戦いのとき 再び 鬼VS剛力女戦士

 

 あの激しかったグロテスター(現・グレートロイヤル連邦)との戦いから5年の歳月が流れていた。地球はすっかり復興を果たし、人々は平和を満喫していた。

 それだけではない。グレート星との国交樹立に伴い、地球人はハイパー放射能ミサイルに汚染された火星を除く全太陽系に進出し、さらにグレートロイヤル連邦傘下の星星にも、限られた層だけではあるが、行き来が可能となり、それぞれ大使館まで設置するようになったのだ。つまり、侵略を受けたはずが地球人類はかえって星間移動技術を身につけてしまったのだ。

 しかしそうなると、外宇宙を探検し、開拓し、子孫を残すために改造された隼人と由香は、その存在価値を半ば否定されたようになってしまったのだ。

 そして由香は、戦いのさなか生まれた長女恵、、長男光太郎に加え、新たに地球で落ち着いてから出産した次女の愛子を加えた三人の育児にいそしみ、隼人は宇宙飛行士として活躍していたのだった。

 由香・25歳は隼人の妻であることは言うまでもないが、その家族構成はやや複雑である。

 由香は、細川隆斉公爵の長男・故忠之氏の長女であるが、夫である隼人が、公爵の次男・晴彦博士の養子となり、そこに由香が嫁ぐ形で婚姻したので、姓名は「細川由香」のままである。これは、隼人の父・武人博士が晴彦博士の親友であったこと、由香か「隼人君のお嫁さんになりたい」と強い意志を持っていたこと、公爵家にはすでに由香の兄・隆之という後継者が存在することからとりはかられた措置であった。さらに博士が助手であった森山香織と結婚し、娘のさやかをもうけ、さらに先にホステスに産ませた娘のえりなを引き取り香織と養子縁組したため、香織は義母となり、さらに妹も2人できたことになるのだった。

 貴族として何不自由ない暮らしの由香だが、唯一の不満は宇宙に飛び立つと最低3ヶ月~1年は帰ってこない隼人とセックスできないことであった。そして余暇をもてあまし、義母(いっても10歳しか離れておらず、35歳の若さではあるが)の香織とともにママさんバレーチームの副将として活躍するほか、スポーツウーマンの香織の影響で、サッカーやテニス、さらにはアメフトにまで挑戦するなど、いろいろなスポーツにしたしみつつ、隼人の帰りを待っていた

 庭のベンチで、激しかった戦いの日々を振り返る由香の長い髪は風になびき、足元には白いねこがじゃれついていた。まさに平和そのものの午後のひと時だった。

 そしてもうすぐ隼人が帰ってくる。そして次に旅立つとき、壮大なある計画のため、由香は久しぶりに一緒に宇宙に飛び立つことになっているのだ。

 そんなある日、天地を揺るがす大事件が発生したのだ。

地球の植民星である、木星の衛星イオが、突然謎の侵略者に襲われたのだった。しかもその中に、グロテスター兵士の軍服を着用した者が混じっているというのだ。

 ただちに駐地球大使を呼び出し事実確認を行い、本国にも照会をしたところ、グレートロイヤル星は、グレートロイヤル帝国からグレートロイヤル連邦への組織改変のため、大半の植民星を傘下で独立させ(例として、由香の友人であった地球名・緑川いずみが、エスメラルダ女王として即位したエメラルド星など)、またそれに伴い領地を失った貴族たちの領地の再分配などで、侵攻軍を遠く離れた太陽系に差し向ける余力はないとの回答であった。

 この事態に、隠居した祖父の跡を継ぎあらたに地球防衛軍総司令官になった細川隆之公爵は、ただちに地球防衛軍に、イオ奪回の号令を発したのだった。

だが、今ではただの貴族夫人にすぎない由香には、何の指令もなく、ただただこの一大事に心を痛めるだけであった。

 グロテスター兵士が宇宙海賊に混じっているとの情報から、グレート星駐地球軍の兵士も交えた地球防衛軍は、地球、月、土星のタイタン、カニメテの4箇所から出撃し木星に集結、海賊船を瞬く間に蹴散らし、イオに降下していった。ここからは基地制圧戦となるので艦隊は一部を残し引き上げていった。案外もろい、事件もすぐ解決するだろう、と誰もがそう想った。「フ、しょせんは海賊だ」と。

 ところが、イオは阿鼻叫喚のありさまだった。殺戮と破壊が徹底され、一般市民の姿は死体のみという惨状だった。総督府がおかれた島本ベースを死守するべく、地球防衛軍特別陸戦隊は突入して行く。

ここを破壊されると気象コントロール装置が機能しなくなり、イオは氷の星になってしまうのだ。

 白い装甲宇宙服に身を固めた隊員たちの先頭に立つ、装甲の肩を赤く塗った指揮官。的確な指示と鋭いキックで海賊どもをなぎ倒して行く。その中には、やはりグロテスター兵士が含まれており、残党の一部が組織したのか、または加わっていることは明らかであった。

 占拠された島本ベースの踏み込む宇宙海兵隊の前に立ちふさがる、海賊の首領。もじゃもじゃの髪の毛から1本の角を生やし、筋骨隆々のその姿は「鬼」そのものであった。

 隊長は叫ぶ。

「あ、お前は!」

彼は・・・いや彼女はかつてのグロテスターとのこのイオでの戦いに、青山大佐指揮下の宇宙海兵隊の紅一点として参加した、村川茜少佐(当時・少尉)その人であった。

 その戦いの際、少佐は多くの敵を男性顔負けに蹴散らしたが、屈強な敵の士官との戦いで瀕死の重傷を負い、かろうじて生還した過去があったのだ。

 

 その戦いで彼女は、装甲を剥ぎ取られレイプされた上、左乳房、左腕をもぎ取られ、さらに脱出する際の爆発に巻き込まれて瓦礫の下敷きになって両足を失ってしまい、左上半身と両足を機械化したセミ・サイボーグとして生まれ変わり、のちにバランスをとるため残った右乳房も切除していた。

なお、その際、左肺も機械化され、心臓も人工心臓に取り替えられた。また、その人工の左肺に直接空気中の酸素をターボチャージャーで鼻を通さず送り込むことから、体内の酸素吸収量が増え、改造されていない右腕やふとももの筋力も向上した。

 

 さらに、彼女は重傷を負ったため中絶できず、やがて子宮を突き破って生まれてきた、1本角で毛むくじゃらの赤子を、自らの手でめった刺しにして殺害していた。そしてレイプされた悔しさと、破れた子宮の修復が不可能であることから、女性としての機能を全て取り去り、男性器がないことを除くとほぼ男性と化してしまっていた。元々男性的な性格であったのが、女性機能喪失によりさらにエスカレートし、部下たちも男として接していたほどなのだ。

 

 ただ、彼女の男勝りはそれに始まったことではなかった。

生まれてすぐに母をなくし大工の棟梁である父に男で一つで育てられたことがその原因ではあるが、高校は工業高校の紅一点で、女子の制服がないため胸にさらしを巻き学ラン姿で通い、体育も上半身裸で男に混じって棒倒しやラグビーをするほどであった。

 そんな彼女にとって新たに創設された宇宙海兵隊はうってつけの天職と想われ、実際青山隊長の片腕として対グロテスター戦で大活躍したのだった。その功績もあってこのたびの作戦では2代目指揮官に抜擢されたのだ。なお、あまりもの激しい訓練と、かつての戦いで村川少佐本人がレイプされた過去から、現在女性隊員はおらず、隊長が紅一点であった。そして今、目の前にいるのは、自らを犯し、腕と乳房を奪った憎い敵そのものだったのだ。怒りにふるえる村川少佐。

ヘルメットを脱ぎ、鬼に向かって叫ぶ。

「貴様、俺の顔を覚えているか?」

「うーん、はて・・・。あ、思い出したぞ。あのときの小娘か。ワシの巨根がほしくなって出向いてきたのか。感心なやつだ」

「畜生、鬼め!今度こそ殺してやる!」

 激しいタックルにたじろぐ鬼。

その頃、地球防衛軍司令部に、グレート星からの連絡が入った。鬼の正体がわかったのだ。

彼の名は、男爵オニール少将。かつて魔王グロムウエルの腹心として地球侵略軍の中核を担っていた男だった。植民星の出身ではなく、れっきとしたグレートロイヤル星の貴族だが、どうしたことか先祖代々頭に1本角を生やした家系の出身で、闘争心と性欲の塊のような男で、男性ホルモンの分泌過多と想われる風貌をしていた。その後、あまりにも素行が悪く、特に女性をレイプしたり惨殺することと、他の領主の土地を強奪することから、刑務所惑星に流刑になったはずであった。ところが、半年前脱獄し、行方をくらまし、グレート星警察からも追われている身だったのだ。

 

 由香は、一抹の不安を感じていた。「わたしも・・。わたしも行かなくては・・。」だが、改造人間としての由香は、単独では機能しない。パートナーである隼人と一緒でなければ、その機能が最大限に生かされないのだ。特に由香単独で怪人と戦うのは無謀といえた。なにせ彼女が変身するバルディーナは、戦闘用には作られていないのだ。単独での攻撃能力は極端に低く、戦いを挑むのは無謀といえた。一方で改造され装甲されたその身体は、あらゆる環境や攻撃に耐えられるものであり、貞操上からも安全性の高いものとなっていた。

 「バルディ・チャージ!」由香はひそかに自室でバルディーナに変身した。

 

隼人は今、ケンタウルス座から地球に向かっているところである。

 

 イオでは、村川隊長とオニール将軍、隊員たちと海賊どもの激しい戦いが続いていた。

 

オニールは改造人間ではない。しかし、その人間離れした強靭な肉体から発せられるパワーは、刃物もはじき、装甲をまとった兵士をも圧倒した。そして血に餓え、殺すことと犯すことにのみ快楽を求めるまさに鬼であった。そのパワーの前に、村川は押されて行く。

「畜生。改造された手足をもってしても、かなわないのか・・・」悔しさに涙が頬を伝う。そして目の前の醜悪な鬼に、女性としての尊厳を全否定されおぞましい肉棒を突き入れられた屈辱を思い出していた。

 そしてついに、再び装甲が剥ぎ取られる・・・。

「む?」目を丸くて驚くオニール。なぜなら彼女の手足は機械化され、乳房がなかったからだ。

「男?いや、ちがうな。」

オニールは村川の股間を巨大な手でまさぐり、女であることを確認した。

「よし、またやってやるぞ。女であることを想い知らさせてやる。お前に女の悦びを教えてやったのもこのワシだ。グヘヘヘ。」

 いや、ちがう。その反対だ。女としての尊厳を否定され、女として生きることあきらめざるを得なくした張本人ではないか。茜は女の身に生まれた自分が今ほど悔しかったことはなかった。肉体を強化改造し、身体の内外から「女」の要素を取り去ったとしても、陰裂がある限り、「受け入れる性」である女としての運命から逃れることはできず、醜い肉棒を強制的に受け入れさせられるのか。それならいっそ殺してほしい・・・。

 絶体絶命のその時、突如部屋の一部がまばゆいピンク色に光った。

バルディーナこと由香がワープアウトしてきたのだ。バルディーナは、一度足跡を残した場所には、宇宙のどこにいようとワープできるのだ。これはバルディバンには備わっていない固有の超能力だった。

「鬼さん、乱暴はよしなさい!この私が許さないわよ!」

「おお、機械の女・・・。あのグロムウエル様を倒したという・・・。しかし所詮は女、機械の女とやるのも一興だ。イヒヒ」

 ところが、由香を突き飛ばしたのは目の前の鬼ではなかった。

「ひっこんでろこの淫乱サイボーグ女!俺はおまえみたいな「女!」っていう女がこの世で一番だ一い嫌いなんだ。さっさと帰っておままごとでもしてやがれ!」

 村川少佐は、バルディーナが由香であること、そして由香が貴族の娘であることをよく知っていた。

蝶よ花よと甘やかされ、女性であること、貴族であることの特権をフルに享受してきた由香に、激しい嫉妬と憎しみを抱いていた。さらに、パートナーであるバルディバンこと隼人と性交することが動力源であることも知っており、自らの不本意な処女喪失、出産経験から、幸せな結婚生活、セックスライフを楽しむ由香を淫乱サイボーグと言ってのけたのだ。また、改造されてなお、完璧な女性らしい美しさを誇る由香に対し、明らかに劣った技術により改造され、生身の部分と機械部分がつぎはぎになった醜い自分をくらべて惨めになったのだ。

 全身がメタリックピンクの金属の鎧に包まれたバルディーナからは、一片の素肌も見えない。村川も知っている、由香の象牙色の柔肌も、柔らかそうな乳房も、流れるような黒髪も見えない。だが、由香を知っているものであれば、バルディーナが由香であることは一目瞭然であった。硬いはずのその身体はなぜか柔らかく、動くたび、いや止まっていても人工心臓の鼓動にあわせてプルプル揺れる金属の乳房と丸い尻。可憐な仕草・・。まさにそれは機械でできた聖母であり天使であった。

 由香も、かつて青山大佐に伴われて叔父の細川博士に会いに来た村川を良く覚えていた。「かっこいい女性だ」と尊敬の念を感じていた。由香にも、自分は貴族で、隼人がパートナーでなければ、まったく無力な存在であるという自覚はあっただけに、投げかけられた言葉は痛かった。だが今はそんな時できはない。

 「今は、力を合わせて目の前の鬼さんと戦うときよ!」と由香は促すが、オニールは2人同時の攻撃もしのいでしまった。

 由香にも迫る鬼の魔手。装甲を剥ぎ取ろうとする巨大な手。だが、装甲に見えてそれは金属化した由香の素肌そのものであるから剥がれないのである。しかし、弱い。弱すぎる。生身のオニールより弱いのだ。

「こんな弱い奴にグロムウエル様は倒されたのか・・・。ということは俺様はグロムウエル様より強いのか。なら宇宙征服も夢ではないぞ、イヒヒヒヒ」

得意になったオニールは再び茜を襲う。機械化された手足は簡単にもぎ取れた。特に足は、骨や神経の接続がされておらず、傷口を塞いだところにロボットの足を取り付け、脳波ニよって制御する方式であった一方、根元から機械化されている腕のほうは、無造作に引きちぎられた。5年前と同じく、オニールによって両足と左腕を失ってしまったのだ。

「改造されていようと、しょせん女は女。股を開き、男の肉棒を突っ込まれるためだけに存在するのだ。イヒヒヒヒ」

絶体絶命の2人。

外で戦っている兵士たちも、海賊との戦いで助けにこれない。

 そのときである。

「外道!」バルディバンの参上だ!

由香のピンチを察した隼人は変身して地球に寄らず直接駆けつけてきたのだ。宇宙船は無人で地球に返した。

 「うう、貴様がうわさに聞くバルディバンか!」

切り結ぶ2人。その間、茜の介抱する由香。

「お前なんかに・・」茜は悔しかった。

 一方、形勢大逆転、追い詰められるオニール。

角を折られ、肩を刺され、絶体絶命。

「覚悟しろ外道!」そのときである。ズシーン、ズシーン。

地面が割れ、巨大ロボットが現れた。そして操縦席から発射された光線に吸い込まれるオニール。

「ハハハハ、踏み潰してやる!」

だが、バルディバンとバルディーナの最大の合体技・・・。バルディスターの存在をかれは知らなかったようだ。

「バルディ・クロス!」2人は激しく抱き合い、激しく発光して・・巨人の姿になった。

 これこそ、2人の真の姿、完成形である戦闘巨人バルディスターだ。

オニールロボは、股間の大砲と手にした蛮刀で激しく攻撃してくるが、隼人の闘争精神と攻撃力、由香の愛と生命力が完全に融合したバルディスターの前に、オニールは無力であった。

「バルディ卍斬り!」ロボは爆発四散し、投げ出されるオニール。

その頃、海賊たちを制圧した隊員たちが島本ベースに駆けつけてきた。

「隊長!」駆け寄り、村川を抱き起こす隊員。しかし、その容態は絶望的のように見えた。

「隊長、死なないで!」その隊員は、帝国工科大学を主席卒業して入隊し、体力、知能、戦闘能力、工作力、容姿とも最高に優れた、武田優作隊員だった。将来の隊長候補である。

そしてその前に降ってきたオニール。

 武田は、「隊長、今こそ無念を!」と、茜を抱きかかえ、その右手に短剣を持たせて、オニールに近づき、自らの手ももち添え「止めだ!」と叫んでオニールの心臓につきたてた。断末魔の叫びを上げるオニール。

 しかし、同時に村川茜も息絶えたように思われた。号泣する武田。

武田は、村川の中高の後輩でもあった。村川に憧れ、追うように入隊したのだ。そう、彼は女性としての村川を愛していたのだ。

 それを見たバルディスターは、2人を手のひらに乗せ、胸の高さまで持ち上げた。そして由香の声で、「ここから私たちの中に入ってきて」と、胸のハッチを開けて促す。

武田は村川を抱きかかえたまま、言われるがままに中に入った。

すると、なにやら肉の壁の中に機械や管がある部屋に入っていることに気づいた。そしていつのまにか、裸になっていた。

由香の声が指示する。

「その管を、茜さんのへそに差し込んで、貴方は彼女をしっかり抱いて」

「わかりました」武田は言われるがままに管をへそに差込み、茜を抱きしめた。すると由香の声は「違うわ。抱くということは、貴方の男の部分と茜さんの女の部分を合わせるということよ。」

赤面しながらも、おそるおそる言われるがままに茜を抱く優作。そして本能的に激しく抱き上げる。すると周りがピンク色の液体に満たされ、そのまま気を失った。そしてしばらくして目を覚ますと、裸で茜と抱き合っている自分に気づいたが、機械化されたか、失われたはずの茜の手足や乳房が、元に戻っていた。

「武田君、貴方の愛の力で、茜さんの身体は元に戻ったのよ」

そう、バルディスターには、死んだ直後の人間を生き返らせたり、改造された人間を元に戻す機能が付いているのだ。かつて隼人の姉で、今はグレートロイヤル星のマリー皇后になった真理子も、怪人の姿からこうして再生された過去があった。

 目を覚ました茜に、武田は言った。

「先輩。結婚してください。」

「バカを言え。俺は女じゃないぞ。」といいつつ、再生された自らの肉体をまさぐる茜。

「男だろうと女だろうと、生身だろうと半分機械だろうと関係ない。僕は村川茜がほしいんだ。そのために猛勉強と猛特訓して隊員になったんだ。」

「武田、お前・・・」

気づくと分離してかつ人間の姿に戻った隼人と由香、それに部下たちが並んでいた。

 そして「よし、仲人は俺様が引き受けた!」そう叫んだのは、宇宙艦隊司令長官に昇進していた、七海玄八大将だった。七海親分にそう言われればもはや二人に断るすべもない。

地球に帰還するや、盛大な結婚式が開かれた。隼人と由香も参列している。

 そしてひとしきり泣きじゃくるのは、茜の父、村川鉄次郎だった。「ムラテツ親方」と呼ばれる、昔かたぎの頑固な大工の棟梁である。

「ムラテツ。いい跡継ぎができてよかったじゃねーか!」七海親分が肩を叩く。

「親分、ワシは、ワシは・・・・」

 そして隼人は、そっと武田にささやいた。「おい武田。あのアネゴのどこに惚れたんだ?」

「う、隼人さん。痛いところを。実は・・・・。」小声で耳打ちする武田。

(中学のとき、騎馬戦の騎手を茜、馬を武田がやったとき、腕に食い込むマンコのぬくもりに、いつも男勝りでかっこいい茜も、女であることを感じ取り、それで惚れたのであった)

「武田、その気持ち、俺にも良くわかるぞ。」

隼人もまた、ブルマ越しの由香のマンコのぬくもりが大好きだったのだ。

そこに「何ヒソヒソいってやがるんだ。聞こえてるぜ」

「由香はちゃんと知ってたわ。でも茜さん。もう奥様なんだから、そんな言葉遣いはおよしになったほうが良くてよ。」

「あいにくアタシはあんたみたいなお嬢様育ちじゃないんでね。」

しかし、そこにご祝儀の酒をつぎにくる職人たちは口々に「お嬢」と口にする。

「貴女だってお嬢様じゃない。ほら」

 

2人は、宇宙海兵隊から一旦予備役に編入された。武田改め村川優作は、ムラテツ親方の跡を継いで、二代目を襲名したのだ。茜も妊娠して日に日にお腹が大きくなる。あのおぞましい最初の妊娠・出産と異なり、望んで受け入れた子を産む喜びは忌まわしい過去を消し去るかのようだった。

だが2人は誓う。もしまた地球の平和を乱す者が現れたときは、今のこの幸せを投げ捨てでも、再び機甲戦闘服を纏い、最前線で戦うと。そのため、軍に籍は残しておくと。

 

「こら、腰が入っていないぞ」親方の檄が飛ぶ。二代目修行は楽じゃない。

一方の茜も、一児の母となってもなかなか男言葉が抜け切れないでいた。

 

そんな2人を、そっと見守る隼人と由香であった。