで2人を待ち受けるのは・・・!
続く