宇宙刑事マリーシリーズ
宇宙弁当シャリベン
この山奥の駐在もクリスマス・・・。事件もおこらないし、僕と真理子は駐在所(実は宇宙母艦ホワイトタイガーの居室)にリースを飾り付けていた。予約のケーキを受け取りにいざ出発、となったとき・・・。
「ケン坊!未確認飛行物体よ!」
「あ!」
間違いない。本当に間違いなくUFOがこに向かって飛来しつつある。
「宇宙刑事ケイン出動!」
ビャッコライダーに跨って出動した僕の目の前に、フラフラと飛来したUFOは墜落した。
「転結!」念のため転結して異星人に備えた僕だったが・・・。
中から出てきたのは、女の子3人だった。
「いてっ!」小柄な生意気そうな女。
「もうターミー!ったら下手ね!せっかくのご馳走がだいなしじゃん!」金髪の子。
「お姉ちゃん、モナミちゃん、大丈夫よ」タヌキ顔の女の子。
あわてて駆けつけてきた真理子に三人は飛びつく。
「マリコ!」「マリコ様〜」
「あんたたち、どうして・・・?」
「メリークリスマス!」
「マリコ様の星では今日、ご馳走を食べてプレゼントあげる日だって聞いたから・・・。UFOでワープしてきたのよ」
「あんたたち・・・・。ありがとう」
この三人についての素性は、以下のとおりだった。
宇宙刑事マリーがアクバー星雲担当として活躍していた頃・・・。
惑星オットラットは荒廃し、ワルモンダーの支配下にあった。そして、特にこの星では巨大ロボや機動バイクが徘徊し破壊の限りをつくしていたのだった。
しかも、それを操っていたのはターミーをリーダーとする48人の年端も行かない少女たちだったことは誰も知らなかった。
だがその巨大な悪に立ち向かう一人の女がいた。そう、宇宙刑事マリーが!
土煙を立てて驀進してくる機動バイクを次々かわし、アジトに向かってまっしぐら。
キャー!強がっていても所詮はただの少女、宇宙刑事マリーの敵ではなかった。
しかし、中には多少骨のある者もいた。
「おばさんの出てくる幕じゃないんだよ!」
ナイフを振り回し襲い掛かってくる金髪の少女、モナミ。
軽快かつ執拗な攻撃にはじめてマリコは前進が止められた。
だが・・・。
「百年早いわ!それにわたしはおばさんじゃない!」
逆にロープで締め上げられてしまった。
残りはリーダーのターミーだけになった。
「ふふ、いい子にしてお勉強するのよ。危険なオモチャは没収よ!」
「うるせー!俺に指図するんじゃねぇクソババア!」
「ば・ば・あ?」
マリコの怒りは頂点に達した。
「許さないわよこのおチビちゃん!」
「ち・び?」
ターミーの怒りも頂点に達した。
「チビだとこのババア!」
「チビはチビなのよ!」いがみ合う二人。
「上から見下ろすんじゃねえ!」
「見下ろしてないわ。だってみえないんですもの。あら、いたの?」
「畜生・・・!みてろよ」
ターミーは奥の部屋に駆け込んだ。すると建物が突然地響きを上げて崩壊し、巨大ロボが。
「ババア、どうだ!上から見下ろされた気分は!踏み潰してやる!」
操縦するターミーは得意げに高笑い。
宇宙刑事マリー大ピンチだ。しかし・・。
「転結!」
マリコの体がピンク色に激しく発光するや、メタリックピンクのロボットのような姿に変わった。そう、コンバットスーツを転結したのだ。
巨大ロボの圧倒的な火力・パワーにまったくひるむことないマリーの剣は、関節を次々刺していく。膝をつき、白煙を上げるロボ。
「とどめだわ。マリー・ピンクバスター!」
母艦から投下された巨大バズーカのコネクターを、胸のカバーを開いて接続したマリーは狙いを定めて発射した。
「バイビー♪」
ドッカーン!大爆発するロボ。投げ出されるターミー。
それをキャッチしたマリー。
しかし、その手を振りほどいて逆に隠し持った銃をつきつけるターミー。
「死ね!」だが、引き金を引く前に突き飛ばされ、逆に突きつけられる。
「かわいそうだけど、ワルモンダー一味は即決死刑にできることになっているのよね・・・。」
そのときである。たぬきのような顔をした少女が飛び出してきた。
「おねえちゃんを撃たないで!」
ターミーに覆いかぶさってかばう少女の姿に、さすがの宇宙刑事マリーも銃を落とした。
それは妹のミーナだった。
「ワルモンダー少女隊隊長・ターミー以下を宇宙児童福祉法に基づき宇宙刑事マリーが補導するわ!」
こうして不良少女たちは補導された。そして・・・。
更正し、宇宙弁当店を開業したのであった。
「メリー・クリスマス!」
思わぬプレゼントに顔もほころぶマリコ。
「あんたたち・・・」その目に光る一筋の涙。
ご馳走をほおばりながらはしゃぐマリコはまるで子供のようだった。そしてターミーたち。
そしてあくる日・・・。ターミー、ミーナ、モナミを乗せたへんてこなUFOはクリスマスの装飾をつけられて帰って行った。
皆様よいお年を。