第105話 不滅の愛と不滅の悪(前)

 

「由香ちゃん、君だけを死なせはしない・・・」

顔を剥ぎ取られ、腕をもぎとられ、美しい女性型サイボーグから単なる醜い機械の塊と化してしまった由香を抱きしめ、口づけする隼人。

 次はお前の番だと迫るグロムウエル。その魔手が二人を引き裂くかに見えたそのとき・・・

「うわ・・・。苦しい。なんだこの光は・・」

「由香、わたしの可愛い由香。わたしのチカラを、命を預けるわ。そして貴女の新しい命も返すわ・・・」マザー・ガラシャの精神体が、2人を包んで消えた。

その瞬間、隼人と由香はまばゆいばかりの光に包まれた。

 隼人の涙が、グロムウエルの体液を洗い流した。そして、隼人の熱い心と全エネルギーを受けた由香の体から、奇跡のエネルギーが湧き上がった。

みるみる元の姿に、いや、生まれたままの姿に変わっていく隼人と由香。

 「隼人君・・・」「由香ちゃん・・」改めて見つめあう二人。由香の下腹部は大きく膨らんでいた。 そう、彼女には新たな命が宿っているのだ。

「由香ちゃん、もう大丈夫だ。ここで待ってて。」

そして隼人は、おののくグロムウエルに突進した。由香も、お腹を膨らましたまま戦士の姿になり身を守っている。

「死ね!貴様はこの宇宙に存在してはならないんだ。貴様のために、多くの命、多くの星が・・・。僕は貴様を絶対許さない。今こそ受けてみろ、この剣を!」

 隼人は、グロムウエルの体を貫いた。確かな手ごたえがあった。心臓が破裂し、おびただしいどす黒い血が流れ出た。しかし・・・。

 一瞬苦痛を見せたグロムウエルだが、

「ガッハッハ。それでわしを倒したつもりか。ワシは不死身なのじゃ」

「何?」しかし、隼人は冷静に改造人間としての機能を活用し、グロムウエルの体をスキャンした。

「笑わせるな!貴様の不死身の秘密はこれだ!」

隼人は、さらに突撃を繰り返し、グロムウエルを押し倒し、剣をめった突きにして何度も何度も刺した。

「ウォーーーーーーー!」断末魔の叫びを上げるグロムウエル。そう、彼には10個の心臓があったのだ。さらに、隼人は陰嚢も潰し、最後に脳天をカチ割った。

 ついに、宇宙征服と地球侵略、そしてグレートロイヤル王家転覆の野望をもつ魔人・グロムウエルは死んだのだ。

 思えば長い戦いだった。高校生だった隼人と由香はその在学中からその侵略に立ち向かい、地球侵攻部隊の撃退と同時に、卒業を目前に宇宙へと飛び出し、途中月面,火星、亜ステロイドベルト、土星のタイタン、木星のイオ、冥王星、レモネード星、リバーストン星などで宇宙騎士や怪人、悪女ニジーナ&ツジーナ、悪魔の軍人サダフィー大佐らの挑戦を退け、ここまで来たのだ。そして、ついにその宿敵を倒した隼人。その間、香織、リズ、リョナサン、青山隊長、吉村提督、島本博士らの犠牲があり、敵に操られた親友・段田をも葬り去らねばならなかった。グレートロイヤル星皇帝夫妻と皇太子も殺害され、リバーストン公爵夫人は口が利けなくなっていた。だが、もう巨悪は死んだのだ。

そして、隼人がグロムウエルの最後の心臓を突き刺したそのとき・・。

 「オギャー、オギャー」

由香のお腹からは、新たな命が誕生したのだ。女の子だった。

 由香は、その赤子に乳を含ませた。

 隼人は宿敵を倒し、由香は隼人の子を産み、そして乳を与える。今この瞬間、2人のそれぞれの悲願は達成されたのだった。

 悦びに包まれる由香。

 

 だが隼人にはまだやるべきことが残っていた。

「姉さん、義兄さん・・・今助ける!」いまやグレートロイヤル王家唯一の正等な後継者になったエドワルド王子と、その恋人で生き別れの姉・麻理子を祭壇から助けなくてはならないのだ。

後一歩でそれがかなう、そう思ったとき・・・。

 飛来してきた鉤爪からエドワルドと麻理子を庇う隼人。

「グロロ・・・。まだまだわしらは不滅じゃ・・」それは、すでに人格を失い、野望と頭脳だけになって生きている三浦博士の現在の姿、ゾンビナイトだった。ゾンビナイトは脳を支える最低限の胴体しか持たないため、戦闘力は皆無だった。元々は、ワルモナイトだったグロムウエルのスペアボデイに、三浦博士の脳が移植されたものだったのだ。

 ゾンビナイトは、ラガーボーグのコアを、女怪物のボディにセットした。そして・・・。

「全能なる我らの神グロムウエルに偉大な力を・・・」と唱えた。すると、ゾンビナイト、グロムウエルの死体、段田の死体がカプセルに吸収され、一体巨大化して、巨大グロムウエルとして復活したのだ。

さらに、怪物カプセルもニジーナとして復活した。

 「グハッハ・・・。ワシは不死身なのだ。宇宙制覇の野望と貴様らを皆殺しにするまでは、絶対死なぬ」

 「グロムウエル様の言う通りよ」ニジーナも勝ち誇る。

 巨大化した彼は、隼人と由香を襲う。

「何?」驚く二人。

 赤子も抱え、絶体絶命だ。

 ところが、以外なことに、由香はこう言い放った。

「隼人君、戦いましょう!この子は・・・折角生まれてきたけど・・・。もう一度ママのお腹に隠れてね・・・」由香は赤ん坊にバリヤーをかけると、縮小して、カプセルに入れて、膣内に挿入した。

「隼人君、押し込んで、お願い・・」

 実は、由香には人間を圧縮して胎内に保護する機能が元々備わっており、隼人も香織も麻里子もそれによって「産みなおされ」死から甦ったことがある。当然、わが子も腹に戻すことは可能だ。

 妊娠末期はそれができなかったが、一度産んでしまえば可能になるのだ。

そして、母になった由香はそれまでとは考えられないほどの強い意思を持つようになった。

 隼人は「女は弱い。されど母は強い」という言葉をいまさらながらのように思い知らされた。

 合体巨大グロムウエルに立ち向かう二人・・・。

だが、巨大グロムウエルは強かった。グロムウエルの執念と野望と生命力に、三浦博士の知能、段田の体力と格闘能力が加わった上に、巨大化しているのだ。2人の渾身の攻撃も、歯が立たなかった。しかも、ニジーナまでがそれを援護する。早く合体しなくては・・。それに麻里子たちが危ない。

鷲づかみにされ、再び皮が剥がされようとなる二人。

その間、十字架から降ろされたもののまだ意識のないエドワルドと麻理子にはニジーナが迫る。

 「死ね・・・イヒヒ」

「死ぬのはあんたよ!このゾンビ女,何回生き返ったら気が住むの?」

「そっくりそのまま返してあげるわ。お前こそどうして生き返った?」

「それは・・オホン、愛の力というものだよ、虹村彩子君」と答えたのは、細川博士だった。

 「おのれ〜」ニジーナと香織は、再び闘いだした。今度は、お互いなぜか全裸であった。

一度滅びた肉体から再生したため、そうなっているのだった。

 博士の言葉を聞いた隼人と由香は、大きくうなづいた。

そしてグロムウエルが二人を鉢合わせして脳天を割ろうとしたその力を利用し、二人は結合を果たした。

バルデイ・クロス!二人も合体巨大化して、バルディスターになった。これで互角だ。

 「合体したところでワシの敵ではない。なぜなら、ワシには怨念がある限り不死身だからだ。」

「怨念が愛に勝てるわけがない!」

「いや、勝てるとも」

グロムウエルは、自らのおいたちと野望を語りだした。それは、隼人と由香にとっては初めて聞く、おぞましい物語であった。

 意識を取り戻したエドワルドにとっては、伝説か神話として聞いていた話が現実のものとなった。

 

続く。