宇宙刑事フィルゴーレ(宇宙刑事マリーシリーズ)
こんにちは。僕宇宙刑事ケインこと篠田健一です。妻のマリコが無事出産し、僕もパパになりました。順調です。
そんなある日、バード星の長官から指令が届きました。
「宇宙刑事ケインは、ただちに惑星オニールへ飛び、苦戦中の宇宙刑事フィルゴーレをサポートせよ。」
乳のみ児と妻を残しての単身赴任に衝撃を受けましたが、
「ケン坊、わたしと真理男のことは心配しないで。頑張るのよ。」
こうして真理子と真理男に見送られた僕は辺境オニール星にワープ。
そこは、荒涼とした原野の広がる星だった。人影もなく、寂れた星だ。
僕と同じ、青いコンバットスーツを着た戦士が多数の鬼のような怪人に取り囲まれていた。
「見事だ!」華麗なキックやパンチで鬼たちを倒す青い宇宙刑事。僕のスーツよりやや色が薄いのも、軽快感を増している。まるで稲妻のようだ。
しかし・・「危ない!」
鬼たちのボスと思われる青鬼の槍が、彼の背中に貫通しそうに・・。しかし彼は雑魚の黒鬼どもを倒すのに夢中で気づかない。
「転結・宇宙刑事ケイン!」僕は転結して飛び込み、青鬼を倒した。
同時に黒鬼たちも全滅した。
「フ、余計なお世話を!でも一応礼を言って置くぜ。お前が地球から来た宇宙刑事か?
「僕は篠田健一。宇宙刑事ケインです。よろしく。」
「俺は宇宙刑事フィルゴーレ。よろしくな。」
兜を脱いだ彼は、まだあどけない感じの残る少年で、聞くと宇宙刑事養成所の一期後輩らしい。
「フィルゴーレ。この星の現況を教えてくれないか?」
聞くところによると元々貧しい殖民星だったこの星に、鬼たちが攻め込み、人々を殺戮したり財産を奪ったり、暴虐の限りを尽くしているという。前任の宇宙刑事が殉職し、訓練半ばの彼が急遽派遣されたものの苦戦が続き、一応(本当は妻の真理子の活躍によるけど)宇宙暴力団ヤザンを壊滅させた僕に白羽の矢が立ち、助っ人に選ばれたのだった。
フィルゴーレのテントに案内された僕は、二人でバーベキューを楽しんだ。野性味あふれるが美味しかった。基本的に食料は自給自足でこのバーベキューの肉も得体のしれない爬虫類のものだった。
僕はふと壁にかけられた小さな写真に目がいった。神々しいほどの美少女だった。
「この子は・・・君のガールフレンド?」
「まあな。故郷の星にいる俺の生きる理由みたいなものだな」
「そういうお前は、マリコの旦那なんだってな」
「え?真理子さんを知っているの?」
「ああ、俺はマリコに助けられて宇宙刑事になったんだ。」
「ということは、養成所では僕のほうが先輩だけど、キャリアは君のほうが上なんだね。」
「ま、そんなところか。マリコとは上手く行ってるのか?」
「うん、実はその・・・。赤ちゃんが生まれたんだ。」
「おめでとーつ!あとで見に行きたいな♪」
「いつでもおいでよ」
「つのる話はこれまでだ。お前がさっきサブヘッドの青鬼を倒したからボスの赤鬼の総攻撃が明日あるはずだ。休もうぜ」
「ああ。」
そして夜が明けた。
轟音を立てて攻め寄せる鬼の軍団。
「よくもわが弟青鬼を殺したな!皆殺しにしてやる。者どもやれ!」
「オー」
首都オニールタウンに迫る鬼たちの群れに立ちふさがる二人の男。
「鬼ども、貴様たちの暴虐もこれまでだ!」
「貴様は・・・見慣れない顔だが・・・。まさか貴様か?かわいい青鬼を殺した新手の宇宙刑事は?」
「そうだとも。僕は貴様を逮捕するために派遣されてきた、宇宙刑事ケインだ!」
おのれ・・・。小僧もろとも切り刻んでやる。者共かかれ!
しかし、僕とフィルゴーレは群がる黒鬼たちを難なく蹴散らしてしまった。
「赤鬼、観念しろ!」
「おのれ・・・」
だが・・・赤鬼は強かった。生身ではとても太刀打ちできない。
「フィルゴーレ、転結しよう」
「おう!」
「転結!宇宙刑事ケイン!」
「転結!宇宙刑事フィルゴーレ!」
二つの青い甲冑が、赤い鬼に迫る。
しかし、彼には銃もレーザーブレードも通用しない。
パンチもキックも無駄だ・・・。万事休すか・・・。
そのとき、フィルゴーレが叫んだ。
「健一、あとは任せたぜ。マリコと幸せにな!」
「無茶だ!」
なんと、丸腰で彼は赤鬼の懐に飛び込んだ。
そこに振り下ろされる赤鬼の斧。
「ズババ・・・・」
ハイパーギャラクシーメタルのコンバットスーツをから竹割りにしてしまう威力。
「フィルゴーレ!」
しかし彼は赤鬼の角をもぎ取っていた。
崩れ落ちるフィルゴーレ。
思わず駆け寄る僕。
「フ、フィルゴーレ・・・き、君は・・・!」
「馬鹿野郎!俺にかまうな!弱点の角はへし折った。今だ、今すぐ・・・角が再生する前に・・・お前の剣術なら・・」
「わかった。よーし、覚悟しろ赤鬼!ケイン・グランスラッシュ!」
「ウワーーーーッ!」
僕は赤鬼の首を切り落とし、その後レーザーガンで焼き尽くした。
勝った!凶悪な鬼の群れは全滅、オニール星に平和が戻ったのだ。
しかし勝利の余韻にひたる余裕はない。重傷を負ったフィルゴーレが心配だ。それに彼は、いや・・・。
彼女の切り裂かれたコンバットスーツは回路がスパークし、爆発寸前だ。変身回路が壊れているために手動で剥がさなくてはならない。
スーツに守られ、致命傷こそ負っていないもののむき出しになった素肌は裂傷とやけどでひどい状況だ。
僕は目をつぶってスーツを剥がした。
そして転結を解き、自分の服を脱いで再び転結し、彼女に着せた。
「まさか・・・。君が・・・」
「なんだよ、気づかなかったのかよ。鈍いな。それになんだよお前。ガキ作ったんだろう?まるで初めてまんこ見た小学生みたいに目丸くしてさ!マリコの見てるんだろう?ま、お前優しいところあるよな。これで2度助けられたよ。ありがとよ♪」
「じ、実は・・・」
恥ずかしい話、僕は本当に女性器をまじまじと見たことがなかった。それ以前に祖母以外の女性とまともに口をきいたことさえなかった。夜の営みも目をつぶった僕の上にマリコが乗り、彼女のなすがままに任せていた。だから彼女のそれがどうなっているかを見たことがなかった。
まして、僕はフィルゴーレを男だと確信していた。あの「彼女」だという美少女の存在もあったし・・・。
彼女、宇宙刑事フィルゴーレは、本名をサエッタ=マッキーと言った。
そして残務整理。いよいよ地球に帰還、ということになったが、長官は人使いが荒い。地球人初の宇宙観光船の護衛をかねて便乗して地球に帰るよう次の任務を与えられたのだ。
そしてオニール星にバード星の観光船が寄港し、地球に帰る日・・・。
一人の美少女が僕を見送りに来た。それは・・・。サエッタだった。青いドレスをまとった彼女は昨日まで一緒に戦ってきた男勝りとは思えないほど美しかった。
「健一、お前がマリコと出会う前に会いたかった・・・。そしたら俺、ちゃんと女になれたのに」
「サエッタ・・・。そんなことないよ。君は美しくやさしい、勇気ある女の子だ。同じ宇宙刑事として、これからもがんばろう!」
握手しようと手を伸ばす僕の手を振り払い、サエッタは抱きつき、僕の唇を奪った。
「マリコごめん・・・。今だけ、今だけこの人を私の・・・今この瞬間だけ、女に戻りたいの・・・・」
僕も後ろめたさを感じたが、優しく抱きとめてあげた。
でも、帰ったら真理子さんにはお見通しになるんだよなぁ・・・。
そして僕は観光船に乗り込み、地球にまっしぐら・・・と言いたかったが、ここでもまた事件が・・・。それは次回のお楽しみ。
おわり。